「あ、そうだ。ちょっと霧ヶ峰さんの部屋にお邪魔してもいいかな? ちょっと今度の中間テスト対策について話し合いたいことがあって」
ある日の放課後、一緒に帰っていた一之瀬さんが私にそう言う。
ふむ、まぁ中間テスト対策についてなら他のクラスに聞かれない方がいいから誰かの部屋でするのが妥当か。
でも、なんで私の部屋なんだろ……別に一之瀬さんの部屋でも。
あ、彼女、人気者なんだった。
私と違って、損得抜きの本物の友情で繋がってるからなぁ。多分、訪問者も多いのだろう。
だから、私と秘密の話なんて出来ないって訳だ……いや、私の想像だけど。
私の頬をそよ風が優しく撫でる。
5月だっていうのに、やけに肌寒く感じた。
「うん、いいよ。じゃあ、行こうか」
やはり、一之瀬さんの方が立派なのだろう。
彼女は、本心からクラスに尽くしてる。
でも、私は……仕方ないからやっている。
この差は大きいだろう、間違いなく。
あぁ、一之瀬さんに私の才能も、血のしがらみも、要らないモノ全部全部、押し付けてしまいたい。
そんな欲望を抑え込みながら、彼女と共に私の部屋へと向かった。
それから、5分くらい彼女と談笑しながら歩いていたら私の部屋へとたどり着いた。
さて、私は初めてマトモな友達を自分の部屋に入れる(櫛田さんやら神室さんを招き入れた事は何度かあるが弱みをダシに私に有利な形で契約した人間を友達とは言わないだろう)訳だが……若干緊張する。
片付けは……大丈夫、なはず。
掃除も……昨日したばっかだからオッケー、なはず。
お茶は……ないな、うん。コーヒーも紅茶も緑茶もない。エナドリならあるけど……来客に出すもんじゃないわね。
水で我慢してもらおう。
「へー、霧ヶ峰さんって最上階の部屋なんだ」
「そうだよー。いちいちここまで上がってくるのがちょっと面倒くさいね」
「にゃはは、確かにそれはあるかもね」
「じゃあ、一之瀬さん、どうぞ」
私はそう言ってドアノブをひねって、扉を開く。
「おじゃましまーす」
そう言って、一之瀬さんが玄関に足を一歩踏み入れた瞬間。
「おかえり、霧ヶ峰さんって……あれ? 」
私の部屋の奥から櫛田さんが顔をひょっこりと出しているではないですか。
……って。
「は? なんで……?」
"なんで"の後に続く言葉であった"この時間にいるのよ"を言うのはなんとか抑えたけど……いやはや、なんでいるんだ???
「え、えーっと、霧ヶ峰さんは櫛田さんがいる事は……」
「知らなかったよ」
「あ、悪い。オレも居るぞ」
と、櫛田さんの後ろからさらに無気力そうな顔をしている男子生徒、綾小路清隆が姿を見せる。
嫌な予感がして、横の一之瀬さんの方を見る。
「男子1人と女子2人が同じ部屋に……こ、これって禁断の……にゃ、にゃぁ///」
「「「いや、それは違う」」」
私たち3人の声が被った。
にしても、禁断の恋って……一之瀬さんって意外と頭ピンク?
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