孫悟飯は勇者である   作:桜開花

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くんれん

「畑……?」

 

 夕飯の席で、悟飯は首を傾げていた。

 まだ食べ方が綺麗ではない悟天の口元を拭きながら、チチは話を続けた。

 

「ここに来て、おっとうの財宝は何にもなくなってしまっただ。今は大赦の人達がお金を出してくれているけど、働く必要があるんだべさ」

 

 悟飯の今の生活は全て大赦が用意してくれた物で構成されている。とは言え、そのままそれに甘えている訳にも行かない、と言うのがチチの考えだ。

 それで一番わかりやすく、自分でも出来ると話したのが、畑仕事だった。

 

「そこで大赦の人に相談してみたらえっと、白鳥家……? だったかって人達が畑をくれるって話になっただ」

「え、ふぁたけってほぉんなかんふぁんにもらえるも……?」

 

 随分と早い話の展開に悟飯は思わず、口に物を入れながら返事をしてしまった。

 一度水を飲んで改めて尋ねる。

 

「そんな簡単に畑ってもらえるんですか……?」

 

 土地と言うだけでも手に入れるのは相当な苦労がある。金持ちが周囲に多い状況とはいえ、今の四国しかない状況では土地と言う物はそれよりももっと、途方もなく重要な物だ。お金持ちというだけでは決して届かないと言える。

 それを簡単に分けるというのは流石に怪しいとしかいえない。

 

「でも実際に土地も見ただよ。それに、教えてくれる先生までつけてくれるって話だ」

 

 まさに至れり尽くせりだ。どうしてこうも自分達に尽くしてくるのか、その理由に皆目見当もつかない。それ故に少し怖さもあるのが悟飯の本音だった。

 ただ、白鳥家と言うのは悟飯は一度聞いた事があった。

 

「白鳥家……確か、初代勇者の中に居たっけか……」

 

 授業の中でたびたび出てきた苗字だ。大赦の中でも高い影響力の持つ家として、須美に説明された記憶もある。

 高嶋家や伊予島家の人達は、この世界に来た時に実際に顔を合わせた事があった。確か子孫がどうのと言っていたか。

 そこらへんの何故かと言う疑問は前からあったが、ここに来てさらに分からなくっていく。

 

「道具とか色々一式貰ったから、明日には始めるべさ! それで、今まで以上に悟飯ちゃんには悟天の世話を頼む事になっちまうけど……大丈夫だか?」

「それくらい任せてよ、お母さん」

 

 少し申し訳なさそうに聞いてくるチチだったが、悟飯としてはそれは喜ばしい事だった。

 忙しくなる。それ自体は少し困るが、なんだかんだと言って、悟飯は今を楽しんでいた。勉強が出来て、友達が出来て、充実していたのだ。

 そして、農業となれば自分も少しやってみたさがある。神樹様の恵み、と言うのを知る為にも。

 

「ま、お手伝いさんとか来るらしいから、あんまり任せっきりにはならない筈だ!」

「それでもボクも手伝うから、頑張ってね。お母さん」

「おうさ! あとは、悟飯ちゃん、勉強の具合はどうだ?」

「順調だよ! 友達とも一緒に勉強したりしてるから分からないところもバッチリだよ!」

 

 祝勝会以降、須美、銀、園子で集まって何かをする機会と言うのが大きく増えたのだ。勉強会は銀は得意じゃないのか常に唸っているし、園子は寝ているので実質須美と悟飯の二人きりである。

 合同訓練と言う物が始まり、顔を合わせる機会が増えたお陰か、悟飯も三人に対してすんなりと話せるようになっていた。

 

「須美ちゃん達とだか?」

「うん、訓練の時に一緒にやろうって話になって」

「ああ、お役目の訓練か……悟飯ちゃんにはあまりやってほしくないのだけんどな」

 

