昨日と別の、お披露目用の会場にに入るとメンツの凄さに圧倒される。
全員昨日見たはずが、錚々たる顔ぶれには慣れないものだ。
内心不安ではあるがそれを見せてよい相手ではない。公の場に慣れている彼らに不安1つ察せられれば今後の活動に多かれ少なかれ影響が出ることは明白。
1番の方法は気にしないこと。気にしなければ不安など感じないのだから。
会場の裏、ユージはアルルに言う。
「実はそろそろワシもサーヴァントを招こうと思っておってのう。ここでお主が主を選ばなければワシの元に来ることになる……分かるか?」
「はい…理解しております…ですが個人的理由で判断を変えることはボクには出来ません…」
「もちろん分かっておる。だが、ワシの権力を見くびるなよ。お主が誰かを選べば、その誰かは消され、お主はまたワシの元へと戻って来る」
「!?」
「なぁに、そう警戒するでない。もしもの話じゃよ、もしものな。まぁ、血が流れるのはお主も嫌いじゃろ」
壇上のユージは大きく手を広げ高らかに言った。
「皆様、よくお集まりくださいました!お待たせ致しました!」
会場の目が一点に向く。視線の先、壇上のカーテンからアルルが登場する。
「ほぉ、なんと可愛らしい…」
「是非とも迎えたい」
「素晴らしい、流石は最新作だ」
どこか物を見るように聞こえる声に若干の苛立ちを感じるが、そんなものを気にしていては集中出来ないと意識を切替える。
「これより、候補者の方々と対面し主を選んでいただきます。候補者の皆様はサーヴァントの選択に異を唱えぬこと。他の候補者の対面中邪魔を挟まぬこと。以上をお守りください。ではゆきなさい」
アルルが壇上から降り、騎士や貴族たちと顔を合わせる。
その様子を離れたところで見ていると、ついに彼の番が来た。
「スリン・リーチェ・アーテが騎士、大和有我です」
「………」
なにかを感じているのか、ただ2人は見つめ合うのみ。
沈黙。誰も話さぬ静かな時間。
「………では」
十数秒の沈黙の後、彼女は去って行った。
「さあ!主の名を言いなさい!アルルよ!」
(さぁ、どうする?主を選べばここにいる人間は死ぬ!お主のせいでな!)
「……ボクの主の名は──」
アルルが口を開き候補者、観客、ユージ、会場全体に緊張が走る。
「──いません…」
「ほほぅ、そうか!主は居らぬか!いやはや残念。ですがそういうこともありましょう。では皆さん、また次の機会をお待ちください!」
ユージの顔は言葉とは裏腹にさぞ嬉しそうにしていた。まるで望む結果が出たと言うように。
有我の心には変な引っかかりがあった。
特に理由のない、けれども確かな引っかかり。
「これにてお披露目会はお開きとさせていただきます。と言っても、まだパーティーは続きますので皆さんごゆっくりと……」
そう深々とお辞儀をとるとアルルを連れて舞台袖へ入っていった。
「………」
(ユージは女子が、特にサーヴァントが好きだとリーチェは言っていた。あの時の舐めるような視線。まさか……もし噂が本当だとしても証拠が……いや、あれほどの権力ならもみ消せる可能性もある。ならある程度の影響力を持った誰かを味方に付けられれば……リーチェは……ダメだ、いくら主力機のパーシヴァルを造った本人とはいえまだ学生。若い才能を疎ましく思う人間は多い。誰かいないか……影響力のある人間……)
ハッと気がつくと彼は豪華な食材などには目もくれず、とある人物へ急いだ。
館の屋根の上、有我はじっと目を凝らして向かいの別館の窓を一つ一つ
確認する。
少し離れた会場の周りにはストンテン隊の重魔動甲冑アンダードッグが擱座している。
(俺の予想が正しいなら、アンダードッグは自慢の為に持ってきたのでは無い。おそらくあの会場は人質。アルルや真実に気づいた者への脅迫だ。会場を出た時ユージはまだ何処ぞの貴族と話していた。奴より先にアルルに接触することが出来れば希望はある!)
