「トランザーを
テンペスターは呪力を噴き出させて4本の魔手を大きく突き出した
腕に纏わせていた竜巻、炎、吹雪、雷が解き放たれ、天変地異の如く猛威を振るう
狙いは新―――だけではなく、その後方にいる一誠達にも及んだ
新は背中から黒炎を噴き出し、漆黒の
負けじと6本の巨腕を向かってくる厄災目掛けて飛ばす
4つの内、炎と雷は相殺できたが……竜巻と吹雪は消しきれなかった
新はすかさず『真・
新の
「ズブズブッ」
テンペスターが口ずさんだ途端、新の足が地面に飲み込まれて身動きが取れなくなってしまう
懸命にもがく新だが、足が抜ける気配は無い……
その間にテンペスターは再び4本の魔手に厄災を纏わせ、地を蹴って飛び出す
身動き出来ない新に竜巻の腕が突き刺さる……ッ!
新は皮膚を引き裂かれ、内臓にまでダメージが響いたせいで口から大量に吐血する
しかし、テンペスターは攻撃の手を緩めやしない
炎の腕、氷の腕、雷の腕も殴打に加わり、あらゆる厄災が新を滅多打ちにしていく
四方八方から飛んでくる厄災の腕に新の肉体はボロボロ
骨も内臓も
凄惨な
「これ以上、貴様の好きにはさせんっ!」
ゼノヴィアは聖なるオーラを溜めて、デュランダルをテンペスター目掛けて振り下ろす
しかし、テンペスターは直ぐに2本の腕でデュランダルの刃を止める
「邪魔をするな。―――ドドンッ」
テンペスターが残る2本の手をゼノヴィアの腹に
衝撃波はゼノヴィアの肉体を内外ともに痛め付け、彼女は後方に吹き飛ばされてしまった
直ぐにアーシアがゼノヴィアの方に駆け付けて、治療を施していく
「よくも……よくもゼノヴィアをっ!」
今度はイリナが飛び出そうとするが、シスター・グリゼルダに制止される
「いけません、
「でも……このままじゃ、新くんが!」
涙目になるイリナに対し、シスター・グリゼルダは彼女を下がらせてから言う
「ここは私がやります」
シスター・グリゼルダは手元に光力を集め、光の弓と矢を形成する
矢を
シスター・グリゼルダが放った光の矢は高速で飛んでいき、無数の矢に分裂してテンペスターに降り注ぐ
テンペスターは攻撃の気配を察知して避けるが、光の矢は追い掛けるように軌道を修正し―――全ての矢がテンペスターの体に刺さる
シスター・グリゼルダの光力は必中とも言える
「私の教え子に手を出しておいて、無事でいられると思わない方が良いですよ?」
迫力ある口調でテンペスターを牽制するシスター・グリゼルダ
テンペスターは自分に突き刺さった光の矢を見て、再度シスター・グリゼルダに視線を移す
「その程度か?」
ジュゥゥゥゥゥウウウウ……ッ!
テンペスターは呪力を噴き出させ、
その所業にシスター・グリゼルダは目を見開いた
「……このような相手は初めてですね。悪魔や邪悪な精霊が可愛く見えてしまいます」
「我は
テンペスターが4本の魔手を地面に突き刺すと、シスター・グリゼルダや一誠達の足場が大きく崩壊する
意思を持ったかのように動く地面によって一誠達は吹き飛ばされ、シスター・グリゼルダの注意が逸れる
「―――ガラガラッ」
テンペスターがそう
しかも、その岩石の群れは炎や雷を纏っていた
シスター・グリゼルダは懸命に回避するが……瞬時に距離を詰めてきたテンペスターに捕まり、背中から岩壁に叩き付けられてしまう
彼女は2本の魔手で左右の腕を封じられ、身動きが取れない状態にされる
シスター・グリゼルダを捕らえたテンペスターは空いている2本の魔手で彼女の首を絞め、更に光力を吸収し始める
「我はお前達の魔力や生命力を吸収し、我が呪力に変換できる。このまま吸収し続けて
テンペスターはシスター・グリゼルダを放り投げ、「ヒュルッ」と右腕に竜巻を纏わせる
ただし、通常の竜巻とは違い―――ドリルのような形となっている
シスター・グリゼルダは身を起こそうとするが……手足に力が入らず、その場を動く事が出来ない
「―――滅びろ」
凶悪な竜巻を纏ったテンペスターの右腕が、シスター・グリゼルダを刺し
それを見た瞬間、新は両足に火竜を纏わせ―――爆発する勢いで飛び出し、両者の間に割って入った
ドズッッ!
