ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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11巻編も終盤に差し掛かってきました!


脱出作戦ミーティング

リアス、朱乃、アザゼルが例の部屋で作戦を組んでいる間、新は黒歌の部屋に見舞いに来ていた

 

怪我は既に治ったが、まだベッドで横になっている

 

ルフェイから聞いた話によれば、オーフィスが兵藤家にいる間、彼女は他者がオーフィスを狙ってこないように神経を尖らせて見張っていたらしい

 

それは予想以上に体力と精神力を削られたようで、怪我が治っても復調しなかった

 

今はレイヴェルが黒歌を看ている

 

本来、真っ先に脱出するべきは客分のレイヴェルなのだが、彼女は小猫と黒歌が心配だからと残る事を選択した

 

「私は不死身のフェニックス家の者です。そう簡単に死ぬ事はありませんわ」

 

そう気丈に振る舞い、結局脱出するのはゼノヴィアとイリナになった

 

「……調子はどうだ?」

 

新がベッドで横になっている黒歌に訊ね、黒歌は悪戯な笑みを浮かべていた

 

「あらん、リューくん。お見舞いに来てくれるなんて優しいにゃん」

 

「まあ、仲間―――小猫を助けてくれたしな」

 

「たまたまにゃん」

 

『その“たまたま”って名目で妹の名を叫ばんだろ……』

 

実際、彼女は小猫の危機を身を挺して守ってくれたのだ

 

ベッドの横にはうつむき気味の小猫が椅子に座っていた

 

「……どうしてですか?」

 

小猫はそうボソリと呟き……途端に立ち上がって叫んだ

 

「どうして私を助けたんですか⁉姉さまにとって私は道具になる程度の認識だった筈です!」

 

「小猫、落ち着け」

 

「さーてね。よく分からないにゃん」

 

「茶化さないでください!……あの時、私を置いていったのに。その後、私がどれだけ周りのヒト達に酷い事を言われたか……。冥界でのパーティの時だって、無理矢理私を連れて行こうとしました……」

 

普段あまり喋らない小猫だが、内に溜まっていた心情を吐き出していた

 

「私には姉さまが分かりません……ッ!」

 

それだけ言い残し、小猫は部屋を飛び出していった

 

新は直ぐに後を追おうとしたが、黒歌が新の腕を引いて引き留める

 

「ご安心を。私が追いますわ」

 

そう言ってレイヴェルが小猫のあとを追っていった

 

この場は同学年の彼女に任せる他ないだろう

 

腕を引かれた新は小猫の座っていた椅子に腰を下ろし、改めて黒歌に問う

 

「……黒歌。以前の主のトコで何があった?」

 

「別に。嫌な奴だから殺しただけにゃん」

 

そう言った後、黒歌は笑みを止めて真面目な表情となる

 

猫魈(ねこしょう)の……私達の力に興味を持ち過ぎたから、目障りになったのよ。私はともかく、当時の白音じゃ私の元バカマスターに仙術を使うよう言われたら断らずに使用して、そのまま暴走しちゃっただろうし。―――あの子、正直だから」

 

そう言う黒歌の目には少しだけ優しげなものを感じた

 

「とにかく、あいつは眷属の能力向上を目指して、無理矢理な事をしまくってたわね。眷属ならまだしもその身内―――血縁者にも無茶な強化を強要したにゃ」

 

黒歌がお尋ね者になった原因、それは自分のマスターを殺したから

 

何故その様な事になってしまったのか……

 

その理由が新にはハッキリと分かった

 

「そいつから小猫を守ったんだな?冥界で俺達から無理矢理連れて行こうとしたのも―――『力』から離そうとしたからなんだろ?……俺が一誠と同じ様に力を引き寄せる闇皇(やみおう)だから」

 

黒歌には悪意もあり、悪戯心(いたずらごころ)もあり、好奇心の塊なのは見て分かる

 

新はこの数日、彼女と付き合っていく内にそれだけじゃない感情がある事も感じた

 

黒歌は新の意見にカラカラと笑う

 

「……イタズラは生来好きよ?力の使い方も大好き。面白い事も大好き。所詮、私は野良猫にゃん。自由気ままに気の合った仲間達と放浪しながら生きた方が良いだろうし?でも、白音は逆。飼い猫の方が合ってるにゃん。だからさ、リューくん」

 

黒歌が真っ直ぐな瞳で新に言った

 

