明くる日の事
新と一誠とリアスの3人は冥界のシトリー領に来ていた
自然豊かな林道を豪華なリムジンが進んでいく
「今回のこの件はお母さま経由なのよ」
話によると、サイラオーグの執事が折り入って話があるとグレモリー家に伝え、それをヴェネラナが了承しリアスに伝えたらしい
リアスの母―――ヴェネラナは元々バアル家の出身、サイラオーグの執事はその
「何の用で呼び出されたかは分からんが、シトリー領に入るのは初めてだな」
「そうだな。自然豊かって感じがする」
「ええ、シトリー領は数ある上級悪魔の領土の中でも自然保護区が多い所ですもの。美しい景観の場所がたくさんあるわ。今度、皆で来ましょう」
確かに行く先に広がる山々は色の木々に囲まれており、如何に大自然に恵まれているのかが分かる
車窓から外を眺める新と一誠にリアスは続ける
「そして、医療機関が充実している領土の1つでもあるわ」
「医療ですか」
「ええ、これから向かう先も冥界でも名だたる病院の1つよ」
「病院?俺達は病院に向かっているのか?」
予想外の答えに新と一誠はお互いの顔を見合わせる
その理由を聞き出そうにも今は聞き出しづらく、現地に着けばいずれ分かるだろうと思い聞き出すのをやめた
やがてリムジンは
車から降りると執事姿の中年の男性が新達を迎え入れた
「お待ちしておりました」
「ええ、案内してちょうだい」
リアスがそれだけ言うと中年の男性は「どうぞ、こちらに」と歩き出していき、そのあとを3人はついていく
広い院内を進んでいき、エレベーターに乗り込む
そこでリアスが静かに口を開いた
「私の母がバアル家の出である事は知っているわよね?」
「あぁ、リアスとサイラオーグはいとこ同士なんだろ?」
「ええ、そうよ。うちの母はサイラオーグのお父様―――バアル家現当主の姉だから。腹違いなのだけれどね。サイラオーグのお父様が本妻の息子、私の母が第二夫人の娘。そして、おばさま―――サイラオーグのお母さまは元72柱であり、上級悪魔の一族、ウァプラ家の出なの。獅子を
「ウァプラ……獅子を司る一族、か……。如何にもサイラオーグらしい血筋だな」
会話をしている内にエレベーターが上階に止まり、扉を抜けるとそこは病室のフロアだった
更に進むこと数分、執事に連れられてとある一室の前に辿り着く
「ここでございます」
中に入っていく執事とリアス
新と一誠も後からついていくと―――個室のベッドに綺麗な女性が眠っていた
「……ごきげんよう、おばさま」
リアスは眠る女性に悲哀に満ちた眼差しを向けていた
“おばさま”と言うワードに新はその女性が何者なのかを察した
「……この方はミスラ・バアル様。サイラオーグ様の母君でございます」
やはりサイラオーグの母親……
生命維持装置の様な呼吸器を付けたまま眠っている点を見ると、体の何処かに異常があるようだ
執事が花束を持ったまま、目から涙を流す
「……今日、ここへお呼びしたのは他でもありません。リアス様、赤龍帝殿、闇皇殿、どうかこの方を……ミスラ様を目覚めさせる為にご助力願えないでしょうか……?」
突然執事に泣かれ、当惑する新と一誠
そんな2人にリアスは語り始める
「2人にも分かるよう、少しだけ話すわ」
それは一組の母子が辿った激動の運命だった……
サイラオーグはバアル家当主の父親と獅子を司る名門ウァプラ家の母親の間に生まれた
次期当主が生まれたと周囲は大変喜んだそうだ
しかし……生まれて直ぐサイラオーグにツラい現実が突きつけられる……
魔力が皆無に等しく、バアルの特色である『消滅』の力を持っていなかった
代々より当主は魔力に恵まれ、『消滅』の力を持つ事が当然とされていたのだが―――サイラオーグはそれを持たずに生まれてきてしまった
