「新……今そいつ、神代剣護って言わなかったか……?」
「俺も出来れば聞きたくなかったよ。だが、間違いねぇ。そいつはゼノヴィアとイリナが探してた―――――行方不明のエクソシストだ」
新の肯定の言葉に一誠達は度肝を抜かれた
神に仕える信徒が……聖職者がよりにもよってフリード側―――――つまり、堕天使側にいるとは思わなかった
「おい、どうなってんだ!?何でゼノヴィアとイリナの上司がフリードやバルパーと手を組んでるんだよ!」
一誠の質問に神代剣護は剣を逆手に持って地に突き立てる
「お前ら悪魔ごときに分かるまい」
「なんだと!」
「正確には教える必要が無いだけだ。何せ、今からお前らは―――――ただの灰に変わるんだからな」
神代剣護の持つ黒い剣が再び炎を発する
新はちょっと待ったと声をかける
「何だ。この期に及んで命乞いか?」
「そんなんじゃねぇ。いくつかの質問に答えて貰いたいだけだ。謎がハッキリしないまま死ぬのは嫌なんでね」
「……冥土の土産に、と言う事か。良いだろう」
「まず1つめ……その剣は八本ある内のエクスカリバー、『
新の質問に一誠達は驚愕する
確かに神代剣護もエクスカリバーの使い手だが、所持している剣はエクスカリバーとは思えない程の黒色をしている
神代剣護は新の質問にこう答えた
「半分正解だ」
「半分って、どういう事なんだ!そいつはエクスカリバーなんじゃないのか!?」
「正確には"元"聖剣だ。確かにこいつは『
「"だった"……?過去形って事は、今は違うのか?」
訝しげに問う新に神代剣護は剣の柄に手を添える
「その通り。改造されて全く新しい剣として現存しているんだよ」
"改造"と言う単語に一誠は理解出来なかった
悪魔は聖剣に触れる事すら出来ないし、教会側も伝説の武器を作り替えるなんて事はしない筈
そう考えると、やはり堕天使側の誰かが改造した事になるかもしれない……
新は質問を続ける
「じゃあ2つめの質問だ。そのエクスカリバーを改造したのは堕天使側の誰かか?」
「それは不正解だ」
堕天使側でもない……
新逹は堕天使側の誰かが改造したんだと推測していたが間違っていた
……となると、ここに来てまた別の考えが浮かび上がってくる
新はその正体を捻り出す質問をぶつける事にした
「そのエクスカリバーを改造した奴は、どんな奴だった?」
「それなら嫌と言う程覚えがある。奇妙な笑い声をするガキで、いつも菓子を食っていたな」
「奇妙な笑い声と菓子でガキ……あいつか、神風!」
「神風って……前に新が話した闇人の!?」
「あぁ。ライザーをボコボコにしたイカレ野郎だ」
神風とは闇人の重鎮組織『チェス』のメンバー且つ『ビショップ』の称号を持つ雷使いの少年
ロクでもない雰囲気を出していた闇人が、今回の事件にも関与していた
「当初は胡散臭いガキだったが、認めざるを得なかった。悪魔の苦手武器、聖なる力の塊とも言える聖剣に邪悪な力をプラスして―――――デスカリバーと言う未知の武器を作り上げたからな。流石に驚いた」
「デ、デスカリバー?」
「さっきの質問に対して"半分正解"と言ったよな?こいつはエクスカリバーからデスカリバーに改造され進化したんだよ。名前も『
聖剣であって聖剣ではない
不可思議な矛盾に一誠は頭を悩ませた
「え~っと……つまり、あの黒い剣は細かく言うとエクスカリバーとは違うのか?」
「あぁ。下手すりゃ本家のエクスカリバーよりも凶悪な代物かもしれねぇ」
悪魔にとって只でさえ危険なエクスカリバーが更に危険な武器に変わった……
その事実に新、一誠、小猫、サジは一筋の汗を流す
「お喋りは終わったか?ならば
剣護は
描かれた円の中心に炎の魔力が集結する
「いくつかの疑問は解けた。後は4人がかりで奴をブッ倒すだけだ!」
「倒す?俺をか?面白い冗談だな。『
ズビィィィィィィィッ!