 チチは悟飯でも分かるぐらい度を超えた過保護だ。本来であれば悟飯が戦う事をあまり望んでいない。

 しかし、現状の生活はほとんど大赦の支援で成り立っていて、その理由が悟飯がお役目についているからとなれば流石に強くも言えない。

 事あるごとに怪我には気を付けてと言う回数が増えるぐらいに留まっていた。

 

「仕方ないよ……。皆の家族だって同じこと思ってる筈だよ」

「まぁ、おらに出来る事は悟飯ちゃんに美味しい物沢山食べさせて丈夫な体作ってやるくらいだかんな! ほら、おかわり!」

 

 無くなった茶碗を受け取ったチチは笑いながら白米を山盛りによそった。

 心配も、献身も、それは愛情である。

 そんなチチが悟飯は好きだった。

 

「ありがとう、お母さん」

「後は彼女でも作ってきたら、おらは言う事ねぇだ」

「あはは……」

 

 こういう所は直してほしいと悟飯は思った。

 

――

 

 合同訓練の休憩時間、お互いの特徴を把握しようという話になっていた。

 それはもう既に何回か行われているのだが、何が出来るか、その把握が難しいのが二人居た。

 悟飯と園子だ。

 

「まず舞空術。空が飛べる技」

「変身しなくても出来るっていうのは憧れちゃうなー」

「本当に、私達とは全然違うのよね。服も変わらないし。どういうシステムなのか少し興味があるけれど……」

 

 空に浮いた悟飯を見ながら銀が羨ましそうに言った。その横で須美が分析しようとしていた。

 

「気弾を撃つ」

「わぁ~」

 

 悟飯が外に置かれた的に手を向けた。と同時に高速で光球が放たれ、的は爆散した。

 その威力は須美の弓と変わらない。速さで言えばそれ以上だ。ただ、バーテックスに通用しない致命的な問題を抱えている。

 

「数も打てるから迎撃に役に立つと思うんだ」

「そうですね……」

「ボクのはダメージは与えられないけど、遠近のグループで分かれたりも出来るから」

「前回はそれをしようとして、失敗しましたけど……」

 

 須美が少し申し訳なさそうに呟いた。

 

「あ、後は魔閃光とかめはめ波かな!」

 

 悟飯が慌てて話を逸らした。そうして、悟飯が構えを取る。

 頭上で両手を交差して放つ気功波、それが魔閃光だ。悟飯の師、ピッコロから教わったお気に入りの技の一つだ。

 魔閃光の威力は跡形も残らなかった的を見れば一目瞭然だ。

 

「そして……これがかめはめ波っ!」

 

 両手で構えを取り、溜めて放つ気功波。これは父親から教わった技だ。

 同じ気功波ではあるが、違いは幾つかある。のだが、銀達からはあんまり分からないと言われて少しショックを受けたりもした。

 

「速い魔閃光とちょっと遅いけど威力の高いかめはめ波なんだけど……バーテックス相手だとあんまり変わらないかな」

「でも、かめはめ波はバーテックスが結構押し戻してたね~」

 

 魔閃光はどちらかと言えば咄嗟に撃つ事が多い。特に今の状況では、使い分けと言うよりは気分の問題の方が大きい。

 

「目立つのはこれくらいかな。後は体術とか……」

「ゴッくん足も速いよね~、力も強いし」

「強いってレベルじゃない気がするけど」

 

 悟飯の力、純粋な腕力だけでも相当な物だ。変身前の時点で岩は砕く。

 変身しなくてもそうなのか、については三、四歳頃から常に鍛え続けていたという話だけしかなく、実際にそうであるという事実を見せつけられてしまい全員が黙らず負えなくなっていた。

 それと同時に力の調整が下手という欠点も見つけた。バーテックス相手なら全力でもいいが、問題は昼休みのボール遊びだ。

 銀が誘うよりも前に、その事実が発覚したのは良かったと呟いてるのを悟飯は聞いた。

 

「い、今はちょっとずつ良くなってるから……」

「まだ駄目なんだ……」

「うっ」

 

 悟飯は目を逸らした。全力出す特訓ばかりしていたからか、丁度良い威力にするというのはどうにも難しかった。

 

