だいじなだいじな、わたしのぱんつ   作:がくらん

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第2話 新たなる道への目覚め

 みなさんきいてください。新しい能力ができました!

 新しい能力ができました! やっぱり大事なことなので二回言いますよ。

 

 あの事件から苦節三年。

 念の修行を順調に進め、能力を作る許可が出てからどのようなものをつくろうか悩み続けて早半年。 ずうっと煮詰まりに煮詰まっていましたが……

 ふと! ひらめきという名のある種の天啓を得てから詰めに入ったこの3日間、睡眠すら忘れて強固にイメージを固めたこの3日間、こんなに楽しい日々はありませんでした。

 ……ふふふ、あーでもないこうでもないと試行錯誤しましたが閃いてしまえば最後は一瞬です。

 

 もうわたしすごい!

 天才ですわたし!

 寝不足でテンションがひどいことになっていますがそんなの知ったこっちゃありません!

 いやっふーいえぃいえぃ♪

 新執事さん、もとい執事くんのもとで毎日きびしい修行に耐えきった成果がついに実ったのです!

.

 

 この3年は、本当に厳しかったのです……

 もうね、あなた本当にわたしの使用人ですかと、わたしの家に忠誠とか誓っているのではないのですかと、それなのにこの仕打ちをするのですかと、なんど問い詰めたくなったことでしょうか……

 

 いや、半分は自業自得というかなんというかわたしにも責任があるのですけれど……

 実はわたし、本能で“念”に目覚めたと思われている手前、大抵のことは同じく理論よりも本能で理解するだろうとか思われているのですよね。

 理論型と本能型で習得の仕方が全く違う。

 なんでも“念”とはそういうものなのだとか。

 

 ちょいとお手本を見せられて、「体の内からグワッと引きだす感じで!」、とか言われてもわかるわけがないでしょう!

 オーラを感じさせつつ組み手をしていれば勝手に“練”に目覚めるだろうとか買いかぶりもはなはだしいです!

 

 それでも教えてくれる修行の筋は通っているので、すでに風化しかけている前世の記憶で理論的な部分を補完しつつがんばったところ、まぁそれなりには成長しました。

 いっぱしに念能力者として、“錬”を維持しつつ戦闘行動なんていうのが、まあピンキリでいうところのキリに近いほうですが、できるようにはなっています。

 オーラを感じるのに10年もかかったのが信じられないですが、やっぱり教えてくれる人がいるかいないかでは大分違うようですね。

 

 と、いうわけで、新能力発表前にちょっとだけいまわたしのできることと、修行の過程でわかったことをおさらいしてみますか。

 それにこの能力の発動にはちょっとだけ下準備が必要ですし。

 その下準備というのが……

 

「さぁ、執事くん。わたしを――――ってください。」

「へ?」

「あれ?聞こえませんでした?この――でわたしのことを――――ってくださいと言ったのですよ! やり方はお任せしますから、ほらはやくはやく。 ハリーハリー。」

「は、はぁ……」

 

 こちらは執事くんにお任せして、わたしの意識は内へ内へ……

 ものごとの節目節目に過去を思い起こして反省することは大切ですからね。

 さて、おさらい開始です。

 

 

 “念”の修行で一番はじめに行ったのは“錬”の体得でした。

 能力のできた時点で自然と“纏”はできるようになっていたので、一段飛ばしての開始です。

 これはなんだかんだで結構簡単にできました。

 なにせ執事さんの見本と「もやもやを、こう、ぎゅっとして、ばっと!」ってアドバイスはともかく、腰回りに他のなによりもまさる最高のお手本があるのですから、からだ全体がぱんつと同じ条件になるようにと考えれば、これがなかなかいい手ごたえでして。

 

 え?からだ全体がぱんつと同じっていやじゃないか?ですって?

 いやまぁ、たしかに最初はそれはもう抵抗がありました。

 ですけど、次第にどうでもよくなったというか、自分のぱんつでもできていることがわたしにはできないのが悔しいといいますか、先を越されている気分といいますか……

 そう、気がつけばわたしのぱんつはわたしの貞操の守護者であると同時に、わたしの“念”の修行における最大の好敵手(ライバル)になっていたのです!

 

 ……いま振り返るとこれはだいぶアホの子ですね、わたし。

 ……え~、おほんっ。

 これはあれです。

 きびしい修行で頭がちょっとだけゆるくなっていたってことでひとつ…… だめですか?

