宇宙でのんびりしたかった   作:扶桑畝傍

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第7話 損失感

〔これが積み荷だ〕

映像が映し出される

「おい。」

〔すまん〕

「ねぇ、エイジ?

 なんか動いてるけど、これってなに?」

〔おま・・・いつの間に同乗者が?〕

「はぁ、『エディ』」

『残念ながら振り込みを確認しています』

「“コレ”の維持には?」

〔外装に維持ポッドがついている、

 動力は波動エネルギーで大丈夫だ〕

「・・・特急料金上乗せだ。」

〔わかった、直ぐに振り込む〕

「ねぇ?なんなのコレ?」

もぅ、あれから黙ったまま

ち~っとも喋らないでなんか嫌な顔してるし

「ほんと、アレ、なんなんだろ?」

『気になりますか?』

「・・・エディ。」

『おや、名前で呼んでくれるのですか?』

「ダメって聞いて無いけど?」

『そうですね』

「さっきの、

 聞いたら答えてくれるの?」

『デザインチャイルドの素体ですよ』

「え?」

『恐らく星の生態系に合わせた

 人類種を改良した物でしょう、

 地球基準では《不必要な臓器》が

 追加されているのが確認出来ます』

「え?え?どう言う事?」

『簡潔に言えば、

 《その星に合わせた人類種》です

 恐らく《原生生物》の調査や、

 《鉱石資源》の調査の為に

 作られた人造人間です』

「じゃぁ、エイジと同じ?」

『生身での戦闘力を中心に

 骨格増強、不必要な臓器による

 副次的な効果で対処するように

 調整されているようです

 あぁ、該当する資料がありました

 かなり昔に人類種が見ていた

 《アニメ》と言われる

 動画を楽しむ物ですね

 その中の《魔法》と言われる現象を

 この素体は発動出来るそうです』

「まほう?って、なに?」

『今現在では、

 《化学と魔法は区別が付かない》ので、

 化学といって差し支えないでしょう』

「ん~?」

『わからないなら、その方が賢明です』

「そ~する、

 それで、コレはどうやって飲むの?」

『酔い止め薬です』

「液体じゃないの?」

『個体ですね』

「なんで?」

『水は貴重品です

 可能な限り消費は抑えるに

 越したことはありません』

「え~?そこら辺の浮遊岩石に

 埋蔵されてるでしょ?」

『確かにありますが

 《資源領有権利》に引っ掛かりますので

 誰かれ構わず《取得》は出来ません』

「え?さっきの港湾区から

 10光年は離れたんでしょ?」

『アンタレス港湾区の範囲は

 《へびつかい座》

 《いて座》《じょうぎ座》

 《てんびん座》《おとめ座》

 《うみへび座》を管理する大港湾区です

 最近、《たて座》も合併したとか』

「へ?」

『やはり、星の距離が

 《変化しつつある昨今》の情勢でしょう、

 この宇宙の大変換期が

 近づいているのでしょう

 とは言え、

 エイジや、貴女が生きている間は

 そこまで差異は無いかと』

「ほぇ~。」

『さぁ、早く酔い止めを飲み込んでください、

 間も無く

 《超々長距離ワープ》を行います、

 また吐いても掃除はしませんよ?』

「こっ、怖いのよ、

 つ、詰まったりしたら。」

ビー

「入るぞ~。」

「わっ、エイジ。」

『艦長、早く酔い止め薬を

 飲ませてください、

 ワープが開始できません』

「え?まだ飲み込めないの?」

「だっ、だって・・・。」

「はぁ、取り敢えず口あけろ。」

「ぇ?」

「いいから。」

「ぅん、わかった、はひ

 これれいいほ?」

酔い止め薬を彼は口に含み

がりっ

「へ?」

水を含み、私の口を塞ぐように

砕いた薬と水を流し込んで来た

 

ごきゅ

 

「んぁ・・・な、

 なんてことしてくれるのよ。」

「は?こうした方が早いって、

 資料に載ってたから・・・。」

「私のファーストキスがぁあああっ!!」

「きす?」

『ふっ』

「クソAI!!

