真島さんって日本以外のどこかではカリオストロの城並みの大活躍してそうだなーなんて思ってる。そんな第3話です。アニメだと第2話分。
たきなが紫と暴力団の制圧に行った数日後。『喫茶リコリコ』という表向きの仕事に慣れ始めた頃。リコリコに重めの依頼が入った。
「どれくらいの急ぎなの?」
「武装集団に追われているそうだ。現在進行形でな」
「うわー、そりゃ急がないとだね、千束?」
「たきなー、依頼の話聞いてる?」
「えぇ、一通りは」
依頼内容は―――護衛。
依頼人は命を狙われている為、羽田で海外に高飛びするのに、そこまでの道中を守って欲しいとのことだった。
報酬が相場の3倍だったのは喫茶店のマスター兼DAの元教官たるミカは怪しんだが、ミズキはその依頼に肯定的だった。
更に、依頼人とのコネクション的にも無視できないものであり、結局ミカも受諾。ブリーフィングを昨晩に済ませ、本日はその護衛依頼の当日である。
「千束は……まぁ覚えてないだろうし、もっかい説明するか」
「だいじょーぶだって! 紫は心配性だなぁ!」
「じゃあ依頼主との合流場所は?」
「………………………たきなさぁん!」
「…大丈夫なんですかこの人?」
「一番いいのを頼みたいところかな」
「うぉい!私を良くない装備みたいに言うな!!」
「?」
口ではこう言っているが、紫は千束以上に良いリコリスなど今までに見たことがない。
だから、今回の護衛任務も、なかなかにヘビーな依頼とはいえ、なんだかんだ上手くいくだろうと思っていた。
「ところでさ。そのハッカーってどんな見た目なんだろうね。眼鏡をかけたちっこい子供だったりして。カタカタ、カターン!って」
「千束…映画の見すぎだよ。女の子かもしれないでしょ、『ウォールナット』」
「そういう紫こそ、美少女キャライメージしてないかい?」
「そ。………ソンナコトナイヨー」
「目が泳いでるぞ~アニオタめ」
「…電車、乗り遅れますよ」
―――この、『トップハッカー・ウォールナットの護衛任務』も。
❀❀❀❀❀
電車での移動で千束が駅弁を買ってたきなに煮卵を押し付けるといった彼女らしい行動こそあったものの、予定通りに待ち合わせ予定の駐車場に辿り着くことができたリコリス三人衆。
セカンド一人を従えた、トップクラスのファーストリコリス。片や旧電波塔を単独で守り切ったという『電波塔の英雄』。片や過去の任務記録から今もなお身内にすら恐れられている『
「うぉぉぉぉぉぉ!!! スーパーカーじゃん! すっげーすっげー!!」
「………ふぉぉぉ………!!!!!」
―――駐車場に止められている、鮮烈に赤いスーパーカーに目を奪われていた。
千束は目を輝かせ、ぴょんぴょん飛び上がる。オマケにたきなが予定していた運転手を代わりたいなどと言い出した。
紫の方は、千束のように多くを語る事はしなかったものの、ぽかんとあいた口から感嘆の息が漏れ、千束と同レベルに目を輝かせている時点で、琴線に触れているのは明白だ。
たきなは思った………男子小学生かお前ら。
だが一応、二人とも見た目はJKなので、そう口に出すのはなんとか
そう考えていた矢先、突然駐車場の道の陰から、白の軽ワゴンが飛び出してきた。駐車場外の柵を飛び越し、縁石に乗り上げんばかりの勢いで道路に着地する。
そして、動きを止めたワゴンの窓が開く。そこから見えてきたのは、助手席に乗っかるスーツケース…そして、頬が膨らんだ動物の
「“ウォール”」
「“ナット”」
「早く乗れ、追手が来る」
「えっ、なにそれ合言葉? カッコ悪………てか、スーパーカーは!?」
千束が戸惑っている中、着ぐるみに促されて車内に乗り込むリコリスたち。予め決めていた合言葉からスタイリッシュに車を運転した着ぐるみが護衛対象だと理解はしていたが、最後までスーパーカーを運転できない事に残念がる千束である。
「あーあ、スーパーカー…」
「仕方ないよ千束、仕方、ないんだ………」
「二人ともあの車の何が良かったんですか…」
