月日が流れるのは早いものですね。
お屋敷で修業がてら半ニート生活をしていた時と比べて、お仕事をするようになってからは本当にあっという間に時間が流れていきました。
そんなわたしの今回のお仕事はオークションの受付嬢です。 オークションの受付嬢です。
大事なことなので二回言いました。
なにが大事なのかって?
そりゃあ、このヨークシン・シティの
もうテンションなんかウナギ登りです!
ちなみに今はオークションの開催される前の会場準備の段階、のはずだったのですが……
奥の方からかすかにドタバタと慌ただしい音が聞こえてきます。
旅団の方々がオークションそのものを乗っ取るために、邪魔なスタッフを蹴散らしているような、そんな音が。
「ってなわけで、しばりしばーり……♪」
上機嫌に自作の歌を口ずさみながら、手錠がかかってうまく動かせない手を使って腰から下を拘束していきます。
受付のテーブルでお客さんからは見えなくなるような箇所を縛るのがミソです。
これはいつぞやから決めた、いつなんたる時でも体の一部は拘束しておくという自分ルールを守るために、ですね。
しかも、手錠をつけることで難易度を上げる縛りプレイ。
ちなみに今のは、テレビゲームとかで言うところの制限を課して遊ぶ「縛りプレイ」と、単純な意味での「縛るプレイ」をかけた高等ギャグなのです。
ふふ、わたしやっぱりセンスあるなーなんて考えていたら、エントランスの端にあるスタッフオンリーと書かれた扉からフランクリンさんとノブナガが出てきました。
「あっ、フランクリンさん。 そちらの準備はいかがですか?」
「ああ、こっちはだいたいおわった。 今はシズクがゴミを片付けてるとこだ」
「そっかよかったです。 もうそろそろ時間だからちょっと心配だったのです。
おつかれさまです、フランクリンさん。 あとノブナガ、襟についてますよ」
「あァ? なにがだ?」
「返り血、です。これからスタッフの振りするのにどうするんですか」
「うわ、やっちまったなァ」とノブナガがうだうだ言っています。
フランクリンさん&ノブナガペアとウボォーさん&シャルさんペアおよびシズクちゃんは会場にいたスタッフや警備員をあらかじめお片づけしておくのが今回のお仕事です。
それにしてもノブナガはフランクリンさんと違って直接切りかかるのだから、お片付けが終わってから着替えればいいのに……
どうしてスーツに着替えてからはじめたのでしょうね。
「まったく、ノブナガはやっぱりダメダメですねぇ。 そしてそんなダメダメさんよりわたしのほうがウボォーさんの相棒の座にふさわしいと思うのですが、どうです? ノブナガ?」
「……またそれかよ。 あァあァそうだなァ。 オメェがウボーの”アイボウ”ダゼー」
「あ! またそうやってけむに巻くつもりですね たまには真面目に答えてみろってんです!」
うがーっと、がなってみても、ノブナガは「おうおうわかったわかった」と相手にしてくれません。
まぁこのやり取りも、もはやお約束なのですけれど。
最初は旅団の一員として認めてもらうために始めたこの問答ですが、そのうち楽しくなってきて、今では本心からノブナガはわたしのライバルです。
ノブナガの方がどう思っているかはこの際関係ありません。
「おいノブナガ、そんなことしてないで着替えてこい。 そろそろ時間だ」
「あァ、わかったよ」
フランクリンさんに言われて、ノブナガはまた裏に戻って行きました。
気がつけば、もう奥からのドタバタも聞こえなくなりましたし、別行動だったウボォーさんたちもあらかた終わったのでしょう。
そうとなれば、お縛りのつづきを急がねばいけませんね。
細めの荒縄をー、こっちにまわしー、あっちにとおしー、ここをくぐらせてー、って手錠にひっかかったー!