肉を貫く嫌な音……っ
テンペスターの竜巻を纏った右腕は、新の左肩を見事に貫通していた
皮膚と肉が
「あ……ああ……っ」
目の前の惨劇に愕然とするシスター・グリゼルダ
一誠達も凄惨な光景を見てしまい、言葉を失った
手応えを感じたテンペスターはニヤリと嘲笑する
その刹那―――新の眼光がテンペスターを捉え、自らの左肩を貫いた竜巻の腕を掴む
「―――っ⁉ 貴様、左肩と肺を潰した筈だ……っ! 何故まだ動ける⁉」
これには
新は爪を立てて掴みながら、空いた右手に黒い火竜と雷を纏わせた
「……何故動けるかって……っ? 決まってんだろ……っ。動かなきゃならねぇからだ……! ここで止まっちまったら、俺はお前にも……アイツらにも勝てやしない……っ!」
新の脳裏に浮かぶのは2人の男
1人は六振りの魔剣型『
もう1人は
この2人にだけは何としても追い付かなければならない……っ
そうでなければ自分だけじゃなく、本当に全てを
「俺はいくら傷付こうが、
火竜と雷を纏った新の右拳がテンペスターの顔面を捉え、後方に大きく吹っ飛ばす
だが、左肩にはポッカリと風穴が開けられ、全神経に激痛が伝播する
殴り飛ばされたテンペスターは直ぐに起き上がり、口元の血を
「粋がるのは勝手だが、それだけで我を滅する事など出来ない。真の姿となった我が回復力を
「たとえ、そうだとしても……止まるわけにはいかねぇんだよ……ッ! アイツらに対抗できるのは俺ぐらいしかいないんだからな……ッッ!」
左肩の傷、口元、肉体のあらゆる部分から血を流しても歩みを止めない新
1歩進むだけでも意識が飛びそうになる筈なのに、新の眼光は毅然としてテンペスターを捉えていた
「止まる気が無いのなら、我が止めてやろう。―――これで終わりだ」
テンペスターは
間違いなくトドメを刺してくるだろう……
ここで決めなければ死ぬ……っ
新は身体中の血液を沸騰させる勢いで
そして、テンペスターが爆音を
新もそれに合わせて火竜と雷を纏った右拳で迎え撃つ
鍔迫り合う両者だが、実質はテンペスターが圧倒的に優勢
竜巻、炎、吹雪、雷の余波が新の全身を隈無く痛め付け、新の体から更に血が噴き出す
「厄災には勝てぬっ! 滅び堕ちろッッ!」
「言っただろ……ッ! 俺は止まってられねぇんだよ……ッ! 俺はアイツらを―――超えなきゃならねぇんだァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!」
バヂッ! バヂッ!
新の叫びに呼応したのか、纏っている火竜と雷に異変が生じた
火竜と雷が赤黒く変色していく……ッ!
「―――ッ! 何だ、これは……っ⁉」
突然の異変にテンペスターは驚き、更には4本の魔手が赤黒く変色した火竜と雷によって千切れ飛ぶッ!
肩口から全ての腕を破壊されたテンペスター自身も吹き飛び、倒れた体を起こす
「赤黒い炎と雷⁉ いや、ただの赤ではない……ッ! アレは―――血の
初めて戦慄するテンペスター
その視線の先には……赤黒い火竜と雷を我が身に従える
身体中の血が蒸発し、火竜と雷に行き渡っていく……っ
「―――『
実はバサラとの戦いの後、新は父親の総司に頼み込んで密かに修練を重ねていた
より攻撃的に、より素早く……
数日間、寝る間も惜しんで特訓した結果―――完成した新たな形態だ
……だが、発現には成功したものの、このモードには欠点が1つ存在する
それは―――発動する際に“多量の血を流さなければならない”事だ
出血していない状態では発動できず、必然的に流血状態へ
完全に
「オオオオォォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオッッ!」
吼える新は爆発的な速度でテンペスターの眼前まで距離を詰め、赤黒い雷炎を纏った拳を相手の腹に打ち込んだ
炎と雷の衝撃が背中を突き破り、テンペスターの表情が苦痛に歪む
更に赤黒い雷炎が追い討ちをかけるようにテンペスターの全身を呑み込み、上空へ吹っ飛ばした
無論、新は炎と稲妻を
テンペスターを叩き落とし、墜落させた後に追撃の蹴りを加える
その二撃の後でも赤黒い雷炎が畳み掛け、テンペスターの肉体が
