ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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二条城へ向かえ!

「アザゼル先生!どういう事なんですか!?新さんが……新さんが捕まったって――――うっぷ……っ」

 

「良いから一先ず落ち着け」

 

就寝時間間近、一誠の部屋にグレモリー眷属(新不在)+イリナ、シトリー眷属、アザゼル、セラフォルーが集まっていた

 

八畳一間の部屋に10人以上の人数はとにかく狭く、立ち見する者もいる

 

昼前にすこぶる酔っていたロスヴァイセは顔を真っ青にしながらも参加していた

 

酔い覚ましの薬を自分で調合して飲んだのだが、それでも体調万全には戻っていない

 

アザゼルが皆を見回してから部屋の中心に京都の全体図を敷く

 

「現在、二条城と京都駅を中心に非常警戒態勢を敷いた。京都を中心に動いていた悪魔、堕天使の関係者を総動員して、怪しい(やから)を探っている。京都に住む妖怪達も協力してくれているところだ。未だ英雄派と神風一派は動きを見せないが、京都の各地から不穏な気の流れが二条城を中心に集まっているのは計測出来る」

 

「不穏な気の流れ?」

 

「ああ、京都ってのは古来、陰陽道(おんみょうどう)、風水に基づいて創られた大規模な術式都市だ。それゆえ、各所に所謂(いわゆる)パワースポットを持つ。晴明神社の晴明井(せいめいい)、鈴虫寺の幸福地蔵、伏見稲荷大社の膝松さん、挙げればキリが無い程に不思議な力を持つ力場に富んでいる。それらが現在、気の流れが乱れて二条城の方にパワーを流し始めているんだよ」

 

「ど、どうなるんですか?」

 

匙が生唾を飲み込みながら訊く

 

「分からんが、ロクでもない事は確かだ。奴らはこの都市の気脈を司っていた九尾の御大将を使って『実験』とやらを開始しようとしているんだからな。それを踏まえた上で作戦を伝える」

 

アザゼルの言葉に皆が頷き、アザゼルが改めて告げる

 

「まずシトリー眷属。お前達は京都駅周辺で待機。このホテルを守るのもお前達の仕事だ。一応このホテルは強固な結界を張っている為、有事の際でも最悪の結果だけは避けられるだろう。それでも不審な者が近付いたら、シトリー眷属のメンバーで当たれ」

 

『はい!』

 

アザゼルの指示にシトリー眷属の皆が返事をする

 

「次にグレモリー眷属とイリナ。いつも悪いが、お前達はオフェンスだ。この後二条城の方に向かってもらう。正直、相手の戦力は未知数の上、あの神風一派も来る。危険な賭けになるかもしれないが、優先すべきは新と八坂の姫を救う事。それが出来たらソッコーで逃げろ。奴らは八坂の姫で実験を(おこな)うと宣言しているぐらいだからな。……まあ、虚言の可能性も高いが、あの曹操の言動からすると恐らく本当だろう。――――俺達が参戦するのを望んでいるフシが多分にあったからな」

 

「お、俺達だけで戦力足りるんですか?」

 

一誠がそう質問する

 

確かにこちら側の戦力は圧倒的に低い

 

新も英雄派に拉致された挙げ句、神風一派も来る事を考えれば絶望的だった

 

しかし、そんな状況でもアザゼルは不敵に笑う

 

「安心しろ。テロリスト相手のプロフェッショナルを呼んでおいた。各地で『禍の団(カオス・ブリゲード)』相手に大暴れしている最強の助っ人だ。それが加われば奪還の可能性は高くなる」

 

「助っ人?誰ですか?」

 

「トンでもないのが来てくれる事だけは覚えておけ。これは良い報せだな」

 

アザゼルが口の端を愉快そうに吊り上げた

 

ここまで言うのなら相当な手練れが来るに違いなさそうだ

 

「それとこれはあまり良くない報せだ。――――今回、フェニックスの涙が3つしか支給されなかった」

 

「み、3つ!?た、足りなくないですか!?一応、対テロリストと対闇人(やみびと)なんですし!」

 

