ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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やっとの投稿です……

また一ヶ月も掛かってしまいました……っ


黄泉戸喫(ヨモツヘグイ)のアスタロト(前編)

冥界のとある場所―――アジュカ・ベルゼブブが運営する研究所にて

 

アジュカはアスタロト家より預かった縁者(えんじゃ)―――ディオドラ・アスタロトの末弟と何やら話し込んでいた

 

「……なあ、やはり考え直す気は無いのか?」

 

「言った筈だよ、現ベルゼブブさま―――いや、アジュカさん。僕もアンタと同じように物作りに(ひい)でているけど、考えの根底が互いに合わない。アンタの製造した『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』は確かに素晴らしいよ。でも―――そのせいで純血、転生を含める多くの悪魔達が狂ったのも事実。種族を保守するシステムが逆に作用した事例もあるんだ。バカな貴族が利用して、はぐれ悪魔が生み出されたとか」

 

赤紫色の髪をソフトモヒカンにした少年が、アジュカの開発した『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』に賛否の評価を贈る

 

彼こそがディオドラ・アスタロトの末弟―――トレミス・アスタロト

 

彼の指摘にアジュカは自嘲気味に嘆息する

 

「やれやれ、痛いところを突かれたな」

 

「それに噂で耳にしたんだけど、赤龍帝(せきりゅうてい)贔屓(ひいき)してるんだって?それってやっぱり神滅具(ロンギヌス)を宿しているから?親友サーゼクス・ルシファーさまの妹君であるリアス・グレモリーの眷属だから?」

 

「俺はただ『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』の可能性を広げたいだけだ」

 

「可能性ねえ……。だったら、僕が製作した“コイツ”も可能性の1つになれるんじゃないの?『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』と神器(セイクリッド・ギア)のシステムを掛け合わせた僕の技術の集大成―――」

 

トレミスは自分の服を捲り上げ、腹部を見せる

 

そこにはおぞましいデザインの器具が埋め込まれていた……

 

恐らく『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』の要素を混ぜた人工神器(セイクリッド・ギア)の1種だろう

 

グリゴリでも開発が進められているが、彼はいち早く……しかも独自に完成させていた

 

トレミスが製作した人工神器(セイクリッド・ギア)を見て、アジュカは目を細める

 

「……本当に完成させるとは末恐ろしい才能だよ、アスタロトの血筋のせいか。だが……その力は未調整な上に危険過ぎる。ただでさえ不確定要素が多い神器(セイクリッド・ギア)に『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』のシステムを融合させれば、どんな不具合が起こるか分からない。何より……肉体に直接埋め込むのはオススメしない。出力が上がる反面―――負荷が倍増する。自分の命を削るようなやり方だ」

 

「それは1万年以上も長生きする悪魔の特権みたいなものでしょ?僕は僕自身を被験体にして“コイツ”の性能を実証するのさ。研究に実験は付き物だろ?」

 

「……トレミス、お前は昔から危なっかしい研究を続けていた。そのせいで上役の連中も、お前の事を酷く煙たがっている。それに―――」

 

「ディオドラ兄さんの1件もあるから……って言いたいわけか?そりゃどうも。でもさぁ、結局のところ―――ディオドラ兄さんがあんな事になったのって、もとを(ただ)せばアジュカさんが製作した『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』が原因でもあるんだよ?誰でも眷属に出来るシステムなんて作るから、ディオドラ兄さんは私欲に走ってシスターや聖女ばかり眷属にしていった挙げ句、アーシア・アルジェントの人生を壊した。こうなるとディオドラ兄さんだけじゃなく、アーシアさんも被害者って事になるんじゃない?」

 

「……………」

 

更に痛いところを突かれて何も言えないアジュカに対し、トレミスは話を続けた

 

「アスタロト家は現当主解任、次期魔王輩出の権利も剥奪され、オマケに世間からも酷いバッシングを受ける始末。泣きっ面に蜂とはよく言ったものだよ。けどさ……それも研究の為の犠牲と思えば、気が楽になるでしょ?―――波風(なみかぜ)立たない研究なんて、この世に存在しないんだよ」

 

「……だから、お前も自分を犠牲にしてまで“それ”の研究と開発を続けてきたと?」

 