「さて、そろそろ客が集まってくるころだろう。 オレもフェイタンと合流してくる。 あとは打ち合わせ通りだ。 オークションが始まったら、一人もここから出すな」
「りょーかいです!」
元気よく答えたわたしのあたまを、フランクリンさんのおおきな手のひらがぽんと叩いてくれました。
その手は大きすぎて、なでるというよりやさしく包まれるようで結構ここちいいものです。
さぁこれから、本格的にお仕事です。
今回の仕事はなんだか子供のころに眺めていたアリジゴクの巣を思い出します。
これから
そしてわたしはそれを上から眺め、なんとかはい出ようとする
そんなお仕事。
……わたしは自分が罪を犯していることを自覚しています。
ですがそれに、もはや忌諱の気持ちはありません。
なぜなら、わたしが犯した罪が大きければ大きいほど、
わたしに下される罰はきっととても大きなものになるのでしょうから。
……さてと、そんなわけで今日もお仕事、がんばっていきましょう!
「あぁ、あとひとつ伝えておきたいんだが……」
「なんです?」
せっかくやる気を出したのに、歩きだしていたフランクリンさんがふっと振り返って水を差します。
むぅ。 どうしたのでしょうか。
「……能力の準備のときに、あまり、にやにやしないほうがいい。 さすがに少し気色が悪い」
「……え”」
ショックで固まっているわたしをしり目に、フランクリンさんはいじいじと指先の調子を確かめながら、わたしに背を向け去っていきました。
―――――――――――
時節はすでに9月のあたま、残暑厳しいとはいえ、日が暮れてしまえばだいぶすごしやすい季節になりました。
そんな秋の夜長をわたしたち旅団は悠々自適に気球でわたっていきます。
一仕事終えた後のこの時間はやっぱり格別……
といければよかったのですが、現実は困惑といらだちの混じったなんともいえない沈黙に、気球のなかの空気が最悪です。
オークション会場にて、お客さま方にフランクリンさん特製の念弾をご購入していただき、金庫からその代金を受け取る予定でしたが、まさかの文無し、すなわち金庫の中にはオークションに出品されるはずの品が何一つありませんでした。
別行動で金庫にむかっていたマチさんフェイタンさんにつれられて金庫の中を覗いた時は、もう一同で茫然としてしまいました。
その段になってようやく、あぁどっかの未来予知系の念能力者がなんかやったのでしたっけ、と役に立たないうろ覚え原作知識が浮かび上がったものです。
そんなわけで、ただいま団長の指示待ちなわけですが――
「――オレ達の中に
電話で団長と話していたウボォーさんのこの言葉が響いた瞬間、それまでギスギスしていた空気が凍りつきました。
はっ、とだれかの息をのむ音が響きます。
……ごめんなさい。見栄を張りました。 息をのんだのわたしです……
いやですね? 今、いつもの定位置であるウボォーさんの隣にいるのですが、ウボォーさんから怒気っていうかなんていうかとにかく攻撃的なオーラが垂れ流しになっていてすごく怖いのですもの。
いまにも暴れだしそうな猛獣の籠の中にいればだれだっておびえるでしょう?
というより平気な顔しているほかの団員の人たちの方がおかしいのです。
ビクッとしたわたしおかしくない。
だからシャルさん、そんな目でこっちみないで!
「―――おう、じゃあな。 ―――お前ら団長の声きこえてたか?」
うわ、馬鹿なことしていたら聞き逃しちゃいました。
いつの間にかウボォーさん普段通りになっているし、団長に説得されたのですかね。
いえ、うろ覚えですが原作通りなら、「裏切りとは限らない」、とかそんなニュアンスのことを団長は言って、ウヴォーさんを落ち着かせたのでしたっけ?
