「皆さん、今日も訓練お疲れ様です!」
「夕食はもう出来てるので、しっかり食べてくださいね」
にじさんじのライバー達がボーダーに入隊してから約2週間後…その日の訓練を終えた彼等は支部の大広間で夕食にありついていた
「今日までの間でB級に昇格した人も更に増えましたね」
「個人ランク戦も皆さんもう少しのところまで来てますからね」
ライバー達を見渡しながら美兎は今日までの成果を振り返る
入隊初日にエクス達がB級に昇格して以降、更に数名のライバーがB級昇格を果たした
未だC級の者も個人差はあるが、この間に着実に戦闘の技術を磨き上げ、ほとんどが2000後半から3000ポイント台に達していた
「とは言っても、B級予備軍である3000ポイント台の隊員相手にはまだ苦戦を強いられている状態です。叶さん達スナイパー組の方はどんな感じですか?」
「僕以外は来月までに上がるのは難しいですね。上位15%を3週連続はなかなかキツいから、B級に早く上がりたい人はガンナー辺りに転向するのも1つの手だと思います」
「B級昇格に影響する訓練の内容毎週変わるの無理やって〜…。的を撃つだけならまだええけど、隠れながら撃ち合うやつとかしんどいわ…。追い付ける気せぇへん…」
アタッカーやガンナー、シューターとはB級昇格の条件が異なるスナイパー
そのメンバー筆頭の叶が加賀美からの質問に答え、同じスナイパーポジションの椎名が項垂れる
「じゃあ、それをクリアしちゃう叶先輩化け物じゃん…」
「いやいや、余裕で上位15%ってわけでもないんだよ?結構ギリギリ」
「それでも初心者なら十分過ぎるくらいですよ…」
「ところで、来月から始まるランク戦には誰か出るん?」
スナイパーとしての高い素質を持っていた叶に星川やリゼが引き気味に感心するなか、あと2週間程に迫ったランク戦について戌亥が全員に尋ねる
「はい!パタち達出ます!勿論エデン組のメンバーで!ね!」
「エバさん以外はB級に上がれてるから戦力的には問題ねぇし、実戦に向けて早いとこ感覚取り戻したいしな」
「そういうわけだから、早速で悪いけどオペレーターよろしくね。ヴィンさん」
「いいでしょう!私の戦闘員としての腕前を披露出来ないのは非常に残念ですが、この一万垓の頭脳によるオペレーションでローレン君達を勝利へ導いてあげますよぉ〜!」
ローレン率いるエデン組で構成されたイロアス隊…そのガンナーであるレインがランク戦参加の名乗りを上げる
「私も出たいところだけど笹木も椎名は間に合いそうにないし、ベルモンドと2人だけじゃ上位部隊相手は流石に人数不利で厳しいだろうからなぁ…。今回は見送るかね」
笹木、椎名、ベルモンドと共に花畑隊として参加したいチャイカだったが、そのうち2人がランク戦中までにB級へ昇格することが困難であると判断して参加を断念する
だが、そんなチャイカ達を気遣ってか楓が提案を持ち掛ける
「人が足りんだけなら今回は助っ人で私が入ろうか?」
「いいのかい?楓ちゃん」
「最終的には美兎ちゃん達と部隊を組むけど、美兎ちゃんも凛も今回のランク戦には間に合いそうにないし、実戦に近い経験は早めに得た方がいいと思ってたから。チャイちゃんも出来るなら早めにランク戦に出たいんでしょ?」
「まあ、そうだね。ならお願いしようかな」
楓の助っ人が決まり、チャイカは彼女とベルモンド、そしてオペレーターの夜見と共にランク戦への参加を決定する
「晴が間に合えば、俺達もランク戦に参加するつもりですよ」
レイン、チャイカに続き、甲斐田のB級昇格次第でオペレーターの弦月を含めた3人での参加を長尾が表明する
「ローレン、チャイカ、長尾…それ以外でランク戦に参加する予定の人は?」
