「あれ、工事中だ。」
いつも使っている道が封鎖されていた
ガガガと機械音が響くがそこには重機の類は一切なく、個性を使って人が土を削り地面を掘っていた。
「別の道通らないと…。」
緑谷が移動したのは薄暗い裏路地だった
人気もなく道も人が2、3人横になれば通れなくなってしまう狭い道だ
「はあ、それにしてもどうしよう。明日になればきっとまたかっちゃんが絡んでくるよなぁ。」
ため息をつきながら道を進む
元より幼馴染であり粗暴の悪さは重々承知の上であったが、まさか流石にあそこまで言われるとは思ってなかった
しかも、年を重ねるにつれそれは拍車をかけるように荒々しくなる
「大体、僕が本当に飛び降りたら自殺示唆で受験どころじゃないんだぞ!」
大体、受けるのは勝手じゃないか!
後ろからなにかと言われる筋合いはない筈だ!
「って痛て!」
前から衝撃が来る
まるで硬い岩にぶつかったようだ
「チッ、あぁ?」
顔を上げるとそこには、顔に傷がついた大柄な巨漢がいた
「おいおい、テメェなんの因縁があってぶつかってきたんだァ?」
首根っこを掴まれ足が地面から浮き上がる。その顔はいかにも怒りの表情を露わにし今にでも殴りかかってきそうな雰囲気だ
「ご、ごめんなさっ、わざとじゃ、なくて。」
必死に弁明しようとするが首根っこをを掴まれてるせいで苦しい
「あぁ!?こんな狭い道で偶然ぶつかるわきゃねえだろ!」
男が言うのも最もだった
実際に前を見てなかった緑谷にも非がある
「決ーめた、こっちは今イライラしてんだ。ストレス解消に付き合って貰うぜ!」
その瞬間右頬に強い衝撃が来る
「ガッ、なっ…。」
殴られた?
顔がジンジンする
「おいおい、1発ではへばってんじゃ、ねえ!」
正面から拳が突き刺さる
「ぐぁ!」
鼻血が出る
成人男性、それも鍛え上げられた身体から放たれる拳は個性も持たない中学生の少年を恐れさせるのには十分だった
(に、逃げなきゃ…。)
生存本能
いま、ここで逃げなければ殺されてしまう
「くっ、あ。」
しかし足に力が入らない。立とうとしても足が地面を擦るだけ。まるで生まれたての子鹿のようだった
「アーハッハッハ!まるで子鹿みてぇじゃねえか!」
情けない、じわじわと涙が溢れてくる
反抗することもできずに一方的に蹂躙されるだけなんて…
「いいかァ、クソガキ。一つアドバイスしてやる。場を制するのは一番強ええ奴だ。若さと自由を履き替えるバカ共もいるが結局は力が無けりゃあなにも出来ねえんだよ。それがないんだってんなら精々人様に迷惑かけず
歩道の隅っこ歩いてんだな!」
力
…僕にも力があれば…!
「ま、生きてたらだがよ。あばよクソガキ!」
ああ
もう駄目だ
結局なにも出来なかったな
生まれ変われるなら、僕にも強い「個性」があったら
ごめんね母さん
おいお前、何をやってる
底冷えるような声が響く
「!?な、なんだ。か、身体が動かねえ。」
巨漢の男はまるで磔にされたかのように身体が固定されていた
奥を見るとそこには
「かっ、影山くん!」
そこにいたのは影山茂夫その人だった