にじさんじ×ワールドトリガー   作:Mr.ソロ

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第2話「エクス・アルビオ」

 

迅が去ってからしばらくして、戦闘訓練を終えた新入隊員はC級ランク戦のロビーに移動し、嵐山からランク戦の説明を受けていた

 

 

「C級ランク戦はここのブースに入った者同士で相手を指名し合い、勝てばポイントが貰え、負ければポイントが減る。自分より高いポイントの相手ほど多く貰えるが、逆に低い相手に負ければ多く減る。自分の腕に自信のある者はこっちの方がポイントを稼ぎやすい。今日のところは以上だ。明日は週2回行われる合同訓練について説明する。今日とまた同じ時間に来て欲しい。では解散とする」

 

 

嵐山の説明が終わり、新入隊員はその場から散らばる

 

いつもならば、新入隊員はボーダー内を見て回ったり、早速友人同士で個人ランク戦をしたりと行動するのだが、今回はほとんどの者がすぐには動かなかった

 

理由は1つ、にじさんじのライバーが気になったからだ

 

"にじさんじのライバーがランク戦をするところを見たい"、"戦闘訓練で高記録を出した彼等の戦いぶりを見たい"、という興味が新入隊員達をその場に留まらせた

 

そんな彼等の期待に応えるかのように、にじさんじのライバーの中から戦闘訓練で0.1秒を叩き出した金髪の青年が嵐山に近寄る

 

 

「あのー、ちょっと質問いいですか?」

 

「構いませんよ」

 

「明日のオリエンテーションなんですけど、今日中にB級上がっても来ないと駄目だったりします?」

 

 

"今日中にB級へ上がる"...その言葉を聞いた新入隊員だけでなく、周りのC級隊員達や木虎、時枝も耳を疑った

 

嵐山も当然驚いたが、先の戦闘訓練の実力から質問してきた青年にそれが可能だと考え至り、不思議に思うことなく返答する

 

 

「訓練自体は自由参加だから強制ではないです。よりポイントの高い相手と何時間も戦闘しないといけないですが…」

 

「その辺は大丈夫です。ありがとうございました〜」

 

 

青年が質問を終えると同時、1人を除いてにじさんじのライバー全員が一斉にブースへと入っていく

 

そこからは凄まじかった

 

にじさんじのライバー…特に戦闘訓練で速い記録を出した者達はポイント上では格上の相手全員と5本勝負ずつで試合を行い、次々と勝利してポイントを稼いでいった

 

そして、にじさんじライバー達のランク戦が始まってから約4時間…最初の4000ポイント到達者、つまりはB級昇格者がブースから出てきた

 

 

「いやぁ、あとちょっとでB級上がれそうだった人達をボコボコにしちゃったけど心折れてないかなぁ...。まあ、責任は取りませんけど」

 

 

出てきたのは戦闘訓練で0.1秒を叩き出し、嵐山に質問をした金髪の青年だった

 

この4時間、常に3500前後の相手とランク戦を行い、その全試合を瞬殺していった

 

餌食となった中には来月のランク戦参加を期待されていた程の実力がある隊員もおり、それをあっさりと倒していった彼の試合を見ていた隊員はその凄さに驚愕の一色となった

 

 

「あれ?もう終わり?」

 

「案外あっけなかったねぇ」

 

「は〜い!対あり〜!」

 

「......」

 

 

更に、金髪の青年に続いて数名のにじさんじライバーもB級昇格を果たし、ブースから顔を出す

 

 

「まあまあ、こんなもんよね」

 

「いやぁ、最近の若い連中もなかなかやるなぁ」

 

「黛さ〜ん!上がり終わったよ〜!褒めて〜!」

 

 

その後、更に数人がブースから顔を出し、ランク戦開始から5時間程で10人以上がB級へと昇格した

 

 

「マジで今日中にB級へ上がりやがった...!」

 

「しかも数時間ぶっ続けでランク戦してるはずなのに少しも疲れてねぇぞ...」

 

「ゲームだけじゃなくて実際の戦闘も強いとか...やっぱ凄ぇな!にじさんじ!」

 

 