「あっ…!俺もヒム達と…!」
「待てよ、エクス」
一度参加状況の整理を挟んだ緑仙の追求にエクスが声を上げようとするが、そこに葛葉が割って入る
「…なに?」
「俺も叶と一緒にランク戦に出るんだが…エクス、俺達と組めよ」
エクスの勧誘…その思い切った葛葉の行動に当の本人達以外の全員が驚愕する
「…俺を誘う理由は?」
「言わなくても分かるだろ…お前の力が必要だからだ。俺達はドーラ達を助けるために一刻も早くA級に上がって遠征に参加しなきゃならねぇ」
「で、でも葛葉…!迅さんが言ってやん…!遠くない内にドーラ達を助けるチャンスが来るかもしれないって…!」
「その遠くない内ってのはいつなんだよ、姉ちゃん。それにあくまで"かもしれない"だ。未来が視えるだか何だか知らねぇけど、俺は確実性がないなら黙って従うつもりはねぇよ」
葛葉はひまわりの言葉を否定し、睨みを効かせて黙らせる
場の空気がピリつくなか、エクスは葛葉に返答する
「たしかに、葛葉の言うことは一理ある。迅さんがサイドエフェクトで視える未来は幾つかあって、あらゆる人の行動次第で結末は変わる」
「そうだ。だからドーラ達を助ける機会が必ず訪れる保証はない。だが、遠征なら話は別だ。ネイバーフッドで情報を集めて、ドーラ達を攫った奴等が何処のどいつか突き止めるのも難しくはねぇ。お前だって遠征に参加するためにA級を目指すんだろ?だったら俺達と組んだ方がより確実なんじゃねぇか?」
「…最速で遠征に参加するためには、それが1番確実だと俺も思う」
「アルビオ…!?」
葛葉の考えに理解を示すエクスに、一緒に部隊を組む予定のフレンが声を上げる
「なら…」
「でも、俺は今の葛葉と遠征には行きたくないね」
だが、エクスは葛葉の勧誘を断った
「…そりゃあ、どういう意味だよ?エクス」
「今の葛葉は冷静じゃない。そんな状態で遠征に参加するのは危険だと思う」
「俺が冷静じゃない…?言ってくれるじゃねぇか、エクス…!」
勧誘を断ったエクスの理由に葛葉は怒りを露にする
「だったら証明してやるよ!来月のランク戦で俺の部隊はB級1位になってA級部隊にも昇格する!その時はエクス…!遠征のために俺の部隊に入ってもらうからな!」
「落ち着きなって、葛葉。そもそも、そんな要求をエクスが呑むメリットなんて…」
「いいですよ」
「ちょっ…!?なに勝手にOKしてんのさぁ…!」
「問題ないですよ、師匠。だって、来月のランク戦で1位になるのは俺達だから」
エクスにとってはその自信があっての宣言だが、それを挑発と捉えた葛葉は額に青筋を立てる
「言ったな?」
「ああ、言ったよ」
こうして、エクスと葛葉もそれぞれの部隊でランク戦に参加することが決まった
その後…入隊1ヶ月にして、にじさんじライバーの20人がB級へと昇格。その内16人は6月に行われるランク戦への参加が決まった
突如として現れたルーキー達が入隊1ヶ月で怒涛のB級昇格を果たしたことに騒がないボーダーの隊員はおらず、にじさんじの噂は瞬く間に広まった
それは当然、正隊員の耳にも届くこととなる
*
「ザキさん、聞きました?今月入隊した新人隊員が沢山もうB級に上がったって話」
「ああ、なんでも入隊初日で10人以上はいたらしい」
「俺、その人達がランク戦してるとこ見ましたよ。B級に上がった人のは見れませんでしたけど…」
「B級に上がった人達はその日以降ランク戦に来ていないみたいなんです。支部があるらしいので、その後は支部で訓練をしている…ということでしょうか?」
「噂だと、次のB級ランク戦に参加するかもって話みたいですよ」
