だいじなだいじな、わたしのぱんつ   作:がくらん

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第8話 望まざる長い夜 前編

「……ヒマです」

 

 クラピカくんに連れられて、ちゃっちい場末なビジネスホテルに転がされたかと思えば、昨晩おこなわれた尋問以降ずっとほっとかれているのです。

 小さな窓から見える外の景色はすすけたビルの壁だけで、夜の帳もおりきっています。

 時間にして午後の6時。かれこれ放置されて早15、6時間ですか?

 

 いやね、途中まではセンリツさんも同じ部屋にいて、邪険ながらも話相手には困らなかったのですが、昼ごろにかかってきた電話を期にどっかにいってしまいました。

 その電話から漏れ聞こえた声はたぶんクラピカくんのものだったような気がします。

 でもって聞き取れた内容、というか単語は“ボスの護衛”と“暗殺チーム”、“指示”くらいのもので何となく状況がわかったようなわからないような……

 ようはたぶんクラピカくんに暗殺チームへの参加、センリツさんにボスの護衛が命じられたってことだと思いますが、どうなんでしょう。

 

 その後センリツさんは、わたしにここから逃げ出す意思がないことを軽い問答で確認すると、さっさと部屋から出て行きました。

……自由に動けるわたしを放って、です。

 

「……いやまぁ確かに心音とかで確信してるんでしょうけど、もうすこしなんとかないんでしょうか。 手足縛るとか。 ……それともわざと逃がして泳がせるつもりですかね?」

 

 泳がせるにしたってもう少しわたしに疑問を持たせないようにうまくやるでしょうに、クラピカくん達の考えていることはいまいちわかりません。

 

 そう、考えていることがわからないって言えば、昨晩の尋問の件もそうです。

 せっかく荒縄全部ほどいて[ 束縛された安全地帯(レディースシェルター) ]を解除していたのに、いくらハッパをかけても拳ひとつくれませんでした。

 何回か、おしい場面もあったのにセンリツさんが全部とめちゃうし。

 空気、というかわたしの内心くらい読んでくださいよセンリツさん、なんて何回思ったっことですか。

 センリツさんの能力ならわたしがいくらでも甘んじて殴られようとしていることくらいわかっていたでしょうに。

 むしろ、一発でもオーラ付きで殴られれば死んじゃえるように、いつでもどの箇所でも“絶”状態になれるように構えていたのですが、それも無駄になってしまいました。

 

 っと、細かいことをいえば、どの箇所でもというのはウソでしたね。

 わたしには[ わたしのぱんつは鉄壁ぱんつ(ガールズサンクチュアリ) ]があるので、ぱんつ周りだけはたとえ殴られても死ねなかったですが、さすがにクラピカくんもそんなピンポイントな変態さんじゃありませんし、まぁ関係ないですか。

 

 とはいえ、いざ数年ぶりに全ての縄をほどいてみると、この[ わたしのぱんつは鉄壁ぱんつ(ガールズサンクチュアリ) ]、いままで[ 束縛された安全地帯(レディースシェルター) ]の陰に隠れて意識していなかったせいもあってか、とんでもなく強力に見えてきました……

 ……片手間で作った、排泄物とか垢とかを無視できる能力にかまけて、実は旅団にさらわれて以来ぱんつ変えてないのですよねぇ。

 ウン年単位で相当量のオーラをこめ続けた物体X(ぱんつ)……

 やってることは愛用品を操る操作系能力者と同じです。

 そりゃ強力にもなりますか。

 

 というか、よく見るとホントにすごいですねわたしのぱんつ。

 たぶんわたしが心残りとか残して死んだら、きっとこのぱんつに何かしら死者の念とかかかるにちがいないってくらいオーラため込んでいますよ。

 そしてできあがるのは、はたから見れば呪いのぱんつ。

 きっと火にくべても燃えなかったり、捨てても戻ってきたり、はいたら二度と脱げなくなったり、宿っている意識に体を奪われたりするのでしょうねぇ。

 