「力の塊になっても良いから、キミもヴァーリみたいにバカ正直なヒトになってほしいのよ。そうすれば、あの子もバカ正直なまま幸せになれるだろうしね」

 

……彼女はどうしようもないイタズラ猫だ

 

ヴァーリチームの悪猫(あくびょう)

 

仙術に飲み込まれて力に陶酔しているところもある

 

だが、それでも妹―――小猫を大事に思っている

 

「お前は不器用な奴だな」

 

新が全てを得心したような笑みを見せて言うと、黒歌は途端に口をへの字に曲げてそっぽを向く

 

「パワーバカのチミに言われたくはないにゃん。これでも『僧侶(ビショップ)』の駒2つ消費の生粋のウィザードタイプよん?―――ま、この話はもういっか。寝るにゃん。それとも、このまま私と子作りでもしちゃうん?怪我した女を無理矢理抱くなんて酷いヒトにゃん♪」

 

ギシ……ッ

 

新の手がベッドに乗っかり、ベッドの軋む音を聞いた黒歌は思わず「……え?」と間の抜けた声を発する

 

次の瞬間、新の唇が彼女の頬に軽く触れた

 

突然のキスに黒歌は思考が停止、新は含み笑いをしながら言う

 

「戦闘開始まで養生してな。……あと、今したのは小猫を助けてくれた礼だ。続きがしたいなら、さっさと休んでここを切り抜けてからにしろ」

 

新は(きびす)を返して部屋から去っていっき、黒歌は彼の唇が触れた頬に手を当てる

 

「……もうっ、リューくんには敵わないにゃん」

 

 

―――――――――

 

 

新が黒歌の様子を見ている同時刻頃、一誠はヴァーリが休んでいる部屋に足を運んでいた

 

ヴァーリは上半身だけ起こしており、アーシアのお陰で怪我は完治したが……顔色が恐ろしく悪い

 

呼吸も荒く、今も苦痛に耐えているようだった

 

サマエルの呪いがヴァーリの全身を駆け巡っているのだろう

 

「……お前が一撃であんだけのダメージ受けるなんてな」

 

一言だけ一誠が漏らすと、ヴァーリは苦笑する

 

「情けない姿を見せたようだな。曹操を打つ為にここへ来たのだが、このザマだ」

 

「いや、それだけあの『龍喰者(ドラゴン・イーター)』サマエルって奴の龍殺し(ドラゴンスレイヤー)の力が凄いって事だろう?お前がただでやられるなんて思えないしさ」

 

本当に為す術が無く、1発受けただけで力の塊とも称されるヴァーリが倒され、その瞬間は一誠の脳裏に鮮明に焼き付けられていた

 

あの場面、曹操がサマエルを使用したのはヴァーリの抑止する為である

 

覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』で一気に勝負をつけようとしたヴァーリを止めるにはサマエルを使用する他なかっただろう

 

「買ってくれているようだな」

 

「お前の強さは自分が強くなる度によーく分かるようになったからな。まだ追い付けないのが悔しいよ」

 

「……俺は楽しみだが。早く追い付いてきてくれ」

 

「相変わらず嫌な余裕だな。で、お前『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』を超えた力、得たのか?」

 

「だとしたらどうする?」

 

「安心した。あの曹操を相手にお前が一矢報えないのは、らしくないだろう?」

 

一誠の皮肉にヴァーリは「そうだな」と小さく頷いた

 

「……曹操はゲオルクとサマエルを死守する事と、あの場でド派手な攻撃をせずにオーフィスの力を無事に奪い去る事、それを単独で(おこな)い、更に俺達を出来るだけ殺さずに攻撃する―――その4つの高難度の条件を抱えながら、最小の攻撃のみで俺達全員を圧倒した。サマエルの力があったとしても、それでも奴の力はキミにも理解出来ただろう。―――あれが人間の身でありながら、超常の存在に牙を向く者達の首魁だ」

 

アザゼルとヴァーリを手玉に取り、尚且つグレモリー眷属とヴァーリチームの魔法・魔力コンビも圧倒

 

京都ではトリアイナで一矢報いたと思っていた一誠だったが……曹操にはまだ届かない事を思い知らされた

 

悔しさで手を強く握り締める一誠にヴァーリが言う

 

「相手をよく観察し続けて、弱点を徹底的に研究する。その上で自分達の武器の特性も探究し続けた。それが英雄派。その中心にいるのが曹操と言う聖槍(せいそう)使いの男。あの男の禁手(バランス・ブレイカー)をよく覚えておけ。あれはたとえ独りになっても複数の超常の存在と渡り合える為に奴が研究に研究を重ねて発現させた亜種の禁手(バランス・ブレイカー)だ」