「大型ルーキーが大量な上に情報の少なさ…次のランク戦は気を引き締めねぇとな」
*
「諏訪さん、もう聞きましたか?今月の入隊日に見た新人の話」
「ああ…ったく、とんでもねぇ連中だぜ」
「噂だと、その新人の1人は入隊初日で米屋先輩に勝ったらしいですよ」
「木虎や緑川に続いて、面倒臭ぇルーキーが来たもんだぜ…」
*
「今日の合同訓練でB級に上がった人、例の今月入隊した新人らしいですよ」
「来たか?スナイパー界隈に新星が」
「今期のルーキーは粒揃いって話らしいからな。ランク戦に参加してくるなら、油断できないぞ」
*
「あ〜…!叶さん、次のランク戦に参加するのかな〜?なんだか緊張してきた〜…!」
「なに呑気なこと言ってんのよ、茜。あんたの話だとその叶って人、今月の入隊から1ヶ月でB級に上がった人が何人もいる支部の隊員なんでしょ?私達もうかうかしてられないよ?」
「そうね。最近だと鈴鳴の村上君も強くなってるみたいだから、気は抜けないわ」
*
「入隊初日で米屋君から一本取ったなんて…!今期のルーキーは凄い人達ばかりだね…!」
「心配ないですよ、来馬先輩!こっちには鋼さんが付いてるんですから!」
「なんであんたが威張ってるのよ…」
「頼りにされるのは嬉しいが、実際に戦ってみないことにはなんとも言えないな。ともかく、次のランク戦は気を引き締めないといけませんね」
*
そして、時は経過して6月の初旬第1土曜日
遂に年に3回行われるB級ランク戦...その第2シーズンが始まる日を迎えた
時刻は午後2時...昼食を取り終わった隊員は待ちに待ったランク戦を観戦しようと3つある会場それぞれに赴く
3つの会場はそれぞれ上位、中位、下位のグループで分けられており、普段であれば上位、中位はほぼ満席。下位はぽつぽつと空席がある状態となる
だが、この日は違った
上位、中位グループの会場と同じく下位グループの会場も満席...それどころか後ろの通路で立ち見する者がいるほど溢れていた
何故急にこんなことになっているのか...理由は言うまでもない
つい先月に入隊したある界隈で有名な人達...彼等で組まれた計5部隊がデビューするからである
加えて、B級昇格の早さとその実力の高さを知る者によって噂が広まっていたこともあり、一目見ようと興味を持った隊員も少なくなかった
試合開始前から賑わう会場。その中央に位置する実況席に3人の隊員が腰を下ろす
『ボーダーのみなさん、こんにちは!B級ランク戦下位グループの実況を担当する武富桜子です!本日より新シーズンが開幕するB級ランク戦!皆さんも気になる今期のB級ランク戦についてお話したいところですが、その前に試合の解説をしてくださる方の紹介を..."ぼんち揚食う?"でおなじみ!S級隊員の迅先輩!そしてA級三輪隊の米屋先輩です!』
『どうぞよろしく』
『よろしく〜』
桜子の紹介に迅と米屋は軽く挨拶する
『今期のB級ランク戦からはなんと5部隊ものルーキー...それも知る人ぞ知る有名人、あの動画配信グループ"にじさんじ"のライバーがデビューするとのこと!そして、入隊初日から大きく目立ったにじさんじの数々の噂!その注目度の高さからここ下位グループの会場も賑わっています!さて、そんな注目の高いにじさんじの隊員について解説のお二人はどう思いますか?』
桜子は迅と米屋に話題を振る
『俺は入隊日のランク戦に居合わせたんだが、粒揃いだったぜ。特にこれから試合するアルビオ隊のエクスさん。あの人と1回だけバトって見事に負けちまったぜ』
米屋の発言に会場が騒めき出す
A級の米屋が新入隊員に負けた、という噂がここ1ヶ月の間に流れており、現場に居合わせていなかった者のほとんどが半信半疑でいた