 ……って、いやいやよく考えましょう、中古のぱんつをはく人なんかいませんって。

 そもそも無難に死ねた時点で心残りとか有りようがないですし。

 ……いまいち思考が吹っ飛んでます。

 なんだかんだ言ってもこの事態に結構動揺しているのかもしれませんね、わたし。

 

 ちなみにこの事態、というのはクラピカくんに放置されて絶賛ニートな今…… ではなくて、ウボォーギンvsクラピカ戦という目的を果たす絶好の機会を逃したこと、です。

 

 なにしろここ数年、焦点をそこだけに絞って作戦を立てていましたから、正直チャンスを逃してみすみす生き残ってしまっている現在、わたしは自分が何をすればいいのかとんと見当がつきません。

 次善の策で、クラピカくん本人が目の前にいる間はただ単純に挑発すればいいと思っていたのに、これも完全に不発です。

 そんでもっていざいくらかは自由に動けるようになってみると、どうするのが一番目標にたどり着く近道なのかさっぱりです。

 

 センリツさんに対して答えた、「逃げる気はない」という意思だって、つきつめれば、頭の中が空っぽでとても逃げようなんてことは考えられない、検討できるだけの余裕がないっていう考えに基づいていますし。

 

 本当にこれからわたし、どうしたものでしょうか。

 

「なんだかなぁ…… っととと」

 

 そうしてとりとめもなくぼうっとしていると、いきなり部屋に備え付けの電話がルルルと音を立てました。

 フロントからですけど、何でしょう?

 

「はい。 もしもし?」

「失礼いたします。 お客様宛にお電話をいただいたのですが、お取次してもかまわないでしょうか?」

「えっと、どなたからですか?」

「クラピカと名乗る女性でございます」

 

 おや、クラピカくんですか。

 そういえばわたしは携帯持っていないので、連絡取るならホテルを介するしかありませんか。

 というか女性って…… いやたしかに中世的な声かもですが、さすがにちょっとかわいそうですね。

 

「ええ、かまいません。 繋いでください」

「かしこまりました」

 

 さてさてどんな用事でしょうね?

 今のわたしの扱いをセンリツさんに聞いて、逃げ出してないか確認するとかでしょうか?

 そんなことを考えているうちに、ぷつんと電話の切り替わる音がかすかに聞こえました。

 

「……っと、つながりましたか? もしもし、どうしたのですかクラピカくん? ちなみにわたしはちゃんとお部屋でごろごろしていますよー?」

「………………」

「あれ? もしもーし? クラピカくん?」

 

 ……クラピカくんいっこうに声を聞かせてくれないのですが。

 やっぱり電話は声が聞けないと相手の様子が分からないからあまり好きではありませんね。

 

「おーい、なんなのですか? だまっていちゃわからないですって」

「……私も、ね」

「へっ?」

 

 長い長い沈黙の後聞こえてきた声は、フロントさんの言うとおりちょっと低めだけれど完全に女性のもので、クラピカくんのものとは似ても似つかぬ声でした。

 いきなりの予想の範疇をこえる出来事に、おもわず変な声が漏れてしまいます。

 ……というか、この声はもしかして―――

 

「実のところ半信半疑だったの。 だってまさかあなたの王子様が実在するとは思わないでしょう? それも容姿どころか名前まで正確に一致するなんて」

「――パクノダ、さん?」

「ええ、昨晩ぶりね。 元気だったかしら?」

 

 その挨拶はあまりにもいつも通りで、そのありえなさにひゅぅっと息がひきつります。

 どうして、なぜ、ここがわかった、パクノダ、クラピカ、どうして名前を……

 

 ほうけていた思考にいくつもの要素が浮かんでは消え、浮かんでは消え……

 最後に何よりもつよく残ったのは『また、旅団か』という呆れと怯え、ただそれだけです。

 

「ど、どうして……?」

「それは何に対しての質問なのかしらね? 今あなたに電話をかけていること? 私がクラピカという名を騙ったこと? それとも貴女の王子様が実在するって所からかしら?」

「え、あ、う……」

 

 そんなの決まっているでしょう、それらすべてがわからなくて混乱しているのです!

