ハイスクールD×D ~闇皇の蝙蝠~   作: サドマヨ2世

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やっとっ、やっと投稿できました……っ。

自分でもアカンと思う更新の遅さ……。時間をかけ過ぎた分、濃い内容に仕上がったと思いたいです……っ


兵藤一誠と幽神正義、2人を合わせれば迷コンビ、『イッセーギ』の誕生だッ!?(後編①)★

「貴様ら、そこに正座しろ」

 

「あのぉ、もう正座してます……」

 

「口答えしてる暇があるなら正座しろ」

 

「いや、だから既に正座してるって―――」

 

正座しろ

 

「「「「「……はぃ」」」」」

 

 早速異様な光景と共に始まった尋問(?)。仁王立ちするのはご存知、般若面の鬼こと幽神正義。その鬼の前に正座させられているのは、意識を取り戻した暗殺集団(笑)―――『アンサツファイブ』の面々。その隣にはジュビアにボコされた暗殺者『名無し(ノーネームド)』の4人が無造作に転がされていた。

 

 一誠、アーシア、ジュビアが(かたわ)らで見守る中、般若面の鬼(幽神正義)による言葉責めが始まる。

 

「おい、ピエロもどき。貴様は毒以外の手段を講じてないばかりか、やり方が地味過ぎる。無駄に自己アピールを長引かせる暇があるなら技術を磨け。何の技術も無い暗殺など、垢擦り用の紙にも劣るぞ」

 

 まず手始めにオカマピエロことオッカマスを(けな)す正義。これでもかと言わんばかりに不出来なポイントを責め、毒の利いた口撃を浴びせまくる。それだけでオッカマスは涙目になり、プライドもズタボロにされていた。

 

 一頻(ひとしき)り罵倒を終えた正義は、次に黒焦げ状態のエルゲロッペを睨みつける。

 

「次だ。貴様はカエルなのかキノコなのか、どっち付かずで意味が分からん。それにあんな脂ぎった技で標的を仕留められると思っていたのか?」

 

「で、でもぉ……実際オデはこれで成功してきたんだども―――」

 

「それは今までの相手が取るに足らないアホだったからだ。火を点ければ一発で大炎上、(しばら)く経てば貴様は気色悪いソテーに早変わりしてるだろうが」

 

 痛いところをズバズバ言われたエルゲロッペはションボリと(こうべ)を垂れる。次の口撃目標は『アンサツファイブ』紅一点のサキュバッチ。

 

「……貴様は色仕掛けで相手を腑抜けにしてから仕留めると言った手法だろうが、その手段自体は悪くない。実際にあるからな」

 

「あ、ありがとうございますぅ……えへへっ」

 

 ご機嫌を(うかが)うように媚びて礼を告げるサキュバッチだが、正義の口撃が終わる筈が無い。

 

「だが、あからさま過ぎるだろ。あんな如何(いか)にも罠丸出しの誘い方は赤子(あかご)でも引っ掛からんぞ。頭が機能してないのか? まあ、その赤子でも引っ掛からないような誘いに乗ろうとしたバカはいるがな」

 

 ギクッと気まずそうに目を逸らす一誠。次は四つ目筋肉ことマッチョル・ガチムーティを口撃する。

 

「貴様がこの中で何よりも論外だ。武器が筋肉しか無いだと? ふざけてるのか?」

 

「い、いや……今まで我が自慢の筋肉で上手くいってたから……」

 

「その筋肉とやらも俺の蹴り一発で役立たずに成り果てただろうが。何が筋肉の鎧だ。鋼鉄どころか薄板以下の脆さだぞ。そんな駄肉でよく真っ正面から挑めたな。屈折した自殺志願者か?」

 

 正義はマッチョルの鍛え上げられた筋肉を全否定。情けも容赦も無く彼のプライドをへし折る。しかし、どんなに鍛えられた猛者でも強烈な威力の金的を食らえば一撃でアウトになる……。

 

 その事を指摘しようにも、理不尽の権化となった幽神正義にはどんな言い訳も通用しない。

 

 そして最後は―――。

 

「貴様は……何か知らん内に倒していた。印象どころか存在感が無さ過ぎる。何回もドリップさせたコーヒーですら少なからず味が付いているのに、貴様は水か白湯(さゆ)から生まれてきたのか?」

 

「……ずび、ません……っ」

 

 一応『アンサツファイブ』のリーダー格、ジィミスンギ・テ・キヅガレン(薄)が掠れた声で弱々しく(つぶや)く。実質5人の中で最も強い筈なのに、全て『巻き添えを食う』形でダメージを与えられた挙句―――何も成果を残せぬまま戦闘不能にされた。

 

 ある意味、一誠達の虚を突けたのはコイツなのかもしれない。結果には全く繋がっていないが……。次に正義が視線を向けたのは、ジュビアが倒した暗殺者―――『名無し(ノーネームド)』の4人。

 

『無様に倒れているが、こっちの4人の方が暗殺者としては格上だ。ソレをジュビアは1人で相手取ったと言う事か』

 

 ジュビアの方に視線を移す正義。視線に気付いたジュビアは「エッヘンっ」と得意気にアピールし、アーシアが改まって礼を言う。

 

「ジュビアさん、先程はありがとうございました。でも、またジュビアさんにご迷惑かけちゃいましたね……っ」

 

「いえいえっ、気に悩む事はありません! それにジュビアは恋する乙女の味方ですっ! 水辺のジュビア、恋する乙女の味方になったジュビアに(かな)う者などいませんっ!」

 

「ちなみに聞くが、あそこの4人はどうやって片付けた?」

 

 正義がそれとなく訊くと、ジュビアは『水に閉じ込めて溺れさせましたっ♪』とドヤ顔で言う。ジュビアは水の魔力に長けているので、水を自由自在に操れる。襲ってきた暗殺者4人も操った水の中に閉じ込め、制圧したようだ。

