孫悟飯は勇者である   作:桜開花

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5000UAを達成していました。
つまり、5000回この作品が一瞬でも読まれたと言う事です。
正直言って、こんなに嬉しい事はないです。
読んでくださっている方、お気に入りや評価などをして頂いている方には感謝してもしきれません。
これからもどうぞよければ、お付き合いの程、よろしくお願いします。


のぎそのこ 二

「ここが、トップアイドルの舞台だ。皆、準備は良い?」

 

 スーツに身を包んだ悟飯が振り返る。そこには、アイドル衣装に身を包んだ須美、銀、園子が居た。

 フリフリの衣装に身を包んだ須美。

 まさかの法被に鉢巻とアイドルかどうか怪しい銀。

 猫の着ぐるみに身を包んだ園子はもはや意味を聞くの野暮だ。

 

「遂にここまで来たのね。後はもう、やり切るだけよ」

「あたし達のロック、届けてやらないとな」

「ライブ、楽しみだな~」

 

 三者三様に意気込んでいる。

 それを見て満足そうに悟飯が頷いた。

 

「三人とここまでこれた事、ボクの宝物だよ……」

「ゴッくんプロデューサー……」

 

 少し目を逸らした悟飯の呟きに三人は目を合わせる。

 思い出すのは今までの日々だ。

 辛く苦しいレッスンでは、成長を実感できない日々に涙した事もあった。しかし、トレーナーからの言葉に、上達していたのを自覚した。その時に手に入れた自信は今もはっきりと残っている。

 楽しかった四人の日々。小学生の頃からずっと付き合って、ここまで共に歩んでくれた友達。

 出会い、支えてもらってきた両親、安芸先生、大赦の人達。ぶつかる事もあったが、最終的には背中を押してくれた大切な人達だ。

 様々な想いを背負って、四人は今この場所に立っているのだ。

 

「よし、いつもの。やろうか」

 

 四人が円を作って手を合わせる。

 

「ボク達の夢の為に」

「支えてくれた友の為に」

「頑張ってきた日々の為に!」

「楽しかった思い出をこれからも続ける為に!」

「「「「頑張ろう!」」」」

 

 勇者的な、最高のライブが始まる――。

 

――

 

「と言う夢を見たんよ~」

「園子達のアイドル、見てみたいな」

「ユニット名とかあった!?」

「うーん、なかったかも~」

 

 草原の坂で座りながら、四人はおにぎりやサンドイッチ片手に談笑していた。

 本来ならば休日も訓練があるのだが、安芸先生から神託によればバーテックスの侵攻は暫くないという話で、お休みになりますと言われてしまっていたからだ。

 その理由が、勇者に変身する為には精神状態が安定している事が必要であるから。しっかり休む事もお役目の一つだとなったのだ。

 そして、何するかと相談して孫家の畑の手伝いとなった。

 

「しかし、こういうのも良いな。あたし、種撒きとか初めてしたよ」

「ご飯食べたらこの後、白鳥家の人達の畑で収穫の手伝いしようって」

「おっきな大根引っこ抜いちゃうよ~」

「人参などの収穫らしいわ、気合入れてやりましょう!」

 

 まだ始まって数か月でしかない畑だが、かなり形になってきた。元々白鳥家の管理していた所と言うのもあり、更には常にサポートもあるという手厚さのお陰であるのだが。

 

「でも、ご飯後だとちょっと眠くなっちゃうな」

「食べてすぐ寝て牛になるというように、あまり横になるのは良くないのよ」

「牛さんにはなってみたいかも~。どーん」

「そう意味ではないのだけれど……」

 

 倒れてしまった園子に続く様に悟飯も倒れた。

 

「ちょっと悟飯まで……」

「いや、たまにはいいかなって」

「お、ならあたしも!」

「もう……なら私も……」

 

 銀、須美も寝転がった。

 今日は雲一つない晴天が広がっていた。

 四人の日常は一つとして同じはない。今日のように穏やかに過ごす事もあれば、イネスのゲームコーナーで大きくはしゃぐこともある。静かに勉強会を開いたり、時には休みを返上して訓練をしたり。

 決して飽きる事はないだろう日々だ。

 

「あ、園子が寝た」

「ちょっとそのっち、本当に寝るのは困るわ!」

 

 肩を揺らしても園子は起きる気配がない。

 

「ボクがとりあえず運ぶよ」

「収穫どうする?」

「時間もあるし、起きるまでもうちょっと待ってみよう」

「悟飯はそのっちに甘すぎるわ……」

 

 気持ちよく寝息を立てている園子を起こさないようにそっと抱えた悟飯に須美はため息を吐く。

 それをまぁまぁと銀が宥められ、須美は渋々と歩き出した。

 

「須美も丸くなったな」

「だね。前なら園子、本当に起こしてたんじゃないかな」

 

 銀と悟飯が笑いながら須美を追い掛ける。

 

「にしても、今日は手伝ってくれて助かったよ」

「農業は古くから続く日本の産業。それに今は神樹様の恵みを強く受けているものの一つ、土を耕し、種をまき、水を与える。どれも貴重な経験だったわ」

 

