ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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やっとこさ書けました……っ

本当に更新を早めないとマズイ……っ


ハンター同士の戦い

魔剣聖(ヴァンキッシュ)バサラに叩きのめされ、負傷したリアス達にありったけの回復ポーションを与える新

 

アーシアもフル稼働で全員の傷を治療し、30分後……リアス達は何とか事なきを得て、体を起こす

 

新は直ぐにバサラを睨み付けて戦闘モードに入り、対するバサラは不敵な笑みを浮かべるだけだった

 

「しっかし、懐かしいよな、この感じ。確か最後に()り合った場所はルーマニアだったか? 胸くそ悪い吸血鬼どもを殺りまくってる時にテメェが乱入してきたよな。……あれから5年か。言葉にすれば一言だが、実際は長いようで(みじけ)ぇなぁって沁々(しみじみ)思っちまうよ」

 

「……ああ、人が腐るには充分過ぎる時間だ」

 

新は鎧を身に纏い、依然として殺意を全身から滲み出させる

 

「バサラ、昔のお前は“違う意味”でキレた奴だった。雲のように掴み所が無い(したた)かさを持ちながら、勝負事に関してはフェアな一面もあった。だが……今のお前はあの頃よりも腐りきってやがる……っ! 何の目的があってリアス達を襲った……⁉ 人質にでもしようと思ったのか⁉ 俺を焚き付ける為だけにリアス達を―――ッッ!」

 

新が言い終わる前にバサラは体を震わせ―――(こら)えきれないと言わんばかりに笑った

 

バサラの態度に「何が可笑(おか)しいッッ!」と激昂する新

 

バサラは笑いを止め、一拍置いてから言う

 

「腕が(にぶ)ったとは思っていたが、まさか頭の回転もここまで鈍ってるとはな。その駄犬(ワンコロ)どもを人質にするだぁ? アホか、俺がそんなセコい真似するかよ。そもそも、そんな奴らは人質にする価値すら()ぇ。三流以下のやり方でテメェと()り合ったところで何が面白い? 筋違いも(はなは)だしいんだよ」

 

一転して声のトーンが低くなり、バサラは更に言い続ける

 

「テメェが何処ぞのベッドでお寝んねしている間、俺達は簡単に敵陣へと入り―――ずっとここに居た。“取引をしたい”って話を餌にしてなぁ。まあ、そいつらは俺達に関しては半信半疑だったし、結果的に取引を断ったものの……敵の(ふところ)に潜り込んだ事に変わりねぇ。つまり―――」

 

バサラが刀の峰に指を添えてハッキリと告げる

 

「俺が殺ろうと思えば、いつでも殺れたと言うわけだ」

 

鋭い眼力とリアス達をいつでも殺せたと言う事実を突きつけ、新に重圧を掛けていく

 

「そんな事にも気付かねぇとは……確かにテメェの言う通りだ。たかが5年、されど5年。人が腐るには充分過ぎる長さだったな。今の環境が明らかにテメェを弱くしやがった。今回に限った話じゃねぇ。“仲間”だの“守る”だの、甘っちょろい自己満足の正義感を(かか)えたせいで躊躇(ためら)いが芽生え、隙を作る羽目になった。―――聞いたぜ? 竜の字、ライセンスの昇格を蹴ったんだってな。顔も知らねぇ新人を殺した罪悪感ってヤツでよぉ」

 

バサラは新にとって最も痛いところを突いてきた

 

造魔(ゾーマ)の情報網は世界中に拡がっているので、情報は容易(たやす)く手に入る

 

バサラは冷徹な眼を向けて新に言い放つ

 

「テメェはいつからくだらねぇロマンチストになった? 口先だけの偽善者を語るようになった? 中途半端な強さに成り下がりやがって、胸くそ悪いったらありゃしねぇ。以前のテメェは何処に消えた? 甘ったれた理想論を否定し、常にシビアな価値観を維持し続けてきた竜の字が―――今や飼い犬になろうとしてやがる」

 

「……今の俺には、大切な仲間がいる。仲間と周りの人達を守れる力さえあれば良い。お前のように延々と、嬉々として戦禍(せんか)を求め続ける力なんて必要無い……っ。今の世を俺達がいたような暗黒時代に戻しちゃならねぇんだよ……っ」

