にじさんじ×ワールドトリガー   作:Mr.ソロ

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第3話「フレン・E・ルスタリオ」

 

正式入隊日の夜

 

ボーダー本部から西...警戒区域手前の立地に建てられたにじさんじのライバー専用の基地兼住居となる"にじさんじ支部"

 

そこでは、玉狛支部の人達によるにじさんじの面々の入隊を祝う宴会が行われていた

 

 

「皆さん、入隊初日お疲れ様でした!たくさん作ったので、遠慮せずにお腹いっぱい食べてくださいね!」

 

 

玉狛支部のオペレーター:宇佐美栞の言葉を皮切りに、にじさんじの面々は支部の大広間に用意されたご馳走にありつく

 

 

「うわっ...!めちゃくちゃ美味しいんだけど...!」(リオン)

 

「それはとりまる君が作ったものだね」(宇佐美)

 

「へぇ〜!烏丸君料理上手いんだね」(社)

 

「お口にあったなら何よりです」(烏丸)

 

「料理の出来るイケメン...。烏丸さんは優良物件だなぁ…」(アンジュ)

 

「アンジュ...?」(リゼ)

 

「本当にありがとうございます。この人数の分を作るのは大変だったんじゃないですか?」(美兎)

 

「たしかに大変だったけど、半分は出前だからそんなに気にしなくていいわよ」(小南)

 

「椎名ぁ!なに私の皿から奪ってんねん!」(笹木)

 

「だってあたしの位置からじゃこれ取るの遠くて面倒やもん」(椎名)

 

「そういえば、葛葉さんと叶さんはどうしたんだ?」(レイジ)

 

「にいやんは葛葉に付き合って訓練室に...。ごめんなさい、レイジさん。うちの葛葉が...」(ひまわり)

 

「いや、無理に付き合わせるのも悪いからな。2人の分は分けて取っておいておこう」(レイジ)

 

「クレアちゃん!クレアちゃん!これ、どうぞ!」(陽太郎)

 

「わぁ!陽太郎君、ありがとう!」(クレア)

 

「これくらいしんしとしてとうぜんです!」(陽太郎)

 

「まーたお嫁さん候補を増やしたのか?陽太郎」(林道)

 

「ゆりちゃんがひとりめ!クレアちゃんがふたりめ!」(陽太郎)

 

「ふふ。嬉しいけど、お嫁さんにしたいほど好きな人は1人にするべきだよ。陽太郎君」(クレア)

 

「ふたりともすきだからふたりとけっこんするのです!」(陽太郎)

 

「クレアさんに手を出すとは度胸があるなぁ…」(力一)

 

「子供にはリスナーなんか関係ないからなぁ…」(舞元)

 

 

玉狛支部の人達を交えた楽しい宴会の時間はあっという間に過ぎてゆく

 

 

「それで、今日で何人がB級に上がったんすか?」

 

 

賑やかだった宴会が終わりを迎える手前に烏丸が訊ねる

 

 

「俺と周央さんは例外として、エクス、花畑さん、葛葉さん、長尾君、フレン、鈴原さん、剣持さん、ベルモンドさん、ういは、ニュイさん、アクシア、ローレン、レイン…ってところかな」

 

「13人か。ちょっと多いけど、とりあえず今日B級に上がった人達の戦闘用トリガーの構成は俺と宇佐美がやろう。できれば何人かやり方を覚えてくれると助かるから一緒に付いてきてほしいんだが…」

 

「あ、なら俺が行きます。社長もどう?」

 

「そうですね。トリガー技術には前々から興味があったので是非」

 

「私も付いて行きます」

 

 

林道の頼みに社、加賀美、グウェル...更に黛、ハジメが申し出る

 

 

「そういえばエクスさん、陽介とランク戦して勝ったって聞いたんだけど」

 

「ようすけ...?誰ですか?」

 

「槍使ってた人だよ」(アルス)

 

「あ〜!A級のあの人ね!そりゃもう余裕でしたよ!」

 

「相手もトリガー1つだったけどな」(イブラヒム)

 

「でも、米屋先輩は弧月1本でも相当強いですよ。やっぱりエクスさんは只者じゃないっすね」

 

「まあ、僕英雄なんで当然...!」

 

 

エクスは急に言葉を詰まらせたかと思えば、表情も段々と沈んでいく

 

 

「...なのになんで...あの時みんなを助けられなかったんでしょうね...」

 