失意に暮れるサイラオーグの父親は怒りを妻に向けた
『我が一族が持つ滅びの力を何処に置いて、こんな欠陥品を産んだのだ!?』
―――欠陥品
魔力と滅びを持たずに生まれただけでサイラオーグは父親に見捨てられ、同様にその子を産んだ母親も
―――欠陥品を産んだバアル家の
「……あまりにも酷いものでした。当時のバアル家の者は、私を含めたウァプラ家からの従者達を除き、殆どの者がサイラオーグ様とミスラ様を侮蔑し、差別したのです」
うっすらと目に涙を浮かべながらリアスも言う
「当時のグレモリー家もその噂を聞いて、母がおばさまとサイラオーグをグレモリーの領土に保護しようとしたのだけれど、あちらに強く拒否されてしまったらしいわ。―――本筋の者でもなく、嫁に行った者がバアル本家の事に口を出すな、と」
グレモリーには滅びの力を色濃く受け継ぎ、冥界で活躍していたサーゼクスがいたのだが、バアル家にとっては面白くなかったそうだ
本家の子供が特色を受け継がず、嫁に行った者の子の方に遺伝してしまった……
バアル家にとってこれ程痛い皮肉は無い
「大王であるバアル家は世襲ではない現魔王を除けば、家柄的にはトップに君臨する上級悪魔。なかなか他の御家でも口出しが難しいわ。そしてプライドが何よりも高く、周囲の目を気にする。おばさまとサイラオーグは厄介者でしかなかったのよ」
その後、ウァプラ家がサイラオーグの母親とサイラオーグの帰還を求めたが、バアル家からの返事は残酷なものだった……
「サイラオーグ様だけは渡す訳にはいかないと、ご当主様はおっしゃったのです。家の恥を出す訳にはいかないと。その様な提案をミスラ様が飲める訳がございません。ミスラ様の保護が無ければ幼いサイラオーグ様は幽閉され、独り蔑まれて生きていかねばならなかったからです。ミスラ様は故郷の助力を断り、サイラオーグ様と私達一部の従者のみを連れてバアル領の辺境へと移り住む事になったのです」
バアル領の辺境ならば本家にとっても目の届く位置にあり、何よりも外部にサイラオーグを晒す事も無い
その点からバアル本家はバアル領の奥地に母子が移り住む事を認めた
家の援助がほぼ無い中、サイラオーグは
「上流階級育ちのミスラ様にとって、助力無しでの田舎暮らしはお
魔力が皆無に等しい悪魔は何処へ行っても良い待遇は受けない
田舎に移り住んでもサイラオーグは差別の対象にされた
同世代の下級、中級悪魔の子供達よりも魔力が劣っていた為、その者達にいじめられたと言う
「それでもミスラ様は泣いて帰ってくるサイラオーグ様に強く言い聞かせておいででした」
―――魔力が無くとも、あなたには立派な体があります。足りないと思うのなら、その足りないものを何かで補いなさい!腕力でも良い、知力でも良い、速力でも良い、補ってみなさい!あなたは誰が何と言おうとバアル家の子。たとえ魔力が無かろうと、滅びの力が無かろうと―――
「―――諦めなければいつか必ず勝てるから。以前、サイラオーグから聞いた言葉よ。母から教わった大事な言葉だって言ってたわ」
“諦めなければいつか必ず勝てる”
それは新にとっても、一誠にとっても胸の奥にまでズッシリと来る言葉だった
「裏では何度も謝り続けていたのです。滅びの力を持たさずに産んでごめんなさいと。ミスラ様は眠りにつくサイラオーグ様の横で何度も何度も泣き続けられておられました……。サイラオーグ様はそれを察しておられてもいたのでしょう。ある日突然、泣くのをお止めになられたのです。そして、何事にも真っ正面から立ち向かっていったのです」
自分をバカにした者達に、自分が足りないものに、サイラオーグは正面から立ち向かい、何度も倒れ続けながらも立ち上がっていき―――そしてサイラオーグはそこで夢を掲げた