彼等を知る者も知らない者もその強さに騒然となるが、当の彼等はそんなことは気にも止めず、他のメンバーが終わるまで待とうとランク戦ロビーの端に集まり談笑を始める

 

ランク戦を終えてなお、にじさんじへの注目は収まなかった

 

彼等を知る者からすれば一瞬でもいいからお話ししてみたい。知りはしないが、その実力の高さに興味を持った者はチームの誘いをかけたい。又は、単純にどれだけ強いか実際に手合わせしてたしかめたい

 

彼等の周囲に群がる隊員はそのような欲望を抱えていたが、誰一人として行動には移さない

 

1つ...彼等を知る者からすれば、彼等だけの空間に異物である自身が一瞬でも割り込むのは恐れ多いことであり、最悪にじさんじが好きな同士からの反感を買う恐れがあった

 

2つ...単純に彼等の空間に入り辛い。2,3人であればそうでもないだろうが、十数人が集まっているところに声をかけにいける精神を持ち合わせる者はそれこそ正隊員くらいなものだろう

 

そういった理由から、周囲の者はただただ彼等を眺めるだけに止まっていた

 

あれだけ大人数の集団に話しかけに行ける者など、余程コミュニケーション能力の高い者か怖いもの知らずな者…

 

 

「へぇ…!なかなか楽しめそうなルーキーじゃん…!」

 

 

そして、強者との戦いにワクワクする戦闘バカくらいなものだ

 

 

 

 

ボーダー本部の会議室。そこでは城戸、忍田、風間、迅が集まっており、C級ランク戦の様子をモニターしていた

 

 

「ね?なかなかいい腕してるでしょ?」

 

 

モニターを鋭い目付きで眺める城戸に、迅はヘラヘラとした軽い雰囲気でにじさんじの面々を自慢する

 

 

「...風間、お前の目からして奴等はどうだ?」

 

 

そんな迅とは正反対に、なまはげも顔負けするほどの強面を持つ城戸正宗は、自身の隣に立つA級3位部隊の隊長を務める風間蒼也ににじさんじの面々に対する正確な評価を問う

 

 

「僅かな期間とは言え、玉狛が訓練を施していたというだけあって多くの者が戦い慣れています。個人差はありますが、彼等のほとんどは10月のランク戦までにはB級に上がっているでしょう」

 

 

"そしてなにより..."と、風間は更に話を続ける

 

 

「戦闘訓練で10秒を切っていた数人は明らかに他の者とは別格の強さを有しています。戦闘用トリガーを使えば、まず間違いなくマスターレベルの実力はあるでしょう」

 

「凄いな...。彼等がこちら側に友好的だったことは幸いだな」

 

「その辺りは田角さんに感謝しないといけないですね」

 

「感謝か…。我々のトリガー技術の一部を勝手に持ち出した挙句"彼等"を秘密裏に匿っていた小僧にそんな気持ちは一切ない」

 

 

城戸は静かな怒りと憎しみの混じった声音でそう吐き捨てる

 

 

「しかし、これほどの実力を持つ者が全員、林道支部長...玉狛側に付くとなるとボーダー内でのパワーバランスが崩れるのでは?」

 

 

ボーダー内におけるパワーバランス...それに関する不安を覚えた風間の発言により、それまでの空気が一変する

 

ボーダーには大きく3つの派閥が存在する

 

ネイバーに恨みを持つ人間が多く集う「ネイバーは絶対に許さない主義」の城戸派

 

ネイバーに恨みはないが、街を守るために戦う「街の平和第一主義」の忍田派

 

そして、「ネイバーにも良い奴はいるから仲良くしようぜ主義」の林道匠を代表とする玉狛派

 

特に1番規模が大きいのが城戸派。そして、この城戸派と玉狛派は考えが正反対が故に、城戸派が一方的に敵意を剥き出しにしているだけだが、対立関係にある

 

これまで規模の大きさ故に、王者の余裕を見せている城戸派だが、にじさんじの隊員が玉狛派に付くことによってその戦力が一気に増強するということは見過ごせないものであった

 

もっとも、見過ごせない理由はそれだけではないのだが…

 