「予定と違う形になって済まない、ウォールナットだ」
「はぁーい、千束でーす。こっちは紫とたきな」
「!? ……3人いたのか…一体どのタイミングで乗り込んできた!?」
「おい何つったこのウサギ、私は最初からいたわ!」
「紫、失礼だよ!あとあれは犬だから」
「クマでは?」
「リスだ」
紫がウォールナットに存在を認識されてなかった事に気付いて青筋を立て、千束にストップをかけられる。
たきなが来る前から決まっていたお決まりのパターンだ。紫は、初対面の人間には大体気付かれない。そうして遅れて気づいた人間の心無い言葉(紫視点)にキレることはままあるのだ。
たきなは、紫さんって思ったよりも短気なのではと考える。この前も、バックアップに来たサードリコリス相手にキレてたような。
だが、今は護衛に集中しようと意識を切り替えた。
「てゆーか、どうしてハッカーなのに着ぐるみを? てっきりこう…」
「底意地の悪い眼鏡の小僧だとでも?だとしたら映画の見過ぎだよ」
「ぐ…」
「千束だけだよ、そういうの。私は私達くらいの女の子かと予想つけてましたけど」
「そこの君はアニメの見過ぎだな」
「う…」
「女子高生の暗殺者の方が異常だ」というリスの着ぐるみに、「着ぐるみよりは合理的です」とたきな。
現代日本の都会において、最も警戒されない姿である女子高生。普通に暮らしている人々からすれば、どう考えればJKが銃をぶっ放すなどという発想が出てくるだろうか。そういう意味では、テロリストの油断を最も誘いやすい姿なのである。
まぁ、ウォールナットの着ぐるみもまた、「顔を出さないハッカーが生き残るため」というある意味合理的な思考のもと成り立っているのだが。
だが―――着ぐるみとJK3人の奇妙なドライブは、順風満帆では終わらない。
本来なら高速道路に乗るはずの道を、乗らずに通り過ぎてしまったのだ。違和感を覚えたリコリス3人が運転席を見ると、ウォールナットが手放しているのに勝手に動くハンドルが見えた。
「乗っ取られたな。ロボ太め、腕上げやがって」
「えー!? なんとかならないんですか!?」
「システムを奪い返すのはできるが、ルーターが生きてちゃまた乗っ取られるだけだ」
「ルーターの場所は!?」
「知らないよ。僕の車じゃあない」
「…たきな、あれ」
千束が視線でたきなに示す。
目線だけ振り返った先には、小型のドローンが、ワゴン車にぴったりついてきていた。ただのオモチャでないことは明らかである。
「千束、こっちにも」
「予備までついてきてんのか」
紫もまた、ワゴン車の左側にぴったりついてきている小型ドローンを見つけていた。ルーターの予備なのか、それともまた違う役割のものなのか。
「そういう事なら、僕はこいつからシステムを取り戻す。それと同時にドローンを何とかしてくれ。2機同時にだ」
「紫、たきな、頼んでいい? 私どっちにも当てる自信ない」
「わかりました」
「任せて」
ウォールナットのカウントダウンとともに、たきなは後ろのドローンに、紫は隣についてたドローンに、銃弾を当てて撃墜した。
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ドローンからのハッキングからコントロールを取り戻しはしたものの、すんでのところで車は海に落ちてしまい、徒歩で羽田空港に向かわざるを得なくなった千束達は、人気のない建物を通ろうとしたものの、追手の襲撃に遭ってしまう。
しかしそこは最強のリコリスとエリートのセカンド。スーツケースを盾にしたものの、怪我無く追い払うことに成功していた。
「千束、私ちょっと露払いに行ってくる」
「紫さん!? それは危険では…」
「いや、そうした方が良いんだよ」
紫が別働して敵を引きつける役を請け負うと申し出た。たきなは危険ではないかと思ったが、千束には紫を知っているからこその考えがある。