「そういう事。今だから言っちゃうけど、結局アンタもサーゼクス・ルシファーと同じ甘っちょろい魔王さまなんだよ。種の存続を守る為とか言ってるけど、そのシステム自体が種の存続を危ぶめている事に気付いてすらいない……。案外そういうところはバカなんだね」

 

「…………」

 

トレミスの指摘にアジュカは完全に押し黙ってしまう

 

トレミスは服を戻して研究所の扉を開く

 

「アジュカさん、僕は“技術者”としてのアンタを尊敬するけど……“魔王”としてのアンタは尊敬できないよ。種の存続だの繁栄だの、それも結局は科学技術の進歩によって成り立っているんじゃないか。それを否定しておいて、ヒトの研究にケチつけてほしくないね」

 

「トレミス、お前……っ」

 

「じゃあ、僕は一旦ここを出るよ。せっかく完成した研究データを勝手に調査でもされたら、面倒くさいし」

 

そう言ってトレミスは扉を開き、研究所を去っていった

 

残されたアジュカは苦い表情で嘆息し、周りにいる研究員が口々にトレミスを非難する

 

「アジュカ殿、やはりあの者の考えは異端極まりない。危険な研究を平然と(おこな)い、あのような物を完成させてしまった……っ」

 

「早急に処分を下すべきだ!さもないと、またディオドラ・アスタロトのように危険因子になりかねん!これ以上アスタロトの名を、四大魔王の名誉を(けが)してはならない!」

 

トレミスに対して処分の声を上げるが、アジュカはそれらを諌める

 

「そうしたところで何かが変わるか?軽々しく処分を下せば、余計に反発してしまうだけだ。確かにトレミスの言動は(いささ)か問題だが、その発端となってしまった原因は俺にもある。何より先入観だけで決め付けるな。“ディオドラ・アスタロトの弟だから”と非難を浴びせるのが正しい事か?」

 

「「…………っ」」

 

「とにかく、今はソッとしておいてやろう。あいつの負った傷は……俺にも治せないくらい複雑なんだろう」

 

 

――――――――――――――――

 

 

「そ、それ本当なんスかっ、先生⁉幽神(ゆうがみ)兄弟がグリゴリの管理下に入ったって!」

 

「ああ、俺がこっそり頼んでおいた案件をクリアしたから、奴らを独自の権限を持った遊撃兼諜報部隊にスカウトしてやったのさ」

 

オカルト研究部部室にて

 

一誠のみならず、アザゼルからの報告を聞いて部員全員が驚きを隠せなかった

 

三大勢力にも既に話は通しており、魔獣騒動の1件も相まって幽神兄弟の所属が認められたのだ

 

「でも、そんな事があったのなら私達にも言ってくれれば良かったじゃない」

 

リアスの質問にアザゼルは端的に返す

 

「アスタロト家とヴァサーゴ家の事もあったし、お前らも魔獣騒動の1件で間も無かったから話すわけにもいかなかったんだ。その点に関しては詫びる。黙ってて悪かった」

 

アザゼルなりに新やリアス達を気遣っていたのだろう

 

リアスは嘆息しながらも納得し、アザゼルが話を続ける

 

「今アスタロト家とヴァサーゴ家は人間界にある山奥の別荘で隠居中、幽神兄弟もしばらくはそこで待機している。また良からぬ(やから)の襲撃も起こらないとは限らないから、念の為の用心棒ってわけだ」

 

「信用して良いのか?元々は賞金首だったんだろ?」

 

新が素朴な疑問を投げつける

 

危険度の高い賞金首だった経歴から、新は疑いの目を向けていた

 

その質問に対してアザゼルは苦笑しながら答えた

 

「まあ、確かに危ないところはあるけどな。俺が少しからかってやったら、鬼気迫る声音で“蹴り殺す”と脅されたもんだ」

 

「既に恨まれてるじゃないですか!何やらかしたんスか⁉」

 

「その辺はノーコメントで☆」

 

「ケチな政治家みたいな言い訳してんじゃねぇよ……」

 

アザゼルが何をやらかしたのか、容易に想像できてしまうので嘆息する新と一誠

 

