魔動甲冑 D.O.S   作:さつまいもキング

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S3 有我の一片(後編)

有我とアルル。2人はころころ号に跨り、月明かり照らす森の中を駆けていた。

魔動甲冑シノビの襲撃から5時間程が経って、ハンドルの中心に付けられたモニターに映る日付が1つ進む。

2人の間に会話は無いが、アルルは有我の背中から腹に手を回して落とされないように抱きついていた。

有我の背中から感じる体温と、一定の落ち着いたリズムを刻む心音が緊張を解いて、半日も寝ていたというのに瞼を重くする。

もう少しで意識が飛ぶというところで、不意に身体が真っ白なコートの背中にゆっくり押し付けられた。

「ここで夜を明かすぞ」

どうやら眠かったのがバレていたらしい。

止めたころころ号のそばに、アルルは倒れた木の上で食料を詰めた鞄を枕にして眠った。

 

 

 

やがて夜が明け、太陽の眩しい光で目が覚めた。木の葉を鮮やかに照らす太陽光が心地よい。

「ふあぁぁ……おはよう、有我くん……」

ぐーっと背を伸ばすと、全身の関節の隙間が開くような感じがして、朝になったんだと思う。

「おぉ、おはよう。ちょうど朝飯ができたところだ。そこの小川で顔洗って来い」

そう言う有我の正面には、焚き火で串に刺さった川魚が焼かれていた。

開いた皮の隙間から見える白身と、そこから滴る脂が食欲をそそる。

「分かった!行ってきます!」

目をキラキラと輝かせたアルルは軽い足取りで小川へと向かった。

 

 

 

「ふぉいひい〜」

幸せそうに魚を頬張るアルル。アルルの出す幸せオーラを見て、

「これを食べたらすぐに出るぞ。出来るだけ早く着きたい」

と満更でもなさげな有我。

この後、あまりにもアルルが美味しそうに食べるので機嫌が良くなった有我が追加の魚を獲ってきた結果、予定より1時間長く食事した。

 

 

 

食事を終えてしばらくころころ号を走らせていると、木々のトンネルを抜けて草原へ出た。

若い緑の葉の中で揺れる様々な花、その香りが風に運ばれて心を落ち着かせる。

草原を分けるように切り開かれた道をこのまま行けば、フェオ王国にたどり着く。

「ねぇ、有我くん」

何処か寂しさのある声で背中から不意に話し掛けられた。

「どうした?」

まっすぐ前を見て応える。

「君は知っているのかい?」

「何をだ?」

「僕は──」

有我は美しい草花の中、グンと速度を上げた。

 

 

 

フェオ王国サーヴァント省本館 大広間

「スリン・リーチェ・アーテが騎士大和有我、サーヴァント・アルルの護衛、只今完了しました。」

サーヴァント省大臣の座る豪勢な椅子の前で、横に並び訓練された美しい形で膝をつく有我とアルル。

「ここには儂とそなたらしか居らぬのです。そう跪くことはありませぬぞ」

太った体に豪華な服、金色の装飾を纏う男は穏やかに言った。

「そなたらの顔をよく見せてくれますかな?こんなにも早く帰って来たのはそなたが初。それも、傷1つ無い完璧な状態で。この偉業を成し遂げた騎士の顔を是非とも覚えていたいのです」

「は、ありがたき幸せ」

言葉に従い有我は立ち上がる。続けてアルルも立ち上がった。

表情を抜いた顔を大臣に向けると、舐めるような視線をじっくりと浴びる。

嫌悪感で顔を顰めそうになるも、背にまわした拳を思い切り握り、掌に爪が食い込む痛みで抑えこむ。

「ありがとうございます。これで儂はそなたの顔を忘れはしまい。老いぼれのワガママに付き合わせて申し訳ございませぬ。」

大臣がスっと手を上げると、扉を開けてメイドが入る。彼女はアルルのそばに着き、こちらに一礼した。

「サーヴァントのことは我々にお任せ下さい。彼女のことはお披露目の時まで我々がお世話します。ささ、外までお送りしますぞ」

有我は大臣に連れられるようにして大広間を後にした。

 

 

 

スリン邸

格納庫にころころ号を戻していると、背中から声をかけられた。

「おかえりなさい。有我様」

リーチェだ。たった2日程しか聴いていない主の声に、不思議と心が落ち着く。

スタンドを立ててころころ号を安定させ、体をリーチェに向ける。

「ただいま。リーチェ」

「とても早く帰って来ましたね。てっきり、もっと時間のかかるものかと」

「俺もそのつもりだったんだが。困ったことにキャリーが破壊されてな、魔駆双輪で帰って来ざるを得なかった」

ため息混じりに「まぁ、キャリー代は国持ちだから気にする事はないが」と言う有我に、「お疲れ様です」とリーチェは労いの言葉をかけた。

「そうだ、シエルナはどうした?珍しく居ないが」

「シエルナさんなら今、シュミレーションで訓練していますよ。あと10分もすれば戻って来るかと」

「そうか。俺も後で訓練しないとな。2日も休むと身体が鈍る」

顕現した銃剣を2、3回素振りして「やっぱり少し鈍ってるな」と呟く有我。

翌朝、寝起きの彼は激しい筋肉痛に悲鳴を上げた。

 

 

 

1週間後

ドタドタと激しい足音が早朝の屋敷に轟く。

「有我様有我様有我様ー!」

騒がしく有我の部屋のドアを開けるリーチェ。息切れを起こしながら1枚の封筒を見せてきた。

「お嬢様とは思えないぐらい豪快な開け方するな」

「見てください!この封筒!」

有我はリーチェの手から封筒を取ると、裏表をチラチラと見る。

「サーヴァント省からの手紙だろ?何かおかしいところでもあるのか?」

「おかしなところも何も、国立ジケル学園への推薦書が入ってるんですよ!」

 

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