「私は盾になって~、後は階段になる!」

 

 園子の槍の自由度は凄まじいものだった。

 幾つかの刃を操り、円形状にして盾を張る。

 階段状に刃を配置して、階段を作る。

 そして、完全に突進用に刃を更に槍の穂先にして二重に敵を貫くなんて事も出来た。

 多彩だが、故に園子のやるべきことは多い。盾として前線に出て、その後のアシスト、攻撃もやらなくてはならないだろう。

 

「階段って言うの凄いよなぁ」

「園子はかなり便利だけど……難しそうだ」

 

 それをしっかり使いこなしているのは、才能とも言えた。

 園子はのんびりとしているようでやる事はしっかりやっている。テストは点数は記入方法を間違えて零点こそ貰うが、回答自体が間違っている事は少ない。

 いわゆる天才型と言う奴だ。

 

「あたしは単純で良かったと思うよ。斧で切り裂く! 簡単だろ?」

 

 悟飯は目を逸らす。

 やった後で言うのもと思いながらも、銀の斧捌きは決して簡単な物ではないと悟飯は思う。

 自分の半分以上ある獲物、それも両斧を振り回し、巨大な敵を消滅させるというのは技術的な話だけでも相当だ。変身後のフィジカル面だけならば、悟飯といい勝負である。

 

「ミノさんはパワフルだよね~」

「見ていて少し不安になるくらいにね。三ノ輪さんはもう少し落ち着いてほしいと思うわ」

「……それは、すみません」

 

 反省会でも一番に挙げられたのは銀だ。一番に飛び出して水弾を食らったのはよくなかった。その後の窒息未遂もそうだが、もう少し考えるべきとは常々、主に須美からだが言われていた。

 特に最後のラッシュの部分だが、勇者の治癒力をもってしてもその日は少し腫れていたらしい。高速で飛んでいきながら方向転換はやはり負担が大きかったと後から反省した。

 

「あとは、デカいから盾代わりにもなるくらいかな」

「確かに。ただちょっと不安が残る……」

「基本は私が守るよー!」

 

 園子が槍を掲げて気合を入れた。

 なんだかんだで、役割分担自体ははっきりしていた。悟飯以外は。

 

「改めて確認する流れかしら……。えっと、私は弓ね。溜めの有無と何本か同時に放つ事が出来るわ」

 

 シンプルな須美の武器はそれ故に頼もしい。

 更にその矢は敵に当たった後に時間差で爆破もするから威力もそれなりにある。溜めてしまえばそれで撃破も視野に入るのではないかと思う程。

 なのだが、今の所戦績はまだ一度的を削った程度。水弾を打ち抜きもしたが、悟飯と比べてしまうとどうにも……。

 

「それくらい……かな」

「須美は分かりやすくいいよなぁ」

「命中精度は凄く頼もしいですよね」

 

 百発百中とまでは行かないが、須美はほとんど外した事がない。

 その正確性は凄まじいのだが、今回のお役目では須美は活躍が少なかった。如何せん相性が悪かったなと言う他ないのだが、ど真面目を絵に描いたような彼女がそれを気にしない訳がなかった。

 だからと、悟飯達はそれなりにフォローを入れていた。気を使わせると気付かれるともっと落ち込むだろうと銀と悟飯は事前に打ち合わせまでしている。

 

「しっかし、こう見てみると、あたし達の武器って中々バラバラだよなぁ」

「弓、槍、斧、素手……統一性はないねー」

 

 何を基準に武器が決まっているのかは、悟飯も気になる所だった。

 とは言え、それは恐らく神樹様のみぞしるという所でしかなく、うんうんと頭をうならせていると安芸先生がやってきた。

 

「貴方達、準備は良いかしら。神託では次の襲来は近いです。気を引き締めて、訓練に臨むように」

「「「「はい!」」」」

 

 四人が元気よく返事をする。

 合同訓練の内容はそれぞれが武器を上手く使う為の訓練だ。

 須美は特に気合が入ってた様な気がした。

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