そこでアザゼルは一誠に話を振る

 

「んで、ここからがちょっと大事な話だ。イッセー、今週末にアーシアを連れてその別荘に向かってほしい」

 

突然切り出された話に一誠とアーシアは目を丸くする

 

「実は幽神兄弟―――正確には幽神正義からの要請もあってな。1番に迷惑を(こうむ)ったイッセーとアーシアに来てもらいたいんだと」

 

「お、俺とアーシアの2人で……ですか?」

 

「あまり大所帯で行くには目立ち過ぎるからな。眷属総出ってわけにもいかない。リアス、お前の許可さえあれば2人を行かせてやりたいんだが……どうだ?」

 

「そうね……本当は私も行かなければならないところなんだけど、分かったわ。せめて報告だけでもしてちょうだいね」

 

リアスの了承が出たところでアザゼルは話を戻し、一誠に待ち合わせ場所を記した紙を渡す

 

「イッセー、当日はお前らの他にも同行者を付ける。一応の護衛役だ」

 

「護衛?誰なんですか?」

 

「そいつは後のお楽しみ、お前の知ってる連中だ」

 

「先生、心なしか悪い顔になってる気がするんですけど……何か企んでませんよね?」

 

「失礼な奴だ、俺がいつそんな事を考えた?」

 

「四六時中考えてるようなイメージしか無いんスけど……」

 

「さすがに傷付くぞ⁉」

 

身から出た錆とはまさに今のアザゼルを示していた……

 

 

――――――――――――――

 

 

そして週末になり、一誠とアーシアは指定された待ち合わせ場所―――ファミルーマートに辿り着いていた

 

アザゼルの話によれば、案内役に幽神正義が迎えに来るのだが……一誠とアーシアの護衛役として同行者も加わるらしい

 

しかも、一誠の知っている人物

 

『俺が知っている人物って誰なんだろう……?』

 

一誠が考え込んでいると……その人物達がやって来た

 

アザゼルが寄越した2人の護衛役、それは―――

 

「お久しぶりです、イッセー様」

 

「ユ、ユキノさんっ⁉」

 

一誠は素っ頓狂な声を上げて驚いた

 

それもその筈、護衛役としてやって来たのは一誠が以前助けた元『禍の団(カオス・ブリゲード)』構成員―――ユキノ・アンジェルだった

 

更に彼女だけでなく、金髪の女騎士―――ディマリア・ロディーナと小悪魔的な女性―――チェルシー・ルビナスも同行していた

 

彼女達は冥界に移送されていたのだが、アザゼルの要請でこの日の為に一時的な釈放を得たのだ

 

予想外の人物に終始驚く一誠

 

「アーシア・アルジェント様ですね?改めて、はじめまして。イッセー様とあなたの護衛役を(おお)せつかって参りました。ユキノ・アンジェルと申します。どうぞ、よろしくお願いします」

 

「は、はい!こちらこそ、よろしくお願いします」

 

(かしこ)まった様子で挨拶を交わすアーシアとユキノ

 

ディマリア、チェルシーも簡単に自己紹介を済ませる

 

「しかし、驚きましたよ。まさかユキノさん達が俺とアーシアの護衛役だなんて……」

 

「正直、私達も驚いてます。『禍の団(カオス・ブリゲード)』の構成員だった私達にイッセー様とアーシア様の護衛を任されるだなんて……」

 

どうやら本人達にとっても予想だにしてなかった案件らしい

 

一誠はアザゼルの采配を怪訝に思いつつも、幽神正義が来るのを待つ事にした

 

それから15分後、幽神正義がやって来て―――

 

「あ、来た来た。おーい、幽g―――ミビャアッ!なんでいきなり蹴るんだよ⁉」

 

「黙れ兵藤。遺言を残してから蹴られるか、遺言を残さずに蹴られるか選べ」

 

「どっちにしろ蹴られるんじゃねぇか!俺が何したって言うんだよ⁉」

 

「それは貴様が理解しているだろう。アーシア・アルジェントがいておきながら……何処ぞの石油王になったつもりか?このアホが」

 

「違う!俺がなりたいのはハーレムお―――ギャアッ!」

 

