とある水産業従事者の失敗談。

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ある男の実話です。自分語り酷くなる位追い込まれていたので、人のふり見て我が振りなおせと言う事で、短編としてそのまま載せました。


陸に上がった河童の話

 

俺は元漁師。九州太平洋側の地域出身の40のおっさん。なんで元かって?組合に油を止められたのさ。売り掛け金がかなり溜まってたからって。理由は正当だとしても納得いかねぇ。他の船も売り掛け金相当溜まってる奴いんのに、俺だけ名指しだぜ?いくら俺の漁種が組合で少数派っつってもよ、なんで俺だけ名指しで油止めやがった?漁師にとって油、つまり燃料は血の一滴だぜ?更には漁師ってのは漁種にもよるが結構大きな払いを可能に出来る下地ってのがあるんだぜ?つまりは嫌がらせでやられたってわけ。

 

はじめにいっておくけど、俺に落ち度があるとすれば不漁が続いて油の売り掛け金が溜まった事位、漁があったらしっかり入金はしてたし、組合の連中が水揚げ主の意向を聞かずに油代引いてたんだから全く払って無いなんて言わせねぇ。それに俺は道から外れてたとか前科持ちだったとか言うのもねぇし、人と接する時は失礼の無いようにしていた。

 

払いは……潰れた事で残った借金は一億が近い。丘務めでこれを返して行くと借金完済の時の年齢は88歳……陸に上がった河童の話は聞いていたが、いざ自分がとなるとこんなにも無力なのかと涙も出て来ない。俺は……これからどうしたらいい?

 

 

あれから半年が経過した。地元の網元の船に乗りながら、夜はアルバイトと言う日々を送っている。水に戻った河童と揶揄されているが、定置網はほとんど丘務めと変わらない、海にいる時間より、丘にいる時間の方が長い。残差整理して払う借金は実質4000万まで下がったが、それでも払いきる時には50歳だ、老後の蓄えを貯める余裕もあるか分からない。1日に定置網で10時間、アルバイトで6時間仕事をする、体が非常に疲れる。年齢も30を過ぎれば色々とガタが来るから、帰ったら風呂に入ってとっとと寝るしかない。

 

今、高校か大学に通ってる若いのにひと言言う。海の仕事に手を出すなら、それ相応の覚悟を持ってする事だ。とてもじゃないが、安い資本で、楽に出来る仕事じゃない事を先に言っておく、自然を相手にする、肉体労働だ。死の危険だってザラだし、なによりランニングコストが半端ない。人生終わった河童の戯言だと聞き流すのもいいが、成功談よか失敗談の方がためになるって知ってるよな?だから言う、それ相応の覚悟が無いなら、海の、特に漁師の仕事には手を出すな。

 

じゃあ俺、仕事行ってくるわ。朝5時起き、5時半から定置網、夕方4時前に終わったらすぐ支度してアルバイトって生活だからよ……

 

 

 


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