 突然始まった須美の熱弁に悟飯は苦笑いで返す。

 その横から銀が顔を出した。

 

「……なんか難しい事言われたけど、ようは須美も楽しかったって事だろ? だから気にすんなって事さ」

「そうだね」

 

 悟飯に抱かれて寝ている園子の頬をつつきながら、園子もさと銀は付け加えた。 

 園子は少し反応を見せるが、またむにゃむにゃと寝息を立てる。いつでも何処でもしっかり熟睡できるのはある意味才能だ。羨ましささえ感じる。

 

「あ、そうだ園子の寝顔撮っちゃお」

「良いわね。そのっちの恥ずかしがる顔が目に浮かぶわ」

「ならボクもやろうかな。ポケットの……」

「あ、あたしが取ろうか」

「助かるよ」

 

 園子を抱えて両手がふさがっている悟飯の代わりに銀がポケットからスマホを取り出す。

 ロックは? と聞こうとして、銀が固まった。

 

「ん、どうしたの……あっ」

「銀?」

「ご、ごーはーん! 何でこの写真持ってるんだよ!」

 

 銀が顔を真っ赤にしてスマホを悟飯に見せつけた。それは数日前の乃木家の着せ替えショーの写真だ。全員で一回だけと撮った写真を須美から受け取ってロック画面に当てていたのだ。

 

「い、いやー集合写真だから、丁度いいかなって」

「集合写真なら合宿のがあるだろっ!」

「か、かわいかったから……逃げろっ!」

 

 悟飯が先へと走っていってしまう。

 その後を銀が追いかけていく。

 後ろで、須美が呆れていた。

 

――

 

 梅雨が終わり七月が始まろうとしていた。

 そろそろと夏休みも近く、生徒達が楽しみか、それとも宿題に対して怯えているのかそわそわとし始めている。

 

「葉隠とは、一般的な武士道よりは仕える者の為の心構えなどを書いた書物の事よ。武士道とは、死ぬことと見つけたり、という有名な言葉はこの葉隠に書いてあるものなの」

 

 須美が誇らしげに語るのを聞いて悟飯は感心していた。

 教室後ろに張り出された新たな習字。悟飯の書いた字は「努力」だ。そこから、須美が「葉隠」、銀が「鰻重」。そして園子が「23センチ」。

 突っ込み方すら分からなかった。

 

「人の為、国の為に尽くす、そんな武士の姿に私は憧れてしまうわ……」

「それは……確かにカッコいいね」

「はい、朝礼始めるわよ」

「あら、もうこんな時間。戻りましょう」

 

 二人が席に戻ると朝礼が始まる。

 銀はここ最近は遅刻も減った。須美の出した結論は誰かと一緒に登校すればいいと言うものだった。

 家の近さは全員が似たり寄ったりなのだが、ここ最近は悟飯とよく登校するようになっている。

 

「そして、もうすぐ一年生とのオリエンテーションがあります。六年生としての自覚をもって、しっかりと後輩の面倒を見る事」

 

 オリエンテーション、悟飯の知らない行事だった。

 いつか言われていた気もするが、ここ最近はバーテックスの事と純粋に授業についていく事で頭がいっぱいいっぱいだったせいで、忘れていた。

 

「いくつか班を作ってもらうけど、今回は自由に組んでもらって大丈夫。その代わり、しっかり協力して楽しませるように」

 

 班、と考えてクラスを見渡す。

 心当たりは席の近い佐々木さんや大西さん。同じ男だと村上くんも居る。

 しかし、悟飯は一人と目が合った。銀が隠れるように頭をさげながら手を振っていた。意外、と感じたが悟飯も振り返した。

 

「それで、オリエンテーションって何するの?」

「まぁ、一年生と一緒に楽しく遊びましょうって事さ」

「楽しくか。結構難しいなぁ」

 

 班作りは滞りなく終わった。悟飯の作った班はいつもの四人で出来ていた。

 何をするかすらもまだ未定だが、言うて小学六年生だ。出来る事は限られている。うーんうーんと悩んでいると須美が立ち上がった。

 

「相手は真っ白な一年生。そして、私達勇者のお役目はこの国を護る事!」

「……うん?」

「つまり!」

「つまり……?」

「将来を見越して、愛国心の強い子供たちを育成する事も、任務の一環と言えるわ!」

「言えるか?」

「どうだろう……」

 

 須美がいつになくやる気を見せている時、悟飯はちょっと不安を覚えるようになっていた。

 

「なんだか楽しそうだね~、じゃあ計画を立てようよ」

 

 銀と悟飯が困り顔になる中、園子は乗り気にノートを取り出す。

 それと同時に机の中から紙が落ちた。

 

「……あれあれ?」

「手紙?」

 

 それは封までされた手紙だった。

 露骨にハートのシールで止められているのを見て、銀が目を輝かせた。須美は青ざめていた。

 

「ふ、不幸の手紙!?」

「いやいや、果たし状だな!」

「最近、気が付けば貴方を見ています」

「読み上げちゃうんだ……」

 