「紫はね。大抵の相手に気付かれない。そうなると、ウォールナットがダイレクトに狙われちゃうんだよ。そうなるよりは、直接の護衛は私とたきながやって、紫にフォローしてもらった方が良いんだ」
「そういうこと。こんな役割しか出来なくて泣きそうだけどね。しょうがないの」
「…わかりました」
「命大事にねー!」
「了解」
その返事を最後に、紫は別のルートを走り始める。
不気味なほどに音を一切立てずに走り抜けて、見つけた武装集団は、未だに千束達を注視しながら隙を伺っており、紫には一切気付いていない。
紫はM19を構え、男たちの一人の後頭部に向かって発砲。
「ぎゃあっ!!?」
「「「!!!?」」」
男の後頭部で、真っ赤なゴムが霧のように咲いた。
まともに弾丸を食らったそいつは、それで意識を刈り取られたらしく、膝をついて崩れ落ちる。
「まさか!」
「後ろに―――うっ!」
それでようやく後ろを取られたことに気付くが……もう遅い。
紫はもう既に2発、3発と放っている。それらは音速を超えた勢いで男たちの胴体や腕に着弾した。
錦木千束と八仙紫は赤いゴムの非殺傷弾を使う。紫は時によりけりで弾を使い分けるが………とにかく、今押さえるべきなのは、同じ非殺傷弾でも、紫の銃から放たれるそれは、弾頭こそ同じであるものの、マグナム弾であるため、千束のそれよりも攻撃力が高いのである。
そのため―――紫の弾丸を食らった男たちは、腕の痺れと激痛に耐え切れずライフルを取り落としたり、撃たれた箇所を抑えて蹲って戦闘不能になっていく。コレが実弾だったら致命傷だっただろう。
「この―――ギャッ!?」
「余所見厳禁♪」
「野郎―――!!」
最後の一人は、紫に気を取られて千束への警戒を怠った。
その結果、千束のゴム弾をその身に何発も受けたのだが……根性があるというべきか、一矢報いると言わんばかりに千束にライフルを乱射した。
「な―――」
しかし、当たらない。身体を最低限に動かし、しかも男に向かって行っているのに、目にも止まらないライフルの弾が1発も千束には掠らないのだ。
やがてダメ押しの数発を接射レベルの距離で受けた男は、そのまま沈黙した。
「さて、治療タイムと洒落込みますか」
「紫ったら容赦なさすぎじゃないの!?」
「怒らないの千束。人間ってのは
「死ぬっつってんだろ! あぁもう、この人の傷青タンになってるじゃん~」
「それくらいで丁度良くない?」
「先を急ぎますよ!」
軽口を叩きあいながら敵の心配をする千束と紫に、たきなは苛立ちながら言う。
紫は「すぐ行く」と答えたが、千束は「先に行ってて」と言うのだ。
千束が敵と何か話している最中に、紫は別の敵に最低限――本当に最低限だ――の応急処置を済ませる。
「あいつといい、お前といい……なんで助けるんだ?」
「
「やく、そく……?」
「千束とは約束してるんだよ。私はそれを守っているにすぎない」
「いったい、どういう―――」
「はい終わり。あとは自力で助かってね〜」
敵に対して素っ気なく立ち去ろうとする紫。
非殺傷弾とはいえマグナムを撃ち込んでおいて自力で助かれとは無茶な話である。
さて、早くたきなと合流しなくっちゃ、と思った矢先。
「たきな!外に出ちゃ駄目!!!」
千束の鋭い声が響いた。
紫はそれに反応して、弾かれたようにたきなの向かった方向へ走り抜けていく。
「…………」
「任務失敗……護衛対象が死亡しました」
「間に合わなかったか…」
そこで紫が目にしたのは、蜂の巣にされて血溜まりに沈むウォールナットと、ミカに電話しているであろうたきなだった。
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結論から言えば、「ウォールナット護衛任務」は、
何を馬鹿な、着ぐるみのウォールナットは死んだではないか、と思うだろう。だが、それこそが
何があったのかと言えば、死んだように沈んだ顔で救急車に揺られていた三人の目の前の痛々しい着ぐるみが「そろそろ頃合いだろ」と言った言葉を皮切りに動き出し、頭を取ったと思ったら、そこからミズキが出てきたのだ。
