転校生、シド・ヴァルディ
『話は聞かせてもらったわよ、アラタ。あなた―――元から普通の人間じゃなかったみたいね?』
「まあな。……幻滅したか?」
『そんな訳無いじゃない。寧ろ、至高の堕天使の私にはピッタリの相手よ』
シトリー領の医療施設、新は連絡用のスペースにてレイナーレからの電話を受けていた
勿論、彼女達にも新の正体が露呈したのは言うまでもない
それを知っても尚、彼女達の気持ちに変動は無かった
『たとえ、あなたが何者であっても私の愛するヒトに変わりは無いでしょ?』
「フッ、ありがとな」
『アラタ~っ!早く退院してよね~っ。退院したら、レイナーレ様とウチらがネグリジェで御奉仕してあげるっすよ~?』
『私達はいつまでも待ってるぞ』
堕天使3人娘から暖かなエールを受け取った新は微笑みながら電話を切る
リアスだけじゃない、皆が待ってくれている
帰る場所と迎え入れてくれる仲間の嬉しさが心に染み渡っていく……
「……退院したら、久々に飲み明かすか」
「竜崎さん、お手紙が来てますよー」
看護婦から呼び掛けられた新は受付に向かい、自分宛と思しき封筒を受け取る
早速、開封してみると―――中に入っていたのは1枚の真っ黒な紙だった
それを確認した途端、新の顔が険しさを増す
「おいおい、穏やかじゃねぇ依頼だな……。退院間近だってのにコイツが来るとはよ……」
リュオーガ族との1件を終えたのも束の間、まだ見ぬ波乱が新に押し寄せつつあるようだ……
――――――――――――――――
「それじゃあ、新はまだ退院出来ないのか?」
「ああ、少なくとも後2日は掛かるらしい。退院してからも2週間、活動出来ないからな。寂しいものだ」
新がシトリー領の医療施設に入院してから数日、一足先に完治した一誠はアーシア、ゼノヴィア、イリナと共に
いつもなら隣にいる筈の新が今はいない
ゼノヴィアは憂いを含んだ表情で空を見上げる
「……大切な人を亡くすと、きっとこんな気持ちになるんだろうな……」
「ゼノヴィア、言っておくけど新くんはピンピンしてるからね?」
イリナが半ば呆れつつ指摘していると、背後から何かが猛スピードで走ってくる音が
気になって後ろを見てみると―――
「アーシアッ、危ないっ!」
「ひゃあっ!」
一誠はアーシアを自分の元に引き寄せ、ゼノヴィアとイリナも壁際に避ける
4人の間を猛スピードで通過した人物はその先で停止
自転車から降りて一誠達の方へ走ってくる
「いやー、ゴメンゴメン。大丈夫だった?」
「おい、あんた危ないだろ!あんなスピードで走ってきて!」
「急いでたもんだから、本当にゴメンね?許して」
軽々しい謝り方をする少年
一誠は異議を唱えようとしたが、その少年が自分達と同じ
しかし、彼は今まで1度も見た事が無い人物だった
“マゼンタ”と呼ばれるピンクに近い色合いの髪を逆立て、デフォルメされた様な目の模様が入ったゴーグルを着用している
こんな派手な格好ならば直ぐに注目が集まり、名前も少なからず耳にする筈だろう
「それ、俺達と同じ制服だよな?」
「うん、そうだよ。僕はシド・ヴァルディ。ピカピカの1年生さ。気軽にシドって呼んでね。君達は?」
「俺は兵藤一誠。こっちはアーシア、そっちの2人がゼノヴィアとイリナ。皆2年生だ」
「へ~、意外。君達先輩なんだぁ。宜しくね~」
初対面なのに馴れ馴れしく絡んでくる転校生―――シド・ヴァルディのノリに一誠達は終始押され気味となる
シド・ヴァルディは「じゃあね、先輩」と軽く手を振って停止させた自転車に乗り、再び猛スピードで駆けていった
―――――――――――――――
「聞いたか、元浜よ!竜崎は事故で入院して、暫くは来れないそうだ!」
「ザマァみろ、リア充野郎め!遂にあの男に天罰が下ったのだ!女子を独り占めした報いだ!」
昼休み、ゲスな笑い声を上げるのは一誠の悪友、
常日頃から新を逆恨み、折檻もくらい続けてきた彼らはここぞとばかりに新をディスる
ちなみにクラスメイト達にも表向きには“新は交通事故に巻き込まれ、入院中”だと伝えている
「あ、そうだイッセー。聞いたか?1年に妙な転校生が来たって話」
「ん?ああ、今朝そんな奴に会ったぞ」
「全く空気を読まない転校生野郎だ。転校生ってのは女子オンリーと相場が決まってるんだよ!野郎の転校生なんざ誰得だ!せっかく憎きリア充野郎が入院してるってのに。しかも、そいつがまた結構なイケメン野郎とか……死ね!」
