魔動甲冑 D.O.S   作:さつまいもキング

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S7 お披露目前夜

アルルのお披露目会を翌々日に控えた有我、リーチェ、シエルナ。

3人の身は会場近くのホテルにあった。

有我は候補者用の館に、2人は客用の館に通されており明日のパーティーが始まるまでは顔を合わせることはほとんどない。

一応、主と従者が候補者と客とで別々に参加する場合、従者側は主と同じ部屋に泊まることが許されるが、有我は彼女達の関係を知っているので水を差すつもりも無く予定通り別館に腰を下ろすことにした。

(いよいよ明後日、か…アルルはどんな奴を主とするのだろうな。最も、他の候補者は秘匿。知っているのはホテルのチェックインや、部屋に来る時に見かけた程度、全体の10分の…否、数十分の1にも満たない。今出来ることは何も無いな…)

めくるめく環境に疲れ、眠りにつこうとした時。ふと今朝の会話を思い出す。

 

「有我様。アルルさんの任務、覚えてますか?」

「あれを忘れろと言う方が難しいと思うが」

「そうですよね。その件でお話がありまして……アルルさんの完全が遅れた理由なのですが、実は校長先生が絡んでいるのではないかという噂があるんです」

「校長が?確かにサーヴァント省の大臣だし干渉は出来ると思うが、理由が分からん」

「校長先生は女の子好きで有名なんです。特にサーヴァントは歳を取るのが遅いのでそういう人に人気なんですよ」

「まさかそれが理由だとでも言うのか?だとしたらあまりに弱すぎる」

「では、校長先生が大臣になって以降完成が間に合わないサーヴァントが増えてると言ったら?」

「まさか…」

完成が間に合わない場合どうなるのか?答えは完成後にサーヴァント省に連れて行かれ、次のお披露目まで待つことになる。

サーヴァントは選んだ主に尽くす為に造られた。

故に完成後一定の期間内に主を選ばなければ死んでしまう。

「もしかしたらアルルさんも狙われているかもしれません。私も警戒するので有我様も気をつけてください」

 

 

 

翌日 夜

パーティー会場には名のある貴族や騎士が集まっている。

およそ28時間ぶりに見るリーチェとシエルナは、普段イチャイチャしているとは思えない程に凛ととしていた。

どこかの貴族と話す姿は一見するとお淑やかなものだが実際は話の中で、相手が何を目的に自分に接触したのかなど、手の内を探っている。

大半は単なるコネ作りや世間話でしかないが、稀に別の目的で接触する者がいる。

そういう者の手にハマらぬようリーチェは会話を、シエルナと有我は動きを静かに警戒しているのだ。

ただし常に2人がそばにいる訳ではない。

話し相手に余計な警戒を抱かせないため、より広範囲を警戒するためなど様々な理由から片方は離れた場所にいる。

が、有我がそばにいたことは一回もない。

というのもこのようなパーティーに参加するのは初めてであり、今回もアルル護衛の際に生身で魔動甲冑を撃退した話を聞かせて欲しいという

者が多く、護衛に専念出来ないためである。

そうして7回目の武勇伝を終えると、見覚えのある声が話しかけてきた。

「よぉ。有我」

「リード先生。こんなところでお会いするとは、まさか先生も候補者で?」

「残念ながら、俺は観客だ。前の役職が役職だけに引退してもこういう場からは逃れられんのでな。ここだけの話、こんなパーティーより先生たちと飲んでる方が何倍もいい。かしこまった無料で食える高級料理より、居酒屋の席で飲む安い酒の方が 俺は好きだ……」

「確かに、こうして気を張っていても疲れるけだすでからね。俺も先生の話聞いていたらここから抜け出してどこか休める場所に行きたい気分になってきました」

と冗談を言うと

「そう思っていたならちょうどいい、抜け出すか」

「いや冗談ですよ。第一どこに行くんですか?」

「抜け出すんだから人のいないところに決まっているだろう。さっさと行くぞ」

どこに行くかも言わぬまま人の間に入っていくリードを見失わないうちに追いかける有我。

 

着いた先は素晴らしく美しく管理された花壇が広がる庭だ。

その広さは庭でありならが公園と勘違いさせるほど。

空は雲一つないが、すぐ側のパーティー会場から漏れる明るい光に消されて小さな星は見えない。

確かに人がいる気配はしない。ましてリードがなんの反応も示さないことが誰も居ない証明。

より公園らしさを加速させるベンチ。それにリードは騎士特有の風格を出さずにゆったりと腰を下ろす。

その様子を見ると、正体を知っていても信じられなくなるような穏やかさしか感じ取れない。

「こんな所に連れてきた理由、分かるか?」

「まぁ、なんとなく…詳しいとこまでは分かりませんが…」

「そうか、ちゃんと授業を聞いてくれてるようで安心した。正直、俺の授業はお前たちに届いているか不安だったんだ。初めての教師というのもあるが世代格差とでも言うべきか、こんなジジイの言うことを今の若いのが聞いてくれるかと考えるとな……余計な心配なようで安心したよ……ありがとう」