正義の容赦ない蹴りの餌食となる一誠

 

その理由は言わずもがな、一誠がアーシアの他に女性を(はべ)らせている事に対しての制裁だろう

 

正義が一誠の胸ぐらを掴んで詰め寄る

 

「そもそも何だ、3人のうち2人も爆乳(ばくだん)を所持しているぞ。貴様は何を爆破させるつもりだ」

 

「当て字が酷い上にヒトを爆弾魔みたいに言うな!」

 

「爆弾魔じゃなければ、覗き魔もしくは痴漢魔とでも言ってやろうか。少しは自制しろ、猿モドキ」

 

「何だと、このムッツリスケベめ!丸くなったかと思えば刺々(とげとげ)しさを上げやがって!また鼻血の海に沈めてやろうか!」

 

「それ以上何か喋ってみろ。32本の歯で貴様の脳髄を貫通させてやる」

 

(いが)み合う一誠と正義の様子を見て、アーシアはオロオロ

 

ユキノ達もどうしたら良いのか分からなかった

 

「えっと……イッセー様?こちらの方は?」

 

ユキノが恐る恐る訊くと、一誠が正義の蹴りを回避しながら言う

 

「あ、ゴメンゴメン。紹介するよ。こいつは俺の中学時代の知り合いで、幽神正義って言うんだ。根は良い奴なんだよ」

 

「とてもそういう風に見えない気がするんだけど?」

 

チェルシーの指摘に一誠も苦笑い

 

「まあ、基本的に堅物(かたぶつ)で刺々しいけど……これでもまだマシな方さ」

 

「なるほど、あれか。喧嘩するほど仲が良いと言う―――」

 

「「いや、仲良しではない」」

 

一誠と正義は揃ってディマリアの言葉を(さえぎ)

 

ひと悶着あったところで一誠はユキノ達の事を正義に話す

 

彼女達が元『禍の団(カオス・ブリゲード)』構成員であった事や、一誠の将来の眷属候補である事

 

そして、彼女達の采配をアザゼルが(おこな)った事も……

 

それを聞いて正義は制裁の矛先(ほこさき)

一誠からアザゼルへと変更した

 

「兵藤、今度あの堕天使の元総督を蹴り殺して構わんか?さすがに我慢の限界だ。この采配に悪意しか感じられない」

 

「殺すのはやめてくれ!あんなのでも俺達の先生なんだ!」

 

「チッ」

 

「その代わり、死なない程度に蹴るのはOKだ」

 

「話が分かるようになってきたな」

 

「正直、俺達もあのヒトに反省してもらいたい点はあるからな。でも、アザゼル先生は全く反省しない……」

 

「ならば、お前も奴の折檻に参加するか?日頃の恨みも込めて」

 

「そうだな、考えておくよ……」

 

何故かこの案件を終えた後、アザゼルが教え子(イッセー)部下(正義)に殺されかける未来予想図が見えた……

 

一誠と正義のアザゼル折檻協定が成立したところで、アスタロト家の別荘へと向かう一同

 

扉を開けて大広間に到着すると、メイドが一誠達を迎え入れる

 

一誠とアーシアはソファーに座り、ユキノ達はその(かたわ)らに(たたず)

 

(しばら)くするとアスタロト家の元当主が入室して向かいのソファーに座る

 

赤龍帝(せきりゅうてい)・兵藤一誠殿(どの)、アーシア・アルジェント殿。お忙しい中、お越しいただきありがとうございます。この度は私の息子―――ディオドラがリアス・グレモリー殿を含め、皆さまにご迷惑をお掛けしました。元当主として、父親として深くお詫び申し上げます」

 

(かしこ)まった口調で一誠とアーシアに頭を下げる元当主

 

一誠とアーシアが突然の謝罪に呆気に取られていると、正義が耳打ちしてくる

 

『1番被害を受けたお前達に面と向かい合って詫びを入れさせるべきだと思ってな、今日お前達をここに呼んだのはその為だ。まだ誠意が足りんと言うなら、腹でも切らせようか?』

 

『いやいやいや!そこまでしなくて良いって!』

 

『そうか。……なら、話は終わりだ。帰れ』

 

『幽神、失礼じゃね?今来たばっかりなのにもう帰れとか』

 