だめですよね……

 

 えと、いいのです。そのおかげですんなり修行が進んだのですから。

 結果よければなんとやらとも言いますし、だから終わったことだからはやく本気でライバル心を燃やしてたあのころの記憶は消えろわたしがんばれわたし。

 

 と、次に“絶”のほうですが、最初に言いましょう、わたしには永遠に不可能だとわかりました。

 それが何故って、ここでも出張ってくるのがわたしの念能力もといわたしのぱんつでございまして。

 わたしの能力はわたしが“どのような状態”であろうと“常時”発動するものなので、いくら絶をしようとぱんつだけはオーラをまとうのをやめてはくれません。

 

 結果、出来上がるのが“異様に目立つぱんつ”です。

 

 本人の存在感が限りなく薄くなるのに腰回りだけそのままなので、相対的にぱんつが目立つ、ということです。

 試しに“絶”状態で何人かの使用人に話しかけてみたところ、皆そろってわたしの目や顔でなく腰回りを凝視しながら会話に応じてくれました。

 

 ……これなんて罰ゲーム?

 

 あと “凝”とその他応用技の数々はいろいろと試した結果、これらは可もなく不可もないといったところですか。

 “凝”はそれなりに叩き込まれましたが、その他は触り程度にしか行っていません。

 執事くんいわく、まずは基本がしっかりしてからとのことです。

 

 最後は“発”および水見式の結果とわたしの念能力に対する執事くんの見解考察です。

 “発”じたいは“錬”とおなじですんなり成功しましたね。

 まぁすでに能力もちな手前、当然といえば当然ですけれど。

 

 そしてみなさんお待ちかねの水見式ですけれど、実をいうと、始める前はわたしもまだ蚤のように小さな期待を心に残していたのです。

 突発的に作ってしまった能力は強化系でしたけど、わたしの系統は放出や変化のどちらかなのではないかってですね。

 

 隣り合った系統ならば間違いが起こってしまっても仕方がありません、というよりまだまだ心の奥では変幻自在のバンジーガムとかみたいな能力にちょっと憧れていたのです。

 強化系で殴り合いとか本気で勘弁してください、みたいな感じですか。

 

 ですがそんな期待や祈りもむなしく、もちろんコップからはお水があふれ出しました。

 

 何度もやりました。

 いつまでもやりました。

 しかしお水の色は変わらず、味も変わらず……

 わたしの目からもお水があふれてきましたよっと……

 あれ?おかしいな。こっちのお水はしょっぱいや。

 

 ……はぁ

 

 べ、べつに悔しくなんてありません。

 あれです、無人島とかで一番役に立つのは強化系ですもの。

 わたしが一滴のお水でみんなを救うのですから。

 変化も放出も操作も役に立たない中、わたしは無人島のヒーローですから。

 濾過したお水に不純物うかべる具現化なんて不届き者はわたしの命令でリンチにしてやるのですよ。

 

……そんなわけでわたしの系統は強化系で本決まりです。

 

 ちょっと執事くんやっぱりってなんですかやっぱりって。

 わかっていたのなら教えてくださいよ。

 え?教えたけどわたしが信じなかったんだ、ですか?

 ……ふっ、これが若さゆえの…… いえ、なんでもありません。 なんでもありませんったら!

 

 なんて一幕もありましたが、おおむね何事もなく終わりましたね。

 

 その後、執事くんが教えてくれたのですが、わたしのように本能で能力を作ってしまった人は、その作った能力自体や、作った時の状況に縛られて、一から新しい能力を作るのが難しくなってしまうそうです。

 まったく違うものもできなくはないのですが、うまく使いこなすのに相当の労力を注いで修行しなければいけなくなるとか。

 執事くんもこのタイプで結構苦労したのだと、話してくれました。

 

 それをふまえた上で、話は冒頭に戻り、わたしの苦悩の日々が始まります。

 まず真っ先に考えたのは、能力の効果をぱんつだけでなく下着全般やほかの衣服にも転用できるようにするものでした。

 これなら実用的にも見栄え的にも申し分なかったのですが、あの事件、わたしが“念”に目覚めたあの瞬間、わたしはすでにほとんどの衣服ははぎとられた後だったのです。

 

 そんなわけでこの案はボツ。

 というよりも作ろうとしても作れませんでした。

 わたしの中で能力に関連付けられた強すぎるイメージが、能力の拡張を拒んでしまって、なんどやってもうまくいきません。

 まぁ、ちゃんと理論で考えてみれば、制約なしに衣服すべてまで絶対防御なんてやろうとしたら、普通に強すぎてメモリが足りません。

 

 またいくつか考えてうまくいきそうだったのが、能力の効果をぱんつを“はく”以外の方法でも発揮させるようにするものです。

 

 ぱんつを“にぎって”相手にパンチで威力はふだんの何倍か。

 ぱんつを膝に“かぶせれば”とび膝蹴りの攻撃力もアップ。

 あげくぱんつを“かぶれば”どんなヘルメットにもまけない最高の兜と化す……

 ……って、わたしはどこの変態さんですかっ!

