「デンジ君には、今日からバディを組んでもらうよ。」
「...バデぃ?」
「も、もうバディ決めちゃうんですか! デンジさんすごいです! 私でも1週間かかったのに!」
「はえ?」
バディは新人がある程度仕事に慣れてきたタイミングで決めるんだとアキさんが言っていた。個人差が出るとも言っていて、実際に私はバディが決められるまで1週間ほどかかった。
「それを1日でなんて、すごいです!」
「へ...へへっ、まあな! 俺はすごいからよ!」
『わかってないね君』
「...話、続けても?」
その後にマキマさんは、バディについてのあれこれを話してから、バディを紹介する流れになった。
誰がデンジさんのバディになるんだろう...
そんなふうに考えていると、廊下の方から足音が聞こえてくる。
『...うわ、この血の匂い...ごめんマム、一旦引っ込むわ...あ、耳塞いだほうがいいかも』
「へ? エンティティ?」
なぜだかわからないがエンティティがそれだけいって私の影の中に引っ込んでしまった。
「...なんでだろう?」
そして扉が開かれ、バディの人が入ってくる。
「おうおうひれ伏せ人間っ! わしの名はパワー! バディとやらはうぬか!」
「う、うるさい...」
ドアのすぐ近くにいたからか、彼女の声は塞いでいた耳ごしでもうるさく感じるほどだった。塞いでいなかったらどうなっていたことか。
『ちょっと血の悪魔...いや、魔人だっけ? 君昔も言ったけど声のボリューム下げてくれないかな?』
「なっ、お、お前はっ! なんでここにいるんだ!」
『マムが可愛いから♡』
「お、おいそこのガキっ! さっさとこいつを、どっかにやれっ!」
エンティティの声を聞いたパワーさんは、何やら慌てたように私に話をふる。
「え、いやですけど...」
「い、いいから! 頼む! 後生だ!」
『はーいマムから離れましょうねー。』
「ま、待て! わかった! 私が悪かったからあの領域に引き摺り込むのは勘弁してくれ!」
『えー? しょうがないなぁ...』
エンティティは私の影にパワーさんを引き摺り込もうとしてたけど、すんでのところで阻止された。...私の影ってどうなってるんだろう。
「...なんか変な名前だなお前...?ってか、魔人がデビルハンターなん...て...」
デンジさんがパワーさんの胸元見て固まってしまった。
「魔人は悪魔と同じ駆除対象なんだけど、パワーちゃんは理性が高いから早川君の隊に入れてみたんだ。」
『まあ確かに人間には割と協力的だよね、昔っから。』
「そうなの?」
というか知り合いなんだ、エンティティ。
「...そうだ、澪ちゃん。今週は二人についてあげてくれるかな?」
「...え」
『...マジかよ、なかなか鬼畜だね君』
♢
「...はぁ」
「ぜんっぜん悪魔いねーじゃん!」
「...多分わしと其奴のせいじゃの...」
「...私?」
『てか僕かな』
「うむ。わしは魔人になる前は超恐れられてた悪魔じゃったからの!」
『僕はそんな魔人になる前の君をボコボコにしてたけどね。いやーあれは滑稽だった。イキリ散らしてた君が現実知って泣き叫ぶのはまさに愉悦だったよ。』
「ウグゥ...」
そ、そんなに強かったんだ、エンティティ...
「...んん! 血の匂いじゃっ!」
「あっ、待って!」
「どこ行くんだよてめえ!」
パワーさんが走り去っちゃった...
『んー、血の匂いでなんか感じたのかな。崋山*1、追跡よろしく』
『フウウウウウゥ...』
「うおおお!なんだそいつ! クソかっけえ!」
『ほら、ガキみたいなこと言ってないでさっさと行くよ! 崋山、GO!』
『ウオオオオオオオオオオオオオ!』
「ひゃっ!」
崋山さんが私を米俵みたいに持ち上げたと思ったら、勢いよく走り出す。
そしてビルから飛び降り、ナマコっぽい何かの悪魔に突撃してしまう。
「ちょっ、華山さん! ストップ!だ、ダメですよおおおおお!」
『あははははは! 怒りモードの崋山は止まらないよ! このまま突っ込めー!』
♢
「...澪ちゃん」
「は、はひっ!」
「民間が手をつけた悪魔を公安が殺すのは業務妨害だって...教えたよね」
「ご、ごめん...なさい...」
あああ...また怒られちゃう...うう...