 

 事の顛末を聞いた一誠は乾いた愛想笑いで受け流し、正義に耳打ちする。

 

『ジュビアさんもお前と同じく水責めを敢行してたのか。恐ろしいと言うか、何と言うか……2人とも案外お似合いじゃねぇか?』

 

『どういう意味だ?』

 

『拷問カップル、もしくは拷問夫婦って事で』

 

『よし、貴様に水分補給をさせてやろう。遠慮するな、水は腐る程あるぞ』

 

『全力で遠慮させてもらいますっ!!?』

 

 正義は一誠の首根っこを掴もうとするが、瞬時に危険を察知した一誠はすっ飛んでいくようにアーシアのもとへ駆け寄る。今の一誠にとってアーシアは、幽神正義()を止められる救いの女神。彼女のそばにいるだけで幽神正義()の理不尽制裁を(まぬが)れる。

 

 正義は心中で舌打ちし、そのイライラを他にぶつける事にした。

 

「……さて、この自称暗殺者どもをどう処理してやろうか」

 

「まっ、まままっ、待ってください幽神さまぁっ!」

 

 正義が連中の処理を考察しようとした矢先、オッカマスが声を荒らげた。無論、始まったのは命乞い。

 

「あ、あたしはこう見えて裏の界隈(かいわい)では顔が利く方なの! 今回はたまたま失敗してこんな状況に追い込まれたけど、いつもなら良い線いってるのよ!? だから、今後は暗殺者も『造魔(ゾーマ)』の傘下も辞めてあなた達に協力―――いや、従属させてちょーだいっ! 雑用でも何でも一生懸命働きますからぁぁぁぁぁっ!」

 

「気持ちだけでも迷惑極まる。そもそも貴様のような珍獣オカマの手など借りたくもない、気色悪い」

 

 さすがは鬼(笑)、オッカマスの必死な命乞いを僅か1秒で一蹴する正義。しかし、みっともなく命乞いをするオッカマスの態度を見てた他の4人が色めき立って反論、および自身の売り込みを開始する。

 

「ふざけんじゃねぇど! オメェなんざオデに比べたら手品ぐらいしか勝ってる要素ねぇだろ!? 幽神さまっ、こんな変態オカマよりオデを仕えさせてくだせぇ! オデの方がこんなオカマや他の連中より役に立てますどぉ!」

 

「汚い脂まみれの貴様は焼かれて喰われる以外に道など無いぞ。まあ、焼こうが煮ようが喰いたくもないがな」

 

「何ふざけた事言ってんのよ! アンタら揃いも揃ってワンパンでやられたクセに! 幽神さまぁっ、こんな不細工で気持ち悪い奴らよりも見目麗しいアタシを仕えさせてください! アタシのセクシーでエロエロなテクニックでどんなご奉仕でも実現してみせますからぁ!」

 

「そういう事は兵藤に言ってこい。ヤツは見境無しだから喜んで受け入れそうだ」

 

「笑止千万っ! 貴様のようなビッチ如きに幽神さまの従僕が務まるわけ無いわぁ! 幽神さま! 我を! 我こそを幽神さまのお傍に仕えさせていただきたい! さすれば我が自慢の筋肉で、あなたを全身全霊お守り致しますぅぅっ!」

 

「蹴り一発で沈む駄肉が誰を守れるんだ? 寝言は寝てからほざけ」

 

「……黙れ、三下ども……っ! リーダーの俺を差し置いて、どの口がほざく……! 幽神さまの従僕になるのは俺に決まっているだろう……!」

 

「貴様は……いつからそこに居た?」

 

 醜く始まった売り込み合戦だが、ジィミスンギの言葉で更にヒートアップしてしまう。

 

「はぁぁ!? 存在すら認知されてないヤツがリーダーとかほざいてんじゃないわよ! この際だから言っておくけどねっ、アンタなんかをリーダーにしていた事が一生の恥だとずーっと思ってたのよぉ!」

 

「……何、だと……!?」

 

「んだんだ! オデよりも個性の薄っぺらいヤヅが偉そうに言うでねぇ!」

 

「それに知ってんのよ? 自分の存在感の無さを利用して女子更衣室に居座ったり、女湯覗きに行ったりしてるでしょ! いい歳こいてショッボイ犯罪しか出来ないヘタレ根性乙〜!」

 

「それこそ軟弱極まりない! 何が暗殺者だ! モヤシボディの枯れ枝風情に仲間意識を抱いていた自分が腹立たしいっ! 貴様など植木鉢の隅っこに埋まって枯れ果てるべきだ!」

 

「……ギッ、ギギギギ……貴様らァァァ……ッ!」

 

 まさしく火に油……ただでさえ見苦しい命乞いが蹴落とし合戦にグレードアップ(?)。それも自己保身、自分が助かりたい気持ちが全面に押し出された醜く低レベルな仲間割れ……。

 

 途中から正義も尋問を放棄し、呆れ果てた表情を浮かべる。これ以上は不快な光景を視界に入れたくないので、さっさと本題に入る。

 

「おい、オカマ。五体満足で助かりたいか?」

 

「はっ、ハイィ! 助かりたいですっ! どんな要求も呑みますからァァァッ!」

 

 その言葉を聞いた正義はオッカマスに問いただす。

 

「ならば『造魔(ゾーマ)』の本拠地が何処にあるか吐け。拒否すれば貴様の右足5ヶ所を蹴り砕くぞ」

 

「――――ッ!? そ、それだけは勘弁してもらえないかしら……?」

 

「そうか」

 

 正義は言葉少なに呟いた直後、蹴り脚を走らせた。

 

「0、1、2、3、4、5ォッ!」

 

「ァギュ゙ゥ゙るァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ッッッッ!!?!!?」

 

