星6の初完凸処女はサメちゃんに持ってかれました。
アビサルいいよね……
狩人と嵐 1
『陸にあがったエーギルたちは脅威を忘れ久しく、
唯一対抗できていた君たちも陸へ打ち上げられた。
これが意味するところは、最早それは海だけの
問題ではなくなってきているということだ』
その言葉に、彼は奥歯を噛みしめた。
陸の者たちを関わらせまい、という考えは彼にもある。だが恐らくこの存在は彼にとって敵ではなく、エーギルの事情を理解していることから味方であれば有り難い。彼は陸でのエーギルの扱いを知らないが、同胞たちの立場を保護してくれる存在が必要だとは考えていた。今はまだ『海』へ戻ることは叶わないが故に、だ。
『君たちに今必要なのは、時間と立場だろう。
我々の組織は、君たちに必要なものを提供できる。
少なくとも彼等のような者はいないと保証しよう』
彼は足元に転がる者たちを見下ろした。今まで戦ってきた怪物たちとは比べ物にならないほどに脆く、惰弱な彼等には臭いもなく、故に身を隠すのが上手いのが─────そして、もう敵が海だけではないことを知らしめ、彼を酷く苛立たせていた。彼は目の前の存在に視線を戻すと、最後に確認した。
『言っておくが、関わりを持てば
それだけでお前たちは危険に晒されることになる』
『今か後かの違いだ。
あれらはいずれ、源石と同等の脅威と成り得る』
『………お前たちのいう源石とやらがどういうものか
知りはしないが、それに奴等に適合されては
確かに奴等は手がつけられなくなるだろうな』
『アーツと呼ばれる源石による技術は、陸の者たちが
君たちアビサルハンターに抗しえる手段の一つだ。
可能性の一つとしてそうなった場合、テラは
間違いなく崩壊の道を辿ることになるだろう。
そういう意味でも、私は君たちと協力関係を結ぶ
必要があると考えている。君からしてもあれとの
決着は己らである必要性を感じている筈だが、
それ以上に、これは海だけでなく世界の問題だ』
『…………』
『(エーギル語)君の身分については理解している。
それが故に、海への帰還や敵の排除ではなく
アビサルハンターの救助を優先するということも』
その言葉に、彼は微かな眉の動きで、だが確かな驚きを示した。エーギルの言葉を話すことだけでなく、彼の所属や身分は未だ公にはされていないのだから。すぐに彼は観念したように頭を掻くと、一つ溜め息をついた。
『…………(エーギル語)それはハンターたちにも
知らされていないことの筈なんだがなぁ』
『この勧誘は君にとっても悪いことではない。
陸に上がった狩人たちの捜索、救助を、君と
ロドスの協力関係一つで始めることが出来る。
海から陸へ目を向ける、その機会にもなるだろう』
『……………分かった。
だが俺はともかく、他の仲間たちが
ロドスに協力するかは保証できないぞ。
隊長たちが生きていれば別だろうが』
『その隊長の一人の居場所を、私は保有している』
『何!?』
彼はそこで、初めて明確な驚きを露にした。そしてこの目の前の存在が何もかも知っているのではないか、と錯覚すら覚える。そしてその知りたいことを淡々と答える姿に、彼は嘘の気配を微塵も感じられなかった。
『それは─────』
『あの海洋異常から1ヶ月以上が経過した。
君には頼みたい案件がある。
そちらには私が行かせてもらおう』
『………、……………
そいつが攻撃しようとも、手は出さないでくれ』
『約束しよう。私は今からロドスを離れるが、
代わりに此方からも現在作戦行動が可能な
エリートオペレーターを一名同行させる。
信頼に足る者だ。詳細は彼女から聞くといい』
『待て』
そう言って背を向ける相手を、彼は呼び止める。
『………感謝する。ケルシー』
『……………』
ケルシーは振り返ることなく、そのまま扉の前まで進む。そこで、最後にこう言い残してロドスを去っていった。
『君の活躍に期待している。トゥルケトス』
──────
────