 あんた知っててやらせたのね!!」

『なんの事でしょう?』

「そんだけ元気なら

 次のワープは大丈夫そうだな、

 俺は艦橋に上がる、

 『エディ』カウントダウン始めてくれ。」

『了解』

「ちょっ、私は、ココなの?」

「なんだよ?嫌なのか?」

「だって、ひとり。」

「・・・『エディ』補助席を。」

『宜しいので?』

「どうせ計器類見てもわかんねぇだろ。」

「あの。」

「ついて来い、カウントダウンは

 もう始まってるんだからな?」

「いっ、急ぎましょ!!」

「うわ・・・暗い。」

「あぁ、ワープは

 めちゃくちゃエネルギーを使うからな、

 節約しなきゃ《航行不能》になっちまう、

 ほれ、そこ座れ。」

そう言って右隣の席を指差す

「う、うん。」

「ベルトの締め方は?」

「こ、こう?」

「はぁ、違う、

 そのまま座ってろ、着けるから。」

「ぁ。」

腰元に彼の手が触れる

「なんだよ?少しキツメに締めないと

 後が大変なんだから。」

きゅ

「うし、これでいい、『エディ』」

『5、4、3、2、1』

「ワープ。」『ワープ』

(ぐわんぐわんする)

「お~い、大丈夫か~?」

(揺らさないで、気持ち悪い~)

『艦長、《真空生物を検知》

 どうやら《少しズレたようです》』

「あんだと?どっちにズレた?」

『アンドロメダ港湾区から約20光年程』

「うげぇ、そんだけ影響が出るって事は。」

『爆発光を確認、

 アルマク管理区より《救援要請を受信》

 《真空生物》と戦闘中の模様』

「積み荷の状態は?」

『異常、見受けられず』

「予備日数は?」

『地球時間で後5日です』

「中央波動炉心起動、二日で片付ける。」

『アルマク管理区へ返伝、

 《我、エディ、援護に向かう》』

「どうだ?」

「艦載機稼働率、3割を切ります!」

「ったく、どこのどいつだ、

 こんな時に真空生物をけしかけるのは!!」

〔こちら護衛艦ゆうづる、返伝を確認!!

 間も無く『エディ』が来ます!!〕

「なっ!?どうしてこんな所に?」

「恐らくこちらの戦闘のせいで

 ワープアウト地点がズレたのでしょう。」

「そうすると、アレか

 ペルセウス港湾区に

 行くつもりだったのかな?」

「恐らく、真空生物は

 『死亡時』に亜空間へ影響を与え

 『ワープアウト地点を

  狂わせるのですから』」

「厄介な生物だよ。」

「司令官!タキオン粒子亜空間検知、

 『エディ』ワープアウトします!」

「『エディ』全武装解放、『波動ラム』もだ。」

『積み荷への振動が懸念されますが?』

「恐らく突進してくる真空生物がいる筈だ、

 そいつに艦首を向けるだけでいい、

 こちらからは突進しない。」

『了解』

(ぅ~、またわーぷしたぁ~

 きもちわるぃ~)

「今回は赤字だな、質量兵器も解放、

 時間との勝負だ。」

『了解』

「こちらアルマク管理区艦隊

 私は司令、颯(はやて)だ。」

〔こちらエディ艦長、エイジ〕

「救援感謝する、射線の確保は必要か?」

〔今送った座標範囲から

 艦隊を下げてくれ〕

「受け取った、

 通信士、艦隊へ陣地移動。」

「了解。」

「久し振りだな。」

〔颯さんも、元気そうで良かった〕

「あぁ、『引退する前に会えて良かったよ』」

〔今、幾つだ?〕

「はは、76だよ、お前はまだ

 『20代』かな?」

〔あれから『まだ3年ぽっち』なのにな〕

「あぁ、宇宙の不思議は尽きないな。」

「司令、アンドロメダ港湾区より

 増援が到着『旗艦アンドロメダ』です!!」

「・・・いよいよ古臭くなっちまったな。」

〔アンドロメダ、まだ現役だったのか〕

「それはお前もだろ?」

〔・・・だな〕

〔こちらアンドロメダ港湾区艦隊、旗艦

 アンドロメダ、アルマク管理区艦隊へ〕

「はい、颯です。」

〔珍しい顔が居るようだが?〕

〔ワープアウトがズレたんだ、

 手早く処理したい〕

〔相変わらずだな、エイジ、『エディ』〕

『お久しぶりです、アンドロメダ』

『エディ、久し振りですね、

 まだ新しいパーツが羨ましいですよ』

『アンドロメダ、

 ようやくパーツの再生産が決まりましたよ』

『吉報ですが、あと少し早ければ良かったですね』

『アンドロメダ?』

『今回の討伐が終われば

 《廃艦》となるのです、

 もう一度、会えてよかった』

〔『エディ』〕

『アンドロメダ』

『言わないでください、

 そして、《座標データもいりません》』

『アンドロメダ、貴方は』

『エディ、どんなモノにも

 限界はあるんです、あるのですよ』

「司令!真空生物が!!」

「集まり出したか。」

〔アンドロメダ、拡散波動砲準備〕

『了解』

〔『エディ』〕

『何時でも』

「アルマク管理区艦隊へ!