 そして、混乱のあまり口が回らずわたしの意思はなにひとつ伝えられません。

 遠くから耳にはいってくる雑音が煩わしい。

 そもそも王子様ってなんのことですか。

 

「まぁ、そっちにはまだみたいだし、それまで順番に教えてあげるわ」

「……え?」

「今朝シャルにね、鎖野郎を写した携帯電話の写真を見せてもらったの。 見てからしばらくはあっけにとられたわ。 なにしろ前々から見えていたあなたの王子様にそっくりなんですもの。 ……今思えばシャルやウボォーは特徴をある程度言葉で聞いただけだからとっさに気づかなかったのかしらね」

「お、王子様?」

「……あなたが助けに来てくれると思っていた金髪の男の子よ」

 

 あっ、クラピカくんのことですか。

 あまりそう考えてはいなかったけれど、たしかに他人様から見ればわたしの白馬の王子様、になるのでしょうか?

 

 ああ、もう、クラピカくんとの最初の接触で決着をつける気だったから、記憶とか見られるのにまったく頓着していなかったのが裏目に出ました。

 詳しいあらすじはいい具合にうろ覚えだったのに甘えて、記憶を覗かれるのを拒みもしなかったのですから、強く覚えていたことについては筒抜けです。

 

 過去を後悔する無駄な思考ばかりが、頭を駆けぬけていきます。

 わたしが本当に考えなくてはいけなかったのは、たった今、この進行している現在に、わたしがいったい何をするべきか、であったはずなのに。

 頭の中を切り替えようとしても、外の音の煩わしさは消えてくれずにむしろどんどん大きくなっていきます。

 

「それであなたの王子様の名前は“クラピカ”だったから? シャルがハンターサイトで調べてみたら、出てきた顔写真が鎖野郎の容姿とどんぴしゃり。 ついでに今ヨークシンに“クラピカ”名義でホテルをとってる客が見つかったから、わざわざ出向きながらダメもとで電話をかけてみたのだけれど……」

「…………」

「まさかあなた本人につながるとはね。 正直、鎖野郎にすらたどり着かないと思っていたわ」

 

 ……とりあえず、事情は把握しました。

 ただ単に、わたしだけが知っていたはずの情報がパクノダにも漏れていて、隠蔽をさぼった因果が回ってきたというだけのことです。

 

 こんな状況想定なんかしていませんでした。

 本当にわたしは今どうすればいい?

 わたしを邪魔する大きな雑音は、さらに近づき小さな振動すら伴い始めます。

 うっとおしいことこの上ないです。

 

「さて、ネタばらしはこんな所かしら? わざわざ長々と説明してあげていたし、そろそろだと思うのだけど……」

「そ、そうです! さっきから()()とか()()()()とか、それっていったいどういうこと―――」

 

 今しがたの会話の、不自然な言葉使いを追及しようとした半ば、ふと感じた悪寒に言葉を途中で止めてしまいます。

 安っぽい言い方をすれば、なにかとても嫌な予感がした、そんな感じです。

 

 ……さっき、パクノダはこちらに出向く、すなわちここに向かっていると言ってはいませんでしたっけ?

 そして何よりさっきからずっと部屋の外、廊下側から漏れ響き、わたしを邪魔する煩わしい音。

 しだいに大きく、しだいに強く、時折小さな揺れまで一緒におこりながら近づいてくる、そんな音。

 ……音の響きからしてもうすぐそこまで音源が近づいているのが分かります。

 この明らかに平常のものではない状況を、どこかで経験したことがあるのに気がつきます。

 

「それくらいは自分で考えたらどうかしら? もっとも――」

 

 不自然に黙りこくってしまったわたしのことは関係ないとでも言うように、パクノダは話の続きを始めます。

 話の合間にもったいぶったタメを作り、そのタメに重なるように外の異音も部屋の前で一時やんで……

 

