【辻斬り】デスゲームに一般エネミーとして転生したンゴwwww【するぜ】   作:刹那木ヤクモ

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長くなりそうだし最近上げられてないので初投稿です。


閑話 1

あいつか、ああ、知ってる。

 

話せば長い。そう、昔の話だ。

 

知ってたか?プレイヤーは三つに分けられてた。

 

あいつに関して寛容な奴。

無視してた奴。

憎んでた奴。

この三つだ。

 

ん、俺か?俺はな──

 

あいつは名前のないエネミー。

 

俺の戦友だった男。

 

あいつのことが知りたいのか?んー、そうだな。あれは雪の降る、寒い日だった。

 

──MMOトゥデイ インタビュー記事より抜粋。

 

◆◆◆◆

雪の降る季節。主街区の少し外れにある人気のないカフェには珍しく、二人の人影があった。

 

「ネームドエネミー?」

 

黒のコートに身を包んだ剣士──キリトが表情を少し歪めながらそう言う。

 

「そうよ。今、攻略組で暇な人はあなたくらいしか居ないの。アスナも大変らしいし…。」

 

「んで、俺に白羽の矢が立った、と。それにしてもずいぶん久しぶりじゃないか、ミト。」

 

ティーカップを唇から離し、閉じていた目を少しずつ開けながら、かつての戦友。元鎌使いである彼女はキリトと目を合わせる。

 

「まあね。アルゴさんから頼まれて、事に当たって欲しいってこっちに来てまで言ってたの。本人は別件で忙しいらしくて──私とキリトならいけると思ったんでしょ。」

 

「俺もミトもテスターだしな。でも、本当に居るのか?今さらネームドエネミーが出たなんて信じられないぜ。それも、1階層でだろ?時間経過で発生するイベントならどうしようもないけど、βでは居なかった…よな?」

 

「ええ、そうだった筈。」

 

戦力的には申し分ない。前線を退いたとは言え、未だにプレイヤーの中でも上位クラスの戦闘力を誇っているミトと、ソロだが、攻略組として前線で戦っている俺。

あとは新しく知り合った戦友と、腐れ縁の騎士様でも連れてくればバッチリだ。

 

しかし、問題はそのエネミーだ。今さらそんな1階層に発生するなんて考えにくい。仮にも初心者が居る場所。そう簡単に理不尽なほど強力なモンスターは出現させない。俺の知っているGM(茅場)ならそうする。

 

「…一先ずは、調査するしかないか。ちなみにそいつの名前は?」

 

うーん、と少し唸ったあと、思い出した、と言うようにミトは手をポンと叩く。

 

「確か、名前は──ザ・フェイタルサイズ。」

 

◆◆◆◆

 

「…で、俺が呼ばれたと。そう言う訳だね?キリトさん。」

 

「ああ、悪ぃな。()()()()()。」

 

「構わないさ。俺のギルドも割と壊滅状態だ。完全に士気が戻って、戦力が整うまではまだまだ時間がかかる。その間リーダーとして俺がやれることはそんなに多くない。これくらいの時間は抜けてても問題ないさ。」

 

「25層の悲劇。そうか、お前のとこは──」

 

彼のギルド、《アインクラッド解放軍》は25層のフロアボスに挑んだのだが、何とか攻略こそ出来たもの、多くの死亡者が出てしまった。攻略組の主力として常に前線で戦ってきた彼らがかなりの痛手を負ったことは、プレイヤーの心に少なくない傷を負わせた。

 

「…その辺は割り切らないとやっていけないことくらい分かっている。そうしないと、俺たちはこの世界からいつまで経っても抜け出せない。…駆け抜けるんだ。人の思いを背負って。特に、俺とキリトさんは。」

 

「…ああ、俺たちがやらないとな。」

 

そう、俺とディアベルが一通り言葉を交わしたところで、おずおずと手を上げる影が一つ。

 

「キ、キリトさん…わたし、ここに居て大丈夫なんですか?」

 

「大丈夫。むしろ、君こそ無理しなくて良いんだぞ?シリカ。」

 

竜を連れた、プレイヤーにしては珍しく幼い女の子であるシリカ。とある一件で知り合った彼女にも参加してもらった。テイマーである彼女の索敵能力を少しでも借りたかったからだ。

 

「いえ!キリトさんには助けられましたから…わたしも、少しは頑張らないと。…あ、そう言えば、リズさんは?」

 

「誘ったけど、リズは今大忙しなんだと。なんでも、アスナの所から色々発注があったらしくて、とてもじゃないが手伝える余裕がないらしい。」

 

俺と彼女の共通の知り合いであるリズ──リズベットが来ていないのはそう言った理由以外にも少しあるらしいのだが、本人が秘匿しておきたい以上掘り下げるわけにもいかない。

 

今回の調査には俺とディアベル、シリカ、そしてミトの四人で挑む。全員での事前会議の時に、現在地である始まりの町から少しばかり離れたホルンカの町に移動し、そこで一晩を過ごしてから本格的に行動を始めることになった。

 

