【辻斬り】デスゲームに一般エネミーとして転生したンゴwwww【するぜ】 作:刹那木ヤクモ
「…《ザ・フェイタルサイズ》」
不気味に赤い目を光らせながら宙を舞うネームドエネミー。巨大な鎌を高速で振り抜き、攻撃し続けているゴーストを一蹴する。
「…どうするんだい、キリトさん。」
ディアベルがそう問いかける。加勢するか、否か。加勢すること自体がイベントフラグになり得る可能性は勿論ある。だが、それがあるにしてもあのネームドと戦うのは流石に厳しいだろう。キズメルの時とは比べ物にならない程レベルが違う。マトモなタンクもディアベルしかおらず、彼でさえも一撃でも食らえば即死だ。
『そこのプレイヤー!』
その声が聞こえたのは、俺がそんな風に考えていた時だった。エネミーからプレイヤーと言う単語が発せられた、と言う動揺で動けない。
突如、浮かんでいた疑問が点で繋がる。何故刀の所有者を騙ったのか。何故含みのあるような達観していた思考をしていたのか。
まさか、こいつは──ゲームマスターに近い存在なのか?茅場ではない、巻き込まれただけの人間に過ぎないのか?茅場と戦うための力が欲しかったから、俺たちを騙したのか?
『残念だが、私には君たちを守る余裕はない!コイツと戦うので精一杯なんでな!だから、ここでの出来事は忘れて退け!』
そう叫び、刀を振り続けるゴースト。間違いなく、コイツは何かを知っている。攻略の糸口や、茅場そのものも。だが、ここで関わりを無理にでも持とうとするならば、先にネームドに殺される。そう考え、パーティメンバーに撤退を提案しようと振り返ると──
『あ、まっず。──プレイヤー、10秒だけ耐えてくれ!』
そう言い残し、安っぽい音を奏でながらポリゴン片へと姿を変えるゴースト。ザ・フェイタルサイズはため息をつくような素振りを見せたあと、こちらを捉える。その直後、姿が揺らぐ。
「──ディアベル!」
「う、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
ガキィンと音がなり、俺たちがいた場所より遥か後方に吹き飛ぶディアベル。彼の持っていた盾は半ばからひしゃげた状態で吹き飛ばされ、ポリゴン片へと還った。
「ディアベルさんは、やらせない!」
追撃に走ろうとしたザ・フェイタルサイズにミトが鎌ソードスキルの二連撃でヘイトを取り、意識をそらす。
「──スイッチ!」
「任された!」
ミトがバックステップで下がったのを確認し、片手直剣ソードスキルの《ソニックリープ》で鎌へ向けて打撃を加える。一瞬の均衡の後に、無造作に腕を振るわれたせいで、猛烈な勢いで弾き飛ばされて壁に体を打ち付けられる。
「──やあああああ!」
そこに割り込むようにシリカが割って入り、鎌を再び弾く。
──さあ、10秒稼いだぞ──!
『…待たせたな。』
ビリビリ、と電気のようなものを纏いながら再誕するゴースト。初めて目にするエネミーの復活と言う現象に目を疑うのも束の間、ゴースト特有の速度で突貫する。
『大変失礼した!分かって貰えただろうが私一人では抑えきれない、君たちは早く撤退してくれ!』
振り返り、そう叫ぶエネミー。必死に俺たちを逃がそうと、例え自分の命を投げ捨てても助けようとして戦っている。
姿こそ異形の化け物であろうと、その行い、その振る舞いは俺が失って久しい父親のように勇敢な、一人の人間だった。
「──悪い、ありがとな。引くぞ!ディアベルは俺が担ぐ!」
鉄の音が再び鳴り始めたのを合図に、戦場から離れる。吹き飛んだディアベルの下へと一直線に駆け、彼を引き起こす。
「ディアベル、無事か!?」
「なんとか大丈夫。助かったよ、キリトさん。キリトさんの警告がなかったら、俺は死んでた。」
「──無事ならよかったよ。立てるか?無理そうなら背負うけど。」
「平気さ、走れる。…ネームドとあのゴーストの情報は惜しいけど、今は退くことが最優先だ。」
ディアベルの無事も確認できたところで、俺たちはこの洞窟を脱出した。
◆◆◆◆
「ふーん、まさかそんな事になってたなんてナ。」
「他人事みたいに言うなよ、お前のせいだからなアルゴ。」
ニャハハ、と軽く笑って済ませるアルゴに思わずため息が出る。俺は対した損害は被ってないが、ディアベルはかなり強化した盾を一撃で破壊され、本人も少なくないダメージを負っていたため、かなりしょげていた。
「まあまあ、悪かったとは思ってるサ。…それより、本当なのカ?キー坊の言う人の意識を持つエネミー。俺っちはそんな事知らないゼ?」
「推測の域は出ないけど、そうでもないと説明が出来ないんだ。あの正体不明のゴーストのことは。けど、アイツは悪い奴じゃない。それだけは言える。…信じてくれ、アルゴ。アイツのために、俺たちのために──人を助けるエネミーの存在を発信してやってくれ。」
俺たちプレイヤーが、アイツを嫌い始めたら。恐らく、何か不味いことが起きる。NPCとかならまだ良い。決められたアルゴリズムに乗っ取って動くからだ。だが、人間であればどうなる?
不快感も感じるだろう。そうなったとき、あの不死身のエネミーの存在は厄介すぎる。
敵に回すことがあれば、それこそ世界の終わりだろう。
「俺たちに出来る自衛ってのは、それくらいしかないんだ。頼む。」
「オネーサン、確証のない情報は広めたくないんだケド…ま、ネームドエネミーの件もあるし、可愛い弟分の頼みなら仕方がないナ。」
「悪いな。」
ケラケラ笑いながらも了承してくれたことに一先ずは安堵する。
今はまだ、エネミーの知能が低い。けれど、そこに参謀が加われば非常に不味い。
エネミーとの対話。考えたこともなかったが、今の俺に求められているのはその架け橋になることのような気がした。