 

 見栄えとか世間体とか以前に、おまわりさんと目があえば普通に御用になりかねませんっ!

 なまじ今の能力との関連付けという点ではなんだかうまく作れてしまいそうなのが、またたちが悪かったりします。

 むしろ徹夜で寝ぼけて朦朧とした意識で危うく作ってしまうところでした。

 一度設定するとリセットはできませんからね。いやはやくわばらくわばら……

 

 

 ほかにも、ぱんつからカウンターで念弾 → 攻撃するためにスカートめくらなきゃ。 不採用。

 全身タイツ型ぱんつを具現化&着用 → いやそれもうぱんつじゃないよね。 不採用。

 心ゆるしてなきゃパンチラしてもぱんつみえない → スカートでも戦えます。 これは採用&ささっと追加。

 おもらししても地下深くに転送、ぱんつよごれない → そーえばあの時失禁しましたっけ。条件そろってて負荷軽そうなのでこれも採用&追加。

 人間砲弾ただし弾頭はぱんつ → えびみたいな姿勢で飛んで行けと? ……不採用。

 

 ……などなど様々な案がうかんでは消えうかんでは消え、なかなか決めることができませんでした。

 むしろ時間がたつにつれて考えが突飛になってきて、最初のころには全否定した物でも

 “なんかこれでもいっかな……”とか思っちゃってかなり危険な状態です。

 ……まぁ、こまかくて変な能力はノリでちょこちょこ作っているのですが……

 使用メモリはちいちゃいから気にしない気にしない。

 

 さておき、そこでふと、わたしの頭に言葉が響きました。

 

―――思い出しなさいと。

―――恐怖にふるえていたあの時を。

―――初めて念を使ったあの時を。

―――わたしの念の原点にしてすべてにかかわるあの瞬間を。

 

―――そう。あの時、わたしは、“手足を縛りあげられていた”……!

 

 もうね、ひらめいた瞬間ね、ビビっときましたよビビっと!

 興奮でハイになった頭が、これがわたしの新能力だって、ひっきりなしに叫んでいるのです。

 そしてそのまま思いついたままに、ひらめいたままに、本能のままに作り上げたのがこの――――

 

「……拘束された箇所およびその周辺を“硬”で守ってくれるまさに絶対防御、[束縛された安全地帯(レディースシェルター)]なんです! わかりましたか? 執事くん!」

「……お嬢さま、なんだかテンション高いですね」

「ふふふ、悩みぬいた末に最高の一手を思いついたのですから当然です! あぁもう! いまわたしはすごーく気分がいいです。これがうわさに聞く徹夜明け、もとい三徹明けのテンションというやつですね!? いやっふーいえぃいえぃ♪」

「……お嬢さまが壊れた」

 

 そんなことしていたら準備が終わったみたいですね。

 いい感じに全身が拘束されています。

 技術はないですがしっかりと動けないようにぐるぐる巻きにされていますね。

 

「……お嬢さま、言われたとおりに縛りあげましたが、どうですか? どこかきつかったりしませんか?」

「……むしろ締め付けられているほうが、守ってもらっているようで、いい……ほふぅ……」

「………………」

 

 っと、うっとりしている場合じゃありませんね。

 いまは能力の性能テストの真っ最中なのですから。

 

「よし。 それじゃあ執事くん、用意もできたことですし、わたしのこと思い切りなぐってくれませんか?」

「………………」

「あ、忘れていました。 さるぐつわも付けてください。 頭部の条件がそれなので。 ……あ、はひはとうほあいあふ(ありがとうございます)

「………………………………」

 

 うん?なんだか執事くん、両手握ってぷるぷる震えてますけどどうしたのでしょう?

 

「……お嬢さま」

「はひ?」

「……これはもしかしてぼくのせいですか? ぼくの修行があまりに辛かったからお嬢さまは、お嬢さまは……っ」

「……?」

 

 執事くんの様子がなんだか…… って、うわなんか執事くんの右手にすごい量のオーラががが……!

 

ほ、まっ(ちょ、まっ)

「……いまのいままで気付けなかったぼくを許してください。 謝る資格がないのはわかっていますが、それでも言わせてください。 本当にごめんなさい。 ……でもだいじょうぶです。 いまからぼくがこの拳で……」

「……(パクパク)」

 

 ちょ、ちょっと待ってまだ上がるのですか!?

 これ明らかにただの“硬”とかじゃなくてゴンくんのジャンケン、グーみたいな念能力ですよね!?

 たしか執事くんの能力は悲しみに応じてオーラの量が増減する能力だったはず。

 というかいくらなんでも強すぎです!

 何がそんなに悲しいのですか執事くん!

 

「お嬢さまを、正気にもどしてさしあげます! おおぉぉおりゃああぁぁ!!」

「―――――っ。」

 

 ―――ドガンッ!!

