ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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打ち上げと強化プラン

実技試験を終えた新達は連絡用の魔法陣をレイヴェルに展開してもらい、アザゼルに事後報告をする

 

「せ、先生!実技なんですけど……!」

 

『おー、どうした。こっちはホテルのレストランで貸し切りの昼酒中だ』

 

「また昼酒ですか⁉じゃなくて、実技の試験なんですけどね!あ、あの、俺も新も木場も朱乃さんも問題無いと言うか、むしろ俺達……」

 

『圧倒的、だったろう?』

 

にやけるアザゼルの言葉に一誠は頷き、アザゼルは嘆息する

 

『当然だ。お前らは下級悪魔の中では異例の強さを誇るからな。そこに試験に行くのは強くても中級悪魔の上クラス相当だぞ?で、お前らの実力はと言うと、上級悪魔クラスだ。特にイッセーはトリアイナや真「女王(クイーン)」形態、新もリュオーガ族の力を発揮すればそれ以上のクラスと比べても遜色が無い。まあ、それはサイラオーグも一緒か』

 

「……知りませんでした。俺―――俺達、そんなに強くなっていたんですね」

 

試験は新と一誠を始め、祐斗も朱乃も圧倒的な力で勝利を収めた

 

一誠の場合はやり過ぎてしまったのが申し訳無い程に

 

アザゼルや新が“本気を出すな”と言ったのは―――他の受験者と力の差が生じているからだ

 

下手をすれば相手の受験者を殺していたかもしれない……

 

一誠は試験に落ちたくない気持ちと相手に油断しない事で頭がいっぱい且つ気合が入り過ぎていた

 

『お前らが相手にしてきたのは伝説級がゴロゴロのヴァーリチーム、北欧の悪神ロキと最悪の魔物フェンリル、最強の神滅具(ロンギヌス)黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)」、全魔族の天敵とも言える闇人(やみびと)、それに四大魔王を追い詰めたリュオーガ族だぞ?そいつらと戦って全員生きて帰ってくるなんざ、正気の沙汰じゃない。異常だって言われて当然のレベルだ。少なくともグレモリー眷属ではお前と木場、朱乃、ゼノヴィア、ロスヴァイセは上級悪魔クラスの実力を持つ猛者揃いだ。その中でも新は一際飛び抜けている。最上級悪魔クラス1歩手前ってところか。仙術の使い方を覚えてきた小猫も直に上級悪魔に匹敵する力になるだろうな』

 

新達は修羅場を潜り過ぎたゆえに一般的な中級悪魔の実力を大きく超えていた

 

自分達はとんでもなく強くなっていたんだと改めて実感する

 

『よくもまあ、これだけのメンツと巡り合ったよ、リアスは。新、お前がここまで強くなったのもリアスのお陰だろ』

 

「ああ、リアスは……最高の女だ」

 

『おい、リアス。新が「リアスは最高の女だ」だってよ』

 

アザゼルがいやらしい声音でリアスに話しかける

 

「おい、クソ堕天使。なに煽ってんだ」

 

『ははっ!リアスの奴、お前のそれを聞いて真っ赤っかだぞ!ったく、お熱いこって!クソ!涙が出てきやがる!俺、独り身を極めっかな、ちくしょうッ!』

 

アザゼルの煽りに舌打ちする新

 

アザゼルは気を取り直して話を続ける

 

『ま、リアスには丁度言ってはいたんだよ。リアス自身が猛トレーニングをして強くなる事も無いってな』

 

「リアスがトレーニング?……レグルスとの戦いを引きずってるのか」

 

『お前の惚れた女が持つ1番の武器は巡り合わせの良さだ。グレモリー眷属の豊富さは他の上級悪魔が持つ眷属の比じゃない。ライザーの野郎も言ってた事らしいな。こいつばかりは教えて得られるものじゃない。そいつが生まれながらにして持ってるものが必要だ。そう言うのは今後も続くもんさ。俺的にはさっきも言った生存率の高さを評価したい。修羅場を全員体験して生存するなんざ、奇跡を通り越してイカレてるレベルだ』

 

「奇跡を超えたレベル、か……」

 

『何はともあれ試験は終わったんだろう?センターの転移魔方陣でこっちのホテルまで移動してこい。合否はまだだが、こっちで打ち上げをしよう』

 

アザゼルとの連絡が終わり、一誠は息を吐いた

 

 

――――――――――――――

 

 

「てなわけで、試験お疲れさん。乾杯」

 

アザゼルがそう言うと注がれた酒を飲む

 

