#深夜の艦これSS60分勝負   作:すねいく

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例え(中略)あの娘のスカートの中

「あちぃ……」

 

 それを言うのは今日何度目になるのか。とりあえず、数えるのが面倒なくらいには言った気がする。言ってどうにかなることではないとわかってはいるが、言わずにはいられない。今日もそんな日であった。

 しかも中途半端に曇っているせいで湿気が酷い。服が肌に引っ付いて気持ち悪いし、風も吹かない。天津風と浜風なんて半ば死んだ目で『いい風ね』『いい風ですね』と自己暗示を掛けていた。

 

「くそ……いっそ出撃した方がマシだったかもな……」

 

 摩耶は休んでいてもいいと言われて、その通りにしたのが裏目だった。じっとしていても汗をかくのなら、動きまわって汗を流すほうが良かった。

 

「あー……」

 

 あたしは仰向けになって自室の天井を眺める。ぼんやりとそれを眺め続け、いっそシミでも数えながら寝てしまうか、そんな考えが頭に浮かんだ時だった。

 

「スカートの中からこんにちは!ゴーヤだぶっ!?」

「何処からこんにちはしてんだよ!? ぶっ殺すぞ!?」

 

 スカートの中から聞こえたふざけた声の主に、あたしは膝を突き刺して後ずさる。

 というかいつの間に人のスカートに顔を突っ込んでいたんだこいつ。というか、いくらあたしがぼんやりしていたからって、まったく気がつかないとは。これだから潜水艦は嫌いなんだ。

 

「ひどいでち……前が見えねえでち……」

 

 58は、膝を叩きこまれた顔を抑えながらさめざめと泣いていた。自業自得以外に言いようがないので、まったく同情はしないが。

 

「お前のせいだろうが。つーか、何の用だよ? あ?」

 

 言外に『つまんないことだったらもう一発な』というニュアンスを漂わせたお陰か、ゴーヤは泣くのをやめて、勢い良く姿勢を正す。あと、顔も直せよ。

 

「摩耶さんが湿気に苦しんでいるようなので、グッドな解決法を教えに来たのでち!」

「グッドな解決法だぁ?」

 

 とりあえず、つまらないことでは無さそうだ。若干警戒しつつ、あたしは先を促す。

 

「考えてみてくだちい! 何故同じ38度なのに、室温では熱く水温ではぬるく感じるのか!」

「あー? 言われるとそうだけど。それがどうしたんだよ」

「同じく部屋の湿度は60%でも不快なのに、湿度100%の水中は不快では無いのか!」

「それは、何か違わねぇか?」

「違わないでち! 絶対に違わないでち! そう、人は地上よりも水中にいるべきなのでち! 地面に魂を囚われた者達は皆水中にいくべきなのでち!」

「お、おう?」

 

 微妙にわからないことをやたらと声高く主張する58。要するに潜水艦を見習えと言いたいのか?

 

「そうでち! だから摩耶さんもこれを着て潜水艦になるでちよ!」

 

 そう言って取り出したものを――どこに仕舞っていた?――バッとあたしに突きつける。潜水艦たちの制服らしい、スクール水着だ。既にあたしの名前まで書いてある。

 

「いや、着ろって言われても」

 

 というか、こいつはわかっているのだろうか。あたしは重巡洋艦だし、改装したって潜水艦になれるわけがない。仮に、これを着ることで潜水艦になれたとしても、ロクに動けないポンコツが一人出来るだけだろう。 

 

「いいのでち。性能は関係ないでち。潜水艦であるということが重要なのでち」

「なんだそりゃ」

 

 潜水艦であることが重要ということは、潜水艦のメリットがあるということか? 潜水艦のメリットと言えば、重巡洋艦や戦艦の攻撃を受けずに済むっていうことだが。しかし、喰らわないとしても相手を倒せなければ意味が無い。性能が低くても問題ない……数合わせでもいいこととはなんだ?

 

「いや、待て」

 

 思い当たることがあった。週初めの任務には、よく潜水艦たちが出撃している。資源が足りなくなってきた時もだ。

 そして攻撃されない、というのは潜水艦自身のメリットだ。だが、潜水艦は使う側にもメリットが有る。それは、燃費が良いということだ。

 それも、順調に資源を入手すれば、消費を上回るほどに。

 

「……なあ、58。オリョール行くのはは大変だよなぁ」

「そ、そうでちね。でも、58は頑張ってるでち!」

「ああ、知ってるよ。でもさ、代わりが欲しくなったりするだろう?」

「そそそそんなことないでちよ?」

 

 目が泳ぎまくり声は震えまくり。これはもう完全にクロだ。

 つまり、こいつは、

 

「人をスケープゴートにするんじゃねえ! 何がグッドな解決法だ! そっちの方がよっぽどキツイだろが!」

「仕方ないのでち! 6人でオリョール行くと誰も休めないのでち! けど、摩耶さんが入って7人になれば一人休めるのでち! 『誰かがオリョールに行く間、ゴーヤは休める』。ゴーヤはそういうことに幸せを感じるんでち!」

「ただの駄目人間じゃねえか! 開き直んな!」

「だったら勝負でち! 地上でも重巡は潜水艦に勝てないことを教えてやるでちよ!」

「上等だ! かかってこいや!」

「従順洋艦にしてやるでち! エロ同人みたいに!」

 

 

 

 

 

「……姉さん、この部屋すごく蒸してるんですが。何をしていたのです? それに、なんで出撃していた私よりもぐったりしているんです……?」

「……戦いは虚しい。それ以上は、聞くな」




うちの58はホワイトですよ?
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