 正義の蹴りがオッカマスの右足6ヶ所に甚大な被害を与えた(笑)。正義のカウント法にすかさず一誠がツッコミを入れる。

 

「いやいやいやっ、なんでゼロから数えたぁ!?」

 

「知らんのか? 数字とはゼロから数えるモノだ。そして、俺は拷問に於いて数字は全てゼロからカウントする。拷問の本質は相手の精神を徹底的に痛めつけて追い込む。それは情報を吐かせる際に最も効果的な方法だ。ゆえに―――拷問中は数字を全てゼロから数える。それが常識だ」

 

「ひでぇ……コイツ本当に理不尽が皮を被った生き物だ……っ」

 

 正義の理不尽な尋問が再開される。

 

「さっさと吐け。次は3人セットで蹴り砕くぞ」

 

「ちょっ、ちょっと待ってよぉ!? コレもう尋問じゃなくて拷問―――」

 

「残念、時間切れだ。3人まとめて蹴り潰す。0、1、2、3ッ!」

 

「スタァトォッッ!!?」「ゼロカラァッッ!!?」「カゾェテルゥッッ!!?」「ケッキョクヨニンッ!!?」

 

 オッカマス、エルゲロッペ、マッチョル、ジィミスンギの4人が理不尽制裁の犠牲になり、彼らは頭から地面に叩き付けられた。その光景を目の当たりにしたサキュバッチはガタガタと震え、一誠は「アーシア、見ちゃいけません」とアーシアの両目を手で覆い隠していた。

 

 一方でジュビアは目を(ハート)の形にして『あぁッ、ジュビアも正義さまに尋問されたい……っ』と歪んだ思想を暴走させていた……。正義は地面に埋まった4人の頭を引きずり出す。

 

「まだ吐かないか、仕方無い。次は1人につき3ヶ所ずつ骨を折るとしよう」

 

「ちょ、ちょっと待って……ソレ絶対3ヶ所じゃない流れ、よね……?」

 

「よく分かってるじゃないか。さすが芸人もどき、笑いの心得(こころえ)程度は持っているようだ」

 

 情けも容赦も無い幽神正義《鬼》による拷問―――否、尋問が続く……。このままではガチで死んでしまうと戦慄したオッカマスは『名無し(ノーネームド)』に救援を乞い願う。

 

 しかし、(くだん)の4人は既にボロボロで死に体寸前となっており、最後の力と言わんばかりにプルプルと指を動かす。何か秘策でもあるのかと淡い期待を抱くオッカマスだが、彼らが残したのは……4文字の言葉だけだった。

 

 ―――ひ で ぶ ぅ―――

 

 もはや()(すべ)無し……。待っているのは般若面の鬼による制裁のみ。暗殺者(笑)5人の命は風前の(ともしび)と化した……。

 

 ところが、そんな場面で水を差す人物が突如現れる。

 

「ど〜も〜っ、廃品回収に来た業者でぇ〜すっ」

 

 ふざけた口調で現れたのは……異様な雰囲気の青年。寒々(さむざむ)しい青色のポンチョを羽織り、同じカラーのソンブレロと呼ばれる帽子を被っている。ソンブレロの下から見える黒髪の一部には青みがかった白いメッシュが施されており、左眼を隠すように伸びている。

 

 一見、何処ぞの漫画で見た事がある闇医者のような風貌だが、纏っている雰囲気は明らかに一般人のオーラでは無かった。青年が左手に持っているのは―――かち割り氷の袋。右手を突っ込んで(いびつ)な形の氷を1つ取り出し、それをバリバリと(かじ)る。

 

 室内プールの施設内と言えど、今は寒い季節。そんな中、冷たい氷をそのまま齧るのは明らかに異端。しかも、本人は氷を齧っておきながら「ふぅ〜っ、寒いねぇ」と当たり前の事を呟く。矛盾に満ちた言動に一誠も理解するのが遅れた。

 

 奇異な視線が向けられる中、正義が青年を問い(ただ)す。

 

「貴様、何者だ?」

 

「あれぇ、さっきも言ったじゃん。廃品回収に来た業者だってぇ」

 

「くだらん嘘を吐くのも大概にしろ。どの角度から見ても怪しさと胡散臭さしか映ってないだろう」

 

「酷いねぇ、寒いねぇ、世知辛いご時世になっちまったんだねぇ。俺はただアンタらのお仕事を減らしてあげようと親切心を働かせてきたってのに」

 

「親切心だと?」

 

「イエ〜ス♪ 俺はそこの5人組―――アンサツファイブってお笑い集団を殺しに来たんだよ。そいつら大ポカし過ぎて他の組織からも見限られちゃってさぁ。そのまま生かしておくのも地球資源の無駄遣いじゃん? てなわけでぇ、俺がわざわざ回収(処分)しに来たってわけぇ」

 

 物騒な言葉を並べ立てる青年。つまり、用済みとなったアンサツファイブの連中を殺害しに来たのだ。一縷(いちる)の望みは(むな)しく散り、暗殺者(笑)5人の顔が真っ白に染まる。

 

 だが、正義は意に介さず怪しい青年の要求を一蹴する。

 

「貴様の都合など知らん。こいつらはこっちで処分する。ゆえに貴様は不要だ、消えろ」

 

「お〜、怖いねぇ。じゃあ譲るわぁ」

 

 異様な雰囲気の割に物分かりが良いのだろうか、あっさりと連中の身柄を一任した。すると、青年はズボンのポケットから葉巻(シガー)を取り出して(くわ)え―――火を点ける。

 

「まあ、とりあえず一服させてくれよ」

 

 葉巻を咥えて天を仰ぐように瞑目する青年。一見、何の変哲も無い行動だが……正義は逆にソレを疑っていた。

 

『こいつ……何処か言葉が軽くて違和感があるな』

 

 疑惑が―――確信に変わる。

 

「何だか今日は口に合わねぇや」

 

 そう言って青年は咥えていた葉巻を指で弾いた。飛んでいく軌道の先に居たのは―――アーシアだった。正義は瞬時に判断し、叫んだ。

 

「―――ッ! 兵藤ォッ! アーシアを守れェッ!」

 

「え!? 何―――ッッ」

 

一誠は言い切る前に正義の言葉に従って駆け出した。正義の目を見て緊急事態を察したのだろう。一誠は素早くアーシアの前に立ち、庇うように両腕を広げた。次の刹那―――。

 

 ドォォォンッッッッ!!!!!