匙が素っ頓狂な声を上げてアザゼルに問う

 

「ああ、分かっている。だが、世界各地で『禍の団(カオス・ブリゲード)』がテロってくれるお陰で涙の需要が急激に跳ね上がってな。各勢力の重要拠点への支給もままならない状態だ。元々大量生産が出来ない品だったもんでな、フェニックス家も大変な事になっているってよ。市場でも値段も高騰しちまって只でさえ高級品なのに、頭に超が2つは付きそうな代物に化けちまった。噂じゃ、レーティングゲームの涙使用のルールも改正せざるを得ないんじゃないかって話だ。お前達の今後のゲームに影響が出るかもしれない事だけ頭の隅に置いておけ」

 

テロが多ければ怪我人も増え、それによって回復アイテムたるフェニックスの涙の需要が高くなっても不思議じゃない、寧ろ当然の事でもある……

 

アザゼルが話を続ける

 

「これは機密事項だが、各勢力協力して血眼になって『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』の所有者を捜している。レアな神器(セイクリッド・ギア)だが調査の結果、アーシアの他に所有者が世界に何人かいると発覚しているからな、スカウト成功は大きな利益になる。冥界最重要拠点にある医療施設などには既にいるんだが、スカウトの1番の理由は―――テロリストに所有者を捕獲されない為だ。優秀な回復要員を押さえられたらかなりマズい。現ベルゼブブ―――アジュカも回復能力について独自に研究しているそうだが……。まあ、良い。それとグリゴリでも回復系人工神器(セイクリッド・ギア)の研究も進んでいる。実はアーシアに陰で回復の神器(セイクリッド・ギア)について協力してもらっていてな。良い結果も出ている」

 

アザゼルの言葉にアーシアが照れていた

 

実はアーシアは陰で冥界の役に立っていたりする

 

「てな訳だ。この涙は―――オフェンスのグレモリーに2個、サポートのシトリーに1個支給する。数に限りがあるから上手に使ってくれ」

 

『はい!』

 

アザゼルの指示に皆が返事をした所で、アザゼルの視線が匙に移る

 

「匙、お前は作戦時、グレモリー眷属の方に行け」

 

「お、俺っスか?」

 

匙が自身を指で差す

 

予想外の指名だったが、直ぐに自分の役目を理解した

 

「……龍王、ですか?」

 

「ああ、そうだ。お前のヴリトラ―――龍王形態は使える。あの黒い炎は相手の動きを止め、力まで奪うからな。ロキ戦のようにお前がグレモリーをサポートしてやってくれ」

 

「そ、それは良いんですけど、あの状態って意識を失いかけて暴走気味になりやすいんです」

 

「問題無い。ロキの時と同じ様にイッセーがお前の意識を繋ぎ止めてくれるだろう。イッセー、その時は匙に話し掛けて何とかしろ。―――天龍なら、龍王を制御してやれよ」

 

「は、はい!」

 

1度は出来た事、一誠は気合を入れて返事をした

 

ここでイリナが手を上げてアザゼルに質問する

 

「あの、この事は各勢力に伝わっているのですか?」

 

「当然だ。この京都の外には悪魔、天使、堕天使、妖怪の者達が大勢集結している。奴らが逃げないように包囲網を張った。―――ここで仕留められるなら、仕留めておいた方が良いからだ」

 

「外の指揮は任せてね☆悪い子がお外に出ようとしたら各勢力と私が一気に畳み掛けちゃうんだから♪」

 

アザゼルの言葉に続く様に明るく抹殺宣言するセラフォルー

 

有事になったら大暴れしそうな雰囲気だった……

 

「それと駒王学園(くおうがくえん)にいるソーナにも連絡はした。あちらはあちらで出来るバックアップをしてくれているようだ」

 

「先生、うちの部長達は?」

 

一誠の質問にアザゼルは顔を少し(しか)めた

 

「ああ、伝えようとしたんだが……タイミングが悪かったらしくてな。現在、あいつらはグレモリー領にいる」

 

「何かあったんですか?」

 

「どうやら、グレモリー領のとある都市部で暴動事件が勃発してな。それの対応に出ているようだ」

 

