《12-1 櫛田桔梗の独白》
私は今度こそ、学校のみんなの信頼を得ようと努力した。
めんどくさい性格をしているブスの話も親身に聞いたし、顔面偏差値底辺のキモい男子の手を握ったりもした。
変態共の視線も耐えた。
笑顔を決して絶やさなかった。
優しい櫛田桔梗という像を崩すような事は、中学生時代の反省をいかして出来る限り避けた。
でも……そんな努力は早速意味をなさなくなった。
誰もいない場所で、ストレス発散をしていた私の姿をたまたまBクラスの霧ヶ峰とかいう女子に見られたのだ。
さらに、それだけに留まらず彼女は私が本性を現している姿を収めた動画をネタに私に取引を持ち出して来たのだ。
「さぁ、櫛田さん。取引をしましょう……ハイかイエスで答えてね?」
これが、私と彼女の最悪な出会いだった。
《12-2》
「いやー、この問題集ほんとに凄いねー」
一之瀬さんと2人での学校からの帰り道、ペラペラと私が配った問題集をめくりながらそう一之瀬さんが言う。
まぁ、これ作るために結構徹夜したし、色々な公式問題集を見るために図書館にもかなり通ったから……出来がよくないと困る。
それはそうと、一つ聞いとかないといけない事がある。
「あの、一之瀬さん」
「うん? どうしたの?」
「一応、聞いときたいのだけれど……一之瀬さんって、クラスリーダーになりたかった?」
うん、これは大事な要素だ。
一之瀬さんが、リーダーを自分からやりたいと思ってたのか、思ってなかったのか。
これを聞かないことには、一之瀬さんの今後のポジションを決められない。
「あー、その話かぁ。……私は別になりたかった訳じゃないよ。白波さんは、あぁ言ってたけど、私にそんな……人の上に立つ資格なんてないよ」
一瞬、遠くを見るような表情を見せながら、彼女はそう答える。
ふぅむ、あの表情……彼女は恐らく過去になんかあったんだろうなぁ。
まぁ、もっと仲良くなってからそれは聞くことにしましょう。
「そっか。ねぇ、一之瀬さん。私の参謀になってくれないかな? 君はとても優秀だ。頭もいいし、人をまとめる能力も高い。だから、君が私の元でBクラスを支えてくれれば、Bクラスは本格的にAクラスを撃破することが出来るだろうね」
前も言ったが、彼女は優秀だ。
参謀としては、だが。リーダーの座に彼女を据えるのはちょっと勿体無い。
この1ヶ月間、彼女を見ていて、この結論に私は至った。
だから欲しいのだ、参謀一之瀬帆波が。
「にゃははは。霧ヶ峰さんも私のこと買い被り過ぎだよ。……私があなたの参謀になること、それはBクラスのみんなのためになるんだよね?」
「えぇ、もちろん」
「……なら、いいよ。これからよろしくね、霧ヶ峰リーダー」
足を止めて、彼女は手をこちらへと差し出してくる。
その手を私はもちろん握りしめた。