 

「―――ッ!!? きゃあぁっ!!?」

 

「アーシアさんッ!!?」

 

「チッ!」

 

 なんと青年の投げた葉巻が大爆発を起こし、爆炎が噴き上がった。衝撃と爆風によって一誠は身体の前面を焼かれ、アーシアもろとも吹き飛ばされる……ッ! (さいわ)いアーシアに怪我は無かったが、代わりに一誠が葉巻爆弾の餌食となってしまった……ッ!

 

 ジュビアは何が起きたのか理解できず狼狽(ろうばい)し、正義は舌打ちしながら元凶を睨み付けようとする。しかし、周り黒煙に包まれたせいで先程の青年を一瞬見失ってしまった。

 

「ハロ〜っ、こんな単純な手に引っ掛かってくれてありがとさんっ♪」

 

 煙の中から奴が飛び出す。その手には―――いつの間にかナイフが握られていた。奴が狙いをつけたのはジュビアで、右手に持った凶刃を最速の動きで突き出す。

 

 正義は足の機能を総動員させて駆け出し、横から青年のナイフを蹴った。軌道が逸れたナイフは空振り、青年は「あららぁ?」と剽軽(ひょうきん)な声を出す。

 

 しかし、回転を利用して正義の顔面に斬りかかった。正義は瞬時に身を(よじ)って回避し、庇うようにジュビアの前に立つ。

 

『ハゥジュビィィッ! こ、これが噂に聞いた「お嬢様、私から離れてはいけません」状態ッ!!? アァ……ッ、ジュビアはこの素晴らしい余韻(よいん)(ひた)れるだけで、何杯でもご飯が進みますぅ……ッ』

 

 安心するのも束の間、正義の左頬には刀傷が刻み付けられ、傷口から血が垂れていた。それを見たジュビアが叫ぶ。

 

「ジュビっ!? 正義さまのお顔が……っ!!?」

 

「慌てるな。こんな傷如き問題ではない。問題なのはコイツの方だ。かなりの手練(てだ)れで危険極まりない」

 

 正義は目の前に(たたず)む青年の危険度を見抜き、警戒心を高めた。

 

 それもその筈。実はこの男、裏の世界で最も危険なブローカーと称される闇の商売人―――ザミーゴ・バレット。戦闘力は一級品、更に厄介な(から)め手や卑怯な手段も(いと)わない卑劣漢でもある。

 

 正義は左足に神器(セイクリッド・ギア)の脚甲を展開、息も尽かさぬ蹴りの連続技で攻め立てていく。

 

「天地がひっくり返ろうと貴様は五体満足で帰さん」

 

「堅物くんだねぇ、オマケに何か強いじゃねぇか」

 

 正義の蹴りと青年―――ザミーゴのナイフ捌きが正面から激突。怒涛の攻めが無数の火花を生む。ザミーゴは間合いを侵略すべく、体勢を低くして前に出るが……警戒を高めた正義は即座に対応する。

 

「フンッッッッ!」

 

「オォゥッ!!?」

 

 (ふところ)に飛び込もうとしてきたザミーゴに対し、正義はカウンターの頭突きを叩き込んだ。そのまま至近距離で睨み、警告する。

 

「……貴様、これ以上続けるなら明確な殺し合いになるぞ。それでもやるのか?」

 

「う〜ん……確かに厳しそうだねぇ」

 

 一歩退()いて(ひたい)を擦るザミーゴ。少し考えた後、ニヒルな笑みを浮かべながら提案する。

 

「オッケー、分かった。それなら手切れ金くれよ。俺こう見えて商売人だからさ。あと、仲直りの握手も」

 

 自分から非道な攻撃を仕掛けておきながら停戦を申し込み、更には手切れ金まで要求してくる。厚顔無恥も(はなは)だしい……。だが、余計な戦闘と負傷者を出さない為にも正義は奴の要求に応える。

 

「握手には応じない。端金(はしたがね)をくれてやるから、さっさと消えろ」

 

 正義が財布から一万円札を何枚か取り出し、無遠慮に放り投げる。ザミーゴはその金を受け取ろうと手を伸ばす、が……。

 

「ワ〜オっ、お小遣い貰えて嬉しいねぇ♪ 嬉しいからぁ―――ナイフが出ちゃったぁ」

 

 手を伸ばしたザミーゴの袖からナイフがロケットのように射出される。またしても擬態……っ。飛び出したナイフは正義の顔面に向かって飛来していき、警戒を高めていた正義は投擲ナイフを(かわ)す。

 

 ザミーゴは直ぐに別のナイフを取り出し、正義の顔面を突こうとする。

 

「せっかくだから顔面突かせてくれよぉ」

 

「どんな理由だ、この嘘吐き野郎」

 

 警戒を解いてなかった正義はザミーゴの突きを寸前で見切り、報復の蹴りを放つ。ザミーゴは上体を反らせて回避し、直ぐに上体を戻す勢いでナイフを振り下ろした。

 

 正義も直ぐに対応。右足での後ろ蹴りでナイフの軌道を逸らし、その勢いを利用して左の掌底(しょうてい)を叩き込んだ!