「――もう正解を発表するころでしょうけど」

 

 バギンと音をたてて部屋の扉がひしゃげられました。

 その先に立っていたのは、返り血なのかところどころ赤く染まった大男…… すなわちウボォーギン。

 パクノダの台詞をさえぎるように現れたウボォーギンの様子をきっかけに、一度のまたたきの間、あの時、かつてお屋敷で初めてウボォーギンと対面した時の映像が、さっと目の前を通って行ったように感じました。

 力の抜けた手から受話器が滑り落ち、ガシャンという音が静かになった部屋に響きます。

 

「……っ!」

「……。 あぁ、ったく、手間かけさせや――」

 

 相手が動く前に、腹に力を込めます。

 わたしはウボォーギンが何かを最後まで言いきる前に、ただがむしゃらに背を向けて窓を突き破り、夜の街へと逃げ出しました。

 

 ホテルを出てすぐ目の前のビルの壁を蹴り、まずは上へ。

 何段か排気口や窓の手すりを踏み台にして一気に屋上まで飛び出ると、そのまま屋上づたいに隣のビルへ、そしてまた隣の屋根へと、とにかく元の場所から離れることだけを意識して全速力で駆け跳びます。

 

 最初に屋上にたどり着く寸前に眼下をのぞきましたが、一瞬だけ見えたのは割れた窓からこちらを見上げて、困ったような面倒そうな、無表情としかめつらの間のような顔を浮かべるウボォーギンの姿でした。

 逃げる獲物を追うものにしては、のんびりしているように見えましたが、だからと言って速度を緩めることはできません。

 ウボォーギンのあの巨体に似合わぬ足の速さは、5年間もの時間を共に過ごしたわたしが一番知っているのです。

 

 ……ほら、次の屋上に跳びつつ後ろをみれば、スタートダッシュで離したはずの距離なんて無意味だというようにぴったりと後ろを追いついてきます。

 足をさらに速めなければいけません、能力のために道具を取り出す時間すら惜しい。

 まして発動の条件など揃える余裕なんてありません。

 

「はっ、は。 くそ、わたしは、ホントバカ、です、か……!」

 

 逃げながら頭を占めるのは後悔ばかりです。

 そもそもパクノダが、あの旅団が、ロールプレイングゲームのちゃっちい中ボスよろしく、無意味に冥土の土産な演説なんかしてくれるわけがなかったのです……!

 わざわざ色々と教えてくれたのはわたしの意識を向けさせるため、ウボォーギンがわたしのもとにたどり着くまでの時間かせぎだったのでしょう。

 わたしがいたのは予想外みたいなことも言っていたから、ちゃんと計画立って行われていたわけではないのは明白です。

 たまたまわたしがいたから念のために向かわせていたウボォーギンを急がせたといったところですか。

 

 というか、そもそもそれを隠そうともしない言葉をちょくちょく混ぜていましたし。

 わたし相手なら、そんな小細工なしでも捕まえられるという自信の表れですか?

 あながち間違っていないのが悔しいですね。

 現にこのまま屋根や屋上を駆けて、直線的に逃げていても遠くないうちにつかまってしまいそうです。

 

「っふ、は。どこに、逃げれば……?」

 

 とにもかくにも、1人ではウボォーギンをまくことはできないと判断します。

 そしていまわたしが頼れるのは、いやむしろ、わたしが知っているこの状況に巻き込めるであろう人物はただ一人、クラピカくんだけです。

 

 ここまで追い詰められた段になってようやっと指針が浮かびました。

 とにかく、クラピカくんのいる場所に行けばいいのです。

 それでどうなるかはわからないけれど、あとは野となれ山となれ、そもそもそれ以外の選択はわたしに存在しません。

 

「……クラピカ、は、っは、暗殺チー、ムに」

 

 確信はないですがクラピカくんは対旅団の暗殺チームに参加するはずです。

 そんな大仰な集まりがあるのは、当然守られる対象であるオークションの開催会場。

 旅団内の襲撃計画にあったおかげで今日のオークションが行われる場所を覚えていたことに、自分を誉めたくなってきました。

 

 その会場とはセメタリービル。幸いなことに今の進行方向からは外れていません。

 とりあえず一度、次のビルの谷間に落ちて視界から外れてから方向転換を、それ! っと――

 

「―――うっひゃぁ!」

 

 うわ、たったいま頭すれすれをなにかかすりました!