 

「それに『覇輝(トゥルース・イデア)』とか言うものもあるんだろう?どんだけ強いんだ、あいつ……」

 

「……『覇輝(トゥルース・イデア)』は俺達で言う『覇龍(ジャガーノート・ドライブ)』と限りなく近しいものだ。極めて遠いとも言えるが……。それを使えば絶大な力を得られるが、暴走と隣り合わせだろう。俺程の魔力―――いや、魔法力を持っていないあいつでは『覇輝(トゥルース・イデア)』を操りきれるとは思えないが……」

 

ヴァーリが更に話を続ける

 

「防御力はキミや俺の方が奴よりも高いだろう。魔法力も高いわけではない。俺とキミの攻撃は奴の体に直撃すれば曹操を倒せる。ただ、奴は技が抜きん出ているんだ。だが、自分が限界のある『人間』と言う事も誰よりも認識している。……レーティングゲームで言えば、至高のテクニックタイプと称するべきか。まあ、やろうと思えば極大のオーラを槍から放出して周辺一帯を破壊する事も出来るだろう」

 

弱点攻撃に特化した技と能力、相手を研究して放つ攻撃

 

今の曹操は一誠の能力を完全に把握しきっているので、一誠の攻撃はまるで当たる気配が感じられないだろう

 

ここで一誠がヴァーリに訊ねる

 

「なあ、ヴァーリ。お前はどうしてオーフィスを俺達の所に送った?利用しようとしただけじゃないんじゃないか?」

 

「俺が?オーフィスを?」

 

見当違いの反応を見せるヴァーリ

 

ヴァーリはオーフィスを囮にして曹操達をいぶり出そうとしたが、オーフィスの意思を汲んでいる上にサマエルの攻撃からオーフィスを解放させようともしていた

 

曹操だけを狙うなら、あの場でオーフィスなど意にも介さずに曹操へ攻撃を繰り出していた筈……

 

「……オーフィスの話し相手だっただけだ。時折、寂しそうに見えてな。……いや、何でもない。余計な事を話した。忘れてくれ」

 

“オーフィスが寂しそう”―――それは一誠も何となく分かる気がしていた

 

オーフィスはアーシアやイリナと交流し、構ってくれた2人の危機を救った

 

その1件でオーフィスは死守するだけの価値があると一誠は確信した

 

「オーフィスは悪者の親玉だ。いや、『親玉だった』か。それでも俺はあいつを脱出させるよ」

 

「ハーデスに捕らえられてもまともではない事になるのは目に見えて分かるからな」

 

「この後、俺は脱出作戦に参加する。ヴァーリ、お前は休んでいるのか?」

 

一誠が皮肉げに言うと、ヴァーリは不敵に笑んだ

 

「……休んでいたいところだが、どうしようもなく俺は『白龍皇』でね。―――呪いにまみれた体だが、死神ごときに遅れを取るわけにもいかない。傍観する選択肢は最初から持っていないさ」

 

如何にもプライドの塊らしい事を口走ったヴァーリに一誠は心底安堵する

 

「ヴァーリ、いずれ決着はつけようぜ。俺はお前を倒すのが目標の1つだからな」

 

「ああ、楽しみだよ。兵藤一誠。共にこのような場所で死んではいられないな」

 

脱出作戦は間近に迫っていた―――

 

 

――――――――――――――――――

 

 

ホテルの一室の窓から外を観てみると、漆黒のローブを着込んだ不気味な雰囲気の者達が多数見上げていた

 

フードを深く被っていて顔は見えないが、眼光だけはギラギラと輝かせている

 

いずれも殺意と敵意に満ちていた

 

手には趣味の悪い装飾が施された大鎌が握られており、それぞれ髑髏(ドクロ)やモンスターの手などが付いている

 

―――死神(グリム・リッパー)

 

冥府を(つかさど)る骸骨神ハーデスが引き連れていた者達だ

 

それらが英雄派に力を貸し、新達に襲い掛かろうとこの疑似空間にやって来た

 

ハーデスの行動は完全な越権行為

 

ここに攻めてきた理由はひとまず後回し、このフィールドをどうにか脱出しないといけない

 

ただ、ゲオルクによって創られた疑似空間を抜け出すには3つの方法しかないらしい

 

アザゼルがその説明を始める

 

