ということで、第五話をどぞ
少し薄暗く、人気もない体育館裏へと私と石崎君はたどり着いた。
うん、やっぱ雰囲気あるね。
そんなどうでもいいことを考えている私に石崎君は問う。
「こんなところまで来たんだ……よっぽど良い手段なんだろうな?」
「えぇ……とても確実で、良い成長の機会になる……そんないい手段です」
「そうか。じゃあ、早く教え……ッ⁈」
石崎君がそう言い始めたタイミングで、私は後ろを振り返りながら石崎君の身体を蹴り飛ばす。
もちろん、彼の身体に外傷が出来ないように力を調整して。
まさか私が暴力を振るうとは思っていなかったのだろう。
彼は地面とキスをする羽目となった。
「えぇ……教えてあげるわ。本気の喧嘩の仕方を……ね?」
彼は立ち上がり、私に思いっきり睨む。
うわぁ、その目で人を殺せそー。
どうでもいいけど。
「舐めやがって!」
さぁ、次は彼のターン。
石崎君が私のところへ走って来て、殴りかかる。
彼の瞳を見る……ふむ、狙いは左頬か。
よしっ、当たりに行こう。
という訳で、私の頬に彼の拳が突き刺さる。
うーん、痛い。
ただ、これでもし仮に石崎君が先生方に泣きついても問題ないな。
「へっ、どうだ! 奇襲だったからさっきは……って、うおぉ!」
いつまでも私の頬を触られているのも腹立たしいので、彼の腕を掴み背負い投げをする。
彼の身体が地面に叩きつけられる。
自力で立ち上がれないのか、石崎君は立ちあがろうともしない。
「クッソ……お前さてはわざと避けなかったな……てか、もしかして最初の蹴りも手加減してたか?」
「あ、分かっちゃう?」
「喧嘩の経験だけはたくさんあるからな。にしても、お前の実力は底知れねぇな。あの龍園よりよっぽどつえぇよ。何者だ?」
「ただの……か弱い女子だよ」
「んな訳はねぇだろ! バカな俺だって分かる」
うるせぇ!
私は極々普通の乙女なんだよ!!
まぁ、それはいいや。良くはないけど。
「それは置いといて……続き、どうする? やる?」
「……そうだな。なぁ、霧ヶ峰。いや、霧ヶ峰さん」
石崎君はやたら神妙な顔をして、そう言う。
「うん?」
「俺を……弟子にしてくれ……してください! 霧ヶ峰さんの言う本気の喧嘩のやり方ってヤツを知りたい……んです! そうすればあの龍園にも勝てる気がするんです!」
「……うん、いいよ! 元からそうするつもりだったしね。じゃ、まずは立ち上がろっか」
石崎君の手を掴んで、引っ張り上げる。
……よしよし、立ち上がれたね。
「じゃあ、早速教えてください!」
「えぇ……君、さっきまで立てなかったでしょ。休みなよ……」
「いや、まだまだ行けます! というより、一つ聞いていいすか?」
「? どうしたの?」
「口調、変わりましたよね? 俺を蹴り飛ばす前まで丁寧な口調でしたけど」
あぁ、そのこと。
そんなの、簡単な話だ。
「猫被ってただけ。コッチが素だよ」
いちいち丁寧口調とかめんどくさくて仕方ない。
でもまぁ、初対面で馴れ馴れしいのもあれだし……って訳でさっきまでは丁寧口調を使ってた訳だ。
もう、石崎君には使う気ないけど。
「そすか。じゃ、教えてくださいよ!」
……めちゃくちゃ目を輝かせてるんだが。
なんだろう……ヒーローを見る子供みたい。
ふふん、ここまで期待された目をされたら頑張って教えるしかないね!
「そうだね、じゃあまずは隙を少なくしてみよっか。さっきの石崎君のパンチは大振りすぎたから、えぇっとここを……こうして……そうそう。それから……」
この後、私は石崎君を夕方までボコボコに……いや、石崎君を夕方まで教育した。
石崎、無事霧ヶ峰に教育される。