だが、たった今当の本人からそれが事実だと告げられ、驚愕と同時にこれから試合を行うにじさんじの隊員に対する興味が高まる
『とは言っても、あの時は俺もあの人に合わせて弧月1本だったからな。次にフル装備でバトる時はもっといい勝負をするぜ?そういや...にじさんじだっけか?あの人達をスカウトしたのは玉狛だって聞いたんだけど』
と、米屋は隣に座っている迅に話を振る
『あぁ、彼等は俺達玉狛がスカウトしたんだ。例の東京で起こった件で赴いた時にね』
『へぇ…もしかしてですけど、玉狛の人達で訓練とかしてたんすか?』
『まあ、簡単にね』
『なるほどなぁ。思った通り、予想以上に期待出来そうじゃん』
『私からすれば推しがランク戦をしているところを見れたらそれで...おっと、失礼しました。では、本日は初日ということで簡単にB級ランク戦の説明をお願いします!』
『OK。今回のB級ランク戦参加部隊は22部隊。上位に8部隊、中位と下位のグループにそれぞれ7部隊ずつ分けられ、その中から3又は4部隊が組み合わされて試合を行い、点を取り合う』
一呼吸置いて、迅は更に続ける
『点を取る方法は相手を倒してベイルアウトさせること。そして、最後に唯一生き残ることだ。今日の試合を含めて8試合行った合計を競い、上位2位以内の部隊にはA級への挑戦権が与えられる。ただ、前シーズンのランク戦に参加していた部隊には順位に応じて初期ボーナスが付く。それだけ実力に差があるということを指し示していて、初参加の部隊や初期ポイントが低い部隊はそれだけ頑張る必要がある。以上かな』
『ありがとうございました!では、最後に本日の試合の組み合わせを改めて確認したいと思います。本日昼の部下位グループの組み合わせは吉里隊、アルビオ隊、花畑隊の3部隊。MAPは市街地Aが選択されています。スタートまであと僅か!間も無く転送が開始されます!』
*
「は〜...!緊張するなぁ...!」
作戦室で転送を待つアルビオ隊のアタッカー:フレンは自身の初配信の時に似た緊張を憶え、胸に手を当てながら深呼吸する
「とりあえず最初はどう動く?やっぱ合流?」
同じくアルビオ隊のガンナー:イブラヒムは転送前に作戦の確認をする
「1人でも獲れそうなのは積極的に獲って行って、無理なら複数でボコボコにする感じで。あと1人1キルね。じゃないと俺がボコボコにするからな?」
「いや言ってることヤバ...」
「みんなー!そろそろ転送始まるよー!」
アルビオ隊オペレーター:メリッサ・キンレンカの呼びかけを受け、エクス・イブラヒム・フレンの三人は気持ちを切り替える
「よぉし!アルスさんが間に合わなかったからチャイカさん達相手に人数の有利は取れないけど、まあ俺達なら余裕でしょ!」
「流石にそれはチャイカさん達を舐めてね?」
「じゃあ負けたらアルビオのせいってことで」
「じゃあ勝ったら全部俺のおかげな?焼肉奢ってもらうからな?」
「じゃあ負けるか」
「嘘嘘嘘!冗談に決まってるでしょって!とにかく、全員ボコボコにして勝つぞ!」
「「了解!」」
『B級ランク戦、転送開始!』
エクスの掛け声と共に仮想空間への転送が開始される
*
『さあ!全部隊の転送完了!各隊員は一定の距離をおいてランダムな地点からのスタートに...って、これは...!』
試合開始とともに桜子の実況が始まったかと思えば、モニターに映し出されたものに驚いたらしく、言葉を詰まらせる
だが、驚いたのは桜子だけではない
『おいおい...!どうなってんだこりゃ...!?』