 

 まともに食らったザミーゴは「ぐぅふぅっ!」と体勢を崩して倒れるが、お返しとばかりに(みずか)らの足を引っ掛けて正義を転がし、逆手に持ち替えたナイフで正義の喉を突き刺そうとする。

 

 正義は身を(ひるがえ)して回避。ナイフは地面に深く突き刺さった。ザミーゴは「ヒュゥッ♪」と楽しげにナイフを手放し、距離を取る。

 

「お前、なかなかやるねぇ。ここまでしぶとく生き延びた奴は久し振りに見たなぁ」

 

「俺も貴様のような(やから)は初めてだ。卑劣な手段を(ろう)しつつ、的確に躊躇(ためら)いなく急所を狙う攻撃。明らかに人を殺すのに慣れた動きだ。貴様……何者だ?」

 

「何だかんだと聞かれたら、答えてあげるが世の情けってヤツ? 良いぜぇ、出血大サービスで教えてやるよ」

 

 ザミーゴが妖しく笑うと……奴の全身が氷に覆われ始める。巨大な氷塊(ひょうかい)から小さな眼光が放たれた直後、氷が砕け散る。

 

 その中から現れたのは―――異形の怪物に変貌したザミーゴ。

 

 全身に氷柱(つらら)を生やし、首元から複数の触手が垂れ下がる。被っていたソンブレロと呼ばれる帽子も氷山を模したような形となり、その下にある頭部は髑髏(どくろ)の如く不気味な様相だった。

 

 姿を現した途端に冷えた空気が周りを包み込む……。変貌を遂げたザミーゴは誇示するように両手を広げ、意気揚々と自己紹介する。

 

「俺の名前は―――ザミーゴ・バレット。自他ともに認めるイヤ〜な奴さ」

 

「自分から陰険な奴だと認めるのは(いさぎよ)さの表れか、それとも性質(タチ)の悪さを強調しているのか。まあ、貴様の場合は後者だろうな。(むし)ろ、後者以外あり得ん」

 

「おいおい、酷いねぇ。俺はこう見えてガキの頃はとっても良い子だったんだぜぇ? 周りから常に品行方正、清廉潔白、(ほとけ)のザミーゴちゃんって呼ばれ―――テテネェッ!」

 

 ドォンッッッッ!

 

 ザミーゴは全く理解できないタイミングで不意打ちの発砲を見舞う。しかも、それは普通の銃撃ではなく……空気中の水分を凝結させて作った氷の銃によるもの。

 

 製造した氷の銃を右手で握り、引き金(トリガー)を引く。銃口から射出されたのは―――銃と同じく氷で生成された弾丸。(だいだい)色に(あや)しく輝く弾丸が正義の心臓目掛けて飛来する。

 

 正義は横っ飛び且つ紙一重(かみひとえ)で弾丸を回避。氷の弾丸は正義の背後にあった木々に被弾し―――瞬時に凍結させていく。

 

 一瞬で氷漬けにされた木は脆く崩れ、粉々に砕け散る。正義がザミーゴを睨み付ける。

 

「息をするように嘘を吐き散らかすクズめ……貴様は心底不愉快だ。骨の髄まで、臓腑の底まで腐り切ってると見た」

 

「酷いねぇ、寒いねぇ。俺の作るかき氷は新鮮一番、味も絶品って(もっぱ)らの噂だってのに」

 

 ザミーゴは右手に持っていた銃を無造作に捨てる。その銃はパリンッと(はかな)く砕け散るが、ザミーゴは即座に新しい氷の銃を生成する。

 

 今度は両手に氷の銃を生成、二丁拳銃で正義に向けて発砲する。正義は付近にあったゴミ箱を蹴り飛ばし、更に地面の一部を蹴りで削り取り、二発の氷の弾丸を相殺(そうさい)させた。

 

 ゴミ箱も、蹴り飛ばした破片も一瞬で氷塊と化し……先程の木と同様に砕け散る。ザミーゴは「ヒュゥ〜ッ♪」と口笛を吹きながら氷の銃を投げ捨てた。当然、投げ捨てられた銃は(はかな)い音と共に砕け散り、雲散霧消(うんさんむしょう)する。

 

『……1発撃つ度に投げ捨てている。あの氷の銃は使い捨てなのか? 燃費が良いのか悪いのか分からん武器だな』

 

 正義が思慮を巡らせていると、アーシアから回復を受けた一誠が戦線に復帰。禁手(バランス・ブレイカー)の鎧を展開して、ザミーゴを憎々しげに睨み付ける。

 

「あの野郎っ、ふざけた真似しやがって……っ! アーシアの柔肌(やわはだ)に傷一つでも付けてみろ! その憎たらしいツラをボコボコにしてやるッ!」

 

「兵藤、今まで以上に気を引き締めろ。コイツは平然と卑怯卑劣な戦法を取ってくるクソ外道だ。万が一の時は、貴様を身代わりにしてでもコイツを仕留める」

 

「よしっ、分かっ―――たらダメだッ! おい、幽神っ! お前なに自然な流れで俺を囮にしようとしてんのっ!!?」

 

「貴様はたった今から最強の囮として命を散らし、その偉業は後世にまで語り継がれる。貴様が目指しているヒーローとやらに一歩近付けるぞ、良かったじゃないか」

 

殉職(じゅんしょく)する気は全くねぇよっ!!? なあ、頼むからこんな時ぐらい毒づきを止めて協力してくれ! お前が敵に回るとか、もうイヤなんだよっ! お前の罵倒を野放しにしてたらストレスで死ぬ!」

 

「チッ、仕方の無い奴だ。ならば真面目に共闘してやるとしよう」

 

 最初から真面目にやって欲しいとツッコミたいところだが、指摘するとやや面倒な事になりそうなので割愛。正義が1つめの作戦を提案する。

 

「まずは貴様が奴の銃撃を引き付けろ」

 

『おっ、案外まともな作戦っぽい』

 

「俺は貴様が撃たれている間にトドメを刺す」

 