――追手から逃げ切るには、死んだと思わせるのが最善だ。
そう言ったウォールナットは、スーツケースから美少女の姿で出てきたのである。その事実は、今までガードしてきた着ぐるみが死ぬ為のスケープゴートだったことを意味する。
ガードを確実なものにするためにも、千束達リコリス三人娘には真実を黙っていた。すべて、ミカの作戦だったのだ。
「いやー、さっすが先生。今回ばっかりは一杯食わされたって感じです」
「いつも私達の誰かに変装してるからな、紫は………たまには悪戯される気分も味わってみることだ」
「…にしてはちょっと刺激が強すぎじゃありませんかね」
カウンターに座る紫がミカにそう答える。
その視線の先では、ミズキと先程まで拗ねていた千束が先の依頼で得た写真の取り合いをおっぱじめている。
スマホを奪取すれば、千束の興味はウォールナット………改めクルミに向くだろう。
紫は、その間にたきなに話しかけることにした。
「…やっぱり不満だった? 今回の任務」
「紫さん………えぇ、私達三人がガードしていればよかっただけのことなんです。
…命大事にって無理があると思います。どうして二人して敵の心配なんてっ」
「ストップ。それを言うのはもうなしだよ。騙されたとはいえ依頼は達成できたから結果オーライってことで」
「どうしてそんなに簡単に納得できるんですか!」
「うーん。ずっとそうして生きてきたから、かな」
頭に血が上って、声を張り上げた問いに、あまりにあっさりと答えた紫に、たきなははっと、なにか触れてはいけないものに触れてしまったかのような顔になる。
「何をやっても気付かれないし、いくら頑張っても認めてもらえなかった時期が私にもあってね。
ほら私、初対面の人に気付いてもらえないじゃん? それでひどい扱いを受けて、でも仕方ないって受け入れようとして。でも心の奥で納得できなくてさ………大暴れした時期もあったんだ」
「!」
たきなは面食らった。千束とは違う意味で分かりづらい先輩が、そんな過去を持っていたとは。
一瞬だけ、自分と境遇と似ているなんて思ったたきな。ひょっとしたら、この人もDAからここに左遷されてきたのではないか。
そう考えてしまって、ついうっかり、こんな質問が口から出たのだ。
「その時の紫さんは…………DAに戻りたいと思わなかったんですか?」
「たきなさんは私にどう答えて欲しいの?」
「っ……」
紫は、たきながやけにDAに拘っていることをなんとなく察していた。
合理的な判断ができる――できすぎて困った一面が多いが――が、その実自分の意志をしっかり持っていることも。
だからこそ……紫は、たきなの問いに答えなかった。この手の問題は、自分じゃどうしようもないと分かっているから。
「そもそも…私の場合は特殊すぎるからね……全然参考にならないよ?」
「どういうことですか?」
「たきなさんは私の“通り名”って知ってる?」
「? いえ」
「
「!!? ま、まさか貴方が…!?」
たきなが思わず身構える。
たきなは、リコリコに来るまでに八仙紫というファーストリコリスに覚えはなかった。
だが、
何故なら、
「紫さんが…が
「そうだよ。でも今は、ただのファーストで通してるからね。改めてよろしくね」
「そうそう! 大丈夫今はもう危険なリコリスじゃないんだからさ!」
―――
たきなは、紫=
八仙紫
……アニオタ。DAにいた頃はやんちゃしてた。ヤンチャしすぎてリコリコに飛ばされるくらいには派手にやった。ホロゴーストさんあんた何したんだよ…
錦木千束
……映画オタク。紫と戦う事に慣れている。
井ノ上たきな
……先輩にシンパシーを感じたと思ったら特大級の爆弾が出てきた。
クルミ/ウォールナット
……リコリスと千束、そして紫に興味津々。この後「紫相手の自動ドアの認識の悪さ」について耳にし「どーせセンサーに移りにくい場所でやったんだろ」と言って紫を泣かせる。