 

エクスの悲壮を帯びた声に当てられて場の空気が重くなる

 

自称"英雄"を名乗っている彼だが、それは事実であり、実際にそれ相応の人並外れた戦闘能力を有している

 

だからこそ、数ヶ月前に彼等を襲ったネイバーによる侵攻で攫われてしまった仲間を助けられなかったことを悔やんでいる

 

にじさんじの中でも気丈に振る舞う方である彼だが、まだ事件から日の浅いこともあって、その時のことを思い出したことで自身の不甲斐無さを思い出し、思わず精神が参ってしまった

 

 

(それでも、君達は前に進まなくてはいけない)

 

 

だが、彼等と同じく多くの大切なものを失ったことのある迅は、エクスを励まそうと手を伸ばす

 

だが、迅よりも早く彼に手を伸ばす者がいた

 

 

「なに辛気臭い面してんだよ」

 

 

エクスと同じく、にじさんじにおけるネイバーの1人...花畑チャイカはエクスの頭に軽いチョップを入れてそう言った

 

 

「チャイカさん...」

 

「あいつらなら生きてる。幸いにも全員トリオン能力が高い連中だしな」

 

「でも...」

 

「聞きな」

 

 

まだ弱音を吐こうとするエクスに、チャイカは言葉短く黙らせる

 

 

「私等がボーダーに来たのはあいつらを助けるためだろ。くよくよする暇があるならその悔しさをバネにとっととA級に上がって遠征に行くんだよ。あれ以来荒れちまってはいるが、葛葉の奴はそうしてる。あいつぐらいの気持ちでやれなんて言わないけど、それくらいの熱意を持って目的に集中するんだよ」

 

 

チャイカの言葉にエクス以外の面々も顔を上げる

 

 

「...すみません、チャイカさん」

 

「いいんだよ...。それに...」

 

 

"私は任されてるからな"

 

チャイカが最後にボソリと呟いたが、それに気付く者はいなかった

 

 

「花畑さんの言う通りです。それに、これから皆さんに起こる未来は俺達にとっても重要になる。だから可能な限り、俺達も力になります。大丈夫ですよ、きっとハッピーエンドな未来が待っています。俺のサイドエフェクトがそう言ってる」

 

「そうだぞしょくん!われわれがついている!だからげんきをだしてひびしょうじんするのだ!」

 

 

迅、そして陽太郎の励ましを受け、にじさんじの面々は気持ちを取り戻す

 

 

「そうですね。皆さん、元気よく頑張っていきましょう!玉狛の皆さん、今日はありがとうございました!これからよろしくお願いします!」

 

「こちらこそ。困ったことがあればいつでも頼ってくれ」

 

 

美兎と迅…にじさんじと玉狛を代表する2人は握手を交わし、彼等の宴会はお開きとなった

 

 

 

 

「……」

 

 

にじさんじ支部の地下に設けられた訓練室…その一室では、仮想トリオン兵のバムスター、モールモッド数体を前に白髪赤眼の青年…葛葉がスコーピオンを構えて立っていた

 

葛葉は"ふぅ…"、と息を吐いた後、地を蹴り、仮想トリオン兵の群れに突っ込む

 

群れの前衛にいるモールモッドが振るうブレードを正確に避け、素早く急所となる目を切り払う

 

1体目を仕留め、即座に続く別個体のモールモッドへと意識を向けて撃破していく

 

その奥から、数体のバムスターが葛葉へと迫る

 

ドパッ…!

 

そのバムスターの1体が、葛葉の後方にある建物からの狙撃で撃沈する

 

続けて2発、3発目と放たれた狙撃で、確実に急所を射抜かれた数体のバムスターは次々と撃沈する

 

バムスター全てが撃破された後、残った数体のモールモッドも葛葉とスナイパーの連携によって難なく撃破された

 

 

『くず〜、かなかな〜、宴会終わったよ〜!2人の分はひまちゃんが部屋に持ってってる〜!』

 

 

対トリオン兵戦闘シミュレーションが終わったところで、制御室から青髪の少女…勇気ちひろが2人に宴会の終わりを伝える

 

 

「あ、勇気さん…!分かったー!ありがとうー!」

 

 

ちひろに返答したスナイパー…叶は建物から飛び降りて沈黙したモールモッドに腰掛ける葛葉の傍に寄る

 

 