思いだせわたし! だとするとこのあとはたしか……
「えっと、陰獣相手にケンカですよね?」
「そのまえに、いくらか雑魚ちらしだな。 そのへんはオレが適当にやっからお前ら手ェ出すなよ」
「好きにするといいね」
「見てるだけだとヒマそうだから、はやく終わらせてね?」
ふぅ、知ったかぶり成功です。ちょっと間違っていたけど許容範囲でよかったです。
フェイタンさんとシズクちゃんがうまく流してくれました。
「それにしても、陰獣ですかー。 ねぇマチさん、陰なんとかっていうとなんかエッチな言葉っぽくありません?」
「……陰茎とか女陰とかのことが言いたいのかい?」
「………………っ!」
「……自分からふっておいて顔赤くするんじゃないよ。……こっちが恥ずかしい」
「……え、えへへへ」
くっそう。 マチさんが赤面しながら、「何言ってるんだい!」とかって反応を期待していたのに何たる失態ですか!
……いやまぁ、考えてみれば幼いころからスラムみたいなところにいる子が、この程度で赤面するほどのうぶなわけがないのですよねぇ。
自分で埋めた地雷を自分でふんづけたような気分です。
あぁ恥ずかしい……
「……はぁ」
マチさんのあきれ顔から目をそむけ地上をみおろすと、黒塗りの車やいかにもな顔した黒服さん達がわたわたと右往左往しているのが分かります。
クラピカくんもいるかなーと探してみましたが、あの印象的な金髪も民族衣装も見つけられませんでした。
ざんねん、ですね。
まぁ、お楽しみは大事に取っておくということで。
――――――――
ドンっという銃声にしては重い音を合図に、ウボォーさんによる対黒服さん殲滅戦が開始されました。
わたしは残りの団員の人たちと一緒に高台から観戦中です。
と、そのとき、わたしの着ていた薄手のポンチョのすそがくいくいってひかれました。
「ん? シズクちゃん、どうしたのです?」
「いや、一緒に戦わないのかなって」
「あ~……」
言われてみれば、いつもウボォーさんとセットのわたしがここに残っているのはおかしい、……のでしょうか?
何となく、ウボォーさんのオレ1人でやるって発言に従っていただけなのですが…… 考え始めたらなんだかウズウズしてきました。
あぁもういいや! 乱入しちゃいましょう!
「わ、わたしもちょっといってきます!」
「ん、そっか。 いってらっしゃい。」
そういうとわたしは、高台から会場へとつづく崖を走りおります。
と、半分くらい駆け下りたときに、奥のほうからバズーカをかついで走ってくるツルツル頭の黒服さんが目に入りました。
こういうときほど私の出番です!
「っとう!」
崖のなかほどから、垂直に近い角度の地面を蹴って大ジャンプ!
目標はあのツルツルさんがバズーカを放つだろう位置のちょっと手前で、ウボォーさんの楯になるように。
風ではいていたミニスカートがひるがえりますが、どうせぱんつは見えないのだから気にしません。
異様な乱入者に、一部の黒服さんたちが一瞬こっちに目を向けますが、ウボォーさんのほうが脅威と感じたのかすぐに視線をはずします。
そんなものは放っておいて、空中でいちど上半身パージ!
アーンド全身拘束! 仕上げにさるぐつわをかんで完全防備です!
そしてそのまま狙い通りの位置に着地した瞬間、すでに放たれていていたバズーカの弾がわたしに直撃しました。
その衝撃にわたしは吹き飛ばされますが――
「おう、きたのか。」
「ん!」
ぱしっと、その先にいたウボォーさんが受け止めてくれました。
「――やったか!?」
けむりの向こうからお約束の言葉が聞こえます。
いやぁ、こんな仕事をしているとちょくちょく聞くことができるのですが、何度聞いてもニヤニヤしてしまいますね。
ウボォーさんのほうを見てみると、彼は彼で、とってもいい笑顔をしていました。
そんなウボォーさんがおもむろにわたしの足をつかんで、ぶんっと一振り。
すると爆煙がはれて、驚愕の表情をうかべた黒服さん達が茫然と立っているのが見えるようになりました。
「う、うわあああぁああぁぁぁ!」
「に、にげろぉ!!」
一瞬の静寂のあと、我に返った黒服さん達は蜘蛛の子を散らすように逃げ出しました。
「はっ、1人も逃がさねェよ!」
「んうー!」
もちろんそのまま逃がすほど、わたしたちは甘くはありません。
あっという間に追いつくと、ウボォーさんはわたしを振り回します。
この攻撃で相手を狙うことなどありません。 ただひたすらに集団につっこんで適当に振り回すだけ。
そもそも、獲物にあてる必要などないのです。
ウボォーさんの怪力とわたしの念にかかれば、一般人は振りぬいた後の衝撃だけで体がバラバラになりますし、真芯でなんか当てた日には体重100 kgはこえていそうな大男が数十メートルは飛んでいきます。
念能力者相手じゃなければいつものことですが、相変わらず圧倒的です。
―――ギイィィィン!
