「個性」
それは、ある時中国で光り輝く生まれた赤ん坊が生まれた時から起こった。不可思議な力、それは次第に社会に浸透し今や世界の総人口8割が
「個性」を持つようになった。しかし、それは逆に「個性」を持たない者が蔑まれるという事であった。「個性」というものはステータスである。
生まれついての能力。そして覆せないもの。故に強力な者が優遇されるという事はさほどあり得ない事でもない。
「あー、確か爆豪は雄英校志望だったな。」
「はぁ!?マジかよ国立の偏差値79だぞ!」
「倍率もやべーんだろ!?」
無論、恵まれたものはそれ故の恩恵を受ける
「ハッ!あったりめえだろ!俺はテメェらみてえな没個性共とは訳が違うんだっての!」
「「「そりゃねーだろカツキ!」」」
この発言は、いまこのクラスにいる生徒たちを逆上させる事は間違いないだろう。それが、恩恵を受けたものでなければ…
しかし軽口ですましている。何故か?彼らは恐れているのだ。爆豪には逆らっていけないと
「モブがうっせーぞ!」
しかし、ここにも恩恵を受けた者が一人
ピクッ
(びっくりした、呼ばれたかと思った…。)
影山茂夫 通称モブ
彼の個性は「超能力」
サイコキネシス、テレポート、テレキネシス、パイロキネシスなど超能力に由来するものならなんでも使うことができる非常に強力な「個性」。
通常であれば、ここまで複数の能力を扱えること自体が異質なのだ。
だが、強大すぎる力は使い方を誤れば己の身を滅ぼす。その「個性」を扱うのは彼には荷が重いのだ。
「ん?影山、お前ヒーロー科志望じゃなくていいのか?」
「え?あっ、はい。」
「そういえば、あいつの個性って見たことねーよな?」
「使ってるところも見たことないし…。」
「ハッ!どうせ、大した使えねえ没個性なんだろうがよ!」
(没個性…か。そういえばそうなのかも…人を助けることもできなければ、人を守ることもできない)
こんな力、きっと使わない方がいいに決まってる
「ん?そういえば、緑谷もたしか雄英志望だったな。」
「「「「………は?」」」」
「プッ、おいおい緑谷!お前無個性だろ?」
「そうだぜ、個性もないのにどうやって受けるってんだよ!」
「…そ、れは」
「コラァデクゥ!」
「ひっ…か、かっちゃん。」
「おいおいおいおい、なーんで無個性のテメェが俺と同じ土俵に立ってんだぁ?」
「べ、別に張り合うとかじゃなくて…小さい頃の、夢だったから。」
「く、クハハハハ!バァーカいつまで夢見てんだよ!テメェに何がやれるってんだよ!」
「う…。」
はぁ、当番の仕事してたから遅くなっちゃった
それにしても…緑谷くん大丈夫かな?
「あれ、緑谷…くん?」
「あ、君は影山くん。」
「あと、水槽で何かしてた?」
「えっと、はは。かっちゃん達にちょっとね…。」
緑谷が持っていたのはボロボロになっていたノートだった
「そっか、その…ちょっとノート貸りていい?」
「えっ、でも煤だらけだし濡れてるよ?」
「ううん、大丈夫。」
「わ、わかったよ。」
(…これぐらいなら。)
「え!?ノ、ノートが直って…。」
「はい、多分もう前と一緒の状態になってると思う。」
「ほ、ほんとだ。すごい、すごいよ影山くん!君の個性ってなんなの!?物を直すことができるの!?」
「…ううん、そんな大層なものじゃないよ。」
「大層なものだよ!すごいなぁ、直したどころかかっちゃんに燃やされる前の状態と殆ど一緒だよ!」
「……ねえ、緑谷くん。一つ聞いていいかな。」
「えっ、うん。」
「緑谷くんは…なんでヒーローを目指すの?」
「なんでって…。」
「君は…無個性なんでしょ?言って悪いけど、雄英高校は高校の中でも倍率が凄いし、難しいと思う。」
「…影山くん、僕は…ヒーローになりたいんだ。」
「でもそれは…。」
「うん、難しいことだってわかってる。でも僕にとってヒーローになるってことは夢なんだ。」
「夢…。」
「だから…個性がない『そんな事』で夢を諦めたくないんだ。」
「…!そっか、君は凄いな。」
「そんなんじゃないよ、ただ諦めが悪いだけ…。それじゃ、僕は行くよ。」
「うん、じゃあ。」
『そんな事』…か
…僕の、僕の『個性』も誰かを助けることができたら…
いや、やめよう
もう決めたことだ
どうせ無理に決まってる
僕はヒーローにはなれない
僕はただの人なんだから…