そういった諸々の事情を把握した上で入隊することを許可したのは紛れもない城戸や忍田を含んだ上層部だが、だからこそ、その決定権どころか話し合いにも関わることも出来ない風間は自身が従う相手...城戸正宗がどう考えているのかを知っておきたかった

 

 

「風間さんも疑り深いなぁ。たしかに、彼等をスカウトしてきたのは俺達玉狛だけど、だからと言って彼等が俺達と同じ思想を持ってるわけじゃないよ」

 

「だが、彼等の関係性は玉狛の理想とも言えるものじゃないか?」

 

「...言い方が悪かったかな。たしかに、彼等の関係性は俺達と似てる。でも、こちら側を攻めてくるネイバーやその可能性のあるネイバーに対する思想まで一緒とは限らない。そもそも俺達の間で勝手に決め付けるものでもないでしょ」

 

 

"それに..."と、迅は続ける

 

 

「城戸さん達には勘違いしてほしくないけど、俺達玉狛は別に本部と戦争したいだとか、主導権を握りたいとかそんなこと一切考えてないって。ただ、最良の未来のためにやれることをやってる...それだけだよ」

 

「だが...」

 

「風間」

 

 

まだ迅に物申そうとする風間を城戸が鎮める

 

 

「たしかに、ボーダー内のパワーバランスが崩れることは軽視できない。だが、"例のトリガー"を持つ者を除けば、彼等が"所持していた"未知のトリガーとブラックトリガーの所有権は我々にある。もっとも、ブラックトリガーに関しては今のところ本部の隊員で適応出来ている者はいないがな」

 

 

"加えて..."と、城戸は続ける

 

 

「彼等には監視を付けることを了承されている。もちろん、担当は玉狛ではなく我々だ」

 

「...分かりました」

 

 

城戸の考えと彼等への措置を聞き、ひとまず納得した様子の風間は大人しく引き下がり、迅への追求を止め、一同は再び個人ランク戦を映すモニターに視線を落とす

 

 

 

 

「ちょっといいっすか?そこの皆さん。今日入隊したばかりの新入隊員の人…で間違ってないっすよね?」

 

 

にじさんじライバーがランク戦を始めて数時間…B級昇格を果たし、談笑していた彼等に1人の男が声をかける

 

 

「えぇ、そうですけど...」

 

「試合見てましたよ!めちゃくちゃ強いっすね!あ、俺は米屋陽介!どうぞよろしく!」

 

「あ、はい...よろしくお願いします...」

 

 

金髪の青年は突然話しかけてきた米屋と名乗る隊員の馴れ馴れしさに、やや引き気味になりながらも言葉を返す

 

 

「急で悪いんすけど、今暇なら俺とバトってくれないっすか?」

 

「言われてますよ、チャイカさん」

 

「いや、こいつ明らかおめぇに言ってんだろうが」

 

「いやいやチャイカさんとやった方が楽しいですよ?なんで僕なんですか?」

 

 

チャイカと呼んだオカマの大男に押し付けようとするほどに嫌がる金髪の青年の問いに、米屋はニヤリと笑い答える

 

 

「その質問は野暮なんじゃないっすか?今この場にいる中で1番…あんたが強そうだからに決まってんじゃん」

 

 

米屋の答えに、金髪の青年の態度が一転する

 

 

「まあ、間違ってはないですね。あなたいい目の付け所してますよ」

 

「おい、こいつ調子乗り出したぞ」

 

「でもB級上がってすぐだからなぁ...あり得ないですけどもし負けてポイントが減って降格とかなるとなぁ...」

 

「あぁ、それなら問題ないっすよ。正隊員になったら...どれくらいだっけな?まあ、4000から多少下回ったところで降格したりしませんから。それにポイントが絡まないフリーの試合もあるし、そっちでも俺は構わないっすよ」

 

「あ〜、カジュアルみたいなのもちゃんとあるんですね。うーん...まあ一回だけならいいかな」

 

「よっしゃ!じゃあ早速行きましょう!」

 

 

米屋の押しに負けた金髪の青年は仕方なく一戦だけ付き合うことにし、再びブースへと入っていく

 

 

 

 

 

「おっ...!面白そうなことになってるな...!」

 

 