「葛葉、宴会終わったって。今日のところはこの辺にしておかない?」

 

「……」

 

 

叶の呼び掛けに葛葉は答えず、何処か遠くを…何かを睨みつけるかのように見ていた

 

 

「…スコーピオンの訓練は充分やってるんだし、今根詰めることないよ。しっかり休息も取らないと体を壊すよ」

 

「…分かったよ」

 

 

叶の呼び掛けに応じた葛葉はゆっくりと腰を上げ、訓練室の出入り口へと歩き、叶はやれやれと息を吐いてその後を追った

 

 

「…叶、お前も早くB級に上がれよ。来月のランク戦で俺達は必ずA級に上がる。そんで遠征に参加して、ドーラ達を攫ったネイバー共をぶっ潰して全員取り戻す…!」

 

 

振り向かずにそう告げる葛葉…その表情は見えずとも、その雰囲気、声音から自分達の平穏と大切なものを奪った者への憎悪を感じ取れた

 

 

「…うん。分かってるよ、葛葉」

 

 

そんな葛葉を叶は怖いと思うことこそないが、その姿を哀しそうに見つめていた

 

 

 

 

翌日、入隊初日にB級昇格を果たした一部を除いたライバー達は昼から本部に赴いてC級ランク戦に励んでいた

 

 

「3000ポイントの人も増えてきましたけど、そこからはなかなか伸びませんね…」

 

「まあ、私等を含めて昨日B級に昇格した奴以外は戦闘の経験なんてほとんど無いからねぇ。とは言っても、ここの隊員ってほとんど学生なんでしょ?なら、ほぼ四六時中訓練できるウチなら全員B級に上がるのもそう遠くはないだろ」

 

 

C級ランク戦に臨むライバー達の付き添いで共に来た銅髪の女性:フレン・E・ルスタリオとチャイカはロビーに設けられたソファに腰掛けながら彼等の試合を眺めていた

 

 

「お…!いたいた!」

 

「ん…?あいつはたしか…」

 

 

2人がB級予備軍の隊員と互角の試合をするライバー達の展望について話をしていると、昨日エクスと試合を行った米屋が駆け寄ってくる

 

 

「どうも〜。えーっと、にじさんじ支部の…」

 

「花畑チャイカだ。こいつはフレン」

 

「フレン・E・ルスタリオで〜す!」

 

「花畑さんにフレンさんっすね!改めて、A級三輪隊の米屋陽介です!」

 

 

チャイカとフレンに自己紹介され、米屋も改めて自己紹介して返す

 

 

「お二人はランク戦しないんすか?」

 

「まだトリガーの構成も出来てないからね。まあ、今後しばらくはやるつもりもないけど」

 

「そうなんすか?それはなんで…?」

 

「なんでって…来月のランク戦のために決まってるでしょ?ボーダーの隊員は全員ランク戦の録画を観れるんだろ?わざわざランク戦前に情報をやるような真似はしないよ」

 

「あ〜…!たしか、エクスさんも遠征目指してるって言ってたっすね!来月のランク戦でもうそれを狙ってるんすか?」

 

「でなきゃ私等は入隊してないよ」

 

 

さらりと、それでいて相応の覚悟と本気を醸し出しながら質問に答えるチャイカに、米屋は"なるほど…!"とニヤリと笑みを浮かべる

 

 

「ってことは、エクスさんはランク戦が始まるまではもう来ないんすか?」

 

「そうですね。ランク戦まではずっと支部の訓練室に籠ると思います」

 

「そうか〜…。今日は無理でも数日後にまたバトれたらと思ったんだがな〜…」

 

 

自身を打ち負かした相手…エクスがしばらくランク戦に来ないことをフレンから告げられた米屋は残念がる

 

 

「すみません」

 

 

その時、彼等…主にフレンとチャイカの2人に向けられた声が掛かる

 

声のした方へ向くと、そこにはツーサイドアップな髪が特徴の小柄な少女が立っていた

 

 

「昨日の…金髪の人と白髪の人と一緒にいた人ですよね?私は黒江双葉と言います。唐突ですが、私と試合をしてくれませんか?」

 

 

その少女…黒江双葉からの試合の申し出にチャイカ達はきょとんとする

 

 

「本当に唐突だな…。でも悪いね、私等は今ランク戦をするつもりは…」

 

「あ〜〜!!私覚えてる!昨日私達と一緒に入隊してた女の子!」

 

