魔剣使いとポンコツ 魔狩人外伝   作:空箱

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軽率にクロスオーバー。
ヤシロは本スレでちょっとだけ話に出た腕利きで、勇者先輩とやり合ったとか。


MISSION1ー2 死者は帰らず

「よおマスター生きてるか」

 

壊れた扉から入ってきたのはもじゃもじゃの黒髪にくたびれたコートを着込んだ冴えない風貌の男。

腰につるしたバスタードソードがこの男も戦うことを生業にしていることを教えていた。

 

「なんだヤシロか」

「なんだとはなんだ、心配してやった客に向かって言うセリフかよ」

「お前はトニーより仕事をしない癖にでかい顔をするな。ほら、まずは注文からだ」

「ビール」

 

すぐに出てくるこの店で一番安い屑ホップで作った自家製ビール。苦味ばかりが強くヤシロぐらいしか飲まない粗悪品だ。

 

「ちっ、まともな注文もできんのか、ほれ前払い」

「面と向かって舌打ちすんなよ、トニーと俺で態度が違いすぎねぇか?」

 

なけなしの小銭を支払いながらヤシロは文句をつける。実際トニーと比べてヤシロの扱いは悪かった。

 

ヤシロがビールを受け取って銃撃の跡が残る店内に目を向けると、奥のテーブル席に目立つ銀髪と赤いコートが見えた。

その前にはこの店に似つかわしくない大人とはまだ言えない少女の姿も。

 

「あん? トニーの奴。今度は子守りでも引き受けたってのか?」

 

ヤシロは他の同業が来るまでの暇つぶしと二人の座るテーブルへ近づいた。

 

 

 

「よおトニー、今日は景気がよさそうじゃねぇか」

「なんだヤシロか、まあ見ての通りさ」

 

テーブルの上にはピザの皿が重なり酒とストロベリーサンデーもおかれている。この店としては豪勢な食事だ。

 

「前金ありの依頼でね、景気づけの前祝いだ」

「へぇーそりゃ羨ましいね」

 

そういいつつヤシロはピザを一切れ拝借して口に放り込む。

 

「うん、冷えても十分うまいな」

「トニー、誰なのこのだらしのない男」

 

トニーの前に座る少女がヤシロをにらみつける。

仕立ての良いドレスに身を包みんだ少女はお上品にもフォークとナイフを器用に使ってピザを巻いて食べている。

所作もいい、確かに金払いはよさそうだ。

 

「ヤシロだ。俺と同じ魔狩人でここの常連。顔なじみだ」

「ふー-ん、でも冴えない顔ねトニーと違って」

「カッチーン。おいおい魔狩人は顔でやる仕事じゃあないんだぜ。魔狩人ってのは腕の良さが重要なんだ。

 その点俺は凄腕だ。何なら俺も一緒に雇うか?」

 

ヤシロは自信満々に自分の強さをアピールするが、少女には届かなかった。

少女は冷たい目を向けるばかり。

 

「お断りします、間に合ってますので」

「あっ、そう、ったく可愛くないガキ」

 

そういわれてはヤシロにはもう関わりのない話。ぶつくさと文句を言いながら別の席へと離れていった。

 

「やれやれ。それじゃあ詳しい話を聞こうか」

「ええ、でも口外はしないで頂戴ね」

 

食事も終わり邪魔な野次馬も追い払っ。

ここからは真面目な話だ。

 

 

まず事の発端はこうだ。

パティの父親が商会長として営む商会が運ぶ荷の中からご禁制の幻覚草が発見された。

誰かが商会の持つ広い流通網を利用して密輸を行っていたのだ。乗っていた馬車の乗組員は全員拘束したが積み荷の中身すら知らない運び屋でしかなかった。

商会長はすぐさま情報を規制し秘密裏に幻覚草の出所と行き先を調べた。

そして流通の経路などからこの辺りの支店が関わっていると当たりをつけた。

そこで支店長である商会長の弟、つまりパティの叔父にそのことを秘密裏に伝えるため怪しまれないよう商会長の娘であるパティが支店を派遣したのだ。

しかしその帰りに突然先ほどのチンピラ達にによって襲われ、命からがら逃げだした先がこの酒場だったという話だ。

 

「つまり、相手にお嬢ちゃんのことはバレてるってことか」

「ええ、さっきのチンピラは明らかに私を狙っていた。つまり、私が密輸について調べていることは向こうも知っている」

 

この町のローエル商会支部は確実に密輸との関わりがある。

あるいはその支店長である叔父が黒幕なのか。

 

「つまり、叔父さんかその周辺に犯人は居るってことになるわね」

 

沈痛な顔でグラスの水面を見つめるパティ。肉親が違法薬物の密輸に加担し自分を殺す指示を出したかもしれないとなれば思い悩むこともあるだろう。

ましてやまだ若く多感な少女となればなおさらだ。

 

「それで、パティお嬢さんは俺に何をさせたいんだ?」

「できれば犯人を突き止めたい、あなたにはその護衛をしてもらいます。

 襲ってくる奴らから情報を得られればいいんだけど、難しいわね。

 密輸の証拠でもあればよかったんだけど」

「・・・・・・ん? おかしくないか?

 何の証拠もないのなら、わざわざ襲撃して口封じする必要もない。

 調べられるのを恐れるにしてもこうもあからさまなのはおかしくないか?」

「手を出してくるには早すぎるという訳ね、確かに・・・」

 

状況的に怪しいのはその叔父だけだと思ったが本当にそうだろうか?

あるいは他にパティを狙う誰かがいるのか?

どうにも情報が少なすぎるようだ。

トニーはじっくりと考え一つの手段を思いつく。

 

「ふーむ、こうなりゃ直接乗り込むか?」

「乗り込むってどこへ?」

「疑惑の本丸にだよ」

 

 

 

 

―――――――ローウェル商会支店

 

 

 

 




>「心眼(偽)」:
 直感・第六感・戦闘予測による危険回避。
 虫の知らせとも言われる天性の才能による危険予知。
 なおギャンブルには適用されず、テクニックも下手の横好きのためギャンブルには絶対負ける男。
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