予定通り移動して、宿を取り、幾ばくかの休息を取る。お世辞にも質の良いとは言えないベッドに横たわり、ため息をつく。やれ、面倒臭い時期に注文してきたもんだと一人で勝手にボヤく。…攻略組も大分ピリピリしてきている。もともとギルドは解放軍の一強だったのが25層の悲劇で弱体化し、更にはそれまでの解放軍のギルド運営のノウハウをディアベルらが広めた影響で、様々なギルドが力を強めている。本人はギルドの強化によるプレイヤーの生存率向上を重視するために広めたのだろうが、ソロプレイヤーから言わせてもらえば下手にオレンジギルドやレッドギルドが力を持ってしまえば、それまた面倒なことになる。

そんな風に物思いに耽っていた時、部屋のドアが叩かれる。

 

体を起こしてドアノブを捻ると、そこに立っていたのはミトだった。

 

「キリト。頼まれてたもの、用意できたわ。」

 

そう言い、彼女が渡してきたのは数本のナイフ。投剣スキルによる恩恵を受けれるギリギリのラインを攻めたオーダーメイド。彼女と俺の研究により生み出すことが出来た現状最も高威力の飛び道具。

 

 

「ああ、バッチリだ。ありがとな、ミト。」

 

「構わないわ。お代もきっちり貰っているもの。…それより。気になるの?あのゴーストのこと。」

 

「…。」

 

気付いていたか。そう、ここホルンカの町は第一層フロアボス攻略戦で共闘したあの奇妙なエネミーと出会った場所。彼はボスドロップを自分のものだと言い、それを取り返すために協力を要請してきた。

しかし、暫くの時が経ち、フロアボスのバックストーリーが明かされたりするに連れ、あのボスドロップはゴーストの所有物では無いことが分かっている。

ならば、あのゴーストは今何をしているのだろうか。そんな事を少し前までは考えていた。最近はそんな余裕もなかったが、今こうして少し休息を取れるようになり、彼と出会った地に戻ってきた時に、彼のことを考えていたのか、と問われたなら首を縦に振らざるを得ないのだ。

 

「…そうだな、気になる。あいつが今何をしているのか。何をもって俺たちを騙したのか。なんと言うか、今思い返せばやけに人間臭かったんだよ、あいつ。」

 

「それって秘鍵クエストのNPCとか、そう言った感じではないってこと?」

 

「ああ、キズメルたちとはまた違う。何て言うか、全てを知っているような。含みのある言い回しをしていたような気がするんだ。それこそ、あの時の茅場みたいな。」

 

思い起こされるのはデスゲーム初日の、あの赤いコートの大男。あの野良ゴーストにはあいつの面影があった。

 

「…悪い、気にしないでくれ。明日も早い。今日は先に寝させて貰う。お休み、ミト。」

 

「…そうね。また明日。お休み、キリト。」

 

ドアを閉め、一息つく。気になることが多すぎるが、今悩み続けても意味はない。

もう一度ベッドに体を預け、目を瞑る。

 

ネームドエネミー…吉と出るか、それとも凶と出るか。

 

◆◆◆◆

 

「…ここ、か?」

 

「アルゴさんが言うにはね。…にしても、本当にいるのかしら?」

 

「警戒していこう。何が出るか分からない。…シリカさん、君の探知には何か引っ掛かったかい?」

 

「…なにも見つかりません。わたしの探知範囲には何も居ないです。」

 

俺に続いてミト、ディアベル、シリカがそう言う。

序盤に来るであろうこの洞窟。ネームドが闊歩しているようには到底思えない。

 

「…まあ、進んでみよう。何か見つかるかも──」

 

そう言った直後のことだった。カキン、とこの世界では珍しくもない金属音が鳴る。剣と剣が打ち合う音。エネミー同士が戦うなんてことは聞いたことがない。つまり、この先に誰かがいる筈。

 

 

「キリトさん、今のは…」

 

「ああ、誰かが戦ってるのかもしれない、急ぐぞ…!」

 

俺たち四人の出せる最高値で洞窟を駆ける。攻略組である俺とディアベルはレベルが高い分敏捷値にも振っているし、シリカもミトも回避盾や撹乱を主に行うため敏捷値は当然高い。急行する、と言うシチュエーションは俺たちにとって最も得意な動きであると言っても良いだろう。

 

次第に強く、大きくなっていく鉄の音。俺たちが走り続けている間、途切れることなく音が鳴り響いている。

 

そして、その源にたどり着いたとき俺とミト、ディアベル──かつて一層フロアボスと戦った俺たちは、息を飲んだ。何故ならば、そこに立っていたのは──

 

『…《絶空》ッ!』

 

『…』

 

『…マジで怯みもしないな、おい。流石に腹が立ってくるぞ?』

 

あの時の《ゴースト》だったからだ。

 

「ねえ、あれって…。」

 

「あの時の、俺を助けたNPC…か?」

 

腰に下げた刀を抜き放つと同時にソードスキルを放ち、そのモーションをキャンセルする事によって二撃目のソードスキルを放つ。

俺たちには到底出来ないであろうソードスキルキャンセルなんて離れ業を行い迫る相手の攻撃を捌く。

 

ならば、この、俺たちに向けられたら猛攻になるような攻撃を防御に使わなければならないほど苦戦している相手と言うのは──そう思い目線をずらすと、そこにはゴーストよりもはるかに巨大な体を持つ、さしずめ『死神』と言うべき姿。

マークはどす黒く、俺たちとのレベル差がどれ程あるのかを伝えてくる。そして、その上に表示されている名前こそ──

 

「…《ザ・フェイタルサイズ》。」

 

例のネームドエネミーだった。

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