「その通り!イケメンは死ねば良い!」
「お前らホント最低だな……」
いつもの如くバカ騒ぎする松田と元浜に呆れていると、教室の扉が開いて「お邪魔しま~すっ♪」と剽軽な声が聞こえてくる
入室してきたのは一誠達が今朝会ったばかりの転校生―――シド・ヴァルディだった
転校生の登場に教室中がざわつく
「おい、あいつが例の転校生じゃないか?」
「派手な髪型で分かりやすいな。てか、ゴーグルって校則違反じゃね?」
「カッコいいと言うより可愛い系に近いよね。小動物みたい」
「小動物系年下彼氏……捨てがたいジャンルね」
「今度の新作本のメインは彼にしましょうっ。年下+可愛いの組み合わせは正義よ」
怪しげな会話がチラホラ聞こえる中、シドは一誠を見つけるとスタスタ近付いてきた
だが、そこへイケメン嫌いの松田と元浜が彼の行く手を遮る
「おうおうおう、この1年坊主。先輩の俺達に挨拶すら無しとは礼儀がなっちゃいないな」
「この教室に入りたければ、前金としてダッシュで焼きそばパンと飲み物を買ってくる事だ。勿論、お前の金でな」
何処ぞのチンピラみたいな台詞を吐きながらシドを威嚇するゲス2人
女子から非難の罵声が飛んでこようがお構い無し
松田と元浜の威嚇を受けているシドは―――何故か急に笑い出した
その様子に松田と元浜は「何がおかしい!」と訊ねると……シドが思わぬ反撃を発した
「このクラスって面白いよね。ク○ボーとノ○ノコが制服着てるもんっ」
「「ファっ⁉」」
「「「「「「「ブフゥッ!」」」」」」」
ク○ボー、ノ○ノコ発言に松田と元浜は顔芸を発動し、教室にいた大多数の人間が盛大に吹いた
ちなみにク○ボー、ノ○ノコとは皆さんご存知スーパーマ○オシリーズに出てくるザコキャラの名称である
松田=ク○ボー、元浜=ノ○ノコ発言に教室中が笑い声に満ち溢れ、当の2人は赤っ恥をかいた
「ほらほら、早くキ○コ王国に行ってマ○オの邪魔しないとク○パに怒られちゃうよ?」
「「誰がク○ボーとノ○ノコだぁっ⁉」」
怒り狂った松田と元浜はシドをブッ飛ばそうと飛び掛かるが―――シドは人間業とは思えない高さの大ジャンプを披露
そのままク○ボー(笑)とノ○ノコ(笑)を頭から踏みつけた
「スーパーマ○オ再現~♪」とシドは2人を踏み潰した後、一誠達の方へ歩み寄る
「兵藤一誠、だっけ?呼ぶ時はイッセー先輩で良いよね?」
「え?ま、まあ……何でも良いけどさ」
「じゃあ、これからも何かの
シドはやや強引に一誠の手を取って握手を交わす
少し長めの握手を交わし、アーシア、ゼノヴィア、イリナとも握手をする
握手を終えたシドは
「そう言えば……先輩達にもう1人、いたよね?竜崎って人」
「新の事か?あいつは入院中で今はいないんだ」
「ふ~ん。……ま、良いや。じゃね~」
何とも軽いノリで教室を出ていく転校生シド
床では彼に踏み潰されたク○ボーとノ○ノコが「この恨みはらさでおくべきか……っ!」と呪いの言葉を発していた
――――――――――――――――
「その転校生なら、私のクラスにも来たわ」
「え、部長の所にもですか?」
「僕のクラスにも来たよ。あと、ギャスパーくんと小猫ちゃんも彼に会ったらしいね」
放課後のオカルト研究部はシド・ヴァルディの話で持ちきりだった
あの後、リアスや朱乃、祐斗だけでなく、小猫とギャスパーもシドと対面したらしい
更にはソーナ達生徒会や教師であるアザゼルとロスヴァイセの所にも顔を出していた
転校初日で学園の有名人達に挨拶及び握手を交わす行動力にすっかり注目が集まり、各学年にも彼の噂が行き渡る
「俺達の隠れファン?……にしても挨拶が大雑把過ぎるよな……」
「ここには何人もの異能者が正体を隠して学園生活を送っているけれど、その中で私達をピンポイントに選別ってのも妙よね……。まるで私達を見定めるかの様に……」
シドの動きを不審に思うリアス
リアス達の正体を知っておきながら近付いてきたと言う事は―――彼もまた異能者の
そんな考えを頭に
考え込んでいると通信用の魔方陣が浮かび、医療施設にいる新が映った
「よう、新。具合は良さそうだな。どうした?」
『ああ、ちょっと緊急の話があってな。コイツを見てくれ』