引き続きランク戦を観戦していた迅が何かを見つけたらしく、あえてその場の全員に聞こえる声を漏らす

 

迅の視線の先にあるモニターを見た一同は、その予想外な光景に目を見開く

 

映っていたのはこれからランク戦を行うために仮想空間に転送された風間と同じA級隊員の米屋陽介

 

そしてその対戦相手は、例の集団の中でも秀でた強さを持つと定められた金髪の青年だった

 

 

 

 

市街地の仮想戦場に転送された米屋は少し離れたところに佇む金髪の青年と視線を合わせる

 

 

「さぁて、お手並拝見といこうじゃん」

 

『ランク外対戦1本勝負...開始』

 

 

試合開始と同時に米屋は金髪の青年に向かって駆け出していく。それに対し、金髪の青年は弧月を右手に構えたままその場からは動かない

 

 

「そっちから来い…ってか?なら遠慮なくいかせてもらうぜ!」

 

 

金髪の青年まで残り十数メートル...米屋は槍を構えて力強く踏み込み、凄まじい威力とスピードを乗せた渾身の突きを繰り出す

 

この一撃をどう捌くか内心ワクワクしていた米屋だったが、金髪の青年の予想外の行動に良い意味で裏切られる

 

 

ガシッ...!

 

「…っ!?」

 

 

なんと金髪の青年は米屋が突き出した渾身の槍を表情一切変えることなく、穂先が顔に届くギリギリで槍の太刀打ちを左手でガッシリと掴んで止めたのだ

 

これには米屋も驚きを隠せずに目を見開き、動きが止まる

 

その隙を逃さなかった金髪の青年はすかさず米屋に弧月を振り下ろし袈裟斬りにする

 

 

「良い動きですね。まあ、僕にとっては対応圏内ですけど」

 

 

トリオン体が崩れ落ちるなか金髪の青年が掛けた言葉に米屋は悔しさ...ではなく、更なる興奮を感じた

 

 

(思った以上じゃねぇか...!こりゃ面白そうなことになりそうじゃん...!)

 

 

米屋は金髪の青年に目をやりながらニヤリと笑いベイルアウトした

 

 

 

 

A級隊員である米屋と金髪の青年の試合を見届けた隊員はその試合結果に騒然となる

 

 

「A級が今日入隊したばかりの新人に負けた...!?」

 

「一体何者なんだあの人...!」

 

「流石にエビオでもあれはやば過ぎだろ…!?」

 

「あの人もうB級なんだろ!?部隊を組むなら来月のランク戦は面白くなるぞ!」

 

 

ブースから出てきた金髪の青年は先程よりも騒がしいロビーの状況を見て少し驚く

 

 

「うわ...なんですかこの騒ぎ...」

 

「A級の俺が新人のあんたに負けたからだよ」

 

 

金髪の青年の隣に同じくブースから出てきた米屋が話し寄る

 

 

「えぇ!?あなたA級なんですか!?」

 

「そういや言ってなかったっすね。俺はA級8位:三輪隊の隊員なんすよ。いやぁ〜!にしてもいい勝負だった!久々にワクワクしたぜ!」

 

「今の試合がいい勝負...?あなた瞬殺でしたけど?」

 

「俺の一撃をあんな方法で止めたのはあんたが初めてだ!これが面白くないわけないじゃないですか!今度また勝負しましょうよ!フル装備の俺はさっきとは比べ物にならないっすから!」

 

「えー...面倒くさいからいいです...」

 

「そう言わずに!この通り!」

 

 

戦闘狂な米屋の強請りに金髪の青年は隠す気もなく嫌そうな顔をして断る

 

次の勝負を強請る米屋はふと金髪の青年の肩に印されたマークがボーダー本部のものではないことに気付く

 

 

「ん?その肩のマーク...見たことないっすね。そういや、あんたの名前も聞いてなかった…なんて言うんすか?」

 

 

米屋の質問に金髪の青年は一拍置いてから答えた

 

 

「にじさんじ支部所属のエクス・アルビオです。A級なんですよね?僕達、遠征のためにここのトップを目指すんで、いつかボコボコにされる覚悟をしておいてください」

 

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