「ぼ、暴動!?まさか『禍の団(カオス・ブリゲード)』!?」

 

「旧魔王派の一部が起こした暴動だ。『禍の団(カオス・ブリゲード)』に直接関与している輩でもないらしい。それでも暴れているらしくてな、あいつらが出ていった訳だ。一応、将来自分の領土になるであろう場所だからな。―――それにグレイフィアが出陣したと報告を受けた。まあ、あのグレイフィアが出たとなると、相手の暴徒共もおしまいだろう。正確かどうかは分からないが、グレモリー現当主の奥方もその場にいるそうだ。―――グレモリーの女を怒らせたら大変だろうさ」

 

「まあ、『亜麻髪(あまがみ)絶滅淑女(マダム・ザ・エクスティンクト)』、『紅髪(べにがみ)滅殺姫(ルイン・プリンセス)』、『銀髪(ぎんぱつ)殲滅女王(クイーン・オブ・ディバウア)』が揃っちゃうのね☆うふふ、暴徒の人達、大変な事になっちゃうわね♪」

 

アザゼルが若干体を震わせながらそう言い、セラフォルーが楽しげに不吉極まりない二つ名を連呼した

 

絶滅、滅殺、殲滅……まさに“絶対に触れてはいけない”を体現したかの様なフレーズである……

 

アザゼルは黄昏(たそが)れるように「……(あいつ)も将来大変だな」と明後日の方角を向いてボソリと呟いた

 

アザゼルが咳払いして改めて皆に告げる

 

「と、俺からの作戦は以上だ。俺も京都の上空から独自に奴らを探す。各員1時間後までにはポジションについてくれ。怪しい者を見たら、ソッコーで相互連絡だ。―――死ぬなよ?修学旅行は帰るまでが修学旅行だ。―――京都は俺達が死守する。良いな?」

 

『はい!』

 

全員が返事をしたところで作戦会議が終わる

 

新と八坂姫の救出、難易度の高い任務に一誠達は気合を入れ直した

 

ここでロスヴァイセが呟く

 

「……早く新さんを助け出さないと……」

 

「そうだな、あいつを失うのは大きな損害になりえん。これを機に奴らが―――」

 

「違います……っ。もし、新さんが捕まってる八坂姫と遭遇したら―――絶対エッチな事をしてしまうじゃないですか……っ」

 

『あ、あり得そうで怖い……』

 

ロスヴァイセの酷い言い掛かりに全員の意見が見事に一致してしまった……

 

 

―――――――――――

 

 

その頃、新は英雄派の一時的なアジトで未だに眠りから覚めずにいた

 

右手を負傷した挙げ句、乱入してきた神風一派のアドラスが放った熱光線を防いだものの、その身を焼かれて重傷を負った

 

その後は『絶霧(ディメンション・ロスト)』に包まれ、英雄派のもとに連れ去られていたのだ

 

(しばら)くした後、体を襲う痛みで目覚める

 

痛む傷を押さえ、手を突っ張らせて起き上がる

 

「……ここは……?確か、あの熱光線を受けて―――」

 

「お、目が覚めたようだな。竜崎新。一応、応急処置はしたんだが傷の塩梅(あんばい)はどうかな?」

 

声を掛けてきたのは曹操

 

彼の周りには先程対峙したジークフリートにローブを羽織った『絶霧(ディメンション・ロスト)』使いの青年の他、以前新と会ったジャンヌ、そして見慣れない2メートルはある巨体の男がいた

 

新は咄嗟に飛び退いて攻撃態勢を取ろうとしたが……鎧どころか籠手すら現れない

 

不審に思って自分の体を見てみると―――首輪の様な装置が付けられている事に気付く

 

「曹操、この首輪はいったい何だ?俺に何をした?」

 

「やれやれ、傷を負っても闘争心を衰えさせないとは。流石(さすが)バウンティハンター、血気盛んだね。キミに付けた首輪は対象者の異能を封じる装置だよ。ここで暴れられると困るんでね。少しの間だけおとなしくしてもらうよ」

 