──
某日 p.m.14:26 晴天
リターニア、ウォルモンド北部 平野
広大な平野を駆けるのは、ロドス・アイランドのマークが刻まれた4人乗りの車両。その前座席に乗車しハンドルを握るのは、車両と同じロドスのマークの入った上衣に身を包んだリーベリの若い女。そして後部座席には、尖った三角帽を被った黒衣のエーギルの男、トゥルケトスが、得物である黒い長剣のメンテナンスを行っていた。
じりじりと照りつける日差しはそれなりの暑さを感じさせるものの、車両の速度で2人が感じる風はそれ以上のものだった。運転手こと、ロドスのエリートオペレーター、コードネームをTempestという彼女は、大きな溜め息をつく。
「はぁ……」
「浮かない顔だな」
トゥルケトスはルームミラーに映るTempestの顔を見てそう聞く。まだ少女のような幼さの残る彼女の顔には、苦い表情が浮かんでいた。
「……レユニオンとの戦いに出られなかった挙げ句、
またロドスから離れることになったからね。
あなたのせいだって言いたいワケじゃないけど」
「そう言ってくれていい。事実だ」
「それじゃ、あなたのせい。
あーあ、ロドスに帰りたい……」
「は、色々と聞きたいこともある。
陸にはあまり来ることはなかったからな」
「島民、って感じでもないわね。
普通のエーギルとはどっか違う感じだし、
何よりオリジニウムに関しての知識も殆どない。
ハッキリ言うけど異常なのよね、あなた」
そう告げた彼女の黄金色の瞳には、疑惑の念が込められている。ミラー越しに視線が交錯するが、トゥルケトスは特に反応を示さない。それにTempestは再び溜め息をつくと、ミラーから視線を離した。
「ま、そうよね。ケルシー女史にそんな嘘が
通じる訳ないだろうし、何よりこの任務も
あの人があなたを信頼してのものでしょうし……
オペレーターとして推薦なんてしないものね」
「あくまで協力関係上の契約だがな」
「それでも事実だからね。
採用試験、見たけど酷かったわよアレ」
「そうか?」
呆れたように目を細めるTempestに、彼は首を傾げる。
「なにあの戦闘と破壊特化は」
「エーギルの伝統だろう?」
「私の知ってるエーギルじゃないと思うんだけど」
「あの程度なら俺のいた部隊じゃ普通だ」
「呆れた……アーツも知らず使えずで?
とんでもない集団ね……」
Tempestはそこで言葉を切る。トゥルケトスのロドスオペレーター採用試験でみせた戦いは、明らかに対人戦闘の技術ではなかった。Tempestもエリートオペレーターとして数々の任務をこなしてきたが、彼女の瞳には、その戦闘は人間ではなくまるで怪物を相手取るようなものだったように映ったのだ。
大振りの、だが切り刻むための剣。
個人で多数を相手取るような制圧術にも似たそれは、戦士や兵士でもなく、まるで猛獣を相手にするハンターのようにも見て取れた。
「まぁ、そんなことはさておき、だ」
その言葉にTempestが顔を上げると、平野の向こうに空高く聳えるビル群が見えてくる。彼女はアクセルを踏み、車両を更に加速させた。
「ま、色々気にはなるけどいいわ」
平野を進む二人の視界に、その移動都市が姿を表す。
「あれが騎士の国、カジミエーシュの中枢区画。
大騎士領、カヴァレリエルキ……今回の目的地ね」
「……任務は?」
騎士という言葉にトゥルケトスは首を傾げるが、すぐに任務を思い出し、その確認といわんばかりに聞く。
「古代騎士の財宝、またその情報を見つけること。
ね、簡単でしょ?」
「………そうなるといいが」
「え、なにその含みのある言い方」
細められた彼の鋭い視線と、Tempestの視線が交錯する。その問いに彼はすぐには答えず、ほんの一瞬の戸惑うような顔を見せると、口を開いた。
「海の、匂いだ」
彼女は、その言葉の真意を受け取れなかった。
だが彼の震えるような声音に、只事ではない、と。
そう理解するのが、唯一彼女に出来ることだった。