その時、左から数えて5つめの向かいの窓。憂鬱な表情をしたアルルが姿を現した。
すぐに手元のバレルタイルを1つ叩き割り破片を掴むと、それを彼女のいる窓目掛けて軽く投げた。
軽い音を立てて窓を叩いたそれに気がついたアルルは向かいの屋根の彼と視線が合う。
驚いた様子で窓を開け、身を乗り出した。
「有我くん?!なんでここに──」
静かに、と言う様に彼は口に人差し指を当てる。
慌てて口元に手を当ててコクコクと頷くアルル。
有我が窓から離れろ、とジェスチャーすると1度頷いて身を引いた。
屋根の上まで移動し、倒れるようにして勢いを付け助走すると、窓に向かって大きく飛んだ。
軌道は完璧。問題はどうやって静かに着地するか、そしてそれを一切考えていないことのみ。
(マズイ…このまま突っ込めばデカい音がなって誰か来てしまう。何とかして勢いを殺さなければ……そうだ!この方法なら…ダメだ!最悪窓が壊れてどちらにせよ音が鳴る!何かほかに方法は…クソ!時間が無い。ええい仕方ない!こうなったらやってやる!)
空中で大の字に四肢を広げて何とか窓枠にしがみつく。
勢いの乗った全体重を受け止め歪んた窓枠が壊れぬうちに体を離してトンと着地する。
「ふぅ…外れなくて良かった良かった。最も、こんなに歪んだら開け閉め出来ないが。まぁ、降りるには問題ないだろ」
アルルは目の前の光景に若干引いていた。
「なんとも大胆な事するね。飛んでるところを誰かに見られたらマズイんじゃないかい?」
「そんなことを気にする暇は無い。もし見られても良いようにすぐに逃げるんだからな。だから聞かせてくれ、アルル。お前は本当にマスターを選ばなかったのか?」
声こそ出さないが、驚きで目を見開いた。が、すぐにキッとした目になり聞いた。
「………何の根拠があってそんなふうに思うんだい?」
「根拠、か…そう言われると特にはない。ただ、ユージの黒い噂や、わざわざ私兵を呼んだことを考えると、何となく脅されてないかと思ってな」
「はぁ…」とため息と共に力を抜いて続けた。
「ご名答だよ、有我くん。確かに、ボクはユージ校長に脅された。『お前が誰かを選んだ時、その誰かは後々消される』とね。そんなこと言われたらマスターを選べるわけがないじゃないか。マスターは殺されるんだから」
「それで、選んだマスターは誰だ?そいつの元に送ってやる」
「聞いていなかったのかい?!そんなことをすればマスターだけじゃない、君だって殺されるんだよ!」
「安心しろ、既に手は打ってある。俺たちが脱走する頃には、奴は終わる」
「……そこまで言うなら、信じるよ」
「ありがとう。さぁ、マスターの元へ行くぞ」
手を差し伸べる彼に聞こえぬよう、小さな声で
「君の方から来たじゃないか」
「?どうした」
「いや、なんでもないよ。さぁ、ボクを早く逃がしておくれ」
隠しきれぬ程に開いた嬉しさが笑顔を包んでいた。
コンコンと軽い音を立てて扉が叩かれた。
見張りの者だろうか。ドアノブを捻り、ドア板と壁の隙間を広げている。
(しまった!時間をかけ過ぎたか)
アルルの手を引いて窓に走る。
完全に開いたドアから身を出した見張りが見たのは、窓枠に沈む少女の姿だった。
落ちる有我を受け止めたのはいつかの魔動双輪。
そこにアルルは彼の腕の中に落下する。
彼女は目を開けてお姫様抱っこの姿勢になっていることに気が付き、慌てて交わった視線を外した。
後ろに乗せた彼女の腕を腹に、発進させる魔動双輪は叫ぶ見張りの声を背に、ユージ・シュー・ストンテンの敷地から逃げるために風を切って走る。
「ところで、協力者は誰だい。パッと思いつくのはリーチェちゃん達かな。でもあの2人だけとは思えないけど、その辺はどうなんだい?」
「流石に鋭いな…あと一人は、お前も知っている人だ。」
エンジンをさらに吹かし、魔駆双輪はグンと加速した
あけましておめでとうございます
後編はいつ出すか未定です…構想は出来てるので時間かかっても失踪はしません
あと今までのを修正しないと…