―――実力があればどんな身の上の悪魔でも夢を叶える事の出来る冥界を作りたい、と……
悪魔業界も実力社会だが、実質は上流階級とそれ以外で世界が丸っきり違う
たとえ力を持っていても出自が下級ならば望める生き方を出来る者は少ない
古い家柄を持つ上級悪魔からの下級、中級悪魔に対する差別は未だに残っている
サイラオーグが受けた差別は想像を超える程凄まじく、如何に自分達が恵まれている方なのかを痛感させられた
サイラオーグが中級悪魔とまともに勝負が出来るようになってきた頃、サイラオーグの母親の体に異変が起こる……
「……悪魔がかかる
リアスが寂しげに目元を細めながらそう言った
あらゆる方法を模索したが結局治療方法は見つからず……それでもサイラオーグは突き進むしかなかった
「その後、体を鍛え上げたサイラオーグは満を持してバアル家に帰還し、旦那様と後妻様の間に生まれた弟君を実力で
滅びの力を宿していたと思われる弟を倒し、今の地位を手に入れたサイラオーグ
ここで1つの疑問が新の頭に浮かび上がる
「サイラオーグはその弟を倒してバアル家に帰還したんだよな?なら、サイラオーグの母親はどうしてここに?ここの方がバアル領の病院よりも医療環境が良いって事か?」
「それもあるけれど……バアル領だとおばさまを狙う者がいるでしょうから」
「狙う!?な、なぜにそんな物騒な!」
「次期当主の座を奪われたサイラオーグの弟を始め、滅びの力を持たずに次期当主になったサイラオーグを
大王家次期当主の権力争いは未だに継続している……
悪魔社会の裏は想像以上に泥沼化してるようだ
執事が涙をハンカチで
「あなた方をお呼びしたのは他でもありません。ミスラ様のご病気の治療にご助力願えないでしょうか?なんでも赤龍帝殿は女性の胸に秘められた声を聞く技を、闇皇殿は邪悪な『気』などを喰らう技をお持ちになられているとのこと。お二人のパワーが奇跡を呼び込むと聞きましたもので。是非、お願い致します。担当医の了解は取っております」
執事にそんな事を言われるが……つまり、ここで『
新と一誠はお互いに顔を見合わせながら困惑する
それもその筈、この2人の技は元々がエロ技なのだから……
しかも、それを病人―――サイラオーグの母親に向けて使って欲しいなど無茶ぶりにも程がある……
シリアスな話をしていたのに一転していつものバカ展開……
リアスが頬を赤く染めながら言う
「……つ、通じるかどうか分からないけれど、医師の了解が取れているのなら物は試しね。新とイッセーの技は何度も奇跡を起こしているし、もしかしたらと言う事もあるわ。おばさまに技を掛けてみてちょうだい、新、イッセー」
リアスにそこまで言われると断る理由も無い……
執事も頭を深く下げて懇願している中、新と一誠は覚悟を決めた
「分かりました。何処までやれるか分かりませんが、やってみましょう!」
「はぁ……最近こんなアホな展開ばっかりだよな……」
新はガックリと肩を落とす
まずは一誠が籠手を出現させて力を溜め込む
ある程度溜めた所で技を発動させた
「『
一誠を中心に謎の魔力空間が広がっていき、一誠はサイラオーグの母親に語りかけた
「サイラオーグさんのお母さん、俺にだけ聞こえる声で答えてください!げ、元気ですかーっ!」
『…………』
訊いてみたものの返事は無し
「今度は鎧になって訊いてみます!」
赤龍帝のパワーを脳内に送って更に魔力を高める
『
「今度こそ!サイラオーグさんのお母さんのおっぱい!どうぞ、俺に話し掛けてみてください!」
サイラオーグの母親が赤いオーラに包まれていく
パワーを上げて再度訊いてみるが―――やはり反応は無かった
病気で意識を失っている者に対しては効かないのだろうか……?