「チッ、敵陣の真っ只中か……。状況は最悪だぜ……」

 

「そう言えば紹介が遅れたな。紹介しておこう。このローブを羽織ってるのがゲオルク―――『絶霧(ディメンション・ロスト)』の使い手だ」

 

曹操がローブを羽織った青年―――ゲオルクを指差す

 

「既に会っていると思うが、彼女はジャンヌ。キミの大ファンだそうだ」

 

「うふふ、やっとお姉さんのもとに来てくれたわね♪アーくんっ♪」

 

ジャンヌは嬉しそうに新に抱き付き頬擦りする

 

「そして最後にこっちがヘラクレス。英雄ヘラクレスの魂を引き継いだ男だ」

 

曹操が近くにいたヘラクレスを指差し、ヘラクレスがズシズシと歩み寄る

 

「へっ、こんなガキが今まで危険視していた闇皇(やみおう)かよ。力が使えねぇ今じゃ、ただのクソガキだな」

 

「ちょっとヘラクレス。私のアーくんをバカにしないでくれる?アーくんは大事なゲストなんだから」

 

「俺は本当の事を言ったまでだぜ。そんなクソガキに何が出来るってんだ」

 

ヘラクレスの罵声に新は少しキレ、寝床から体を起こしてヘラクレスを睨み付ける

 

「あ?何だ、何か文句あんのか?」

 

「口の聞き方に気を付けろよ、筋肉ダルマ。力を使えなくてもテメェを沈めるぐらい出来るんだよ」

 

「ハハハハッ!やってみろよ、腐れ悪魔が!今のてめぇに何が―――」

 

ヒュッ!ゴキンッ!

 

新はヘラクレスが言葉を言い切る前に素早く拳を打ち込んだ―――ヘラクレスの股間に……

 

人体の急所を攻撃されたヘラクレスは悶絶、新は微塵も容赦せず股間への集中砲火を続けた

 

拳と蹴りの乱舞で股間をいたぶった後、重いローキックでヘラクレスを転がし―――トドメに股間を踏みつけた

 

「……が……っ!」

 

鈍い悲鳴を上げるとヘラクレスは白目を向いて気を(うしな)い、新は気絶したヘラクレスに吐き捨てる

 

「どんなに鍛えようが、男はソコをやられたら1発で倒れるんだよ。学習しておけ」

 

「……実際は10発以上入れてたけどね……」

 

曹操は顔を逸らして吹き出すのを堪え、ジークフリートが苦笑しながら『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』の腕を背中から生やし、気絶したヘラクレスを引きずっていく

 

ジャンヌはよほどスカッとしたのか、引きずられていくヘラクレスに向かって舌を出す

 

「やっぱり最高ね、アーくんは♪」

 

「いやー、スマない。ヘラクレスはああ言う男なんでね。しかし……キミは本当に面白い男だ。力を封じられてもこれだけ噛み付けるなんて」

 

「あの筋肉ダルマが油断してただけだ」

 

「実に正直で面白い。ジャンヌ、彼をあの部屋に案内してあげてくれ。彼女も退屈しているだろうから、良い話し相手になると思うんだ」

 

「はいはい」

 

曹操の指示とジャンヌの案内で連れていかれる新

 

廊下らしき道を(しばら)く歩いていると、如何にも何かを閉じ込めていそうな冷たく重い鉄の扉の前に到着した

 

「アーくん、悪いけど暫くこの部屋でおとなしくしててね?」

 

「何だ、牢屋か?」

 

「そうよ。―――九尾のお姫様付きのね♪」

 

ジャンヌの言葉に新の眉がピクッと動く

 

ジャンヌは鉄の扉を開け、新はおとなしく中に入る

 

新が足を踏み入れた直後、ジャンヌが扉を閉めて鍵を掛ける

 

最後に「何か必要な物があったら言ってねー♪」と言い残し、ジャンヌはその場を去っていった

 

薄暗い牢屋の中を見渡すと、奥の方で座り込んでいる女性を発見

 

頭部に獣耳を生やし、巫女装束を身に纏った金髪の女性……

 

その人こそ九重の母―――八坂だった

 