 ホラーな方面に勘違いしたらしい須美とバトルな方面へと勘違いした銀が立ち上がったのをよそに、園子が封を開けて読み上げ始めてしまった。

 

「やっぱり決闘か!」

「呪いよ、清めの塩が必要よ!」

「ちょっと静かに……」

「貴方と仲良くなりたいと思っています」

 

 騒がしくなった二人を気にする事なく、園子は読み上げ続ける。

 

「……うん?」

「ただの呪うよりも恐ろしい文章ね……」

 

 銀は気付いたが、須美がまだ勘違いしている。

 ただ、悟飯は特に大きなリアクションもないままに読み上げる園子が気になった。

 

「お役目で大変だとは思います。だからこそ、貴方を支えたいと思います」

「こ、これ悟飯もしかしてラのつくあれじゃないか」

「それ以外ないと思うな……」

「羅漢像!?」

「違う、ラブレター!」

 

 わざわざぼかして言ったがここまで来ても理解しない須美に銀が叫んだ。

 それと同時に須美が固まった。

 

「ら、らぶぶらぶれぶら!?」

「いや落ち着けよ」

「わぁ、私ラブレター貰ったんだぁ。嬉しいなぁ~」

「いや、こっちはこっちで冷静すぎか!」

「どうしてそのっちはそんなに冷静なのよ!?」

 

 やけにリアクションの薄めな園子に銀と須美が詰め寄った。

 

「字とかみればすぐわかるよ、これ書いたの女の子だよ」

「……なるほど。それでだったのか」

「なんだ女の子かぁ」

 

 安心したように二人が椅子に座った。

 ……とはいえ、女の子がこういう手紙を渡してくるという状況自体は中々驚くべき事だ。匿名でなければ、園子もすぐに会いに行ったのにと呟いていた。

 

「浮ついた話はあたし達にはまだ早かったか……」

「恋文一つで動揺するとは、不覚だったわ」

「そうかな……?」

 

 ふぅ、と全員が一度落ち着く。机の上に開かれた白紙のノートが静かに置かれている。

 それを見て、自分達が何をしようとしていたのかを全員が思い出した。

 

「そういえば、オリエンテーションの計画立てないとだった」

「それなら良い案があるよ~」

「お、聞かせて聞かせて」

「今日見た夢の話なんだけどね~」

 

――

 

 広い荒野が広がっていた。崩れた山。どこもかしこも破壊痕があり、大規模な戦闘があったと想像がつく。

 そしてそこに、似つかわしくないような巨大な大理石のリングが置かれていた。

 その中心には緑色の、人のような、虫のような怪物が居た。怪物の周りには沢山の倒れた人達がおり、怪物に負けてしまったのだろうとはすぐにわかった。

 

「やはり、期待できるのは孫悟空、奴だけか」

「「そこまでだっ!」」

「ほう?」

 

 その時、怪物の前に二つの影が舞い降りた。

 

「私は、悪は絶対許せない!」

「富国強兵!」

「「正義の味方!」」

「グレートサイヤマンだっ!」

「国防仮面だっ!」

 

 二人がそれぞれ別のポーズを取りながらばらばらに名乗りを上げた。

 国防仮面は敬礼を取りながら剣を突きつけて、それなりに問題はない。

 ただ、グレートサイヤマンの方が全身を使ってハートを描こうとして、よくわからないポーズになっている。端的に言えばダサいのだ。

 

「貴様の悪事はここまでだセル!」

「この人類滅亡を遊戯で賭けるその悪事! 見過ごせないわ!」

「ほぉ、この私を満足させられる事が貴様らに出来るのか?」

 

 セルと呼ばれた怪物は余裕の表情を浮かべていた。

 人類滅亡が賭けられていた驚愕の真実を話すと共に、二人は構える。

 サイヤマンは徒手空拳。国防仮面の武器はまさかの剣を捨てて懐から取り出した弓である。

 

「やるぞ、国防仮面っ!」

「ええっ!」

「紫電獣蹴撃ぃぃぃ!」

 

 合図すると同時、飛び出したサイヤマンが蹴りによる一撃を食らわせる。

 稲妻が落ちたような音共に、セルが吹き飛んだ。

 

「なにっ!?」

「まだよっ!」

 

 国防仮面の矢がセルを貫いた。

 完全に風穴があいた胴体にサイヤマンが両手を頭上で合わせる。

 

「激烈魔閃っ!」

「くそっ……ばかなぁぁぁ!」

 

 激烈魔閃に完全に貫かれたセルは完全に消滅していった。

 国防仮面とグレートサイヤマンの勝利である。

 

「この程度、私達にかかれば造作もない」

「困った時、私達は貴方の為に駆けつけるわ」

 

 いつの間にかいた園子の元に二人が駆け寄る。

 

「「この」」

「グレートサイヤマンがっ!」

「国防仮面がっ!」

 

 合わない二人のポーズはダサすぎて逆にありかもと園子は呟いた。

 

――

 

「わっしーがこんな感じ、ゴッくんがこんな恰好で、凄くカッコよかったなぁって」

「あら、お洒落な恰好」

「正義の味方か……カッコいいね」

「なんというか、ロックだな……」

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