一誠が(いぶか)しげに訊いても正義は『そんな事は無い』とシラを切るばかり

 

そこへアスタロト家元当主が話を切り出してくる

 

「お二人ともお疲れでしょう?今日はどうぞごゆっくり(くつろ)いでいってください。私どもに出来るのは、おもてなしぐらいですが……」

 

「いや、待て。そんな必要は無い」

 

「幽神殿、何故ですか?せっかく来ていただいたのに」

 

「用件だけ済めば良いだろう」

 

「それでは私の気が治まりません!それに幽神殿にもご迷惑を掛けた身です。先日の件のお礼も兼ねて―――」

 

「いらん。余計な事をするな」

 

話を無理矢理終わらせようとする正義と、(かたく)なにおもてなしを勧める元当主の口論が続く

 

そんな中、正義にとってタイミングの悪い出来事が起こる……

 

「お父さま、コーヒーをお持ちしました」

 

奥から聞こえてくる女性の声

 

正義の嫌な予感はまたしても的中してしまった

 

女性の声に反応した一誠がそちらを見やると、ゆるふわのウェーブを掛けた青い髪の女性―――ジュビア・アスタロトが人数分のコーヒーをトレイに乗せてやって来る

 

「兵藤一誠殿、紹介します。私の娘のジュビア・アスタロト、ディオドラの姉です」

 

「ディ、ディオドラのお姉さんっ⁉」

 

素っ頓狂な声を上げて驚く一誠

 

ジュビアは軽く会釈してから父親、一誠、アーシアの順番にコーヒーを並べていく

 

そして、正義にもコーヒーが渡されるのだが……彼のコーヒーだけは特別な物と化していた

 

上にバニラアイスが添えられ、そのバニラアイスは何故か正義そっくりの彫像に形作られていた

 

バニラアイス彫像の出来に言葉を失うが、何より正義への待遇が厚かった事に一誠はジト目で睨む

 

「……なあ、幽神」

 

「それ以上訊くな、俺は何も知らん」

 

「知らんで済まされるか!お前、俺を散々(けな)しておいて、あの爆乳お姉さんと何かあったんだな⁉白状しろ!」

 

「黙れ、俺は潔白だ。やましい事など何も無い」

 

「潔白だと⁉だったら、なんでそのヒトがお前の隣に座り込むんだよっ⁉」

 

一誠の一言に反応する正義

 

視線を移してみれば、いつの間にかジュビアが隣に座っていた

 

「……何故、俺の隣に座っている?」

 

「いけませんか?ジュビアの座る位置は正義さまの隣と決まっています」

 

「勝手に決めるな、許可した覚えは無い」

 

正義はバニラアイス彫像を崩して混ぜ、コーヒーを一気に飲み干す

 

一誠は2人の関係性について元当主に問いただす

 

「あのー、幽神とディオドラのお姉さんはどういった関係なんですか?」

 

「おい兵藤、何を訊いている」

 

「おおっ、よくぞ聞いてくださいました。実はジュビアが幽神正義殿にゾッコンでして。今ではすっかり婿養子気分なんですよ☆」

 

「誰が婿養子だ⁉そんなものになった覚えは無いッ!」

 

「まあまあ、遠慮なさらずに。ジュビアが見初(みそ)めた男性なら、何も言う事はありません。それにあなた自身の実力も申し分ない。差しつかえ無ければ婿養子だけでなく、我がアスタロト家の次期当主候補として迎え入れましょうぞ。どうせなら、私の事もお義父(とう)さんと呼んで―――」

 

「話を飛ばし過ぎるな!そもそも、俺はそんなものになるつもりは無いッ!」

 

ギャーギャー(わめ)く正義だが、元当主は引き下がる様子を全く見せない

 

一誠とアーシアが当惑している中、買い出しに行ってた悪堵が戻ってくる

 

「兄貴~、食い物を買い込んだから手伝ってくれ―――って、兵藤⁉なんでここにいるんだよ⁉」

 

「ちょっと、アンタ!せっかく買ってきたのに落とさないでよ!」

 

悪堵は目玉が飛び出す程に驚き、手に持っていた買い物袋を落とした

 