新が歩み寄ると、それに気付いた八坂が警戒した口調で言う

 

「……何者じゃ」

 

「あんたが八坂姫か。安心してくれ。俺は竜崎新、俺もあんたと同じく捕まった側の者だ。九重から話を聞いて助けようとしたが、このザマだ」

 

「九重!?お主、九重の知り合いか!?九重はっ、わらわの娘は無事なのか!?」

 

九重の名を聞いた途端、激しく狼狽する八坂姫

 

「あぁ、九重は無事だ。俺の頼もしい仲間がガードしている」

 

「そうか……良かった……っ。取り乱してすまぬ……。てっきり、娘まで捕まったのかとばかり……」

 

張り詰めた気が抜けたのか、八坂は安堵の溜め息を吐く

 

新は八坂の前に座り込んで胡座(あぐら)をかく

 

「本当にすまんのぅ……。わらわのせいでお主までこんな所に……」

 

「いや、気に病む事は無い。あんたのせいじゃねぇよ。俺が油断しちまっただけだ」

 

「しかし……」

 

「それに直ぐ助けが来るって。今はそれを信じて待つしか無いけど―――必ずあんたを助ける」

 

力強く発言する新

 

微塵も諦めを見せない様子に八坂は訊ねる

 

「……何故、そこまで言い切れるのじゃ……?こんな絶望的な状況やのに……」

 

「あいつらを……一誠達を信じられるからだ。昔の俺は他人を簡単に信じたりしなかった……。でも、あいつらと会ってからは心の底から信じ合える様になれたんだ。だから、捕まっている今でも諦めたりはしねぇ」

 

そう断言する新に感銘を受ける八坂

 

少し前まで固い表情だった彼女に柔らかな笑みが生じる

 

「……強いんやねぇ」

 

悄気(しょげ)た顔の女を放っておけないし、落ち込んだままだと美人が台無しだぜ?」

 

「ふふっ、不思議やわぁ。お主のお陰で少し気が楽になったわぁ」

 

「そいつは良かった」

 

この後、新は八坂を元気付ける為に会話を続け、八坂の表情にだんだん明るさが戻っていった

 

 

―――――――――――

 

 

ホテル入り口、ロビーで仲間と合流した一誠は自動ドアの先で集まっていたシトリー眷属を見掛ける

 

「元ちゃん、無理しちゃダメよ」

 

「そうよ、元ちゃん。明日は皆で会長へのお土産買うって約束なんだから」

 

「おう、花戒(はなかい)草下(くさか)

 

元士郎(げんしろう)、テロリストと闇人(やみびと)にシトリー眷属の意地を見せてやるのよ?」

 

「分かってるよ、由良(ゆら)

 

「危なくなったら逃げなさい」

 

「足なら鍛えてるよ、(めぐり)

 

匙が仲間に激励を貰っている

 

匙も夏休みが明けてから眷属同士で仲良くなったのだが、肝心のソーナとの進展は無かったらしい……

 

溜め息を吐く一誠の肩に祐斗が手を置く

 

「部長不在の今、仮としての僕達の『(キング)』はイッセーくんだ」

 

「―――っ!マ、マジかよ!俺が『(キング)』!?良いのか、それで!?」

 

突然の発言に驚愕し、自身を指差しながら問い返す一誠

 

「何を言っているんだい。キミは将来部長のもとを離れて『(キング)』になろうとしている。それならこの様な場面で眷属に指示を送るのは当然となるんだよ?」

 

「そ、それはそうかもしれないが……」

 

“俺に部長の代わりが務まるのか……?”と疑問に思う一誠に祐斗が言う

 

「昼間の渡月橋での一戦、新くんと土壇場の判断とはいえ、僕達に指示を出した。それが最善だったか、良案だったかは分からないけれど、僕達は無事に今ここにいる。だから、僕は少なくとも良い指示だったと思える。―――だからこそ、新くんも捕まっている今夜の一戦、僕達の指示をキミに任せようと思うんだ」

 

「そうだな。私やイリナ、アーシアは指示を仰いだ方が動ける。咄嗟とはいえ、部長の欠けたチームを上手く纏めたと思うぞ」

 