「やっぱまともじゃなかったっ! その作戦だと俺が死ぬの確定してんじゃんっ! 頼むから少しは真面目に考えてくれっ!」

 

「チッ、ワガママも大概にしろよ。ならばプランBだ。俺が攻撃を担当する。貴様は後方から援護射撃―――」

 

「分かった、ドラゴンショットで」

 

「―――すると見せかけ、盾になって銃撃を防ぎつつ、剣となって奴の脳天を叩き割れ」

 

「よしっ、分か―――らないっ! もうお前の言ってる事が何1つ分からないッッ! その作戦、要するに俺がボコられるだけじゃねぇかッ!!? 俺を何だと思ってんだよッ!」

 

「変態の皮を被った肉盾(にくたて)、もしくは変態の皮を被った肉剣(にくけん)

 

「コイツ本当にヤダッッ! 誰かぁ! この毒舌と罵倒を超え過ぎた鬼に人としてのモラルを教えてあげてぇっ!」

 

 あまりにも酷い作戦内容と正義の毒舌に、一誠は涙目で慟哭(どうこく)する。一連のやり取りを見ていたザミーゴは堪えきれず、吹き出してしまう。

 

「ヒャァッハッハッハッハッ! お前らマジで面白いな! 戦ってる最中に漫才するヤツなんか初めて見たぜ!」

 

「だろうな。気に入ったならコイツを貸してやろうか? サンドバッグ及び実験台としては優秀だぞ」

 

「おいっ、俺をレンタルDVDみたく扱う―――ちょっと待て! 今サンドバッグって言ったか!? 実験台って言ったか!!?」

 

「殴って良し、蹴って良し、刺して良し、斬って良し、撃って良しの五拍子(ごびょうし)を揃えた逸品だ。どれだけ乱雑に扱っても構わん」

 

「誰かぁっ、おまわりさん呼んでくれぇっ! 平然と人身売買する(コイツ)を逮捕してくれぇぇぇぇっ!」

 

「兵藤、コレの何処が人身売買なんだ? 俺は無償で提供しているに過ぎない」

 

「余計に性質(タチ)が悪いわぁッ!」

 

 (幽神正義)と一誠が繰り広げる漫才のような……否、漫才以上のやり取りにザミーゴは「ちょっww お前ら名コンビ過ぎるww」と腹を(かか)えて笑う。一頻(ひとしき)り笑い終わると、ザミーゴが2人に(たず)ねる。

 

「そう言えば、まだお前らの名前聞いてなかったな。ついでに教えてくれよ」

 

「……俺は幽神正義。そして、コイツは……変態のヘン・タイだ」

 

「おいっ、ただ変態って(ののし)られるよりも酷い紹介しなかったかっ!!? ヘン・タイって、俺は中国人でもタイ人でもねぇよ! 兵藤一誠っ! 正真正銘、日本生まれ日本育ちの日本人だぁっ!」

 

「兵藤、貴様……日本人だったのか? その事実に驚いたぞ」

 

「1分1秒経過する(ごと)(コイツ)口撃力(こうげきりょく)と鬼畜度が上がっていくぅ……っ。神様、教えてくれぇ……っ! 俺は前世で何か悪い事しましたかァァァぁぁぁっッ!!?」

 

 度重(たびかさ)なる(幽神正義)の猛毒めいた毒舌(どくぜつ)口撃に耐えきれなくなった一誠は、人目を(はばか)らず泣いた(笑)。

 

 ザミーゴは「いや〜、マジでウケるわぁ」と賞賛しつつ、ポンッと何かを思い付いたように進言する。

 

「兵藤一誠と幽神正義、ねぇ……。おっ、良いコンビ名が浮かんだぁ。お前ら今日から迷コンビ―――『イッセーギ』ってのはどうだ?」

 

 2人の下の名前……一誠(イッセー)正義(まさよし)。正義は『せいぎ』とも読めるので、それをくっつければ―――あら不思議。迷コンビ『イッセーギ』が誕生させられちゃいました(笑)。

 

 ザミーゴが命名したコンビ名に、正義が「待て」と声を掛ける。

 

「なぜ俺の名前が兵藤ごときの後ろに付けられねばならん? 不愉快だ」

 

「指摘するのはソコじゃないだろっッ!!?」

 

「え〜、呼びやすいのになぁ。じゃあ、アンタの名前をアタマに付けた『セイッセー』ってのは?」

 

「……それなら前者の方がマシだな」

 

「ねぇ、皆さん……? この状況をおかしいと思ってるのは俺だけでしょうか……? なんで俺が終始イジられてる事に疑問1つ浮かばないのデスカ……?」

 

 もはや壊れる寸前の口調になってきた一誠。ひとまず、一誠と(幽神正義)のコンビ名は『イッセーギ』となりました(笑)。

 

 正義は壊れかけた一誠の頭を叩き、無理矢理正気に戻させる。

 

「兵藤、無駄なお喋りはここまでにするぞ。コイツは思った以上に危険な相手だからな。せいぜい足を(すく)われないようにしろ」

 

「余計な心配するなよ。俺だって修羅場はそれなりにくぐり抜けて来たんだ。危険な相手とか今更過ぎて、分かりきってるんだよ」

 

「ほう、貴様にしては随分と強気な啖呵だ。ならば集中しろ」

 

 そう言うと正義も禁手(バランス・ブレイカー)の鎧を身に纏い、一誠も改めた臨戦態勢に入る。その様子を見たザミーゴは「ヒュゥ〜ッ♪」と口笛を鳴らし、不敵な笑みを浮かべた。

 

「良いねぇ、面白くなってきたじゃねぇかぁ。こりゃ、邪魔が入らないように予防線を張っといて正解だったかもしれないなぁ」

 

「「予防線?」」

 

 意味深な言葉を吐いた直後、遠くから爆発めいた轟音が鳴り響いてきた! その方角はユキノ達がいるエリアだった……。一誠は即座にザミーゴに向かって怒声を飛ばす。

 