同行していたであろうシャルルとウェンディが買い物袋を拾い集める

 

一誠は即座に美少女2人(シャルルとウェンディ)に気付いた

 

「また美少女が出たっ!しかも2人!」

 

「おや、おかえり。シャルル、ウェンディ、キミ達もご挨拶を。彼がかの有名な赤龍帝こと兵藤一誠殿だよ」

 

「あ、はい。えっと……初めまして。ウェンディ・ヴァサーゴです」

 

「シャルル・ヴァサーゴ、ウェンディとは姉妹よ。よろしく」

 

ウェンディば深々と頭を下げ、シャルルは軽く会釈する

 

美女美少女に囲まれている幽神兄弟に対し、一誠はワナワナと震え始めた

 

「幽神……っ!お前ら……なんて、なんて羨ましいんだッ!こんな可愛い女の子達と1つ屋根の下暮らしだと⁉よくも見せつけてくれたな、このムッツリ兄弟めッ!」

 

「泣くな、鬱陶(うっとう)しい!成り行きでこんな事になってしまっただけだ!」

 

「成り行きで爆乳お姉さんと双子の美少女を手に入れたってのか⁉コンチクショウ!」

 

「変な言いがかりをするな!俺達はあくまで護衛として、ここに留まっているに過ぎん!」

 

正義は必死に弁明するが、今の一誠は聞く耳を持ってくれない……

 

そこへ更に―――少し遅れて帰ってきたリント、教団を脱退し、正義の側近として留まっているヒメガミとフローラも鉢合わせ

 

美少女だらけの空間に遭遇した一誠は涙目で正義を睨み付けた

 

「お前ら、ただのスケベブラザーズじゃねぇか!先生がからかうのも分かった気がするよ!もうムッツリでも何でもねぇ!スケベブラザーズ!」

 

「貴様にムッツリだのスケベだの言われる筋合いは無い!貴様の方こそ、アーシアがいておきながら3人もの女を(はべ)らせているだろうが!アーシアの純真な心を(もてあそ)ぶのか!」

 

「アーシアに対する想いは変わらねぇ!アーシアは良い娘だし、俺だって好きだ!お前はどうだ?アーシアにフラれたからって、他の所に婿入りすんのか!」

 

「言わせておけば……ッ!やはり、さっきの話は決裂だ!あの堕天使もろとも、いずれ貴様を蹴り殺してやるッ!」

 

「やれるものならやってみろっ、ムッツリ野郎ッ!」

 

―――とは言うものの、実は今の一誠は魔獣騒動の1件でドライグが疲弊しきってしまい、眠る時間が多くなってしまっている

 

禁手(バランス・ブレイカー)には何とかなれるが、トリアイナや真『女王(クイーン)』が使えない……

 

しかし、そんな状態もお構いなしに一誠は正義への怒りを飛ばす

 

それ程にまで幽神兄弟の現状が羨ましかったのだろう……

 

驚くべき事態は更に起こる……

 

一誠と正義が(いが)み合っていると―――大きな扉が開かれる音、その直後に足音が聞こえてくる

 

「久々に寄ってみたら……何なの、この騒ぎは?外まで聞こえてきたよ」

 

大広間に入室してきたのは赤紫色の髪をソフトモヒカンにした少年

 

何処となく見覚えのある面影を持った少年が現れた

 

「へぇ、アンタが噂の赤龍帝(せきりゅうてい)・兵藤一誠か。―――見た目以上にアホ面だね」

 

「いきなり失礼だな!何なんだよ、お前は⁉」

 

荒れている一誠が八つ当たり気味に訊くと、ソフトモヒカンの少年は口の端を吊り上げて答える

 

「僕かい?僕はトレミス・アスタロト。レーティングゲームで、アンタがボコボコにした―――ディオドラ・アスタロトの弟だよ」

 

アスタロト家とヴァサーゴ家の別荘にて、波乱がまだまだ続きそうだ……




更新を進めたいのに最近は全然進みません……

次の話もいつ更新できるのか、不安です……

週末ぐらいは集中して書きたい……!

今回の話で登場したディオドラの弟、トレミス・アスタロト

彼のイメージCVは花江夏樹です

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