解説席に座る米屋...そして、観客である隊員のほとんどにとって異様な光景...もっとも、彼等のことを知る者からすれば歓喜せざるを得ない光景なのだが、いずれにしろ会場全体から驚きの声が上がる
理由は彼等の隊服。彼等は部隊ごとに統一されたものではなく、それぞれが配信活動上で普段着用している服でランク戦に臨んでいた
『エクスさんの服...鎧ってまるで騎士か勇者みてぇな格好じゃねぇか!』
『エクスさんは"英雄"なんですよ!米屋先輩!』
『え、英雄…?』
『にじさんじライバーの皆さんは各々が独自のキャラクター性を持っているんです!エクスさんだと"英雄"!フレンさんだと"女騎士"!花畑さんだと"オカマエルフ"と言う風に!いい機会なので後で是非にじさんじの配信アーカイブを見てください!切り抜きでもいいです!』
『そ、そうか...教えてくれてサンキューな...?』
にじさんじについて普段よりも語気は強め、そして熱く説明及び宣伝する桜子に米屋は戸惑いを見せる
何を隠そう、桜子はにじさんじのファン...リスナーの1人なのであった
『まあ、隊服を統一しなければならないなんて規定はないからな。それより桜子ちゃん、解説解説』
『はっ...!そうでした...!』
迅に指摘されて我に返った桜子は、咳払いを挟んでから実況に戻る
『では気を取り直して...イブラヒム隊員とフレン隊員、花畑隊長がバッグワームを起動!レーダー上から姿を消した!吉里隊が合流を目指すなか、アルビオ隊、花畑隊はバラける模様!』
『転送直後は1番無防備な時間ですからね。獲れる相手が単独でいる間に獲りたいといったところでしょう。でも…』
『吉里隊の転送位置が結構良かったから接敵する前に全員合流しちまうが…止まる気はないみたいっすね』
『MAPの西!合流する吉里隊にエクス隊長が正面から挑む!』
*
市街地Aの西…合流を果たした吉里隊は自分達に向かって来る存在を迎え撃とうと武器を構える
「来たぞ!一人だ!月見!お前が動きを止めろ!そこを俺と北添で集中攻撃するぞ!」
「「了解!」」
気を引き締める吉里隊に迫るのは、A級の米屋を打ち負かしたことで噂になったルーキー…アルビオ隊の隊長:エクス・アルビオ
弧月を抜刀し、臨戦態勢に入った相手を見て、前線に立つ吉里隊の攻撃手:月見花緒も弧月をグッと握り締める
だが、まだ距離がある内にエクスが弧月を持つ右腕を大きく振り上げる
(旋空…!?この距離で…!?)
瞬間、月見は相手が直後に取る行動を予測して1人驚愕する
近接武器である弧月には、刀身を瞬間的に拡張することで本来ならば届くことのない距離の相手に攻撃することができるオプショントリガー…旋空が存在する
一般的にその距離は15〜20mなのだが、この時の月見と相手との距離はまだ50m以上はあった
旋空を駆使しても届くことは不可能…だがそれは一般的なそれであればの話だ
ボーダーの弧月使いには、最大で40mに及ぶ旋空を放つ者がいる
もし、目の前の相手もそれが出来る者だとしたら?
可能性は否定出来ない。何故ならば、相手はA級を負かした超大型ルーキーなのだから
(受け切ってみせる…!来い…!)
放たれるであろうその一撃に対し、月見は防御態勢を取る
だが、直後…
ドスッ!
「…えっ?」
相手から放たれたのは旋空ではなく、弧月そのもの。そして、それは見事に月見の胸を貫いていた
『トリオン供給機関破損、ベイルアウト』
何が起こったのか分からないまま、月見のトリオン体は穿たれた胸を中心にヒビ割れ、光となって仮想空間から離脱させられる
「「…え!?」」
月見と同様、突然のことに理解が追いつけなかった他2人はベイルアウトした仲間に目が向いてしまう
その一瞬が命取りとなった
ドンッ!