 

黒江の申し出を断ろうとするチャイカの言葉を遮り、フレンが声を上げる

 

 

「間近で見ると本当に可愛いね〜!歳いくつ?」

 

「12歳…今中学1年生です」

 

「12歳…!?うわぁ…!そんなに小さいのに凄いね〜!」

 

「ありがとうございます。それで、試合の方は…」

 

「あ〜、実は来月にあるランク戦のために無闇に試合はするなって言われてるんだよねぇ…。もしよければなんだけど、なんで私達と試合したいの?」

 

「お姉さん達が強いから勝負したいと思った。それだけです」

 

「なるほど…。うん、分かった!私で良ければ1試合だけ!」

 

 

話し合いの末、フレンは黒江の申し出を受け入れた

 

 

「いいのか?エクスはともかく、イブラヒムに怒られないか?」

 

「トリガー構成はまだ決まってないし、1試合くらいなら大丈夫ですって!どうかな?」

 

「はい、それで構いません」

 

「よし!それじゃあ、やろう!あ…!私はフレン・E・ルスタリオって言います!よろしくね、黒江ちゃん!」

 

「はい、よろしくお願いします」

 

 

黒江への自己紹介を済ませ、フレンは彼女と共にランク戦のブースへと向かう

 

 

 

 

仮想戦場の場所は市街地

 

その街中…幅の広い道路上にフレンと黒江は向かい合うように転送された

 

2人は互いにメイントリガーである弧月を構え、試合が始まるその時を待つ

 

 

『個人ランク戦1本勝負、開始』

 

 

数秒後、試合開始のアナウンスが流れると同時に黒江が駆け出す

 

フレンへと迫った黒江は弧月を振るい、それをフレンは軽い剣捌きで難なく弾き、いなしていく

 

だが、それで黒江の攻撃は終わらない

 

二度、三度と絶え間なくフレンへと弧月を振るう

 

だが、フレンもまたそれら全てを弾き、いなし切った

 

 

(この人…!思ってたよりも強い…!)

 

 

幾度か剣を交えたところで、黒江は焦りを感じ始めていた

 

昨日の入隊日…戦闘訓練で自身の11秒よりも早い記録を出したにじさんじのライバーに黒江は負けず嫌いな性格からくる対抗心を燃やしていた

 

仮入隊の時に逸材だと評価された自分以上の新入隊員に劣るはずはないと

 

だが、いざ蓋を開けてみれば相手の実力は自分を大きく上回っていた

 

まだまだ粗さはあるものの、新入隊員にしては別格の戦闘能力を持つ自身の攻撃を目の前の相手は軽々と捌いていく

 

自身と同じくボーダーに入隊したばかりなのに、こんなにも強い相手がいるのかと…黒江は悔しくて歯噛みする

 

そして、黒江が悔しがる理由は他にもあった

 

 

「なんで…攻撃してこないんですか…!」

 

 

ここまでの剣戟でフレンは黒江の攻撃を捌くばかりで反撃をしてこないばかりか、その兆候すら見せていなかった

 

自分とは本気で勝負する気はない、遊んでいるのでないかと感じたを黒江はその理由をフレンに問いただす

 

黒江からの唐突な質問にフレンは思わず目を逸らすも、恐る恐る答えを口にする

 

 

「いやぁ…その…可愛い女の子を容赦なく斬るのは心が痛むというか…」

 

 

フレンが告げたまさかの理由に黒江は一瞬ポカンとするが、すぐに堪え切れない怒りが溢れ出した

 

 

「なんですか…その理由…!私は真剣に勝負に臨んでいるのに…!私が女の子であなたより弱いからって…!そんな理由で本気で勝負してくれないんですか…!」

 

 

フレンは黒江のことを誤解していた

 

まだ12歳という若さに加えて負けず嫌いな性格…そんな彼女を完膚なきまでに打ち負かしたら心が折れてしまわないかと

 

しかし、黒江の勝負に対する想いはそんな柔なものではないと、その怒りの声を聞いてフレンは理解する

 

 

「そっか…。やっぱり強いね、黒江ちゃんは。ごめんね、私の我儘で嫌な思いさせちゃって」

 

 

フレンは素直に謝罪を述べ、改めて黒江に対して構えを取る

 

 

「黒江ちゃんの想いに応えて…今から本気でいくよ!」

 

 