「騎士にとって大切なものは純粋な力だけではありません。経験こそがものをいう。先生はご自身を『ジジイ』と言いましたが俺たち生徒からすれば素晴らしい『先生』です。先生の授業を聞かないなんてこと、あるはずがありません。まだ1ヶ月も受けてませんが、俺たちにとっての先生はリード先生だけです」

一点の曇りもなく言う瞳を見て、リードはシルクハットを深くした。

「…………さて、本題に入ろう。実は先月お前が撃退し行方不明になっていたシノビだが、今日の昼に捕まったそうだ。パイロットは逮捕され現在王国騎士隊が監視、取り調べしている。そこで問題がある出てきてな。我がフェオ王国とシノビを運用するアカシマが同盟国家なのは知っているか?」

「えぇ。騎士になる時にあの2人から色々と教わりましたので。確か400年前まで戦争してて、戦争中両国が疲弊したところにハガル帝国が攻めて来たんですよね。それを協力して壊滅させて終戦になり、以降は同盟国家として仲良くしてると…」

「その通りだ。実はシノビのパイロットは遭難の果てにこの国に入ってしまったらしい。偶然近くにいた部隊に救助を要請したのだが………どうも指揮官が戦場になった国境の村の生き残りらしくてな。当時の怨みが消えぬまま…現在になって復讐の好機到来ってわけだ」

時代に取り残された私念は多い。特に国家間の問題ともなれば晴らすのは難しいだろう。

当時の政治は戦争、乱入、協力とめくるめく状況で余裕がなく戦争被害者への対応が疎かになってしまったらしい。

およそ250年前からは被害者にも対応し始めたが国が解決したと言っているのは浮き出ているものだけであり、水面下の問題は解決していないものがほとんどだ。

誰も悪くないからこそ解決が難しい。それが今回のような事件を起こしてしまった。

「幸か不幸か、攻撃はしなかったが嘘の道を教えた。その道を辿れば我々の基地に着く、と言ってな。結果として非常食が尽きたアカシマの騎士は賊に堕ちた。これが事の顛末だ」

どこに向けてよいか分からぬ怒りが湧き握る拳から鮮血が垂れる。

「そこでだ。アカシマに騎士を帰すことになったのだが付き添い…というよりこちらの代表と言った方が正しいか…それにお前が選ばれた」

突然の報告に頭が真っ白になり湧いた怒りもスポッと抜け落ちた。

「……どういうことですか?俺はまだ学生ですよ。それに俺は騎士科で、そういうことは学んでないのに……」

「俺も反対したのだがな。アカシマの剣聖直々のご指名らしい。そう言われてしまってはな……」

「……なるほど…つまり自国の制式機を生身で撃退した騎士を見てみたいと…」

『剣聖』というのはアカシマの騎士隊長だ。それに指名されては並の人間にはいかなる理由があろうと断る権利はないも同然。

「おそらくな。特に強い騎士とはそういうものだ。それと、日付はちょうど3ヶ月後の12月13日。10日には出発する。もちろんあの2人も同行させるから安心しろ。申し訳ないが俺は教職があるから付いて行けない。あぁそれと、魔動甲冑も持って来いとのことだ」

「謝罪しに行くんですよね。俺が指名されたのはシノビを撃退したからで納得出来ますが、なんで魔動甲冑まで…まさかとは思いますが、手合わせしたいと言うんじゃないでしょうね」

「そのまさかだと思うがな…」

「そんなぁ…」

ガックリと肩を落とすと、リードは腰を上げた。

「そろそろ戻るぞ。主役がいないとなると変が噂が経つからな」

「はぁぁ…分かりました。2人には俺から伝えます」

有我は深いため息をついて教師に続いた。

 

「王国がシノビを捕まえ、例の指揮官にまで辿りついたか…ワシの元へ来るのも時間の問題。ならば無理矢理にでも……」

 

 

 

翌日の朝、騒がしさに目を覚ます。

「なんだあれ…」

窓から覗くと会場の昨晩とは別の庭に、騎士隊が使用するような移動基地型キャリーが止まっている。

急ぎホテルを出て会場に着くと3機の魔動甲冑が並んでいた。

曲線の重装甲に身を包み足元の小人達を見下ろすそれの後ろ、移動基地型キャリーから覚えのある声が降りてきた。

「お騒がせして申し訳ない。ようやっとワシのストンテン隊の機体が到着しました。ご覧下され、アンダードッグ。重魔動甲冑で並ぶ者なしと言われる名工カサジュー博士の手がけた機体。装甲も然ることながらスピードも並の魔動甲冑では追いつけまい」

「確かに素晴らしい機体ですね。とても美しい」

視線を向けるとリーチェが目を輝かせて言っていた。

あれは完全に魔動甲冑オタクの目だ。警戒するとか言っていたのに全く忘れている。

「おお、流石はリーチェ殿。アーテの称号は伊達ではありませぬな」

「よろしければ後で詳しく見させて頂いても?」

「もちろん構いませぬ。リーチェ殿に見てもらえるなどアンダードッグもさぞ嬉しいことでしょう。存分にご覧くだされ」

「ありがとうございます」

(あ…ダメだありゃ…完全に相手の手のひらの上だ…まぁシエルナもいるし大丈夫か…)

そうして不安の残る中、初めてのお披露目が始まった。

 

 

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