 

「だったら俺は―――今のテメェの全てを否定してやる」

 

バサラは左手に持った刀を後方に引き、腰を深く落として右手を峰に添える

 

一誠を一撃で瀕死寸前に追い込んだ必殺の突き……その呼び動作である

 

バサラの構えを見た新は眼を細め、バサラは戦闘を(うなが)

 

「どうした? さっさと構えろ。舌の根も乾かねぇ内にそいつらを巻き込みたいのか?」

 

新は剣を出現させて右手に持ち、リアス達を巻き込まないように移動しようとするが……突如、後ろから左手を誰かに掴まれる

 

リアスだった

 

しっかりと両手で新の手を掴み、声には出さねど―――まるで“行ってはダメ”と訴えているようだった

 

リアスが口を開く

 

「新……ダメ……っ」

 

「アイツの狙いは俺だ。ヤツとの戦いは避けられない」

 

「分かってる……分かってる……っ。けれど―――」

 

「こうなったのも俺の責任、俺の不始末だ。アイツとの因縁は……俺がケジメをつける」

 

新はリアスの手をソッと離し、リアス達を巻き込まない立ち位置に着く

 

リアスは新に掛けるべき言葉を見つけられなかった

 

嫌な胸騒ぎが(ぬぐ)えず、本当ならもっと強く止めるべきなのに止められない……

 

まだ近くにいる筈なのに、だんだん遠退いていくようにも見えた

 

立ち位置を確保した新とバサラが再び構える

 

お互いに構えたまま動かず、無言の静寂が流れ続ける

 

時間が経つ(ごと)に緊迫感は徐々に増していき、やがて最高潮に達した……

 

「――――ッッ!」

 

バサラの左目がカッと見開いた刹那、地面が()ぜるッッ!

 

地を蹴って飛び出したバサラは左手に(たずさ)えた刀での強烈な突きを見舞ってきた

 

新はバサラが地を蹴ったのと同じタイミングで上空へ跳び、バサラの頭上を取る

 

空振りに終わった突きの剣圧は眼前の地を(えぐ)り、敷地内を荒らす

 

バサラの頭上に跳んだ新はここぞとばかりに剣を振り下ろそうとした―――だが……っ!

 

「それで避けたつもりかよ? 竜の字ィッッ!」

 

「―――ッッ⁉」

 

バサラは新の動きを読んでいたかの如く、二撃めの突きを頭上に放った

 

恐るべき反応速度で切り返してきたバサラの突きは、新の右脇腹を切り裂き―――そこから血が噴き出す

 

「……っ! 新ぁぁぁぁぁぁっ!」

 

リアスの悲痛な叫びが響き、他の皆も絶句してしまう

 

だが、ただでやられたわけではない……

 

脇腹を切られはしたものの、ギリギリのところで剣を差し込み、串刺しだけは何とか(まぬが)れた

 

あと少し遅ければ、完璧に(つらぬ)かれていただろう……

 

「へっ、串刺しだけは避けたみてぇだな。だが―――」

 

バサラは刀の向きを新の脇腹に向け、()ぐように斬る

 

それによって脇腹の傷を拡げ、更に右の拳打で新を後方へ殴り飛ばす

 

新は乱雑に転がり、斬られた脇腹を押さえながら立ち上がる

 

流れるように優位に勝負を運ぶバサラの手腕(しゅわん)に、静観していたシルバーが口を開く

 

「突きを外されても間髪入れずに横薙ぎの攻撃に変換できる。かつて“戦術の鬼才”と呼ばれた新撰組(しんせんぐみ)副長、土方歳三(ひじかたとしぞう)の考案した『平刺突(ひらづき)』に死角が無いと言うのは事実のようですね。ましてや……バサラ様がその技術を盗み、破壊力に特化させた剣技―――通称『呀突(ガトツ)』なら、尚更です」

 

刀に付着した新の血が(したた)り落ち、バサラはそれを舌で舐める

 

「悪くねぇ味だが……俺が欲しいのは“今のテメェ”じゃねぇ。―――“昔のテメェ”だ。こんなもんでやられてんじゃねぇぞ」

 

再び平刺突(ひらづき)……否、呀突の構えを取るバサラ

 

先程と同じように新を串刺しにするべく、地を蹴って飛び出し―――呀突を繰り出してくる

 