フレンから先程までなかった攻めの意志を感じ取り、黒江は少し嬉しそうに笑みを浮かべながら身構える

 

互いに構えてから数秒…フレンが地を蹴り、黒江へと迫る

 

 

「…っ!?」

 

 

黒江は自身の素早さに自信を持っていたが、それを上回る早さで迫って来たフレンに驚きながら振るわれた弧月を反射的に受太刀する

 

だが、フレンは黒江に息つく暇を与えなかった

 

受太刀した黒江の弧月をフレンは強引に弾いて再び弧月を振るい、黒江は弾かれても体勢が崩れないよう必死に堪えながら紙一重で次々と振るわれる弧月を防御する

 

 

(反撃する隙がない…!)

 

 

フレンのあまりに素早く、重い攻撃に黒江は防戦一方となっていた

 

このままでは押し切られる…そう思った黒江は一度距離を取ろうと後ろへ飛び退くために足に力を入れる

 

その瞬間をフレンは見逃さなかった

 

 

ガッ!

 

「…っ!」

 

 

黒江が地を蹴ろうとしたところに、フレンが足払いを繰り出して直撃…体勢を崩された黒江は横向けで地面へと倒れ込む

 

 

ザンッ…!

 

 

直後、フレンの弧月が振り下ろされ、防御を取れなかった黒江は身体を真っ二つに斬り落とされる

 

 

『戦闘体活動限界、黒江ベイルアウト。1本勝負終了、勝者…フレン・E・ルスタリオ』

 

 

 

 

「お疲れっす!いや〜、フレンさんも相当強いすね!」

 

 

試合を終えてブースから出てきたフレンに、米屋が労いと賛辞の言葉を掛ける

 

 

「思ったより時間かかってたけど、もしかして手抜いてた?」

 

「いやぁ〜、可愛い子を斬るのにちょっと抵抗が…」

 

「そんなこったろうと思ったよ…。お前そんなんでランク戦大丈夫かぁ?」

 

「大丈夫です!可愛い子は極力エビオとイブちゃんに任せるんで!」

 

「何処が大丈夫なんだよ…」

 

 

相変わらずのフレンにチャイカが溜め息を吐くなか、遅れてブースから出てきた黒江がこちらへと寄って来る

 

 

「フレンさん、ありがとうございました」

 

 

フレンにペコリと会釈した黒江はその後すぐに踵を返してフレン達の前から去って行った

 

 

「…強くなるな、あの娘」

 

「はい、私もそう思います」

 

 

チャイカとフレンは去って行く黒江の姿を見つめながらそう短く言葉を交わした

 

豊富な経験を積んだボーダー隊員ならまだしも、同じ時期に入隊した相手に負けて悔しくならない者はいない

 

特に黒江のような高い素質を持つ者ほど、負けた時の自尊心は折れやすい

 

だが、試合後フレンに挨拶をした彼女の表情からは悔しさも自尊心が傷付けられてショックを受けた様子も見受けられなかった

 

むしろ、"今より強くなって、次こそはあなたに勝ちます"と言わんばかりの気概をフレンとチャイカは感じ取っていた

 

 

「なんだか俺もじっとしてられないすわ!花畑さん!1本でいいんで、どうですか!」

 

「私はやんないって言ってるだろ」

 

「そこをなんとか!この通り!」

 

「いくらお願いされても無駄だよ。あ〜、でもそんなにしたいなら打って付けの相手がいるぞ。今あそこ…右端の画面に映ってる女がいるだろ?あいつなら喜んで試合してくれるはずだ」

 

「へぇ〜…!たしかに、あの人もなかなか…!あざっす!」

 

 

米屋は礼を言い、チャイカが売った女性と試合をするべく空いているブースへと向かって行った

 

 

「い、いいんですか…?」

 

「まあ、でびるがいないから、あいつ誰とも部隊組まないだろうしな。それにB級上がってんのに来てるのは試合すんのが楽しいからだろ?だったらあのバトル好きは好都合だろ」

 

 

と、チャイカは茶を飲みながら呑気にフレンの心配に答えた

 

 

 

 

「あの子、良いわね。イニシャルも"K"だし、他が目を付ける前に誘っておきましょうか」

 

 

C級ランク戦ロビー…壁にもたれながらフレンと黒江の試合を見ていたその女性:加古望はロビーから出て行く黒江を見つめながらそう呟いた

 

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