「...ぐす...ひっく...うえええ...」
「...泣くほど反省しなくてもいいよ。大丈夫、とりあえず私がなんとかするから。それに主犯はそこのエンティティでしょ?」
「でも...私が抑えられなかったせいだし...」
「そんなネガティブにならなくてもいいよ。大丈夫だから。ね?」
「はい...」
でも、はっきり言ってエンティティを制御しきれなかった私が悪いだろう。
...私が愚図だからダメだったんだ...
『あーマム、ごめんって、僕が悪ノリしすぎたせいだから...ほら、落ち着こ? ウェスカー! その辺のコンビニでジュース買ってきて! オレンジのやつ!』
「私は便利屋ではないぞ。」
そのあとはウェスカーが持ってきてくれたなっちゃんオレンジを飲んだりしてやっと落ち着くことができた。
横ではパワーちゃんが暴れそうになってマキマさんに怒られたりしていたが、特に問題なく1日の業務は終わった。
♢
「今日はデンジ君は私たちについてきてもらおうかな。パトロールは澪ちゃんとパワーちゃんで。できる?」
「わ、わかりました...?」
「わかった!」
デンジ君、マキマさん、アキさんは何か別の用事があったみたいで、三人で他の場所に行ってしまった。
というわけで今日は私とパワーさんだけだ。
いつも通り職員さんにハンコを押してもらい外に出ると、パワーさんが話しかけてきた。
「おい。実は悪魔のいる場所に心当たりがある。ついて来い。」
「へ? ちょ、ちょっと!」
パワーさんは簡潔にそれだけ言うと、私を置いてどんどん進んでいってしまう。
そしてそれについて、バスに乗ったりして移動していると、いつの間にか田んぼしかない場所に来ていた。
「...本当にここにいるんですか?」
「ああ。そこの家じゃ。」
パワーさんが指差した方向には、確かに一軒家があった。
「わ、わかりました。...エンティティ?」
『...』
いつも通りエンティティを呼び出す。...が、誰もいないかのように私の影は静かだった。
「あ、あれ...出てこない...」
「そうか。そのほうが都合がいいわ。」
「...え」
そのあと、何か強い衝撃が頭に走ったかと思ったら、意識を失った。
♢
「...う...」
『この腕の傷を見ろ人間。貴様らにつけられた傷。この私を隠れざるを得なくさせた忌々しい傷だ。』
「...ひっ!?」
あ、え、なんで? なんで悪魔が私を掴んで!?
「や、やだ! 離して!」
『人間に刻まれた傷! 人間の血で癒させてもらう!』
「がっ!? いだい! 痛い痛い!」
『...ふん。美味とまではいかんが普通だな。もう少し絞れるか。』
「やだ...も...やだ...」
『残しておくか。...さて、少し口直しといこう。』
あ....痛い....頭...回んない...
「...い! 約束...り...を...んじゃ...」
『ん〜? ああ、そ...いう...だった...』
『...っ!?』
うご...け...ない...さむ..い...
「...ああ、こ...な...だ...か。デンジ。」
まだ...しに..たく...
♢
「...ああ。こんな気持ちだったのか、デンジ。」
『...んんん、まずい! まずい血ばかりだ! 子供の血で、上品なものでうがいしなければぁっ!』
目を覚ます。...あれ。僕が目を覚ました?...僕眠れないはずなんだけどな。
『ん? 貴様、なぜだ? 貴様は確かに普通の人間のはず。なぜその怪我で動ける?』
「...あん? これマムじゃん。」
視界の上の部分を塞ぐ前髪。肩にかかる黒い髪だ。そしてそれを触る僕の、もみじのように赤く可愛らしい手。
「なんで僕マムの体に?...あ。まさかあの時の。」
僕がマムと出会った時。彼女の命が危なくなったら、安全になるまで僕が守るという契約。
『ん? 契約?』
「あのさあ。僕がいない間、この体の子を殺そうとか考えた?」
目の前の大して強くないクソ雑魚ブサイクに聞いてみる。
『いいや? 殺そうとはしていない。』
「あ、そうなの。」
『ただお前は餌だ。この私に血を出すだけの、ドリンクサーバー、と言うやつだ。』
「...へぇ?」
『ほら。わかったらさっさと寝ていろ。貴様に死なれたら困る。何せ非常用の食料なのだからな。』
ふむ。こいつがどうやらマムが死にかけた犯人らしい。
「なら、ちょっと死んでくれない?」
『ん? 何うぉおっ!?』
強化した身体能力で力任せにハエ野郎を蹴り飛ばす。
「...少し蹴りすぎたかな」
♢
『ぐううう!?』
なんだ、なんだあいつは!?
さっきまではただのガキだった、なのになぜ急にあんなに!?