「テメェっ! 何をしやがった!!?」

 

「別にぃ? ただ邪魔が入らねぇように、向こうにも(あらかじ)戦力(お友達)を派遣させてもらっただけだぜぇ? ほら、余計な水を差されたら寒いだろ?」

 

 嫌味タップリの笑みを浮かべるザミーゴに対し、正義は大きく舌打ちする。

 

「……貴様、最初から裏で手引きしていたのか? 俺達の戦力を分散させる為に、貴様がコイツらを扇動したのか?」

 

 正義は“ザミーゴが今回の襲撃を画策した”と予想し、核心を突くように問い詰める。しかし、当のザミーゴは「ハァ?」と言った感じで両手を広げ、肩を(すく)める。

 

「俺が? こんな奴らを? なんで? そこまで暇人じゃねぇし、コスパ悪い連中に仕事を任せる程バカでもねぇもん」

 

 ザミーゴは(ふところ)から洋風のかき氷―――フラッペ(チョコ味)を取り出し、ストローで中身を吸い上げる。異形の怪物がフラッペを飲むと言うのは、なかなか珍妙な光景だが……生憎(あいにく)、そんなシュールさにツッコミを入れる余裕など無い。

 

 ザミーゴは飲み干したフラッペの容器を自身の冷気で凍らせていき、1つの氷塊(ひょうかい)へと変える。氷塊と化した容器を空中へ放り投げ―――生成した氷の銃で撃ち抜く。

 

 撃ち抜かれた氷塊は粉々に砕け、地上へ散布される。使い終わった氷の銃も捨てたザミーゴは嘲笑するように吐き捨てる。

 

「ここの限定販売のフラッペを飲もうとプライベートで来てみれば、大ポカやらかした役立たずのバカどもと、三大勢力で有名な戦力の赤龍帝(せきりゅうてい)地獄兄弟(ヘル・ブラザーズ)がいるじゃん? それならさぁ、やる事はもう決まってんだろぉ?」

 

「……俺達に吹っ掛けてきたのは、あくまでついで―――と言いたいのか」

 

「そんな薄っぺらい理由で、しかも公共施設の中で……ッ! ふざけやがって……ッッ!」

 

 話を要約すれば、ザミーゴは当初から狙うつもりなど無かったが―――『たまたま発見したからやってみよっか』的な感覚で一誠達の前に現れ、現状に至っている。あまりにも短絡的な理由に正義は顔を(しか)め、一誠は怒り心頭で歯を食い縛る。

 

 そんな視線など意に介さず、ザミーゴは嫌味タップリの笑みを浮かべた。

 

「だから言っただろぉ? 俺はザミーゴ・バレット、自他ともに認めるイヤ〜な奴だって♪」

 

 そう言った直後、ザミーゴは(ふところ)から2つほど球体状の物質を取り出す。また爆弾かと身構える一誠と正義だが、今度は違っていた。

 

 野球ボール程のサイズしかない2つの球体をその場に落とすザミーゴ。次にプールサイドへ歩み寄り、手で水を(すく)って―――2つの球体に浴びせる。

 

 水を被った球体は次第に白煙(はくえん)を上げ、形を変貌させていく……! メキメキと嫌な音を立てつつ、人型の形を成していき―――その姿を現した。

 

 一方は青と銀色が混ざり合ったような細身の異形で、まるで液体の如く掴み所を感じさせない様相だった。

 

 もう一方は逆に緑一色に染まり、全身の筋肉を(つた)で覆われていた。右腕に絡まる蔦は一層太く束ねられており、武器のように一体化している。

 

 2体の怪物を召喚したザミーゴが説明に入る。

 

「どーよ? コイツらは“とある伝手(ツテ)”と共同製作した戦闘特化型の疑似生命体―――通称『魔造兵(ロイド)』、今ウチで売れ筋の商品よぉ。青いのが『液体魔造兵(リキッド・ロイド)』のワーテルくん。こっちは『樹木魔造兵(ウッド・ロイド)』のモリゾウだ。お二人さん、挨拶してあげて」

 

『ジャバジャバ、バシャ゙ァ゙ァ゙ァ゙ンッ』

 

『モリモリモリィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ッ』

 

 人語(じんご)とは程遠い鳴き声を発し、一誠と正義を威嚇する2匹の疑似生命体。ザミーゴだけでも厄介極まる相手なのに、数まで増やされてしまった。

 

 ザミーゴは新しく生成した氷の銃を向けて、宣戦布告してくる。

 

「んじゃっ、始めましょーやぁ」

 

 

 ――――――――――――――

 

 

 その頃、爆発が起こった方角―――ユキノ達の方でも危機的状況に見舞われていた。一誠達と同じように、ザミーゴが予め派遣しておいた戦闘特化型の疑似生命体―――『魔造兵(ロイド)』の襲撃を受けている。

 

 敵の数は3体、ユキノ、ソラノ、チェルシー、ディマリアはその内の2体を相手取っているが……いずれも強敵揃いだった。

 

『ドロドロォ゙ォ゙ォ゙ッッ』

 

 1体目は灰色の甲殻―――土の鎧で覆われた騎士のような異形。右手が棘付きの鉄球と一体化し、右肩に砲門らしき物が突き出している。更に鎧の表面は粘着性に富んだ泥でコーティングされ、軟質ゆえに並大抵の攻撃を吸収し無力化する。

 

 コードネームは『泥土魔造兵(ソイル・ロイド)』ドロリッチ。

 

『メラァァァッッ、メラァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ッッ』

 

 雄叫びを上げる2体目は―――炎を噴き出す異形。見た目は『液体魔造兵(リキッド・ロイド)』ワーテルと酷似しているが、こちらは如何にも炎攻撃が得意と言わんばかりの姿をしている。更にはチェルシーお得意の爆発攻撃を物ともしないどころか、逆に吸収して(みずか)らの力に還元してくると言う厄介な性質を備えていた。