新達はホテルに移動し、貸し切りのレストランで試験後の疲れを(ねぎら)ってもらっていた

 

レストランには一旦離れているギャスパーとロスヴァイセ以外のメンバーが揃っており、皆レストランの料理に舌鼓を打っている

 

新も運ばれてきた料理を口に運び、グラスの酒を飲んでいく

 

横に座るリアスから「どうだった?」と問われる

 

「ああ、筆記試験は何とかなった。実技も問題無い。強いて言えば一誠がやり過ぎたぐらいか」

 

「壊してしまった壁の修理代はこちらで払っておくから、気にしなくて良いわ。けれど、今後他の中級悪魔と出会ってイザコザに発展したとしても、いきなり本気で殴りかかってはダメよ?あなた達は現時点でかなりの強さなのだから」

 

「―――だそうだ、一誠。反省しろ」

 

「いや、俺だけのせいにするなよ!反省するけど……」

 

新とリアスから注意される一誠に、彼の中にいるドライグがクククッと笑う

 

『お前の場合、天龍の俺を宿しているだけで常軌を逸しているのに、目標としているライバルが歴代最強の白龍皇(はくりゅうこう)だからな。最初から目標があまりに高過ぎた。その上でそれを目指して力を発揮させていったのだから、知らずの内に他の悪魔をごぼう抜きなんて当然の事だろう。夏の終わりには主であるリアス・グレモリーも超えてしまったではないか。あの女も決して弱いわけではないぞ。―――赤龍帝(せきりゅうてい)の成長率が凄まじかっただけだ』

 

「それでも歴代と比べると成長が遅い方なんだろう?」

 

『確かに遅い。―――が、今までに無い異例の成長を見せているお前を他の赤龍帝(せきりゅうてい)と比べるのもな。未だ成長の頂上が見えないのが恐ろしい程だよ。……まあ、その成長の要因が乳なわけだが……はぁ……』

 

ドライグがまた深い溜め息を吐く

 

そんなやり取りに肩を竦めていると、新の視界に微笑ましい一場面が映り込む

 

「ほら、小猫さん。これとこれとこれを食べた方がよろしいですわ」

 

「……別に取ってもらわなくても自分で食べられる」

 

「私だって好きでお世話しているわけではありません。あなたが元気にならないと新さまも心配しますので」

 

「……分かった。食べる。……ありがとう」

 

「いいえ、こちらこそ。元気になってもらわないと張り合いがありませんもの」

 

―――と言うレイヴェルと小猫のやり取り

 

口喧嘩してる割には打ち解け合ってきているようだ

 

「……我、じーっとドライグを見る」

 

レストランの隅で一誠をジッと見つめるオーフィス

 

モグモグとパスタ料理を口に運んでいた

 

更にもう1人、同じ様な行動を取っている人物がいる……

 

「私もジ~ッと見ますっ」

 

「…………」

 

新がチラチラと気にしているその先には―――『初代クイーン』マヤがいた

 

爛々とした目で新を凝視してくるので、新は落ち着かない様子

 

「…………食いづらいんだけど」

 

「いえいえ、お気になさらず。……そのお肉がとっても美味しそうと思ってるだけです」

 

「視線は料理(こっち)に行ってたんかい!おかわりあるから自分のを食え!」

 

相変わらずマイペースな『初代クイーン』マヤに振り回されっぱなしだった……

 

黒歌やルフェイ、ダイアン達もレストランの隅でデザートを食べている

 

フェンリルは姿を見せていないようだが、ルフェイの影の中に潜んでいるらしい

 

黒歌ははぐれ悪魔であり冥界では指名手配の為、猫耳と尻尾をしまい、服装もルフェイと同室のローブを着込んでいた

 

サングラスも着けており、更に『気』の質も変えているようなので余程の事が無ければバレないらしい

 

その術はルフェイやオーフィスにもかけているので、彼女達も怪しまれない

 

彼女達が神出鬼没なのはこの様に上手く忍び込める能力に長けているからだ

 

今まで捕まらなかったのも合点がいく

 

酔ったアザゼルが新、一誠、祐斗の3人に言う

 

「イッセー、新、木場、お前ら3人はグレモリー眷属でも破格だな」

 

「破格……ですか」

 