「……ッッ⁉ 我の回復力が追い付かない……ッ! それ程の威力だと……ッ⁉ 厄災を超える炎と雷……ッッ!」
テンペスターは何とか体を起こすが、もはや勝敗は目に見えていた
血を流し続ける新は1歩、また1歩とテンペスターの方へ歩みを進める
「アイツらに対抗するには……生半可な力じゃ足りねぇッッ! だから、俺の体の全てを使って―――アイツらを止めるッッ!」
赤黒い火竜と雷が右手に集束し、周りを破壊しながら突き進んでいく
そして、新は眼前のテンペスターに目掛けて最後の一撃を繰り出した
「―――『
絶叫と共に血の
「我が……厄災が……ホロびる……ッッ⁉」
テンペスターの体が端々から粒子状に崩れ、遂には消滅していった……っ
見事テンペスターを倒した新だが、代償はあまりにも大きい
発現した新しい力のせいで血を流し過ぎ、元の姿に戻ると直ぐに倒れ伏した
意識はあるものの、左肩と肺に穴が空いているのでまともに呼吸が出来ない……
今まで呆然としていたシスター・グリゼルダがハッと我に返り、一誠達に指示を出す
「皆さん! 彼を直ぐに施設内の医務室に運んでくださいっ! シスター・アーシアは医療スタッフと共に彼の治療をっ!」
「は、はいっ!」
一誠達は慎重に新を施設内にある医務室へと運び、大急ぎで治療に取り掛かった
―――いつの間にかトランザーの
――――――――――――
「
――――――――――――
「………………」
あれからどれ程の時間が経ったのだろうか?
気が付けば、新はベッドの上にいた
恐らく施設内の医務室だろう……
包帯だらけ、汗まみれの体を起こし、窓の方に視線を向ける
外は既に真っ暗……夜を迎えていた
「……数時間ぐらいか。もう傷も塞がってる……今までの事を考えたら早い方か」
新はそう愚痴りながらベッドから降りようとすると、丁度シスター・グリゼルダが医務室の扉を開けて入ってくる
「起きて早々、何処へ行こうとしているのかしら? 怪我人の自覚を持ちなさい」
「……ああ、シスター・グリゼルダ。一誠達はどうした?」
「安心してください、皆さんも別の医務室で眠っています。先程の戦いでの疲労もそうですが、あなたの措置を手伝ってバタバタしていましたからね。あなたの無事が確認できた途端、一気に疲れが振り返してきたそうです」
その後の経緯をシスター・グリゼルダが話してくれた
『
事後処理もかなり慌ただしいものだったので、天界のスタッフ一同も
特に新の怪我が1番酷く、輸血が何度も
一誠達も身体に鞭を打ち付けて手伝ったので、今はベッドの上で爆睡中らしい
「……あいつらには悪い事しちまったな」
「ええ、後でキチンと謝っておきなさい。……まったく、あなたはいつも自分の事を
「はいはい、肝に銘じておきます」
「本当に分かっていますか? 普通なら死んでいてもおかしくない傷だったんですよ?」
「……普通じゃダメなんだよ、俺は」
新はグッと拳を握り締め、心情を吐露する
「シスター・グリゼルダ、俺達が相手にしているのは“普通”じゃ到底通用しないバケモノ連中だ。そんな奴らを
そこまで言いかけた刹那、シスター・グリゼルダが新を自身の胸元に抱き寄せてくる
突然の抱擁に呆気に取られる新
シスター・グリゼルダは目元に涙を浮かべて言う
「……そんな事を言ってくれる日が来るとは思いませんでした。でも、それでも自分を追い込み過ぎるのは良くありません。もう、あなたは独りじゃない。心配してくださる大切な人達がいるんですから。その人達を悲しませない為にも―――死ぬのだけは許しませんからね?」
シスター・グリゼルダがギュウッと新を抱き締め、頭を撫でてくる
彼女も彼女なりに新を心配してくれているのだろう……
新は暫し沈黙した後、「……ごめんなさい」と小さく謝った
これで無事に円満解決―――と思いきや……
「ところで、シスター・グリゼルダ」
「何ですか?」
「俺、汗だくなんすけど」
「そういえば、そうでしたね。では、体を拭いてあげましょう」
シスター・グリゼルダはタオルを用意し、新は着ていたシャツをバサッと脱ぎ捨てる
まずは頭を拭き、そこから背中、脇の下、腕、前面を丹念に拭いていく
拭いている最中、新の身体に刻まれた傷痕がシスター・グリゼルダの視界に映る
「…………」
「ん、どうした?」