新は咄嗟に剣で払い除けようとするが……

 

小賢(こざか)しいんだよッ!」

 

突進の勢いを止める事など出来るわけもなく、バサラの右肘が新の頬を打ち抜く

 

強烈な肘打ちにより兜は破壊され、新本人も地を転がった

 

バサラが鋭い目付きで見下ろして言う

 

「チビスケに創らせた無銘の得物だが、今のテメェには傷1つ付けられねぇよ」

 

桁違いの強さ……あの新でさえ子供扱いされている……

 

「新……っ。―――っ」

 

すると、ここでリアスが新の異変に気付く

 

割られた兜の隙間から見えた新の目付き

 

それがいつもと違い、血走ってきている……

 

まさしく餓えた獣の(ごと)

 

ソーナからも話を聞いており、造魔(ゾーマ)の尖兵テンペスターと戦っていた時の新は終始殺気立っていた

 

明らかに異常な異変……

 

「立てよ、竜の字」

 

戦闘の継続を(うなが)してくるバサラ

 

“これ以上、続けさせてはいけない……!”

 

リアスはバサラの前に立ち塞がり、両手を広げて新を庇おうとする

 

退()け、飼い犬(ワンコロ)。テメェの出る幕じゃねぇんだよ」

 

バサラが鋭い睨みを利かせて威圧してくる

 

実力差は証明され、勝ち目が無いのは火を見るより明らか……

 

それでも……リアスはその場を離れない

 

だが、新はそんなリアスを無視して再び歩み出す

 

「新……っ?」

 

「……………………」

 

火竜のオーラまでも滲み出し、新は真っ直ぐバサラを見据える

 

対してバサラは―――ニヤリと口の端を吊り上げた

 

『脇腹を斬られたにもかかわらず、二撃めの反応は一撃めよりも速かった。……やっぱ思った通りだ。竜の字(コイツ)は俺と戦う(たび)に“昔の竜の字”に戻りつつある。自分(テメェ)自身で気付いてねぇだけだが……着実に感覚を取り戻してやがる』

 

そう考察した矢先、新が突っ込んできた

 

バサラは三度(みたび)、呀突で迎撃しようとする

 

突き出される刀の切っ先が新に届く寸前、新の姿がブレて消え、バサラの背後に……!

 

「―――おっとぉ!」

 

それでもバサラは並々ならぬ反応速度で察知し、新に回し蹴りを食らわせた

 

新は体勢を崩されるが、完全には倒れずブレーキを掛けて土煙を舞い上がらせる

 

繰り返す度に新の速度はどんどん速くなり、目付きも鋭くなっていく

 

新は無言で火竜の力を解放―――『真・女王(クイーン)』形態へと姿を変えた

 

いつもの様子とは違って身に纏う炎はドス黒く、怨念めいた(うごめ)きを見せていた

 

『俺との戦いを経る事で一気に“昔の竜の字”に立ち戻りつつある。普段はヘタレ発言をしてるくせに、ここぞって時には決めやがる。……口では違うとか言ってやがるが、やっぱテメェも俺と同類―――平穏なんて偽物(まやかし)の中じゃ生きられねぇ獣なんだよ。それを思い出させてやる』

 

バサラが四度めの呀突を構える、ただし……

 

「今度は手加減無しだ。上半身が吹き飛ぶかもしれねぇが、腹ァ(くく)れよ?」

 

なんと、今まで撃ってきた呀突は全て手加減したままだった……!

 

手加減していても、赤龍帝(せきりゅうてい)である一誠を軽くあしらう程の破壊力

 

そんなものを本気で撃てば、冗談抜きで上半身が消し飛ぶだろう……

 

新は依然としてバサラを睨み付けながら、1歩ずつ歩みを進めていく

 

そして……バサラの左目がカッと見開き―――

 

「オオオオォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!」

 

咆哮と共にバサラの呀突が空を走るッ!