「うんうん。けど、無茶をして飛び出し過ぎるのはダメよ?」

 

「そうです。無理は禁物です」

 

ゼノヴィア、イリナ、アーシアが続いて一誠を評価する

 

「このチームに入って間も無い身なので、チームでは先輩のイッセーくんに任せます」

 

ロスヴァイセもそう言ってくれる

 

一誠は改めて眷属―――仲間の良さの感銘に浸っていると……ゼノヴィアが手に持つ得物に視線が行った

 

魔術文字らしき物が記された布にくるまれた長い得物……

 

ゼノヴィアが視線に気付いて得物を見せる

 

「ああ、これか。先程教会側から届いたばかりだ。―――改良されたデュランダルだよ。いきなり実戦投入だが、それも私とデュランダルらしくて良いだろう」

 

誇らしげに見せるゼノヴィア

 

その後で匙が合流し、他のシトリー眷属からも激励を貰った

 

ホテルの入り口を出ようとした矢先、思いがけない人物が一誠達の前に現れた

 

「HEY!一誠、待ってたZE()!」

 

「―――っ!?ダイアン!?お前どうしてここに!?」

 

驚く一誠の前に現れたのは昼間に会った一誠の親友―――ダイアンだった

 

未だに警戒する祐斗達を前に、ダイアンは(てのひら)を向けて言う

 

「話は一誠のTeacher(ティーチャー)から聞いたZE()。神風が『禍の団(カオス・ブリゲード)』と共に現れたらしいじゃねぇKA()。俺も一緒に行かせてくRE()

 

「アザゼル先生、いつの間に……。ああ、お前が来てくれるなら百人力だ!」

 

「イッセーくん、本当に彼を連れていくのかい?だって彼は―――」

 

「木場、ダイアンは俺のダチだ!ダイアンは人を騙す様な真似はしないっ!頼むっ、この通り!こいつを信じてくれっ!」

 

深々と頭を下げる一誠に祐斗は少し戸惑い、ダイアンも続くように頭を下げる

 

少し考えてから祐斗は結論を出した

 

「……そこまで頼まれたら、断れないよね。分かった、キミの言葉を信じるよ」

 

「―――っ!サンキュー、木場!じゃあ、宜しく頼むぜ、ダイアン!」

 

「OK!任せてくRE()!」

 

頼もしい助っ人が1人増えた所で京都駅の方へ向かっていく

 

ホテルを出て京都駅のバス停に着き、ここからバスに乗って二条城へ向かう予定である

 

一誠達は冬服の制服姿で、ゼノヴィアとイリナは教会製の戦闘服を下に着込んでいる

 

いざとなったら制服を脱いで動きやすくするらしい

 

ロスヴァイセは未だに「うっぷ……」と口を手で押さえ、時折襲ってくる吐き気と戦っていた……

 

バス停でバスを待っている時、一誠の背中に何かが飛び乗ってきた

 

赤龍帝(せきりゅうてい)!私も行くぞ!」

 

飛び乗ってきたのは巫女装束の少女―――九重だった

 

「おい、九重。どうしてここに?」

 

一誠の肩に肩車の格好で座る九重は一誠の額をペチペチ叩きながら言う

 

「私も母上を救う!」

 

「―――っ!お、おいおい!危ないから待機しているよう、うちの魔王少女様や堕天使の総督に言われたろ?」

 

「言われた。じゃが!母上は私が……私が救いたいのじゃ!頼む!私も連れて行ってくれ!」

 

一誠はすぐアザゼルに連絡しようかと考えたが、九重の気持ちも分からなくはない……

 

それに九重の存在が八坂を助ける切っ掛けになるかもしれない

 

そう考え、九重の意志を尊重しようとしたその時―――足下に薄い霧が立ち込めてきた……

 

同時にぬるりとした生暖かい感触が全身にまとわりつく

 

昼間にも味わった霧―――『絶霧(ディメンション・ロスト)

 

この現象を把握した時には、霧は一誠達の全身を(おお)っていた……




次回は一誠とダイアンの共闘です!
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