 直後に聞こえた金属をこすり合わせたような異音に思わず頭上を見上げれば、ビル壁のコンクリートに鉄の管……ですか? とにかく何か棒状のものが突き刺さっていました。

 

 あっぶないです! あのまま走ってたら直撃の上、串刺し磔は免れないところでした!

 ……なんて呆けて足を止めてる場合じゃありません。

 とにかく、あとはまっすぐセメタリービルへとまた全速で走りだします。

 

 それにしても、あぁもう、ウボォーギンにしてはなんも言わずに淡々と追いかけてくるなとか思ってはいましたけど、いまのは完全に不意打ちでした。

 後ろを気にしてみれば、ウボォーギンは変わらずじりじりと距離を詰めつつこちらを追ってきており、さらにずっと後ろにパクノダらしき影も見えます。

 

 ですが、まだ何とか大丈夫、何もなければクラピカくんのもとへたどり着ける…… ってまたなんか飛んできましたね!

 気にかけていた分早く気がつけたそれを危なげに避けて、ひたすらに屋根を跳び、壁を蹴り、とにかく逃げ続けます。

 

 永遠にも感じられるほどの、けれど実際にはそう長くない距離を、時折飛んでくる障害物を避けながらも駆け続け、現在ようやく目的地まであと100メートルといったところにまで来ました。

 ここからは、セメタリービルの敷地内にある小さな森林を横切ります。

 後ろのウボォーギンは、投擲運動のおかげで速さが鈍っていたようなのが不幸中の幸いでした。

 建物の屋根から山なりに跳び、きれいに手入れされた木々の中へと飛びこんで着地するとまずは一息、林の中に紛れてしまえば少しは見つかりづらいはずです。

 

「……はっ、は、っとと、さてクラピカくんは―― あれ?」

 

 気力を出すために目的を再確認しようとした口がまたも、止まってしまいました。

 原因は森の中をこちらへと向かってくる、人影……。

 もしかしてあの特徴的な衣装と金髪はクラピカくん本人じゃないですか?

 

「あっ、ホントにクラピカくんです。 ……おーい、どうしてこんな所まで――」

「それは! 私の台詞だ!!」

「う、が、っくぅ……!」

 

 クラピカくんは早足でそばまで近づいて来たかとおもうと、わたしの言葉をさえぎり襟首を締めあげます。

 あぁそうだ、忘れていた。 そんなにフレンドリーな間柄ではなかったのでした。

 とはいえ、今はそんなことをしている場合ではないというのに……

 

「……うっ、はな、して。」

「断る……! 発信器で動向を探ってはいたが、貴様はなぜここに来た! なにを考えている!?」

「……っ」

 

 あえて言えばここに来たのはあまり何も考えず安直に行動した結果ですが。

 

 ……それにしても発信器、ですか。

 念能力が幅を利かせるこの世界じゃ逆に気づけない、なんとも便利な文明の利器でございますね。

 

「……そん、な、ことより、……ウボォー、……旅団、が……!」

「なに……?」

「あん、なんで鎖野郎までいやがるんだ? ……まぁ手間が省けたっていや省けたか?」

 

 ここに来る、と伝えようとした矢先に、大地を踏みぬく衝撃が空気を走り、ウボォーギンが空を覆う枝を突き破って現れました。

 クラピカくんが一瞬緊張に体をこわばらせるも、すぐにわたしを後ろに放り投げ、鎖のまきついた右腕をかまえます。

 

 その緊迫した空気に当てられて、わたしはごくりと唾を飲みます。

 

 こうして、わたしの人生における旅団との最後の対峙が、いま始まろうとしていました。

 

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