「……すみません、ダメでした」
鎧を解いて謝る一誠
「次は俺か」と新も
その刃先から黒い闇が出現し―――サイラオーグの母親を包み込む
新の方も一誠と同じく発展無しで終わってしまった
「……俺の力でもダメだった、すまん」
「……何をしているんだ、お前達は」
突然の第三者の声
振り返ってみると、そこにいたのはサイラオーグだった……
「そうか、すまないな」
事の
病室で話し込むのも迷惑なので、休憩フロアに移動していた
「ごめんなさい、新とイッセーにあなたの事を話したわ。ゲーム前だと言うのに……。それに今日は何も役に立てなかったわね」
申し訳なさそうに謝るリアス
ゲーム前にサイラオーグの過去を話したので余計な感情を新と一誠に持たせてしまったかもしれないと思っているのだろう
「構わんさ。来てくれただけで充分だ。母も喜ぶだろう。それに72柱に連なる家では珍しくない事ではない。次期当主を巡る争いなんてものはな。それがたまたま現代の大王家で起こっただけの事だ」
サイラオーグは自分の過去をまるで大した事が無かったかのように言う
「シトリー家とグレモリー家には世話になっている。それに関しては感謝の念が尽きない」
「良いのよ、それぐらいさせてもらうわ」
「だが、ゲームは別だ。次のレーティングゲーム、勝つのは俺のチームだ。余計な感情は捨ててくれ。俺が欲しいのは同情でも手加減でもない、本気のグレモリー眷属だ」
堂々と大胆不敵に宣言してくるサイラオーグは自身の拳に視線を落とす
「俺には
サイラオーグは戦意に満ちた瞳を向けてそう言う
新は口の端を吊り上げ、一蹴は生唾を飲み込むとサイラオーグに向けて発した
「俺は手加減なんてしねぇよ。サイラオーグが過去にどんな事を体験してきたとしても、それはゲームとは関係無い。それに最初から手加減や同情だけでお前に勝てるとも思っちゃいない。全力で倒しに行く、覚悟しとけ!」
「俺も上級悪魔になる事が夢です!最強の『
新と一誠の言葉を聞いてサイラオーグが満足そうに笑んだ
「それで良い。ああ、それで充分だ。そして、やはり京都で何かを得たな?瞳から強さを見て取れる。リアス、兵藤一誠、竜崎新、俺も夢の為、野望の為、ゲームに臨もう」
「ええ、私は負けないわ」
サイラオーグの一言にリアスも大胆に答えた
その後、サイラオーグと執事に別れの挨拶をしてから帰路についた
帰りのリムジンの中、新は車窓から森を眺めつつ今の自分と過去の自分の心境を振り返る
バウンティハンター時代、新には決まった夢が無かった……
ただ生きる為に賞金首を捕らえ、時には殺し、金を得て酒や娯楽に注ぎ込む
毎日がその繰り返し……
仕事をしている時、酒を飲んでいる時、ギャンブル等をしている時、女を抱いている時は気持ちが高ぶっていたが―――それ以外は虚しさが多かった……
夢を見ず、
“昔の俺って、思った以上に情けなかったんだな……”
新は心の中でそう自嘲する
しかし、今は違う……
リアス・グレモリーに出会った事で劇的に変わった―――否、“変われた”と言った方が正しい
眷属悪魔に転生したお陰で仲間が出来た
心の底から笑い合えるようになった
毎日が楽しいと思えるようになった
自分の夢と希望が生まれ、一緒に目指してくれる友がいる
そして何より―――社会の吹き溜まりとも取れる世界から足を踏み出す事が出来た……
リアスに出会っていなければ、今でもバウンティハンターとして余生を送っていただろう
金はあれど、目指す夢や掲げる目標も無い自堕落な一本道を……