 

新はその突きをバサラの死角側―――眼帯で覆われた右目の方へ(かわ)して距離を詰めようとする

 

空振りに終わった突きの余波が校庭を抉り、バサラは瞬時に横薙ぎの攻撃へシフトチェンジ

 

しかし、完全に力が乗る前に新がその刀身を剣で弾き返し―――体を回転させ、勢いを乗せた剣戟をバサラの後頭部に見舞おうとした

 

弾き返された瞬間、バサラもそれを察したのか……弾き返された刀を後ろ手に構えて剣戟を防いだ

 

だが、咄嗟の防御だけでは勢いを乗せた剣戟を抑え込む事は出来ず……バサラは吹っ飛ばされ、校舎の壁に激突してしまう

 

ガラガラと崩れる壁に鋭い視線を向け、新が(つぶや)

 

「……あの頃、ハンター全盛期の暗黒時代では相手を一撃で(ほうむ)る必殺の技が必要だった。バサラ、お前で言えば呀突(ガトツ)がその代表格だ。だが……どんな技だろうと4回も見せつけられれば、返し技の1つや2つは思い付くんだよ」

 

新がドスを利かせた低い声音で言う

 

「……立て。5年ぶりの決着がこんなもんじゃ呆気ないだろう?」

 

その言葉の後に崩れた壁の中からバサラが姿を現す

 

足元の瓦礫を退()かし、首をゴキゴキと鳴らす

 

「決着だぁ? そんなつもりは微塵も無かったんだがな。まあ、テメェがそう言うなら付き合ってやるか。……死んでも恨むなよ?」

 

「死ぬのは貴様の方だ……っ」

 

再び得物を構える2人

 

ただ構えているだけなのに禍々(まがまが)しい気配が立ち込める

 

リアスは豹変していく新の様子に愕然とする……

 

1分、1秒経つ(たび)に新がどんどん離れていく……っ

 

もし、このままにしておけば―――リアス達の知っている新は本当に消失してしまうだろう

 

しかし、2人の戦いを止められる者は誰もいない……っ

 

「オオオオォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッ!」

 

「アアアアァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!」

 

2つの咆哮が夜の空間を(つんざ)き、苛烈な剣戟の打ち合いが始まった

 

激しく鳴り響く金属音と飛び散る火花

 

1歩も引かず、一瞬たりとも動きを止めず(おこな)われる斬り合い

 

それは今まで見た事が無いほど熾烈なものだった

 

お互いが急所を狙い合い、確実に葬らんとする気迫を飛び交わしている……

 

まるで(みにく)い獣同士の喰らい合い……

 

その剣戟合戦の中、バサラは“思った通りだ”と言わんばかりに口の端を吊り上げた

 

「ハハハッ、竜の字ィ! やっぱテメェは俺と同じ側のヤツだ! こうしてるだけで分かる! 俺と()り合ってる時のテメェが1番活気に満ちてやがるんだよ!平穏だの何だの抜かしているが、本当は餓えてやがるんだッ! 戦渦(せんか)に! 命のやり取りに! 生きるか死ぬかの瀬戸際・修羅場によぉ!」

 

バサラは嬉々として声を荒らげるが、新は何も答えずに剣戟を続けるのみ

 

斬り合いを継続している刹那、バサラは(おろそ)かになっているであろう足元へ蹴りを放つ

 

新は体勢を崩されたせいで背中から地に倒れ、バサラが刀を振り下ろしてくる

 

新は振り下ろされてくる剣戟を防いだが、バサラが刀の峰に手を添えて荷重を掛ける

 

刀身が眼前にまで迫り、今にも真っ二つに斬り裂かれそうになるが……新は先程の意趣返しとばかりにバサラの顎を蹴り上げた

 

一瞬の隙を突いて体勢を立て直し、距離を取る新

 

バサラは口元の血を手で(ぬぐ)い、ペッと何かを吐き捨てる

 

地面に吐き捨てられたのは―――血まみれの歯だった

 

恐らく先程の蹴りで歯が折れたのだろう……

 

しかし、その事を気にも留めないバサラは突進しつつ刀を振るう

 

新も火竜のオーラを剣に纏わせ、剣戟一閃

 

一際大きい金属音が鳴り響き、お互い背中合わせで動きを止める

 

数秒後、地に突き刺さる刀の切っ先……

 

先程の一閃でバサラの刀は折られていた

 

新は(きびす)を返してバサラに警告する

 

「……次は貴様の首を飛ばす」

 

「その調子だ。やっと良い目付きになってきたじゃねぇか、竜の字」

 