 

 コードネームは『火炎魔造兵(ファイア・ロイド)』メラーガ。

 

 2体の異形にユキノ達は苦戦を()いられ、肩で息をする。

 

「はぁ……はぁ……。いきなり襲ってきたと思えば、手強(てごわ)い相手ですね。まさかイッセーさまの方でも、このような敵が……?」

 

「そう考えた方が良さそうだゾ、ユキノ。せっかくの親睦会が台無しにされて気分最悪だゾ」

 

「ならば、私達の怒りを思い知らせてやるまでね。チェルシー、いけるか?」

 

「ええ、あのメラメラくんには私の攻撃が効かないから、そっちのドロドロくんを片付けましょう」

 

 ディマリアとチェルシーは『泥土魔造兵(ソイル・ロイド)』ドロリッチを相手取り、ユキノとソラノは『火炎魔造兵(ファイア・ロイド)』メラーガと対峙する。

 

 一方、幽神弟―――悪堵(あくど)達は残りの1体を相手取る形になっていた。

 

『ツキィ゙ィ゙ィ゙ィ゙ニカワッテェ゙ッ、オシオキィ゙ィ゙ィ゙ッッ』

 

 何処かで聞いた事のある台詞を発する3体目は―――金色の装甲に覆われ、頭部や両腕、両足に三日月のような刃を生やした騎士の如き異形。堅牢な装甲に加え、鋭い斬撃や光線を飛ばす事も出来る。

 

 コードネームは『月刃魔造兵(ムーン・ロイド)』クレッセント。

 

 1体だけなら対処し(やす)い―――かと思いきや、そうではなかった。悪堵は片膝を付き、大量の血を流している……。

 

 「あ、悪堵さん……っ」

 

 彼の後ろでウェンディが弱々しい声音で呼びかける。恐らく、ウェンディを庇ったせいで敵の攻撃をまともにくらってしまったのだろう……。

 

 ウェンディが自責するように呟く。

 

「悪堵さんっ、ごめんなさい……っ。私のせいでこんな……っ」

 

「ウェンディ、アンタのせいじゃないわ」

 

 そこへウェンディの姉、シャルルが歩み寄る。

 

「一番の原因はアイツよ。アイツが―――ウェンディをトップレスにしたからよ」

 

「ひゃぅぅっ! い、言わないでぇぇっ!」

 

 シャルルの言う通り、現在ウェンディは―――トップレスの手ブラ状態だった……。トマトのように顔を真っ赤に染め、(つつ)ましいおっぱいを華奢(きゃしゃ)な両手で隠している。

 

 何故こうなったのかを説明しよう。

 

 一誠達が代わりのボールを取ってくるという名目でその場を離れ、(しばら)く経過した後、ザミーゴが前もって準備していた『魔造兵(ロイド)』達が襲撃を開始。

 

 完全な不意討ちに面を食らった一同だが、何とか反応して攻撃を回避。だが、ウェンディだけ反応が遅れてしまい、『月刃魔造兵(ムーン・ロイド)』クレッセントの凶刃が振り下ろされる。

 

 その時、禁手(バランス・ブレイカー)の鎧を纏った悪堵が間一髪(かんいっぱつ)割って入り、振り下ろされた凶刃を拳で止める。

 

 初撃は防いだものの、矢継ぎ早に斬撃の乱舞と光線の乱れ撃ちが繰り出され、悪堵はウェンディを庇いながら全ての攻撃を拳で弾き、砕き、捌いていった。

 

 敵が両腕の刃を大きく振り下ろそうとしたタイミングでウェンディを(かか)え、射程圏内から脱出。一時(いっとき)の難を逃れた―――かと思いきや……先の斬撃と光線の乱れ撃ち、その内の1発がビキニの紐を切ってしまい、ウェンディは見事トップレスに。

 

 救出直後に安否を確かめようとした悪堵は運悪く(?)ウェンディのおっぱいを直視、ウェンディも違和感に気付いて自分の胸に視線を移し―――結果、顔から火が出るほど真っ赤っ赤になりました(笑)。

 

 直ぐに顔を逸らした悪堵だったが、(こら)えた時間は僅か5秒……。大量の鼻血が排出され、現在に至る……。

 

『俺も兄貴みたいに、抑制剤を貰ってくれば良かった……っ』

 

 悪堵は兄・正義が常備している抑制剤を羨んだが、アレはアザゼルが面白半分で渡してきた単なる栄養剤。なので、仮に持っていたとしても鼻血等を抑制する効果など皆無。この事実が知られれば……アザゼルは間違い無く、怒り狂った幽神兄弟(2匹の鬼)から苛烈な報復を受ける事になるだろう……。

 

 その際は皆さんで合掌してあげましょう(笑)。

 

 鼻血消費で弱った悪堵に刃を向ける『月刃魔造兵(ムーン・ロイド)』クレッセント。勝敗の天秤は早くも敗北の方に(かたむ)きつつあった。




今回の話で新たに登場してきた敵、ザミーゴ・バレット! 元ネタは言うまでもなく、ルパンレンジャーのラスボスにして怨敵、ザミーゴ・デルマです!

 何としても出したかった敵なので、今回このような形で登場させてみました。外道キャラを多々出している本作、ザミーゴもキリヒコに負けず劣らずの外道に仕上げていきます!

 
【挿絵表示】


 それとザミーゴが使役している複数の『魔造兵(ロイド)』は、バスコ・タ・ジョロキアの使ってた巨大疑似戦闘生命体そのまんまです。一部名前を変えただけです。

 ゴーカイジャーでは曜日モチーフにちなんで7体出ましたが、今作では何体かオリジナルで『◯◯ロイド』の◯◯と言った感じで出していきます。どんな奴が出るか、お楽しみください♪
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