「とんでもない可能性を持った若手悪魔って事だよ。イッセーは才能こそ無いものの、赤龍帝(せきりゅうてい)を宿す者。歴代所有者とは違う方向から力を高め、遂に『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』とは真逆の能力に目覚めた。木場は後付けに得たものがあったとはいえ、それでも才能が抜きん出ている。禁手(バランス・ブレイカー)を2つも目覚めさせるなんて信じられない程の才だ。新に至っては戦闘経験豊富な現役のバウンティハンター、更にはリュオーガ族の血と闇皇(やみおう)、悪魔と3つの異なる力を調和させている。しかも3人とも未だ発展途上中ときた。……お前ら、リアスがプロデビューする前に最上級悪魔になるんじゃないか?」

 

祐斗が遠慮がちに言う

 

「僕は恵まれています。すぐ近くに天龍―――赤龍帝(せきりゅうてい)のイッセーくんと闇皇(やみおう)の新くんがいますから。練習相手として、これ以上の相手はいません。しかも未だ成長途上の中。彼らと模擬で戦っているだけで光栄ですね」

 

「笑顔で恥ずかしい事を言うな!……ったく、俺もテクニックタイプの天才のお前が相手だから修行がはかどるよ。俺の弱点はテクニックタイプだからさ」

 

一誠がそう言った直後、アザゼルが首を横に振った

 

「いや、お前にはもう1つ大きな弱点がある。と言うよりも露呈された。強力なトリアイナと真『女王(クイーン)』、その弱点はずばりスタミナだ。どちらも使用するには体力とオーラの消耗が激し過ぎる。イッセー、現状で真『女王(クイーン)』の使用時間はどれ程だ?」

 

「……正直、力が安定しなさ過ぎて攻撃1回で状態が解除される事もあります。制御があまりに難し過ぎるんです」

 

そう、一誠の真『女王(クイーン)』はあまりに制御が難しい

 

本人曰く、真『女王(クイーン)』の力の安定にはトリアイナ状態での能力向上が必須

 

パワー出力と防御力を高めたいのなら、トリアイナの『戦車(ルーク)』を使い続けて慣れていくしかない

 

同じく速度ならトリアイナの『騎士(ナイト)』、砲撃ならトリアイナの『僧侶(ビショップ)

 

それぞれの駒を成長させる事が真『女王(クイーン)』の力を上げる根底となる

 

「トリアイナでそれぞれの駒の力に慣れていき、同時に高めていくしかないです。真『女王(クイーン)』は各駒の総括版みたいなものだから」

 

激しいスタミナ消耗の解消

 

一誠にとっての1番の課題となるのだが、アザゼルはそれを拭い去る様な事を言う

 

「力の安定が可能になったとしても直ぐには消耗の根本的な解決にはならないかもしれないな。心身に深刻な影響を与えない為に発現した新しい力だが、とにかく消耗するものが凄まじい。命を削らず、生命的な危険が無い分、体力やオーラを余計に食うんだろうな」

 

命に関わる代償が無いからこその大きな消耗……

 

それが『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』以外の選択を突き進んだ一誠の力の答えなのだろう

 

―――とはいえ、死ぬまで暴れ続ける『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』よりは遥かにマシかもしれない

 

そこで新が“ある疑問”をアザゼルに訊ねた

 

「そう言えば、サイラオーグが持つ自律した神滅具(ロンギヌス)―――レグルスか。あれも『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』の様な事が出来るのか?確か強力な魔物やドラゴンが封印された神器(セイクリッド・ギア)はその(たぐい)の事が出来るって言ってたよな?」

 

「システム上は可能だな。『獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)』や魔物封印系神器(セイクリッド・ギア)だと覇の獣と書いて『覇獣(ブレイクダウン・ザ・ビースト)』だ。天龍の『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』の方が強力だがな。あれは特異だ。まあ、これらは凶悪だから使用可能になったとしても使わない方が良い。『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』みたいに生命力を神器(セイクリッド・ギア)に吸われて、大暴れした挙げ句に死ぬだろうさ」

 

同格の力だけに使いづら過ぎるようだ……

 

神滅具(ロンギヌス)の事は同盟した今、発見次第三大勢力のトップ陣に知らされる事になっているんですよね?でも、先生はあの獅子がサイラオーグさんの所にいる事を知らなかった。それってバアル側の同盟違反では?」

 

一誠の疑問だった

 

確かに『獅子王の戦斧(レグルス・ネメア)』は悪魔サイドに属する事になるので、魔王のサーゼクスやアザゼルに報告が入っている筈

 

しかし、アザゼルがその神滅具(ロンギヌス)の正体を知ったのはサイラオーグとのゲームの時だった

 

サイラオーグが故意に隠したとは思えない

 