“ありがとう……リアス……”
自然と小さく呟いてしまった本音
隣にいたリアスは一瞬だけ聞き取れたのか、胸の奥が疼く様な感覚に襲われる
真っ直ぐな感謝の念を聞けた事にリアスは小さく微笑んだ
―――――――――――
約束の時間午後19時頃、新は正門を飛び越えて駒王学園の敷地内に侵入
誰もいない事を確認し、学園内の剣道場へと向かう
シトリー領の病院から人間界に戻ってきた後、新はそのままリアス達と別れて駒王学園にやって来たのだ
学園内に侵入し、剣道場の中に入ってみると―――部活終わりなのか、剣道着を着たままの村山と片瀬がいた
2人ともソワソワしており、落ち着かない様子である
新は扉に鍵を掛けてから2人の方に歩み寄っていく
「待たせちまったか?」
声を掛けると2人はその質問に対して首を横に振る
村山と片瀬は深呼吸して自分達が新を呼び出した本題に入る
「あ、あの……竜崎くん……っ。こ、こんな時間に呼び出してごめんね……?」
「きょ、今日来てもらったのは他でもないの……っ。竜崎くんに伝えたい事があって……」
顔を赤らめ、頻りに手をモジモジさせる村山と片瀬
こう言う時の顔や仕草を新は知っている……
村山と片瀬は意を決して自分達の想いを吐き出した
「「私達…………好きですっ、竜崎くんの事が好きですっ!」」
予想していた言葉が見事に的中した
しかし、問題はここからである
もし、彼女達に自分と付き合って欲しいと言われたらどうするのか……?
新自身は人間ではなく悪魔、新達の事情に彼女達を巻き込む訳にはいかない
今までの自分なら考える間も無く、肉体関係だけに
だが、新は悩んだ末……こう言った
「……そう言ってくれて、ありがとう。……お前達はこれからどうしたい?」
今後の事を彼女達に訊くと言う選択肢を取った
“彼女達自身がどうしたいのか?自分とどう言った関係になりたいか?”
それを彼女達の口から聞く事にした……
だが、逆に村山と片瀬はこんな事を聞きいてきた
「「じゃ、じゃあ……竜崎くんは……す、好きな人とかいる……?」」
この質問で新の気持ちを確かめるつもりなのだろうか
新の好きな女性……自分の中で浮かび上がったのは―――初めて自分から惚れた姫島朱乃
新は朱乃の優しさと温もりに支えられ、人に愛される幸せを掴む事が出来た……
そして……もう1人浮かび上がったのは――――
リアスには自分の新しい道を授かった……
自堕落へと向かう一本道から抜け出し、仲間と共に生きる輝かしい道を貰った……
リアスに出会えたからこそ、初めて自分から女性を好きになる事が出来た
彼女にも助けられ、支えられたお陰で今の自分がここにある
新は本心を彼女達に向かって伝えた……
「…………いるぜ、2人」
「「―――っ。ふ、2人……?」」
「あぁ、1人は初めて俺が自分から惚れた女。そして、もう1人は……“初めて自分から惚れる”と言う感情を俺に与えてくれた女だ。俺は心の底から……そいつらに惚れている。だから……」
心を痛めるも、新は本心を打ち明けようとした……その時、村山と片瀬の瞳から一筋の
彼女達は顔を上げて言う
「……そう、だよね。竜崎くん、優しくてカッコいいもん」
「好きな
「村山……片瀬……」
ポロポロと落ちていく涙
新は彼女達に掛けてやるべき言葉を見つけられないまま、立ち尽くすしかなかった……
それでも彼女達は内に秘めた想いを伝える
「でもね……それでも……私達は竜崎くんに気持ちを伝えたかったの……っ。届かなくなっちゃう前に……」