殺意を見せる新、暗い興奮を見せるバサラ

 

彼らの戦いはあまりにも逸脱した狂気に満ちていた……

 

危険を感じたリアスは新を止めようとするが、アザゼルに制止される

 

「放しなさいっ、アザゼルッ! 新を……新を止めないと―――」

 

「……無理だ、俺達には止められない。止めようとすれば斬り合いに巻き込まれて死ぬぞ」

 

「でも……ッ!」

 

「今のアイツらは現代の中じゃなく、暗黒時代全盛期の中で戦っているんだ。俺達の声なんてとっくに遮断されてる……っ。この戦いを止められるとしたら、同じく激動の暗黒時代を生き抜いた者―――本物の死線と修羅場を味わったヤツだけだ……」

 

アザゼルにも止められない事実を突きつけられ、リアスは意気消沈してしまう

 

ただ見守る事しか出来ない……っ

 

リアスだけじゃなく、他の皆も歯痒い思いをしているに違いない

 

そんな事はお構い無しに新とバサラの戦いは止まらない……

 

バサラは刀が折れているにもかかわらず呀突の構えを取り、それを見た新が嘆息する

 

「お前は相変わらず退()く事を知らねぇんだな」

 

「退くだと? 笑わせんな。こっちは久々に(たかぶ)ってきてんだ。そんな時にシラケるような真似をするアホが何処にいやがる? 士道不覚悟ってヤツで切腹させんぞォッ!」

 

バサラは呀突―――と見せ掛けて折られた刀を投げ放ち、あとを追うように駆け出す

 

先に投擲された刀は新に向かって飛んでいくが……新は左手で薙ぎ払うように弾き飛ばした

 

持っている剣で弾いても良かったが、それだと僅かながらもタイムラグが生じてしまい、相手に隙を与える事になる

 

命取りになるのを防ぐ為、新は“敢えて”得物ではなく手で刀を弾いたのだ

 

それでもバサラは左の拳を握り締め、“大振り”の拳打を放つ寸前の構えとなった

 

新はその左手を斬り落とすつもりで剣を振り下ろしたが……その寸前、バサラの左足が新の右膝頭(ひざがしら)―――膝に於ける急所を蹴り抜く

 

蹴られた衝撃でミシミシと骨が(きし)み、振り下ろしの剣戟が一瞬遅れる

 

そのコンマ1秒後、バサラの左拳打が剣の持ち手に叩き込まれ……新は剣を落としてしまう

 

投げ付けた刀を(おとり)に使い、更にわざと“大振り”の拳打を見せる事で下方への注意を散漫させた

 

バサラの読みは見事に的中、すかさず新のボディに拳の乱打を叩き込む

 

新の体に無数の拳の痕が生まれ、新は口から血を吐き出す

 

攻勢に転じたかと思いきや、一瞬で逆転される……

 

バサラの手練(しゅれん)には舌を巻くばかりだった

 

だが、これで終わるわけが無い……

 

バサラは羽織っているコートを(はず)し、背後から縄のように新の首元に巻き付けて吊し上げる

 

「これで(しま)いだ」

 

絞め技によって宙吊りにされる新

 

窒息させるつもりかと思いきや―――

 

ミシ……ッ! グキグキ……ッ!

 

「な、何……? 変な音が鳴ってるよ……?」

 

イリナが不快そうな表情で言ってくる

 

耳を塞ぎたくなるような音が聞こえ、新の苦悶に満ちた顔付きを見てアザゼルが音の正体に気付く

 

「窒息なんて生やさしいもんじゃない……っ。あの野郎、首の骨をへし折るつもりだ……ッ!」

 

そう、さっきのは強烈な絞めで新の首が悲鳴を上げている音だった

 

血が混じった泡まで吹き始め、このままでは本当に首の骨をへし折られてしまう……

 

意識が途絶えそうになりながらも、新はこの状況から脱する為に―――(みずか)らの脇腹に右手を伸ばす

 

しかも、そこは斬られた脇腹……っ

 

自ら傷口に手を突っ込み、血の塊を引きずり出す

 

そして、握った血の塊をバサラの顔にぶちまけた

 

目に異物を放り込まれたせいで一瞬だけ絞め具合が緩み、新はその隙を突いて脱出

 