その事についてアザゼルは息を吐いて言う

 

「サーゼクスすら知らなかったようだからな。どうにも大王派の連中がサイラオーグに『兵士(ポーン)』の正体を隠すよう打診していたようでな。サイラオーグは魔王に報告すべきだと訴えたようだが、次期当主ともなると現当主によって行動を縛られる部分も出てくる。その上、大王派はゲームでも徹底的に隠すべきだと主張してな。出したとしても正体を晒すな、と」

 

「でも、最後に出てきて正体を晒しましたよね」

 

「さすがにサイラオーグも黙っているのが我慢の限界だったらしくてな、使える場面があれば使う気だったようだ。あの終盤戦(エンドゲーム)を誰も予想なんて出来なかっただろうが、それでもああいう形で晒されたわけだ。お陰で現在、大王派は魔王派の連中に相当追及されているようだぜ?グリゴリと天界も同盟関係上、一応の文句を悪魔サイドに発信したけどな」

 

裏で大王派の上役連中はサイラオーグにレグルスを出さない様に言っていた

 

だが、真っ正面から本気でぶつかりたかったサイラオーグは獅子を出す事を躊躇(ためら)わなかった

 

現悪魔の派閥は予想以上に泥沼化しているようだ

 

一誠はレグルスの話からもう1つ、思い出した事を言う

 

「……先生、『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』の『覇輝(トゥルース・イデア)』って言うのは?それも『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』や『覇獣(ブレイクダウン・ザ・ビースト)』みたいな現象なんですか?あれにも魔物が封印されている?」

 

「……あの槍にはな、魔物が封印されているわけじゃないんだ。あれに封印されているのは『聖書に記されし神』の遺志みたいなもんさ。―――『神』と言う存在を殺せる槍。始まりの神滅具(ロンギヌス)。それを『聖書に記されし神』は現世に遺した。しかも人間だけの能力―――神器(セイクリッド・ギア)としてだ。それが何の為かは俺の組織でも意見が割れているところだな。自分が消滅しても信徒の布教が進められる様に他の神話体系の神々を殺す為の侵略兵器を作ったとか、逆に信徒のもとに襲い掛かってくるかもしれない他勢力の神々に対抗させる為の防衛手段だとか、単に偶然作り出されたとか、説は様々だ。天界でも結論は出ないって話だな。どちらにしてもあの聖槍(せいそう)の後に他の強力な神器(セイクリッド・ギア)が発見されて、神滅具(ロンギヌス)ってものが定義されていったわけだ」

 

「始まりの神滅具(ロンギヌス)、か……」

 

「今世に限っては各神滅具(ロンギヌス)の状態が前例の無い変化を見せている。―――13種以外の神滅具(ロンギヌス)、14種め、15種めが偶然発現されてもおかしくない流れだ」

 

“新しい神滅具(ロンギヌス)が生まれるかもしれない”

 

ただでさえ凶悪な位置にある神器(セイクリッド・ギア)が増えていくとなると、畏怖せざるを得ない……

 

味方として現れてくれれば(さいわ)いだが、敵として現れれば脅威に他ならない

 

「…………」

 

一誠の近くに座るアーシアが何やら考え事をしている様子だった

 

食事もあまり摂らず、ジュースを延々と少しずつ飲んでいた

 

一誠が話し掛けると、アーシアは静かに言う

 

「……私も神器(セイクリッド・ギア)についてもう少し深く知ろうかなって思いまして」

 

「回復を……強化するって事?」

 

一誠がそう訊くとアーシアは頷いた

 

「ギャスパーくんも神器(セイクリッド・ギア)を深く知ろうとアザゼル先生の研究施設に向かったと言いますし、私も次、そこにお世話になろうかなと思ったんです」

 

バアル戦、リュオーガ族戦以降、グレモリー眷属の皆が自分の能力に更に向き合い始め、奥手のギャスパーですら自らを鍛える為にグリゴリへ向かった

 

アーシアの回復能力は遠近両方でも凄まじいサポートを発揮するのだが、それでもアーシアはその事に満足出来ていない様子だった

 

「先生、2つお訊きします。『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』は禁手(バランス・ブレイカー)になる事が可能なのかと言う事と、私も禁手(バランス・ブレイカー)になれるのか、それが知りたいです」

 

アーシアの質問を聞き、アザゼルは酒を一口飲んだ後に口を開いた

 