「私達の気持ちを聞いてくれただけでも……嬉しい……っ」
「………………」
村山と片瀬は徐々に新に近付いていき―――その身を寄せる
「私達の最後のワガママ……聞いてくれる……?」
「…………女が涙を流してまで言ってくれるワガママを……断る訳ねぇよ」
新は村山と片瀬をソッと抱き締め、彼女達のワガママを受け入れる事に……
その内容は―――
「「私達の
「……あぁ、良いぜ」
新は勿論その申し入れを受けた
まずは村山の唇を指でソッと触れ、これからキスをすると言う合図を送る
村山は瞑目したまま受け入れる体勢を保ち……自分の唇が新の唇と重なった
『……っ。し、しちゃった……竜崎くんとキス……っ。―――っ!?嘘……!?し、舌が絡んで……っ』
新のキスは実に濃厚で達者なもの
しかも丁寧に舌を絡めてきたので、村山は頭がパンクしそうになる
新は脳内処理が追いつかない村山の道着に手を掛け、慣れた手つきで脱がしていく
洗練されたテクニックを目の当たりにした片瀬も顔を赤らめ、その様子をジッと見つめる
あっという間に下着も全部脱がされた村山は文字通り一糸纏わぬ姿にされた……
ようやくキスから解放されたが、新の濃密なキスの気持ち良さに腰を抜かし、その場にへたり込む
「……はぁ……はぁ……あ、あれ……?いつの間に……脱がして……」
「さてと、次は―――」
「え、あ……ちょ、ちょっと待っ―――んぅぅっ!?」
喋る暇すら与えない新は片瀬の口も
その快楽性から抵抗など出来る筈も無く、村山と同様に脱がされていった……
もう充分だろうと新が唇を離すと、片瀬はストンとへたり込み、後ろに倒れそうになる
倒れかけた片瀬の背中を村山が支えた
「こ、こんなの……凄すぎる……っ」
「ダ、ダメ……頭の中が……真っ白……っ」
「しっかりしな。本番はこれからなんだぜ?」
駒王学園の剣道場で夜の
――――――――――――
「………………………………か、書けた。遂に書けたぞ……っ」
「やっとかよ、兄貴。昼間から書き始めたってのにどんだけ時間掛かったんだよ。もう夜じゃねぇか」
「仕方無いだろ……言葉を選ぶのは結構大変なんだ……」
「へいへい、兄貴の慎重さには呆れたぜ。で、いつ渡すんだよ?」
「あ、ああ……会えた時に渡そうかと―――」
「はあ……兄貴ぃ、アーシアって女は駒王学園って所に通ってんだろ?そこに行って渡せば良いだけじゃねぇか」
「こ、こう言う物を渡すのは……その、雰囲気とかが大事だろ?」
「……何か兄貴がどんどんヘタレてる様な気がするぜ……」
――――――――
「ただいま」
「おかえり、新」
「新さん、おかえりなさい。何処へ行ってましたの?」
「ん?……あ、あぁ、ちょっとデートに」
「あらあら、お
「……ははっ、分かったよ。…………っ」
「……?どうしたの、新?私の顔に何か付いてるかしら?」
「い、いや、何も……。あー、最近は寒いからなー。早く風呂入ってサッパリしするか」
スタスタスタ……ッ
『……新さん、今明らかにリアスを見て動揺してたわね。今日シトリー領に行ってた間に何か遭ったのかしら?―――っ。うふふ、そう言う事ね……。良かったわね、リアス。新さん、知らず知らずの内にあなたを好きになったみたい♪私だけの“特別”が無くなったのは悔しいけど……許してあげるわ。後はあなたの頑張り次第よ、リアス』
『今日の新……ちょっと様子がおかしかったわね。何か遭ったのかしら?今日の帰り、小さい声でいきなり“ありがとう”って言ってきたぐらいだし……。でも、凄く嬉しかった……っ』