理由はまぁ……これからが本番だからですね、ここまでは手堅く行った方が良きかなと。
「……まずは私をよく知らない方々のために自己紹介を。私は霧ヶ峰ひびきと申します。趣味は読書とかですね。よく聞かれるので、先に行っておくと私は日本の方に養子として引き取らせたドイツ系外国人です。これからよろしくお願いします」
そう言って、軽く頭を下げる。
「やっぱり、霧ヶ峰さんは海外の人だったんだ。なんか、日本人ぽくないなぁとは思ってたんだよねー」
と、一之瀬さんが言う。
まぁ、明らかに欧州系の顔してるからね、私。
そして、ハーフではない。
お父様はそもそも結婚してないからね。
「言う機会がなくて……もうちょっと早めに言うべきでしたよね」
一之瀬さんの方を向いてそう言う。
それからまた、生徒たちの方に向き直り、口を開く。
「さて、私が何者かは最低限お分かりいただけたはずです。それでは本題に移りましょう」
ここで一旦区切り、息を大きく吸い込む。
そして、先ほどよりも大きな声で再び話し始める。
バッグに入っていた紙の束の一つを手に取り、掲げながら。
「私がこのクラスのリーダーになれば、こちらの中間テスト対策の問題集を配布します! ちなみに、こちらの問題集は自作ではありますが、中間テスト対策として効果的であることは星之宮先生が確認済みです!」
「確かに、私は霧ヶ峰さんの作った問題集を確認しました。そして、この問題集をキチンとやり込めば、中間テスト対策にもなるでしょう」
先生のお墨付き、というのが真実であると分かった瞬間、今まで一之瀬さんをリーダーに推していたクラスの1/3が目に見えて動揺し始めた。
うん、5000+16000ポイントを支払ったかいがあったわね。
ちなみに、内訳は5000ポイントを星之宮先生に、16000ポイントを3年生の先輩に支払った。
この出費で、問題集の信頼性と過去問を獲得出来た。
いい買い物だった。
「私の話は以上です。では一之瀬さん、続きをどうぞ」
私は、一之瀬派瓦解作戦がちゃんと成功した嬉しさで内心ウキウキしながら自分の席に戻って座る。
もちろん、表に出してニヤけたりはしていない……はず。
「じゃあ、リーダー決めの決選投票を始めるよ。……霧ヶ峰さんが言いと思う人、手を上げて」
クラスの大半の生徒が手を挙げる。
挙げなかった人は……5、6人ってところか。
ちゃんと、白波さんは上げてなかった。
「……霧ヶ峰さんがBクラスのリーダーで確定だね、おめでとう」
「ありがとう、一之瀬さん」
……圧勝だ。
これで、私は無事Bクラスの王に即位した。
一之瀬さんの敗因は……月日が短かった、これに尽きると思う。
彼女は決して無能ではない、むしろ有能である。
彼女は人の心を掌握することに関してはピカイチである。
しかも、無自覚でやっている……恐ろしい。
ただ、私たちはクラスメイトになってから今はまだ1ヶ月しか立っていない。
もしこれがさらに2ヶ月とか経っていれば話は違うだろうが、どれだけ優れた人心掌握能力があってもたかが1ヶ月なら信頼や友情よりも利益の方が勝る……この学校なら尚更。
それに一之瀬さんは……リーダーをやるには綺麗すぎる。
クラスメイトに問題集を配りながら、私はそんな事を考えていた。
ドイツ人、とは言わない霧ヶ峰。
はてさて、どうしてボカしたんでしょーね?