MG3が最強だったあの時代を。
ぼくはおぼえていません
くあんたむぶらっくほーるさんだるふぉんさいきょー
また奴らがやってくる・・・
我々は奴らの僕だ・・・
脳内に響く声。
幾度となく聞いてきた声。
人間がゾンビに感染してその数を増やすとき、この声が脳内に響き渡るのだ。
「あー、こりゃ篭り場が崩された感じか」
思わず独り言が漏れる。
先ほどまで「手榴弾投擲!」だの「敵を倒した!」だの「了解!」だの仲間から絶え間なく無線があった
が、いつの間にかそれも消えている。
いよいよもって人間は俺一人になったというわけか。
まあ珍しくもない。
「最終ラウンド。ここで耐えしのぐ」
サブアームのマガジンを交換した後、赤と青の双剣に持ち換え精神を落ち着かせる。
今俺は「イタリア」というマップの「市場」にいる。
生鮮食品が並ぶ露店の屋根の上だ。
布一枚でできているにも関わらず、変形や皺ひとつなく、足場としてしっかり踏みしめることのできる屋根。
軽く足踏みすると、ブーツのカツカツという音が響く。
俺の元居た世界では考えられない現象。
異世界であることの証明。
「異世界、か」
この世界に飛ばされてから一体どのくらい経っただろうか。
・・・・・
人間対ゾンビ、人間が一定時間経過まで生き延びるか、ゾンビが人間全員を感染させるかのデスゲーム。
この世界に飛ばされた直後、ルールやゲームの仕様が、強迫観念と共に脳の奥に焼き付けられた。
『このゲームには全力で臨まなくてはならない』
1ゲーム13ラウンド、1ラウンド4分間、収容人数32。
ゲーム開始時、32名は数種類の内1つのマップに飛ばされる。
夜に浮かぶ箱庭に。
ラウンド開始と共に10カウント、直後に人間32名の中から4名が選出されゾンビ化、ゲームスタートとなる。
目の前にいた奴がいきなり襲い掛かってくる、なんてことも多々ある。
ゾンビは人間を追いかけ攻撃し、ウイルスに感染させることでその数を増やしていく。
俺も今までに数えきれないほどゾンビ化してきた。
ゾンビになることにそこまで不快感も抵抗も感じない。
なにせ意識がカチリと切り替わるのだ。
人間でいるときは「生き延びなければならない」という意識。
ゾンビになったときは「人間どもを全員感染させてやる」という意識。
人間とゾンビで意識が行ったり来たりしているが、そんなものを気にしたことは殆どない。
ラウンドが終了すると同時に感染はすべてリセットされ、全員が人間に戻る。
そしてまた抽選を行う。
その繰り返し。
ゾンビは人間よりも足が速くジャンプ力もある。
そこで人間側には武器が支給される。
武器を使ってゾンビを足止め、時には殺害する。
生き延びるために足掻くのだ。
支給される武器はラウンドごとにすべてランダムで、メインアームにショットガン、サブアームにピストル、近接武器にナイフ、投擲武器に手榴弾、といった具合。
ちなみに、武器がマップに落ちていることがあるが、それを拾うためには今持っている武器を捨てる必要がある。
つまり基本的にピストルは一種類しか持てないし、ショットガンとサブマシンガンを両方所持したりとかもできない。
ちなみにゾンビは武器を所持できない。
頼れるのは己の膂力、あと爪の鋭さ。
そして武器のほとんどは、俺の元居た世界に存在していた重火器であった。
この世界のゾンビは強力で、どんな武器でもある程度攻撃を浴びせ続けなければ殺害することはできない。
何よりもゾンビは死んでも復活する。
ややゾンビが有利に思えるルール。
だった。
一定回数のゲームが終了するごとに、新たな要素が追加されていった。
所謂アプデというやつである。
この世の物とは思えないほど多種多様で強力な武器。
ゾンビの種類、特殊能力。
俺がこの世界に飛ばされた直後は、ゾンビもノーマルの一種類のみで、「暴走」という足が速くなる特殊能力のみだった。
それから、動きの軽快なライトゾンビや、人間足止め用の罠を設置できるヘビーゾンビなどが追加されていった。
さらに途中からゾンビは手榴弾を使ってくるようになった。
考えてみれば、この世界は人間とゾンビの強さのバランスを保とうと必死だったのかもしれない。
それほどまでに人間に支給される武器は強力すぎたのだ。
ゾンビに対して強力な殺傷力を発揮する「SKULL」シリーズ。
ゾンビ特攻に加え、広範囲の爆破も行える「BALROG」シリーズ。
極めつけはゾンビを一瞬で屠ることのできる超越武器と呼ばれるもの。
超越武器が登場してから、明らかに人間とゾンビの力関係がひっくり返った。
人間大人数で一か所に篭りながらお互いの火力と隙を補い、ゾンビに対抗するスタイルから一転、人間一人ひとりがゾンビを狩りに行くようになったのだ。
逃げるゾンビと、それを追いかける人間。
飛び交うレーザー光線にミサイル、天まで届く炎の龍、ブラックホール、ジェットパックで空を飛ぶ人間、月の重力、ファンネル、顕現する天使。
初期のころとは比べものにならないほどのインフレ。
バランス崩壊。
ゲームとしてほとんど成り立たなくなっているといっても過言ではない。
もうこの世界は終わりだ。
最近の環境で、自身が最初のゾンビに選出される度にそう思うようになった。
・・・・・
現在の環境は確かに人間が圧倒的に強いが、今回のラウンドのようにゾンビ側が数を増やすこともある。
「なんか、やけに思考がとっちらかる」
刀を振り回し、ゾンビどもの血飛沫を浴びながらつぶやく。
何故今このゲームのルールと歴史について考えているのかわからない。
だがやることは変わらない。
思考が明後日の方向に行ってしまっても体は覚えている。
武器の使い方、ゾンビ相手の立ち回りを。
露店の屋根の上、ゾンビが俺を取り囲んでいる。
ゾンビの鋭い爪が一斉に俺に襲い掛かる。
「起動」
俺の周りを無数の刃が舞う。
Dual Phantom Slayerの特殊能力。
超越武器の一種であるこれは、メインでもサブでもなく、近接に分類される。
特筆すべきは、全方位長射程かつ圧倒的な密度の斬撃を行う特殊能力。
剣舞、いや刃の嵐か。
特殊能力を発動している最中、俺はただ刀を鞘からゆっくり引っこ抜いているだけ。
にも拘わらず周りを飛び交う刃の嵐。
嵐は壁となりゾンビども近づけさせず、さらにその肉体に襲い掛かり、大量の血飛沫を上げる。
絶命し次々に倒れていくゾンビ。
嵐が収まると、その場に立っているのは人間である俺一人。
同時にラウンド開始から4分が経過。
脳内に響き渡るアナウンス。
人間勝利。
「やっぱり武器が強すぎる」
これといった感動もない。
勝って当然なのだから。
ゲームが終了したので、いつもならまた次のゲームへの参加となる。
「マップはミリシャがいいなぁ」
呟きと共に視界が暗転し浮遊感に襲われる。
今までにない感覚。
「あれ、なんかこれ、変な感じ・・・」
そこで意識が途切れた。
この男が次のゲームに参加することはなった。
たぶん書き直すと思います。
最初は鬼滅の世界に飛ぼうと思います。
続きはいつになるかわからないと思います。