ん?
ひと段落ついて、さぁ次に行こうかと一息ついた時にその妙な音は聞こえました。
金属が打ち据えられたような、空気の震える音。
すると、いままで蹂躙を続けていたウボォーさんが立ち止ります。
「っち、遠くからこそこそと――」
あぁ狙撃でもされたのでしょうか、ということは先ほどの音は大口径の銃弾とウヴォーさんの頭のぶつかる音…… ってウボォーさんちょっともしかしてなんでわたしを振りかぶるのいや待ってそんな―――
「――むかつくんだよっ!」
「ん! んんーーー!」
わたしを投げたーーー!
唐突に空を飛ぶ羽目になったわたしですが、その速さが半端じゃありません!
ぐんぐんと数キロさきの岩山がせまってきて、その上の狙撃主に向かっていきます。
しょうがない覚悟を決めますか、岩山にいるのは4人。 いくらわたしが単品じゃいまいち強くないといっても、念能力者相手でなければどうにかなります。
……たぶん。
そのまま一直線に飛んだわたしは見事にそのうちの1人のお腹にあたまから激突しました。
骨と内臓のつぶれる音があたまに響きます。
まずは1人。
「なっ、お、おんなぁ!?」
残りの人が驚いている間に、下半身の拘束をパージ。
自由になった両足を大股にひらいてぐるんと振り回しその勢いで立ち上がります。
次は反射的に拳銃をかまえようとしている男を目標に、倒れそうなほどの前かがみで走り寄り、最初の激突で地面に書いた長い線をたどりながら、飛びすぎてしまっていた距離を詰めます。
「う、止まれ!」
「ふっ」
止まれと言われて止まる襲撃者がおりますか。
制止の声とともに男は銃を撃ちますが、拘束されたままの上半身と頭にはじかれて銃弾は明後日の方へ飛んでいきます。
その様子を鼻で笑ってやりながら、最後の一歩を大きく左足で踏み込み、これを軸足に男の側頭部めがけてハイキックをかましてやりました。
蹴飛ばされた男は白目をむき、口から唾液を垂らしながら、わたしのねらった通りに仲間のもとへと飛んでいき、そのうちの1人にぶつかりました。
ぶつけられた方の男は体勢を崩し、わたしはそれに追いつくと右足をおおきく上に振り上げて―――
「っぐふ!」
―――渾身のかかと落とし! これでやっつけたのは3人。 のこりが1人!