新はそう言って自分宛に届いた真っ黒な紙を皆に見せる
アザゼルが「何だそりゃ?」と訊くと新が説明に入る
『コイツはバウンティハンター協会経由で届いた依頼書だ。ただ……この黒い紙は滅多に来ない代物で、来た時は相当危険な任務が絡んでるとも言われている。普通の依頼書なら難易度は下級~中級レベル。赤い依頼書は上級レベル。んで、この黒い依頼書は失敗確率90%以上の超難関ミッションだ』
「9割以上失敗って、何でそんな危ない物が新に届くんだよ⁉」
『知らねぇよ、いちいち顔芸を見せるな。傷に
「ちょ、ちょっと待ちなさい新!あなた、謹慎中なのよ⁉」
リアスが新の謹慎処分について指摘すると、新はチッチッチッと指を振ってこう答えた
『甘いな、リアス。俺が禁止されているのは“リアス・グレモリー眷属としての活動”だ。“バウンティハンターとしての活動”は禁じられてねぇから問題無い』
「あ、あなたってヒトは……本当に悪い面で頭を働かせるわね……」
『褒めてくれてサンキュー』
謹慎処分の抜け穴を利用した新の狡猾さにリアスは嘆息する
「バウンティハンター協会経由って事は、正式な依頼主は誰なんだ?」
『それが妙な事に―――正教会からだ』
正教会からのバウンティハンター協会経由で届いた依頼書に全員が
特にイリナは1番の動揺を見せる……
「正教会からお前に依頼?どういう風の吹き回しだ?」
『分からねぇ。詳しい事は明日、現地で訊くしかねぇんだよ。そう言う事だから、学園生活の復帰にはまだ少し時間が掛かる。それだけ伝えておこうと思ってな』
「分かった、じゃあ切るぞ」
アザゼルが通信を切ろうとした時、イリナが待ったを掛けてきた
「新くん、正教会からの依頼って本当?」
『ああ、本当だが?』
「なら―――その任務に私も付き添わせてっ!」
イリナの唐突な発言に部室内がざわつき、画面の中の新も驚愕する
「正教会からの依頼なら、きっと天界にも関連性があるって事だよね?だったら私もついていった方が―――」
『バカ野郎!ガキの遊びじゃねぇんだよ!さっき説明したじゃねぇか!失敗確率9割以上の危険な任務が絡んでるって!下手すりゃ死ぬかもしれねぇんだぞ⁉そんな危険な任務に巻き込めるか!』
新は黒い依頼書の危険性を盾にイリナを説得しようとするが、彼女は1歩も引き下がらない
「新くんだってまだ万全じゃないもんっ!そんな状態で行く方がよっぽど危険よっ!私は付添人として行くのっ!それなら文句無いでしょ⁉」
『ったく、ああ言えばこう言う……ッ!』
イリナの粘りに苛立ちを見せる新だったが……このままでは水掛け論になりかねないので、諦める事にした
『チッ、分かったよ。ただし付き添いは1人までだ。急いでチケットをもう1枚手配するから準備しとけよ』
ふてくされ気味で通信を切る新
屁理屈を押し通したイリナはVサインを決める
「良かったじゃないか、イリナ。一足早く新婚旅行に行けるとは」
「な……なななななっ、何言い出すのよゼノヴィアっ⁉そそそそ、そんな、新婚旅行だなんて……。あくまで私は付添人なんだから……」
「どうせならそのまま新に抱かれると良い。友として応援するぞ」
「いやいやいや!そんな事になったら堕天しちゃうんですけど⁉」
『今度、新が退院したら私も何処かに連れていってもらいたいわ……』
『あらあら、リアスってばヤキモチですわね♪』
―――――――――――――――――
「うん、こっちは順調だよ。先輩達の能力データは握手した時に採取したから。あ、竜崎って人がいなかったなぁ。そこだけ失敗?」
『
「へぇ~、良かったじゃん。教会相手にわざわざ騒ぎを起こした甲斐があったね」
『
「良いよ良いよ~。僕は僕で楽しんでおくから。それに―――ゲームはじっくり楽しまないとね♪」
『ええ。では、
ガッチャーンッ!
「向こうも準備万端みたい。さ~て、僕も早く……イッセー先輩達と遊びたいなぁ♪」
今回出てきたオリキャラ―――シド・ヴァルディのキャラクターイメージは仮面ライダーエグゼイドです。
エグゼイドを人型にしたような感じです。
ちなみにイメージCVは下野紘です(ゲーム好きな感じで)。
そして最後にちょっとだけ出てきたもう1人の人物、勘の良い人なら“あの方”が元ネタだと気付くでしょう(笑)
後々に本格登場させますので、ご期待ください♪