 

 なぐられた瞬間から世界が勢いよく回転しています。

 そのうえ執事くんがあっという間に遠くに離れていきました。

 そしてそのままバウンドを一回、二回、三回してからごろごろ~…… 目、目が回ります。

 

「……っは! だ、大丈夫ですかお嬢さま~!」

 

 我に返った執事くんがこちらに走り寄ってきますが、だいじょうぶではありません。

 たしかに意外なことにあれだけのオーラで殴られたのにどこにも痛みは感じませんし、すごい勢いで飛んだはずなのに強烈なGもかかりませんでした。

 

 ……思ったよりずっと性能高いですね、これ。

 

 ですが、視覚的に目が回って、回って、あぁ意識が、遠く―――

 

 

――――――――

 

 

「……う、うぅ」

「あ、お嬢さま! よかった目が覚めたんですね!」

「……あ~、えと、ここは?」

「ここはって、お嬢さまのお部屋じゃないですか。 お嬢さま、あれから丸一日ねむっていたんですよ? ……はい、紅茶です。 やけどしないように」

「あぁ、はい。ありがとうございます。」

 

 ……ふぅ。紅茶が美味しい。

 なんて、一息ついたらさっぱりと目が覚めました。

 ………………いろいろな意味で

 

「……あぁ~、やってしまいました。」

「お、お嬢さま、大丈夫ですか?」

 

 だからだいじょうぶじゃありませんよ、もう……

 いまなら、執事くんがあの時、どうしてああなってしまったのか理解できます。

 ……“わたしを縛って”、“わたしを殴って”。

 あぁもうほんとに我ながらなんてことを言ってしまったのでしょうか。

 ふつうに変態さんじゃないですか、あきらかにMな人ですって。

 

 しかも、あたらしい能力もおかしなテンションで作っちゃってくれちゃいまして……

 縛られなきゃ発動できないっていうのにどうやって自発的に使えというのですか……

 自分で自分を縛る?

 どんな高等プレイですかそれ……

 

 でも作っちゃった以上、習得しないといけませんよねぇ。

 自己捕縛術。

 あと縄抜けの術も。

 

「……はぁ。」

「お、お嬢さま?」

「すいません。 しばらく一人にさせてくれませんか?」

「あ、はい。 わかりました。」

 

 執事くんがいそいそと退出していきます。

 これでお部屋にはわたし一人きり。

 ……いや、ふっつうにへこみますね。

 まだ執事くんと話していたほうがよかったかもしれません。

 

 

 それにしても、自己捕縛術ですか。

 なんだか響きがシュールな言葉です、が。

 よし、ちょっとやってみましょう。

 もうやけくそですよやけくそ。

 

「とりあえず、ぐるぐるーっと巻きつけて、腰にとおして、ここにはあとで腕を入れるからー?」

 

 そうして、こうして。おぉ、だんだん動けなくなってきました。

 進めば進むほど動けなくなりつつ、先を予想しながら巻いていく。

 なかなかどうしてパズルみたいで楽しいです。

 

―――――コンコン

 

 ノックですか?

 まぁちょっと早いですけど十中八九執事くんでしょうね。 あの子、あれで心配症なところがありますし。

 執事くん相手ならいまのままでいいでしょう。 どうせちょっと前にさんざん醜態をさらしたのです。 もうなにをしたっていまさらですよね。

 

「はい、どうぞ」

「失礼いたします。」

 

―――メイド長、ですって……っ!?

 どうして、どうしてよりにもよってこのタイミングっ!

 ちょっと楽しいとか思って、すこしだけ笑みをうかべてしまった、いまっ!

 あぁそんなことよりも、ま、まずいです。あの目が、あの目がぁぁ!

 

「お嬢様」

「びくっ!」

「お召し物の替えをお持ちいたしました。こちらに置いておきますので。」

「へ?」

「それでは失礼いたしました。」

 

 ……あの目がなかった?

 いや、むしろこれは―――― スルー、された。

 

「まって!まってくださいメイド長! っとと、うわっ」

 

―――ずべしっ

 

 ベッドから落ちてしまいました。

 そういえばわたし、縛られていて今はうまく動けないのでしたっけ……

 

「……うぅ、メイド長のおに、きちく~。」

 

 地べたをはいつつ呪詛をはきます。

 スルーって、スルーって!

 ふつうに叱られたほうが何十倍も楽なのに!?

 

……すべては、すべてはこの能力のせいです。

 この能力をつくった過去のわたしのせいです。

 そう! いまのわたしは何一つ悪くはありません!

 

 だから思い切り罵りましょう。過去の自分の……

 

「―――ばっかやろー!」

 

 ……ふぅ、ちょっとすっきり。

 

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