「3つの方法とは、1つ、術者―――ゲオルクが自ら空間を解除する事。これは京都での戦闘が例だ。2つ、強制的に出入りする。これはルフェイや初代孫悟空と玉龍(ウーロン)がやってのけた事だ。さっきも説明したが、こいつは相当な術者でなければ不可能。ルフェイの場合は現状1度が限界で連れて行けるメンバーも限られる。ルフェイの術での3度目の出入りは無理だ。―――ゲオルクが結界を更に強固にするだろうからな」

 

先程の説明通り、この案は採用されるものの、脱出するのは助けを呼びに行くイリナとその護衛のゼノヴィア

 

そして、3つめは―――

 

「最後は単純明快。術者を倒すか、この結界を支えている中心点を破壊する事だ。アーシアが捕らえられた時にイッセーが結界装置を破壊したが、あの様に結界の中心となっている装置を壊す」

 

つまり、結界の核とも言える部分を破壊すれば、この空間は崩壊すると言う事だ

 

問題は“その装置が何処にあるか”

 

アーシアの時は彼女と繋がっていた装置がそれだったので、壊した瞬間にフィールドに作られた結界は解けた

 

ここの装置については既にルフェイと黒歌が魔法や仙術で探りを入れている

 

部屋の床に紙に描いたホテルの見取り図を置き、そこに駒となる物を複数置いて、外部に『目』を作り出すらしい

 

見取り図に魔術文字を書き、謎の呪文を唱え、謎の灰を撒けば術式は完成

 

瞑目するルフェイが手を見取り図に向けると、駒がカタカタと動き出し、魔術文字が光り、灰が独りでに動いて見知らぬ紋様を描いていく

 

「駐車場に1つ、ホテルの屋上に1つ、ホテル内部の2階ホール会場にも1つ、計3つの結界装置が確認出来ました。それらは蛇……いえ、尾を口にくわえたウロボロスの形の像です」

 

ルフェイが紙に描いた像のデザインをアザゼルは受け取る

 

円を描くように尾を喰らう蛇の像

 

報告を受けたアザゼルが言う

 

「壊すべき結界装置はウロボロスの像か。しかも3つ。相当大掛かりだな。この空間はオーフィスを留める為だけに作られた特別な専用フィールドって事だ。本来のオーフィスなら問題は無かった。力が削がれたオーフィスを封じる前提で結界空間を作ったんだろうな。それでルフェイ、装置の首尾はどうだ?死神の数はさっき調べた時より増えているか?」

 

「はい、総督。どの結界装置にも死神の方々が集結してます。と言うか、駐車場が1番敵が多いです。曹操さまはこの空間から既に離れてますが、代わりにジークフリートさまがいらっしゃってますし、ゲオルクさまも当然駐車場にいらっしゃいますね」

 

「駐車場にある装置は、3つある中で1番の機能を発揮しているんだろう。それを直ぐに壊せれば良いんだが……」

 

ここでリアスがアザゼルに言う

 

「アザゼル、先程話した作戦通りに行きましょう」

 

リアスの提案にアザゼルも頷く

 

「ああ、ったく、えらい方法を考えるもんだぜ、お前もよ。新、お前の惚れた女は誰よりもお前を理解しているようだぜ?」

 

アザゼルが苦笑しながらそう言い、リアスも何故か自信満々の様子だった

 

新は“俺に何かさせるつもりなのか”?と(いぶか)しげに目を細め、そこに朱乃が耳打ちしてくる

 

「実は……」

 

新の耳に入ってくるリアスの作戦

 

「……ハッ、ハハハッ。とんでもない事を考えやがったな……ッ」

 

仰天した新が漏らしたのはその一言だった

 

一誠も気になって作戦の内容を教えてくれよと新に進言し、新も耳打ちで一誠に教えた

 

作戦内容を聞いた一誠は驚くしかなかった

 

「……すげぇっ、さすが部長!咄嗟にそんな方法を思い付くなんて!」

 

「ああ、さすがに舌を巻いたぜ」

 

「さて、皆、集まって」

 

リアスが部屋の中央に皆が集まるよう告げてくる

 

全員の視線がリアスに集中、自信満々な笑みを見せた彼女は宣言した

 

「さあ、私の大事な眷属達。ここをさっさと突破しましょう。その作戦を今から説明するわ!」

 

こうして脱出作戦はスタートしていく―――




ハイスクールdxd4期、放送決定に歓喜!

早く放送して欲しいです!
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