ですが、そう意気込んで残った1人の方へ顔を向けたとき、そこに立っていたのはただのマフィアの下っ端戦闘員ではありませんでした。
念、能力者? 銃を捨ててなにがしかの武術の構えをとっています。
あれは心源流の構えだったはず、です。
能力者にしてはなんだか”練”がたよりないのですが……
「キチガイでも見るような眼ぇすんなよ。 どおせ銃弾程度じゃどうにもなんねぇんだろ?」
「……まぁ、それはあってますが」
さるぐつわをはずして、話に応じます。
いまいち相手がつかみきれません。
「なぁ嬢ちゃん、お前あれだ。 心源流のお偉い師範代様に雰囲気がそっくりだわ」
「それが、どうかしましたか?」
男は勝手に語りだします。
「俺はなぁ、強かったんだわ。 すごく。 ものすごく。 けどそいつにゃ勝てなかった。 それが悔しくってなぁ。 はらいせに稽古で同門のやつ殺しちゃったんだわ」
「……はぁ」
「そしたらな、死ぬ瞬間だけそいつの雰囲気も師範代にそっくりになってやがんの。死ぬ直前になんか得るもんでもあったんかねぇ? 目の前で人が死んだのはあん時が初めてだったから、けっこうびびったっけなぁ」
「……」
「それから俺ぁ、破門されて人を殺す仕事に就いた。 何人も何人も人を殺して、最近何となく、つかめるようになってきたんだわ」
何となく理解しました。
心源流の修行で下地があるときに念に触れて、それから独学で修業したってことですかね。
師匠はなしで、しかも修行方法がシリアルキラーな感じにぶっ飛んでいますけど。
おかげでまとっているオーラがむちゃくちゃです。
「……それで?」
「いやなぁ?」
会話しながら、上半身の拘束もはずし、両腕を体の前にまわしてポケットから取り出した手錠をかけます。
「生きてる時からそんな雰囲気の奴を殺せば、最後の一歩、なんかすげぇ事つかめる気、しねぇか!?」
「知ったこっちゃありませんね!」
男は体を低くして、こちらにタックルを仕掛けてきます。
近づく相手を見据えながら、いろいろな相手と戦って鍛えられた私の目は、この男が厄介な相手だと判断していました。
これに何かきっかけを与えると、きっと本能で能力を作りだすに違いない。
それはそれはやっかいないやらしい能力を。 そう、かつてのわたしのように!
だから、すぐに終わらせます!
「せいっ!」
タックルを横に飛んで避け、男に向けて後ろ回し蹴りを放ちます。
しかし、この大ぶりな蹴りに男はさして目を向けることもなくバックステップで避けてしまいました。
ですがこれでいいのです。
少しでも距離ができればあとはやることが一つだけ。
「ウボォーさん、その技、お借りしますね! くらってください![
「んなっ! が、あぁーーーー!」
手錠のかかった両手を、気合いをこめて思い切り地面にたたきつけます。
するとわたし達の乗っていた岩山の一角が崩れおち、男もこれに巻き込まれて、眼下に落ちて行きました。
きっと死んではいないでしょうけど、とりあえずこれでしばらくは大丈夫でしょう。
気絶とかはしていなくても、登ってくるのが大変でしょうし。
「それにしてもうーん。[
ウボォーさんの技の一つに[
それを“発”として、能力の一つとして確立することで威力の向上を図っているのですが、もちろんわたしも手に念をこめるくらいのことはできます。
というよりも拘束さえすれば、自らの総オーラ量にかかわらず結構な量なオーラをこめることができるので、それに名前を付けて[
だいたい本家の半分かそれよりちょっと多いくらいでしょうか。
うーん、借り物であるという意識が強かったせいかもしれませんね。
「とと、そうだ! ウボォーさん!」
[
まったくあの人は人のことをあんなぞんざいにぶん投げてくれやがりまして!
いったいどうしてくれましょう!
ウボォーさんはウボォーさんであのあと陰獣と戦っているはず……
「……あれ? いない?」
岩山の端に立ち、わたしがもといた箇所に目を向けてみますが、視線のさきにウボォーさんの戦っている姿はありません。
その周辺には黒服さん達の死体がわんさか転がっているので場所を間違えてもいないはずです。
「……あれ? あれれ? 旅団のみんなも?」
そして、その場にはウボォーさんはともかく他の仲間たちも誰一人見当たりません。
“凝”までして必死に探しても見つからないこの状況に、いやな予感がもくもくと這い上がってきます。
これは、まさか……
「おいて、いかれてしまいました……?」
えっと、これから、どうしましょう?
秋の初めにしては冷たすぎる風がひゅーと鳴って、わたしの体を撫でていきました。