「いえ……あなたの体、いつの間にかこんな傷だらけになってたのね……知りませんでした」
「今の俺にとっては仲間を守ろうとした証―――勲章みたいなものさ」
「ふふっ、尖ってた頃のあなたとは思えない台詞を言うのね」
暫くして拭き終わり、新は予備のシャツに着替える
「さあ、終わりましたよ。汗をかいたのですから水分補給も忘れないように」
「どうも。どうせならシスター・グリゼルダも一緒に拭いてあげましょうか~?」
新はいつものスケベジョークを言うが、直ぐに「なんてな、冗談冗談っ」と訂正する
そのジョークに対してシスター・グリゼルダは―――
「構いませんよ」
「パルドンっ?」
新は目玉が飛び出る程に驚いた
いつも厳格で冗談が通じなさそうなシスター・グリゼルダの口から許容の言葉が出た……
シスター・グリゼルダはコホンッと咳払いしてから言う
「言っておきますけど……背中だけですよ? それ以外は許可しません」
「ファっ? あの……シスター・グリゼルダはん? どういう風の拭き回しでっか……?」
「どうも何も……私を守る為にこんな傷を負ってしまったのでしょう? 教え子に守られたと言うのに、何も返さないのでは保護者としての顔が立ちません。ですから―――特別に許可致します」
“どういう屁理屈なんだ⁉”と心中でツッコむ新
しかし、ここまで言われて大人しく出来る筈もなく……新はひとまず言う通りにする
シスター・グリゼルダはベッドに腰掛けて、シスター服の背面にあるファスナーを下ろすよう
新は恐る恐るファスナーを摘まみ、ゆっくりと下ろしていく
シスター服の背面が完全に開かれ、シスター・グリゼルダの背中が
真っ白で綺麗な背中が視界に映り、新は思わずゴクリと息を呑んでしまう
「じゃ、じゃあ……拭きますよ?」
「ええ、お願いします」
新はタオルを握り、シスター・グリゼルダの背中を丁寧に拭いていく
「んんっ……んっ、ぁ……っ」
シスター・グリゼルダの口から嬌声が漏れ始め、新の心拍数が上昇
「シ、シスター・グリゼルダ……声を抑えてくれ。何か誤解を招きそうな空気や……」
「―――っ。……すみません。思わずはしたない声を出してしまって……っ。も、もう結構ですのでっ」
居たたまれなくなったのか、シスター・グリゼルダは慌てて立ち上がろうとする
その拍子に新はバランスを崩してしまい、ベッドの上から落ちそうになる
それに気付いたシスター・グリゼルダは直ぐに新の体を支えようとするが、力を入れる前だったので支えきれずに共倒れ
シスター・グリゼルダは仰向けに、新は覆い被さるように倒れ込んでしまった……
これだけでもマズイ状況なのに、シスター服が完全にはだけてしまい―――シスター・グリゼルダは
「あ……っ」
「あ……っ(汗)」
新の視界に映ったのは―――顔を紅潮させるシスター・グリゼルダ
シスター服に隠されていた豊満なおっぱい、綺麗な乳輪と乳首も丸見えとなる
腰元もくびれていて、
『……俺、今日死ぬかも……っ』
せっかくのラッキースケベ状態なのだが、新は興奮よりも“折檻と言う名の死”への恐怖が
引いた筈の汗が再び噴き出し、遂に死の瞬間が来るのかと思ったが……シスター・グリゼルダの反応は―――
「あの、そろそろ
「へ、へい! 退きます! 退くから俺を死人にしないでっ!」
慌てて飛び起きた新は勢い良く土下座し、シスター・グリゼルダは胸元を隠す
「い、今のは私の不注意が招いた出来事です。
「え、あ……はいっ。すんません……」
いつもの毒気は何処へやら……シスター・グリゼルダはイソイソとはだけたシスター服を着直した
その後、目が覚めたゼノヴィアとイリナが医務室に突撃してきたのは言うまでもない……
「おい、新! シスター・グリゼルダと何が遭った⁉ さっきすれ違った時、顔を赤くしていたぞ!」
「新くん、まさか自分が怪我人である事を利用して……シスター・グリゼルダにエッチな事をしたの⁉ 不健全よ!」
「今すぐ謝りに行こう! そうしないと……殺されるぞっ!」
「謝りましょう! 全身全霊を込めてっ!」
『…………頼むから、大人しく寝させてくれ……っ』
月1ペースに落とそうか悩みましたが、やれる範囲でやっていきます。
さて、次回は温泉旅行回です!
もうすぐで14巻編に突入します!