剣護が描いた円から炎のレーザーが発射される
新逹は一斉に横っ飛びで回避
炎のレーザーは地面に焦げ跡を刻んだ
「アッチィィィッ!かすっただけで焼けんのかよ!」
新だけは距離が近かったせいか、右腕に少しばかりくらってしまった
「サジ!奴の動きを封じろ!一番厄介なのはあの剣だ!」
「任せとけ!伸びろ!」
匙の
「子供騙しが。『
剣護がデスカリバーを眼前に構えると、炎が球状になって彼自身を包み込む
『
「ダメだ!これじゃあ動きを止める事が出来ない!」
「くそっ!小猫、一誠ロケット2号の発射準備に取り掛かれ!」
「……了解です」
「了解です、じゃないよ小猫ちゃん!新!俺を便利アイテムみたいに使うなぁ!」
「わぁーったよ。小猫、プランBだ。赤龍帝爆弾の
「それ名前を変えただけで俺が飛ばされる事に変わりないじゃないか!」
漫才が繰り広げられてる間に、炎の球体が解除される
「コントをしている暇があるのか?『
「炎の兵隊か、何かヤバそうだな」
「さぁどうする?こいつらの実体は炎その物だ。物理的な攻撃は殆ど効かない。すぐに形を取り戻す」
「「何だって!?」」
一誠と匙の声がハモる
新は頭を回転させ、炎の兵隊を倒す方法を思い付く
「小猫!俺が地面を切り取るから、しっかり持ち上げろよ!」
「……了解です」
新は剣で地面を四角形に切り込んでいく
切り終わると、小猫が切り跡の隙間に指を入れて持ち上げる
「うおぉぉぉぉっ!?デケェェェェッ!」
「……潰れて」
小猫は持ち上げた巨大な四角形の地面で、ハエを潰すかの様に炎の兵隊全てを叩く
再び地面を持ち上げると、焦げ跡しか残っていなかった
「思った通りだ。流石に酸素が無ければ炎は形を保てない様だな」
「面白い攻撃の仕方だ。ならば、こいつはどうだ?『
剣先から炎の大蛇が生み出され、新逹に襲い掛かる
「デケェな……!一誠!魔力を撃つから、俺にブーステッド・ギアの力を譲渡しろ!」
「まだ2回しかパワーが溜まってねぇぞ!イケるのか!?」
「やらなきゃ殺られるだけだ!来い!」
「よっしゃあ!ブーステッド・ギア・ギフトォッ!」
『
赤龍帝の力が新に譲渡され、
「オォォォォオオオッ!」
新は
炎の蛇は消滅したが……剣護がその場からいなくなっていた
「きゃあっ!」「うわぁっ!」
「っ!?小猫!」「匙っ!」
剣護は新と一誠が炎の蛇を相手にしている隙に、小猫に膝蹴りを、サジに左拳を叩き込んでいた
「さっきのは囮だ。『
剣護が左拳―――――正確には、銃口を向ける
「――――っ!?義手型の銃だと!?」
左義手に『
新はまだ完治していない右腕に、一誠は腹に3発ずつくらってしまった
「ぐっ……!アッチィィィッ……!」
「ゴホッ!ゴホッ!チクショウ……!」
一誠は地面に血を吐き、新は剣を左手に持ち替えて構える
右腕はダラリと力無く垂れ下がっていた……
「そんな腕でまだ俺に立ち向かう気か?」
「まだまだ死ぬ訳にはいかねぇんだよ!オォォォォオオオッ!」
新は目一杯魔力を刀身に注ぎ込む
流された魔力が巨大な刃を作り上げていく
「大した魔力だ。こっちもそれなりの技で迎え撃つか」
剣護の『
炎の魔神は、その場にいるだけで新逹の皮膚に火傷を負わせた
「くそっ……!デケェし、なんて熱だ!」
「こいつをくらって生き残れた奴はいない。灰になって消えろ。『
炎の魔神が大口を開けながら突っ込んでくる
だが、新は怯まずに剣で魔神を突き刺そうとする
「ウオォォォォオオオッ!」
魔力の刀身と炎の魔神が激突し合う
だが、体力的に考えて新の方が明らかに不利だった
右腕は完治していないため、まともに動かす事が出来ず、力を入れられない
左手1本で衝撃を支えるのはあまりにも無謀と言える
「うぐぁぁぁぁあああああっ!」
「バカな奴だ。腕1本でどうこう出来る技だと思うか?いずれ腕が痛みと熱に耐えきれなくなり、灰になるのがオチだ」
魔神の炎が新の腕を熱で痛めつける
だが、ここで殺られる訳にはいかない……
新は残った力を振り絞って、刀身に魔力を送った
「貫けェェェェェェェッ!」
ズシャァァァァアアアッ!
