第一話 ようこそ実力至上主義の学校へ
《1-0:とある男性の独白》
人は平等だろうか?
これは多くの人が深く考えさせられること、らしい。
しかしながら、私は大して深く考えたことはない……何故なら考えるまでもなく答えを導けるからだ。
人は確かに平等である……「神に選ばれた者たちの
だがしかし。
ごく僅かな人間は一般的な人間の能力を圧倒する能力を持っている。
まるで……神から人の上に立つことを望まれている、そんな風に思ってしまうほどの。
しかし、そんな選ばれた人間も教育の質次第ではその輝きを失ってしまうのだ。
なんて嘆かわしい、なんてもったいない。
平民に粗末な教育をするリソース全てを彼ら彼女らにつぎ込めばそれを防げるというのに。
そんな考えを抱いたからこそ、私たちはまず"彼女"に世界一の教育を施した。
将来、愚かな人類を彼女が正しき道へと導いていけるように。
《1-1:はじめての登校》
私がバスに乗ると、中には私と同じ
ある人は本を読んでおり、ある人は外を見ている。
少なくとも、ワイワイと話しているような感じではない。
それもそうだ。
私たちは新入生なのだから、お互いを知っているわけもない。
そんなことを考えながら、私は空いている席を探す。
……あった。
奥の方の2人席、その通路側の方が空いていたのでそこに座る。
隣には、容姿端麗でスタイルのよい少女が座っていた。
彼女は外を眺めて、何かを考えている感じであった。
瞳が直接見えないから、彼女がどういった人かは分からない。
まぁ、彼女と同じクラスになるとも限らないからいいだろう。
隣人から目を離し、鞄から書類を取り出す。
今回の
3年間、高度育成高等学校とやらに通ってAクラスになり、お父様の知り合いとやらが創り出した最高傑作を打ち負かさなければならないらしい。
もちろん、普通の生徒に私の正体を勘付かれてはダメ。
本当に面倒……。
でも、ちょっと楽しみかも。
生まれてはじめて、学校に行くから。
知識としては知ってるけど、やっぱ実際に行くのとは違うはず。
……にしてもやることがないわね。
趣味の読書は本持ってないから無理。
そして、昨日夜遅くまで起きてたから眠いっちゃ眠い。
……大人しく寝るか。
私はゆっくりと瞼を閉じた。
十数秒後、私の意識は暗闇へと落ちていった。
バスによって発生する身体の揺れがなくなった感覚を覚えて目を開く。
目的地に着いたか。
にしても、視界がちょっと斜めっているような。
ありゃ? どういう……。
あぁ、誰かの肩に私の頭が乗っかっているのか。
「あ、起きた?」
頭の上から女性の声が聞こえた。
頭を本来の位置に戻して、横を見る。
まぁ、当たり前だが私の隣に座っていた少女の姿があった。
にしてもこの瞳……強く、善良な生徒なんだろう彼女は。
「ご迷惑をかけて申し訳ありません、昨日あまり寝れなかったもので……」
人間観察はさておき、私は謝罪をする。
「別に大丈夫だよー。同性どうしだしね」
……確かに、私が男だったら彼女も私もさぞ怖い思いをしたことだろう。
人生ではじめて女で良かったと思った瞬間である。
「ところで、もうこれ学校に着いた感じですかね?」
「そうだよ。私たちも早く降りないとね」
「じゃあ、行きましょうか」
周りを見ると、確かにほとんどの人は既に降りている。
私たちもさっさとバスから降りる。
……これが高度育成高等学校。
中々大きい施設だ。
一体、いくらの予算を費やしたのだろうか?
ま、教育機関に金をかけてるのはいいことだ。
「おっきいね……ここが私の過ごす学校かぁ」
と、隣に立っている少女が呟く。
恐らく私に向けて言ったのではなく、思わず漏れた独り言だろう。
「頑張らないと、ですね」
「うん。あ、そう言えば自己紹介まだだったね。私は一之瀬帆波、よろしくね!」
一之瀬帆波、か。
いい響きね。
私も自分の名前を言わないと……どっちの名前を使おうか?
ま、悩むまでもないか。
「私は
自己紹介を終えた私と一之瀬さんは、大理石を加工した大きな門をくぐり抜けて学校の敷地内に足を踏み入れた。
……ここにいる少年少女たちがどの程度の実力か、見せてもらうとしましょう。
《1-2 Bクラスへようこそ》
私は自分のクラスであるBクラスの教室へと入る。
そして、そんな私に一之瀬さんも続く。
あ、一之瀬さんもBクラスか。
「霧ヶ峰さんもBクラスだったんだね!」
と言いながら、聖母の如き清い笑みを浮かべている一之瀬さん。
なるほど、私はこの瞬間初めて"尊い"という言葉を理解した気がする
「大天使ホナミエル……」
「にゃ?」
やっば、訳わからんことを口走ってしまった。
あまりにも清すぎて……。
ブンブンと頭を横に勢いよく降って雑念を頭の外へと追いやる。
……知ってる人が同じクラスに居るのは嬉しいね。
どうやら話し相手0人の悲劇は回避できたようだ。
「知っている人が同じクラスに居て良かったです。お友達が出来るか不安だったので」
「うん、実は私も不安だったんだよね」
いや、一之瀬は大丈夫でしょ。
めちゃくちゃ明るい子だし、社交性高そうだし。
「いやいや、一之瀬さんは心配しなくても大丈夫ですよ。絶対に友達がいっぱい出来るタイプですから」
「にゃははは、それは買い被りすぎだよ」
「そんなことないと思うんですけど……まぁいいや。そういえば、一之瀬さんの席は何処ですか?」
「私はちょうど教壇の前の席だね」
……ハズレ席ってやつかな?
教師にずっと見られてるの辛そう。
「あー、私はあそこの席なんでちょっと遠いですね」
と言いながら、私は一番後ろの列の窓側の席を指差す。
「まぁ、仕方ないよ。それにクラスは同じだから、休み時間とかならいつでも会えるし」
「それもそうですね」
そう私が答えた時、女性の先生が教室に入って来た。
結構な美人だ。
「はーい、みんな席についてねー」
ちょっと緩い口調でその先生は生徒にそう呼びかける。
「じゃあ、また後でね」
バイバイと手を振りながら、一之瀬さんは自分の席の方へと行く。
私も自分の席に座るとしよう。
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