直後、遠方から放たれた狙撃銃…イーグレットの弾丸が吉里隊万能手:北添秀高の頭を撃ち抜く
『戦闘体活動限界、ベイルアウト』
「き、北添…っ!?」
開始早々、吉里隊は隊長の吉里雄一郎ただ1人を残すのみとなった
*
『よ、吉里隊の月見隊員と北添隊員が早くもベイルアウト…!先制点2点を取ったのはアルビオ隊のエクス隊長とイブラヒム隊員です…!』
桜子の響き渡る実況とともに、観覧席から歓声が上がる
『いやぁ〜!エクスさんは魅せてくれると思ってたが、まさか弧月を投擲するなんてな!やっぱり面白ぇじゃん!』
『たしかに、今のは見事な技でしたね。寸分の狂いもなく正確に供給機関を貫いた投擲…エクス隊長の能力の高さが窺えます』
『って言うか、イブラヒムさんって人はガンナーなのにスナイパー用トリガーも使ってたな…!』
『入隊1ヶ月で異なる2つのポジションのトリガーを使いこなすなんて凄いですね…!』
『彼等は支部で寝泊まりしてる上に、訓練量も相手も多いので上達速度が本部に通う隊員に比べて桁違いなんだと思います』
『なるほど…!さあ!絶体絶命に追い込まれた吉里隊長!ここから挽回することが出来るのか!?』
*
「くそっ…!見誤った…!そんな予想外の攻撃を誰が予測出来るかってんだよ…!」
エクスとの交戦開始から僅か1分弱…一瞬にして味方を2人落とされた吉里は弧月の投擲と狙撃を警戒しながら逃げ走っていた
「逃がすわけないだろって」
そして、逃げる吉里をエクスはそれ以上の速さで追い掛ける
その距離が段々と縮まるなか、吉里がある曲がり角を横切る直前にエクスへメリッサから通信が入る
『エビオ先輩!北から1人接近して来てる!』
『…!ヒム!誰が来てるか見える!?』
メリッサからの通信を受けて、エクスは内部通信でイブラヒムに相手が誰なのか確認させる
『チャイカさんだ…!今そっちに繋がる路地に入った…!』
「…っ!」
イブラヒムが視認した相手の名前を叫んですぐ、これまで培ってきた戦闘経験による勘から危険を察知したエクスは咄嗟に姿勢を低くする
ズバン…ッ!
直後、2つの旋空が曲がり角の路地先から放たれ、周囲の住宅の塀ごと吉里が斬り払われる
「なっ…!?」
『トリオン体活動限界、ベイルアウト』
無情な機械音声から敗北を告げられ、吉里のトリオン体は崩壊してベイルアウトする
「ふぅ〜…。危なかったぁ…」
「あら、やっぱり避けられてたか。まあ、そう簡単に倒せたら逆に心配するところだったわ」
勘によって死角からの旋空を避けられたエクスが一息吐くなか、曲がり角の路地からチャイカが顔を出す
「やあ、エクス。私と遊ばないかい?」
「遊ぶつもりはないです。ボコボコにするんで」
試合開始早々…部隊の隊長同士であるエクスとチャイカが相見える
6月ランク戦初期順位
上位
1位:二宮(15
2位:影浦(14
3位:生駒(13
4位:弓場(12
5位:王子(11
6位:東(10
7位:香取(9
8位:漆間(8
中位
9位:諏訪(7
10位:荒船(6
11位:那須(5
12位:鈴鳴(4
13位:柿崎(3
14位:早川(2
15位:松代(1
下位
16位:吉里(0
17位:間宮(0
18位:アルビオ隊(0
19位:イロアス隊(0
20位:葛葉隊(0
21位:長尾隊(0
22位:花畑隊(0