新の剣が炎の魔神を貫き、魔神は静かに消えていった
「……っ。まさかアレを破る奴が出てくるとは……」
「ぜぇ……ぜぇ……へへっ、魔力はだいぶ減っちまったがよぉ。これでテメェの魔力も少なくなったんじゃねぇのか?」
今まで剣護は技を乱射していた
そこから考えると、かなりの魔力を消費している筈だと踏み、新は懐から回復薬を取り出して少し飲む
そして、それを一誠に投げ渡した
「一誠。その回復薬を小猫と匙に飲ませろ。力が溜まってるなら、ブーステッド・ギア・ギフトで譲渡してからな」
「あぁ、1回だけだから効果は薄いかもしれないが……ブーステッド・ギア・ギフト!」
『
新の回復薬がパワーアップを遂げ、小猫と匙の口に注がれる
小猫と匙の顔色が良くなり、大幅に回復した
「回復薬か。悪いが、こっちも所持している。お前達のよりずっと強力なヤツをな」
そう言うと、剣護は注射器を取り出した
中には紫色の怪しい液体が満タンに入っている
それを自分の首筋に
「こいつは使用者の体力と魔力を完全な状態にまで回復させる。時にはその者の魔力を大幅に上げる事もある―――――こんな風にな」
ゴォォォォォオオオオッ!
剣護の全身から今までよりも膨大な魔力が放出される
「おいおい……それチート過ぎるだろ……?さっきよりも魔力が溢れてやがる……」
「よく頑張ったと言うべきだな。その功績に免じて、今度こそ灰にしてやる」
剣護は再び『
さっきよりも魔力を費やした魔神の炎が大きく燃え上がる
「新!もう一度ブーステッド・ギア・ギフトで―――――」
「そうはいかない。これでトドメだ。『
巨大な炎の魔神が新に襲い掛かる
新は少ししか回復していないので、先程の刀身はもう作れない
逃げるしかないと思った――――――その時……
ズドォォォォォォォンッ!
一筋の巨大な赤い閃光が炎の魔神を消し去った
突然の出来事に新達は驚く
だが、それ以上に驚いたのは……
「何だお前達は?」
「よくも私の下僕達を痛めつけてくれたわね」
「力の流れが不規則になっていると思ったら……まさかこんな事態になっているとは思いませんでした」
剣護の前に現れたのは、険しい表情をしたリアスとソーナ・シトリー会長
新は苦笑いを浮かべ、一誠と匙の顔が一気に青ざめた
「そうか。グレモリー家とシトリー家の娘か。なるほど、噂通りの魔力だな」
「私達の町で随分派手な事をしてくれるじゃない。それにあなた……ゼノヴィアとイリナが言っていたエクソシストね」
「それがどうした?」
「何故姿を消したと思ったら、堕天使側についているのかしら?」
「その上……その聖剣から邪悪な力も感じられます」
質問するリアスとソーナ・シトリーに、新が剣護に代わって説明をした
神代剣護の現状に
「まさか、また闇人が関わっていたなんて……」
「デスカリバー、ですか……神や悪魔をも恐れぬ行為ですね……」
事態を把握したリアスとソーナ・シトリーは再度、剣護の方を向く
「上級悪魔の次期当主が2人か。なかなか手応えのありそうな相手だが……今戦うのは得策ではないな」
剣護はひとまず戦意を静め、『
「どういうつもり?」
「俺は相手の力量を測れぬバカではない。上級悪魔の次期当主2人が相手じゃ、流石にキツいからな」
「サジやリアスの眷属を散々傷付けておいて、逃げ腰になるのですか?」
「今は得策ではないだけだ。すぐにまた会う事になるだろう」
火柱を立ち上げ、神代剣護は姿を消した
相手が逃げてしまったので、リアスとソーナ・シトリーは……
「さて……イッセー、新。これはどういう事?説明してもらうわよ」
尋問を始めた
―――――――――
「……エクスカリバー破壊って、あなた逹ねぇ……」
額に手を当てて嘆息するリアス
現在、新と一誠、小猫、サジの4人は近くの公園の噴水前で正座させられている
「サジ。あなたはこんなにも勝手な事をしていたのですね?本当に困った子です」
「あぅぅ……。す、すみません、会長……」
ソーナ・シトリーも冷たい表情でサジに詰め寄る
「祐斗はそのバルパーを追っていったのね?」
「はい。ゼノヴィアとイリナも一緒だと思います。……な、何かあったら連絡をよこしてくれるとは思うのですが……」
「一誠、それはねぇよ……今の祐斗は復讐の権化となってるんだ。今まで憎んできた敵をやっと見つけた奴が、悠長に電話なんかしねぇだろ……?」
新の説明に一誠の顔が沈む
「新、小猫」
「「……はい」」
「どうして、こんな事を?」
「……祐斗先輩がいなくなるのは嫌です……」
「俺も一誠に説得されてしまって……危険だって事は分かってたが……やっぱり仲間を失うのは嫌だった」
「……過ぎた事をあれこれ言うのもね。ただ、あなた逹がやった事は大きく見れば悪魔の世界に影響を与えるかもしれなかったのよ?それは分かるわね?」
新、一誠、小猫は同時に頷いた
ただ危ないと思っただけで動いていたが、今回の事件はスケールがデカイ上に、一誠は浅はかに考え過ぎた
3人は深々と頭を下げる
因みに隣では、匙がソーナ・シトリー会長に尻叩きをくらっていた
「使い魔を祐斗探索に出させたから、発見次第、部員全員で迎えに行きましょう。それからの事はその時に決めるわ。いいわね?」
「「「はい」」」
「さて、新、イッセー。お尻を出しなさい」
「……へ?」「は……?」
「下僕の躾は主の仕事。あなた達もお尻叩き千回よ♪」
一誠の顔が真っ白になり、新は往生際悪く弁明を開始した
「リアス部長、俺は謂わば巻き込まれただけの被害者だ。無罪放免もしくは一誠への厳罰集中放火を求める」
「汚ねぇぞ新!自分の口から手伝うって言ったくせにぃ!ってか、耳塞いで聞いてないフリすんなぁっ!」
新はバックレる様に一誠へ責任を押し付けて逃避しようとしたが、それとは別の問題で回避不能の事態に追い込まれる事に……
「新」
「……っ?な、何すか?」
「どうして小猫の制服が破れてるのかしら?」
ギクゥッ!