「なんだよ、キッショいうめき声なんてあげちゃってさ。黙れよ、クソ虫。」
『ごはぁっ!?』
重い...1撃1撃が重すぎるっ!? 本当にさっきまでのガキか!? あれにこんな重いパンチが出せてたまるか!?
『ぐううううおおお!』
「お。そうだよ。僕のマムを殺しかけたんだ、ちょっとくらい遊んでくれないとさぁ...僕の腹の虫が治らないんだよっ!」
『ごベェ!?』
「クソ虫だけに、ってね。...っ」
...なんだ? 突然こいつ...ふらつき始めた...
「ちっ、...マム。ごめんだけどもう少し大人しくしてて...」
今。今しかない。こいつから逃げなければ。
「何? 逃すと思ってんの? 羽虫の分際で生意気じゃん君。」
『ぐぎゃああああああ!?』
胸がっ! 胸の部分を思い切り踏みつけられた!?
「もっと叫べよ。それお前がマムにやったことだから。」
『待て! 私が悪かった! お前を解放する! あの血の悪魔も! 猫も解放する! だから!』
「今更おせえよゴミが。 解放する? どっちが上かわかってんのかゴミムシが」
『があっああああああああああ!?』
「...制限時間そろそろか...さて。君には僕の力の一端を見せてあげるよ。 喜べ、雑魚。」
ガキの周りに霧が立ち込める。
この霧の匂い....
『っ! ま、まさか、お前...いやあなた様は!? 悪夢の悪魔様!?』
「せいかーい。でも遅かったね。君の処刑はもう決定事項だ。...ようこそ、霧の森へ。歓迎するよ? ゴミムシ君。」
『や、やめろ!やめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろやめろ、やめろおおおおおおおおおおっ!』
♢
「...う....」
「っ! 起きたか、どこか痛いところは?」
「アキ...さん?」
目が覚めたら、いつもの医務室の天井だった。
なんで私ここにいるんだろう。
「お前は血の魔人に騙されて、コウモリの悪魔のところまで運ばされ、なんとかそいつを倒したんだ。覚えてるか?」
「...あ。」
そうだ。私死にかけたんだ。
「...うっ」
...戻しちゃった。あの寒い感じ思い出しちゃった。やだ。あれもうやだ。痛かった。すごい痛かった。
寂しかった。怖かった。やだ。絶対やだ。
「...大丈夫か。」
「ベッド、汚れちゃった」
「大丈夫だ。そのくらい気にするな。」
...ちょっと暖かくなった
「...怖かった。」
「ああ。そうだろうな。」
「痛かった。」
「ああ。」
「でも頑張った。頑張って痛くないよう頑張った。」
「そうだな。」
「頑張ったから...褒め...て...」
「ああ。偉かった。」
最後のアキさんの言葉が聞こえて、私は意識を失った。
♢
「...エンティティ」
『...何』
「暴れすぎだ。お前が全力出したら澪は死ぬ。わかってんのか。」
『...わかってるさ。』
「ならなんで使った。あの能力は使うなと言ったはずだ。」
『何。まだ入社したての時のあれ根に持ってんの。』
「当たり前だ!」
思わず勢いよく立ち上がるアキ。だが影の中から声だけで話しているエンティティには何をしても当たらない。
「お前...忘れたとは言わせない。お前は間違いなくまだ10も行かないガキを自分のわがままで殺しかけたんだぞ。」
『覚えてるさ。』
「ならなんでまた使った!」
『...全部マムを守るためだ。』
そのエンティティの言葉はどこか寂しげで。
『...僕が彼女の血を...力を入れ替えてあげなきゃ、彼女はいつか自分の力に飲まれる。それこそあいつみたいにね。』
「...それはもう聞いた。」
『まあ話したからね。...僕は力を使いすぎた。しばらく寝るね。マムも多分もう2、3日寝てると思うから。』
「...わかった。」
その言葉を最後に、澪の影は普通のものに戻った。
「...銃の悪魔。あれはもう死んでいる、か。」
アキはエンティティに教えてもらったことを反芻する。
「...全く。」
何かを誓ったような顔をした彼は、そのまま病室から出ていった。
...銃の悪魔のことアキ君が知ってても大丈夫だよな?
原作崩壊を少し恐れてるけど、まあアキ君最後には銃の悪魔にされて死ぬって話だし...大丈夫よな?
澪ちゃんの過去にちょびっと触れました。人体実験で色々体いじられて悪魔の力に適合するようになっているらしいぞ。そしてその人体実験で入れられた何かをさっさと使い切らないといつか死んじゃうぞ!やばいね!
1部アニメ、流石に原作全部までは今年中に出ないと思うので、先に2部のストーリーで書こうと思うのですがどうでしょうか
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ええやん
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1部から順番に書けカス