「1つめの質問だが、ある。『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』にも禁手(バランス・ブレイカー)の状態が予測されている。2つめの質問もYESだ。いろんなイレギュラーな現象を起こしている赤龍帝イッセーの傍にいれば、修行――努力次第で至れるだろうし、亜種の禁手(バランス・ブレイカー)になる事もセンス次第で可能だろう。―――だがな、アーシア。お前の能力は既に完成の域に達しているんだよ」

 

アザゼルの言葉にアーシアは若干(いぶか)しげな様子となる

 

「それはどういう事なのでしょうか?」

 

「言葉の通りだ。お前の回復能力は既に極めて高くてな。見ての通り、お前の能力でイッセー達は何度も危険な場面を抜け出ている。アーシアは神器(セイクリッド・ギア)能力を既に引き出しきっていると言って良い。他の『聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)』所有者と比べても回復能力の高さ、回復の速度、どれを取っても一級品だ。遠距離での回復も平均値を超えたものを叩き出している。仮に禁手(バランス・ブレイカー)になったとしてもそれらのスケールアップのものになるだろうな」

 

アザゼルの言う通り、アーシアの能力は現時点でも相当なもの

 

アーシアを狙われない限りは安心して戦闘が出来る

 

傷を負っても、アーシアの回復を受ければ直ぐに戦線復帰が出来るのを実感している

 

アザゼルから絶賛され、強くなりたい思いとは裏腹の複雑な表情をアーシアは浮かべていた

 

そのアーシアにアザゼルは話を続ける

 

「アーシア、お前は眷属の(かなめ)だ。回復要員は貴重であり重要。グレモリー眷属―――否、ここにいるメンバーでの戦闘で1番大事なのはお前だ。それは他のメンバーからも聞いて分かっているだろうし、お前自身も自覚しているな?」

 

アザゼルの言葉にアーシアは頷いた

 

「では、お前の弱点は分かるか?」

 

「……回復以外でお役に立てないと言う事でしょうか?」

 

「いや、少し違うな。お前は回復に専念すべきだ。他の事はイッセー達に任せれば良い。だが、お前は狙われる。回復を潰せばそれだけでこっちが大打撃だからだ。そうなるとお前を守護する為にアタッカーか、後衛が守備に回らないといけなくなる。それは陣形が乱れ、戦闘のテンポが途切れる事に繋がるだろう」

 

「つまり、アーシアの弱点は自衛の手段が無い事、か」

 

「新の指摘通りだ。だからこそ、お前が今後伸ばすべきは自分を守る能力を得る事。……そうだな、お前には結界系か、幻術系、または召喚の魔力、魔法が合うかもしれん。壁となる魔物と契約して召喚すればお前の守備にイッセー達が回らなくても済む。リアス、アーシアは気難しい『蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)』と契約を結んでいるんだろう?」

 

「ええ、アーシアの使い魔になっているわ」

 

蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)』とはアーシアが使い魔の森でゲットした上位ドラゴンの子供

 

兵藤家でよくアーシアと遊んでいるらしい

 

「案外、魔物を使役する能力が高いかもしれないな。盲点だった。伝説級の魔物と出会って片っ端から契約を持ち掛けてみるのはどうだろうか?意外にもすんなりいくんじゃないか?壁役となる魔物と言うと―――」

 

アザゼルは楽しそうにアーシアの能力強化をブツブツと模索し始めた

 

しかし、アーシアが自力で壁役を召喚すると言う方法は大いに役立つ

 

バアル戦での最後の団体戦、あそこでアーシアを出せなかったのはアーシアを守る余裕が無いと踏んだからだ

 

回復役のアーシアは確実に狙われるため、死守しながらの攻防は余裕が無い上にリスクが高過ぎる

 

ここへ来て眷属全員の強化プランが纏まってきているようだ

 

新と一誠も負けていられないと決意を固めたその時―――違和感が襲ってきた

 

全身をヌルリとした嫌な感覚が包み込んでいく

 

この場の空気が一瞬で変化し、同じ風景なのに全く違う場所に転移したかの様な錯覚を覚える……

 

アザゼルも同じものを感じたのか、顔を険しくして目線をレストラン内に配らせた

 

黒歌が新達に近付き、猫耳と尻尾を出してピクピクと耳を動かしている

 

服装もいつもの着物に戻し、皮肉げな笑みを浮かべていた

 

「ありゃりゃ、ヴァーリは撒かれたようにゃ。―――本命がこっちに来ちゃうなんてね」

 

黒歌が意味深な事を言った刹那―――見覚えのある霧が新達の周囲に立ち込めて、辺りを包み込んでいった




次回から戦闘がハジマリマス!
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