公安対魔特異4課の副リーダー 作:人間A
──彼女とは同期だった。
"銃の悪魔"が世界をしっちゃかめっちゃかにしたあの日に俺は彼女と出会った。
別にデビルハンターになるつもりは無かった。それは俺の役目じゃないから。デビルハンターを含むこの世で生きる"人"を見届けるのが俺だったから。むやみに干渉なんてしたくなかったし目立つ気もなかった。
ただ、事情が変わった。俺の目の前に現れた彼女を見て気が変わった。
──野放しは……、ダメだよなぁ
人の死は自然の摂理。
死というものに何も疑問はなく、それは訪れるべくして訪れるこの世の神秘だ。
ただその死にも様々なものがある。
病死、事故死、殺人、自殺。その他にもたくさんエトセトラ…。それらは全てその人に訪れる天命だと俺は思っている。だからその死に干渉する気は無いし、憐れむ気持ちもない。
でも、"悪魔"によって迎えられる死は違う。それは"自然"じゃない。
人の恐怖から生まれる悪魔は自然の理に反するものだ。そんなものによってもたらせられる死はあっていいものじゃない。
だから気ままに悪魔は問答無用に葬った。輪廻を繰り返すなら何度でも殺そう。そう決めて生きていた。
ただ、この目の前に立つ女だけは違う。
その場で殺すのは簡単だった。でも殺し切るまでの過程に生じる"人"の死の数は億を超える。そんなの自然じゃない。だから、俺はこの女のそばにいることに決めた。それの方が安全だから。
──私の下に着いてください。【これは命令です】
そうして俺の目を見ながら彼女はそう言った。
そばにいるとは決めた。でも誰かの下に着く?そんなのは俺じゃない。俺はいつだってフリーダムだ。だから、俺は満面の笑みを浮かべながら彼女に向かってこう言った。
「い・や・だ」
そうして俺と彼女は2人で公安の戸を叩いた。
♦♦♦
廊下を歩いていた。長い出張から帰ってきて久しぶりの我が執務室に向かっている。
窓から差し込む日が眩しい。この眩しさがなかなかに心地いいものだ。
そんなことを思いながら欠伸をした時だった。
「帰ってきてたんだね」
「おいっすー」
向かい側から歩いてきた人物。我らが"公安対魔特異4課"のリーダー様だ。
彼女は片手を上げ気さくな様子で俺の方へ歩いてきていた。
「活躍は耳にしてるよ」
「俺は特に何もしてないけどねー。周りが優秀だとやること無くて」
「そう…」
そういう彼女の口は少し綻んでいる。
この表情がやはりどうしようもなく綺麗で、どうしようもなくきもちわるい。
「そんなニタニタすんなよ。気色の悪い。"未だに変なこと考えてるんか?"」
「……さぁ、どうだろうね。キミがいようがそう簡単に諦められるものでもないよ」
「めんどくさい女は嫌われるってよく聞かない?」
「キミからしたら私はめんどくさい女なのかな?」
「え?当たり前じゃね?」
俺と相反する考えを持って彼女をどうして容認できようか。いいや出来まい(反語)
「ま、くだらんこと考えてると死なない程度にボコるよってことで」
「それはそれは……、こわいね」
そう言って目線が合う。
「……そういえばキミがここの副リーダーになってからこうして2人きりになるのは初めてだね」
「だな」
「やっぱり、副リーダーという名の私の監視……、なのかな?」
「だろーな。つか俺が提案した事だし」
そういうと納得したように頷く。
「そいじゃ、俺はこの後書類のお仕事があるんでここいらで」
「えぇ、引き止めてごめんね」
「ええよー、気にすんなー」
「……またね、"人の悪魔"くん」
「おーう、またな"支配の悪魔"ー」
そうして俺は彼女、マキマと別れた。
これは"人の悪魔"として生まれ落ちたヒューマという男がハッピーエンドを目指す話である。