そのTSロリ娘は如何にして天馬司にメス落ちするのか 作:村岡
胸なんてねーよ!!!
春。心地よい風が頬を逆なで、桃色に咲いた桜の木々を揺らす。具体的な日付は4月6日。つまりは始業式の日だ。
今日から俺は高校2年生。時の流れとは早いものだな。
学校に向かうべく、ポカポカとした空気に包まれた住宅街を一人歩く。
「高2なっても背は伸びず……か」
その悲しい事実を受け入れたくて、天を仰ぐ。どうやら俺は体格に恵まれなかったらしく、身長は中学1年生のころから135cmのままで不動だ。前世の俺は180を超える高身長男子だったというのに。お陰で俺の将来性に期待を込め、入学する前に買ったMサイズの制服はブカブカのままだ。俺には一番ちんまいXSがお似合いですよってか?畜生がよぉ。
……あ?胸?……んなもんねーよ!ぶっ殺すぞ!
俺の精神は男だから胸ない方が違和感なくて楽でいいんだよ!ぶっ殺すぞ!
目に見えなければ名前も知らない誰かにブチギレながらしばらく歩いたところで、すると後ろの方からから突如として馬鹿でかい声が聞こえてきた。
「おーい!雛子!!!」
……なるほど、耳がつんざかれるとはこのことを言うんだな。
足を止めて、声がした方を振り返る。視界に映るは俺と同じ高校の制服に見を包んだ金髪の少年。そう、皆様ご存知自称未来のスター、天馬司である。
「朝っぱらから音量マックスかよ……」
「今日から俺たちも2年生だからな、気を引き締めていかなけば!」
「いや、声がデケェのと気を引き締めることになにが関係あんだよ」
「大きな声を出すと気合が入る!雛子もやってみればどうだ?」
「本当かぁ……?んん……天馬司のバカヤロー!!! おお本当だ。なんか気合入った気がするわ」
「そうだろう? それに、声が大きければ自然と心の器も大きくなる。後輩相手に余裕を持って接してこそのスタ―――おい!バカヤローとはなんだ!!!」
「時間差あり過ぎだろ」
桜並木を二人並んで歩く。先月までと変わらない、いつも通りの朝だ。……進級して心機一転、俺の高校生活にもなにか変化が訪れるのではないかと期待していたが、コイツの様子を見ていると、案外そんなことはなさそうだ。少し残念。
◆
ある日の夕暮れ、学校から帰宅した後特にすることもなく暇だった俺は、録り溜めしていた春アニメを消化していた。
腕に抱えたお徳用サイズポテチの袋に手を突っ込み、無造作に取り出した一枚を口に放り込む。
ポテチとコーラに、ダメ押しのy〇gib〇〇という悪魔的コンボをキメながら過ごしすのが俺のアニメ視聴時のルーティンだ。
「これは外れ……つーかクソだな。クソクソ。クソアニメでーす」
目の前のディスプレイに映る青色と黄色の頭をした制服を着ている少女が暴れ回るアニメ*1に向かって悪態をつく。
声優が謎に豪華だったから見たけど、しっかり原作準拠の紛うことなきクソアニメだったわ。
エンディングが流れ出す。現在8話。クソクソ言いつつもなんだかんだ見てしまうのがこのアニメの恐ろしいところだ。
「あと4話で完走しちまうよ……おん?」
ホットパンツのポケットに入れているスマホがヴィーッ、ヴィーッと鳴りながら振動しだした。着信だ。
「どちらさまですかねぃ……と、司か」
司からのコールだということを確認し、予めスピーカー音量を下げてから電話に出る。
「もしもし」
『聞いてくれ雛子!無事オーディションに受かったぞ!!』
「うっさ……ってマジ?やったじゃん」
音量を下げていてもうるさい司によって告げられた吉報。どうやらバイトの面接に受かったらしい。なんのバイトだったかな、えーと確かどっかの遊園地の……あ
「フェニランのショーキャストだっけか?」
「ああ! フェニックスワンダーランド……オレのスター街道はここから始まる!」
「俺達の冒険はここからだ!」
「勝手に打ち切るな!!!」
「にひひ」
いつも百点満点のツッコミを入れてくれる司のリアクションは見ていて飽きない。全く愉快な人間よ。
◆
後日、司にバイト初日を終えた所感を聞いてみた。
「そういや昨日はバイト初日だったんだろ?どんな感じだった?」
「人の話を理解しないモンスターに出会い、異世界に飛ばされ、怪力の着ぐるみに脅迫された!」
「??」
……どうやら、司の頭がまたおかしくなったようだ。
雛子:前世男の今世ロリ。司の事は親友だと思っており恋愛感情は今のところない。今のところは。
司:うるさい。声がデカい。
感想評価がモチベです。もしよろしければお願いしますm(_ _)m