新にとって一番聞かれたくない質問が飛んできた
冷や汗を流す新をよそに小猫は――――
「……新先輩に見られました」
「…………………新?」
「それは…………弁解のしようもございませぬ……」
「お尻叩き二千回ね♪」
「何故に一誠の倍っ!?」
その日、一誠のお尻は死に……新も自宅への帰路をペンギン歩きで辿る羽目になった……
――――――――――
「くっそ……俺が痔を患っていたら、間違い無く尻が爆発してんだろうな……」
リアスから尻叩きの罰を受け、少しずつ歩みを進めている新
ズキズキ痛む尻を押さえながらピョコピョコ歩く姿は滑稽以外の表現が思い付かないぐらい酷かった……
自宅まであと何分掛かるだろうか……そんな事を考えていた矢先――――前方から異様な気配が漂ってくる
「マジかよ、尻が痛むこんな時に……!」
前方の暗闇から出てくる人影が、点滅を繰り返す街灯に照らされる
現れたのは――――先程戦ったばかりの男、神代剣護だった
その姿を視界に捉えた新は歯を食い縛り、攻撃体勢を取ろうとするが……神代剣護は「待て」と掌を見せた
「そう殺気立つな、今は貴様と戦うつもりなど無い」
「へっ、どうだか。さっきは俺や一誠を灰にしてやるとか言ってやがったクセに」
「“今は無い”と言っただけだ。いずれ黒焦げにしてやる。こいつの様にな」
神代剣護が暗闇から何かを引っ張り出し、無造作に新の前に投げつける
ドサッと自分の前に落ちた物が何なのか視線を移すと――――傷だらけのイリナが倒れていた
体のあちこちに酷い火傷と切り傷を負っていて呼吸も弱々しい……
直ぐに危険な状態だと分かった
「……テメェがやったのか?」
「ああ、根城近くまで来たんでそれなりに相手してやった。ここで殺してしまったら味わえないだろ?俺が敵として眼前に立った時のこいつらの顔がよぉ?」
悪意に満ちた笑みを見せる剣護に新は怒りのオーラを噴出
しかし、今は瀕死のイリナの処置を最優先させなければならない……
新は神代剣護から目を逸らさずイリナを抱える
「嘗ての部下をこれだけ痛めつけて何とも思わねぇのかよ?イリナは!ゼノヴィアは!今でもテメェを尊敬してんだぞ!」
「ふっ、尊敬だと?笑わせるな」
神代剣護は
「俺をぶちのめしたいなら深夜に貴様の
「誰が逃げるかよ」
「その意気だ。楽しみにしているぞ」
神代剣護は暗闇の奥へと消えていった
「思った以上に傷の具合がヒデェ……。なら、こいつで少しでも……」
新は制服のポケットから先の戦闘で使用した回復薬の予備を取り出し、イリナに飲ませようとする
だが……意識が無いせいか薬を近付けても飲んでくれない
そこで新は回復薬の中身を自らの口に含み、イリナに口移しで飲ませた
回復液は口内から食道、彼女の胃に達する事が出来た
効果は直ぐに現れ、徐々にイリナの呼吸が落ち着きを取り戻す
「とりあえず応急処置は済んだ。後は腕の良い病院に連れてってやる。それと……お前とゼノヴィアの上司、殴らせてもらうぜ」
新は闇皇へと姿を変え、イリナを抱えて飛んでいった
聖剣編、いよいよ終盤に突入しました