首に巻き付けられたコートを放り捨て、バサラを睨み付ける

 

一方のバサラも顔面にぶちまけられた血を(ぬぐ)い、口元にまで垂れた血は舌で舐め取る

 

“これがバウンティハンター同士の戦い……っ”

 

アザゼルを始め、リアス達は戦々恐々(せんせんきょうきょう)としていた

 

2人の戦いは苛烈かつ凄惨な光景しか無く、入り込む余地すら見当たらない……

 

昔の新はこのような戦い―――否、殺し合いを何度も何度も経験してきたのだ

 

新は先程からのダメージが溜まっているせいで動悸が激しくなっており、傷の具合も酷くなる

 

対してバサラはまだまだ余裕がある様子だった

 

ゴキッと指を鳴らし、「そろそろ終わらすか」と意気込むバサラ

 

新も火竜のオーラを両腕に纏わせ、「そうだな」と低い声音で冷淡に吐き捨てる

 

新の方は余力が無い

 

恐らく、次は玉砕覚悟で向かっていくだろう

 

そうなれば運が良くても相討ち、最悪の場合はどちらかに死が(おとず)れる

 

そして、その死はバサラではなく……

 

「新……っ、ダメよ……っ。止まって……っ」

 

最悪の結末を頭に(よぎ)らせてしまったリアスは震える声で呼び掛けるが、当の本人は聞いてくれない……

 

周りどころか自分の声すら届かない……

 

止めたいのに自分の体が動いてくれない……

 

リアスは今の情けない自分を呪った……

 

そんな事など(つゆ)知らず、新とバサラが再び地を蹴って駆け出していく

 

僅か数秒後に結果がやってくる……っ

 

勝利か敗北、生還か破滅

 

リアスは喉が潰れる勢いで叫んだ

 

しかし、その叫びも(むな)しく響くだけ……

 

今の新には届かない……っ

 

新とバサラが衝突しかけた刹那―――ッ!

 

「はい、ストップ~!」

 

突如、1つの人影が割って入り……新とバサラの拳を両手で制した

 

突然の出来事に目を奪われる一同

 

いったい誰が2人の争いを止めたのか……?

 

両者の間に視線を向けると、意外な人物の姿が目に(うつ)った

 

その人物とは……竜崎総司(りゅうざきそうじ)、新の父親だった

 

「……ッ! 親父……っ?」

 

「正気に戻れ、新。お前はいつから女の子の呼び掛けを無視するような薄情者になったんだい?見てみろ、リアスちゃんが泣いてるじゃないか」

 

そう言われて新はリアスに視線を向け、涙を流している彼女に気付く

 

指摘を受けて返す言葉も無い新

 

次に総司はバサラの方を向いて言う

 

「キミもヒトが悪いじゃないか、バサラ。また誰彼構わず火種を振り撒いて、新を修羅道に引きずり込もうって魂胆かい?」

 

「何だよ、良いところだってのに。オッサンと言えど邪魔すんな」

 

「そうはいかないよ。新は私の息子なんでね、是が非でも止めるよ」

 

バサラを止めただけでなく、まるで親しげに話している総司

 

その不審な様子に気付いたアザゼルは総司を問い詰めた

 

「おい、アンタ。やけにソイツと慣れた感じで話しているな? その男と何か関係があるのか? そもそも何故ここに来た?」

 

すると、総司は肩を(すく)めて嘆息する

 

「1度に何個も質問されると答えられない……と言いたいところだけど、そうは言ってられないよね? ここに来れたのはアジュカくんから連絡が入ったからさ。新が治療から飛び出していった直後、万が一の為に見張っていてくれってね」

 

総司がここに来たのはアジュカの根回しのおかげだったようだ

 

「んで、彼との関係性なんだけど……正直言って金輪際関わるつもりは無かったんだ。何せ私と彼は折り合いが極めて悪い関係にあるんでね」

 

「折り合いが悪い……?」

 

アザゼルの疑問に総司は顔をしかめて言う

 

「バサラ・クレイオス、彼は昔―――私の弟子だった男なんだよ」

 

「「「「「「―――――ッッ⁉」」」」」」

 

衝撃的な事実に全員が言葉を失った……っ




今回の台詞と戦闘描写は見た事がある場面ばかりです。ご了承くださいm(_ _)m
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