 全艦艇、拡散波動砲範囲外へ退避せよ!」

真空生物

見掛けはクマとクモを混ぜたような容姿で

最小サイズで全長200m

最大で3kmを超える物も居る

人類種が宇宙へ活動空間を広げたからこそ

発見された物

『天の川銀河内戦』以前より

接敵、戦闘があちこちで頻発していた

昨今は減少しつつあるが

『増減期』の減少期なだけである

鉱石資源や加工資源も捕食する

最も好物は『有機生命体』である

100~500程の群れを作り

一定数少なくなると

『有機生命体』へ突っ込んで来て

『繫殖』をする

『アンドロメダへ、同期』

『アンドロメダ了解、

 拡散波動砲発射シーケンス同期』

〔スーパーチャージャー起動、動作安定〕

「『アンドロメダ』へ、タイミングは?」

『そちらで』

『いえ、アンドロメダ、

 《今回はお願いします》』

「俺も賛成だ『アンドロメダ』」

『しかし』

〔アンドロメダ、派手にやろう〕

『艦長』

『アンドロメダ』

「『アンドロメダ』」

〔アンドロメダ〕

 

『了解、重力波動砲もチャージします』

「了解した、

 中央波動炉心最大出力、

 『アルマゲドンフォーム』起動。」

『了解、《背面ドッキング》起動』

 

エディが回転し

アンドロメダの下部へドッキングする

 

「砲身、

 拡散波動砲、収束波動砲、同時起動。」

『各プログラム異常無し、

 全機構、異常無し、

 全波動エンジンフルドライブ』

『重力波動砲チャージ完了まで、後20秒』

〔総員、対ショック対閃光防御〕

「ほれ、コレ掛けとけ。」

「ほえ?」

有無を言わさずサングラスを掛けられる

『こちらエディ、何時でもどうぞ』

「『アンドロメダ』最高の一撃を頼む。」

〔だ、そうだ〕

『カウント、5、4、3、2、1』

 

極大波動砲、発射

 

「ぜんぶ、けしとんだ。」

「あぁ、『エディ』と

 『アンドロメダ』の切り札だ。」

〔っと、あちこちアレだな、

 ちょっとエディの

 アンドロイドを貸して貰えるか?〕

『既に派遣済みです』

〔助かる、それと〕

「ん?」

〔お前、何時の間に所帯を持ったんだ?〕

「なんだそりゃ?」

「しょたいってなに?」

〔・・・アンドロメダ、エディにお説教〕

『え゛?』

『そうですね、

 《久し振りにお説教もアリですね》』

アルマク管理区 談話室

「お久しぶりです、颯司令。」

「お前がエディを離れるのは

 何年振りだ?」

「そうですね、更迭されて以来なので

 3、4年は経つかと。」

「遅くなった、久し振りだな、エイジ。」

「大智(おおとも)さんも

 お爺さんになってますね。」

「あぁ、流石に引退したいよ、

 俺を尻目に颯は引退するんだぞ?

 酷く無いか?」

「おま、お前が『受領』したんだろうが、

 大体アンドロメダの後継機は

 何時ロールアウトするんだ?

 もう20年は待ってるんだぞ?」

「「「あはははっ!!」」」

「あの~。」

「おぉ、お嬢さん、済まないね、

 私は『アンドロメダ』艦長、

 大智・慈明(しげあき)と言う、

 アンドロメダ港湾区総司令でもある。」

「そ、総司令さんでしたかっ!?」

「俺は、颯・健三(けんぞう)だ、

 アルマク管理区の司令だ。」

「ど、どうも、私は・・・、

 天満月(あまみつつき)白夜(はくや)と

 言います、

 白鳥座連合第48ステーション出身です。」

「っ、そうか、

 しかしどうして『エディ』に?」

「あぁ、俺から説明する。」

「生体兵器がまだ生き残っていたのか。」

「誰かが手引きしなきゃ

 『3か月』で

 死に絶える筈の生体兵器だった。」

「はぁ、何処かに

 『再戦派』が居るのは確かだな。」

『艦長、出港準備完了、

 各部署、応急修理完了』

「助かるよ『エディ』」

『白夜、貴女も早く乗ってください』

「あ、はい、

 お二方、すみません。」

「構わんよ、

 無理を言ってココに来て貰ったのは

 こちらなんだ、エイジ。」

「あ?」

「『今度は守れるか?』」

「さぁな。」

「エイジ、

 『エディ』に聞けば解るが、格納庫に

 波動エンジンのパーツを積んで置いた、

 今回の『物品報酬』だ、受け取ってくれ。」

「・・・ありがと、『颯先輩』」

「アイツはまだ20代か。」

離れる『エディ』を見る

「俺達はジジイだな。」

「あぁ。」

「もう、会えないな。」

「恐らくな。」

「泣いてるのか?」

「あの大戦の生き残り同士で

 泣くなと言うのか?」

「いや、涙なんて

 俺も、枯れた、もんだと。」

「せめて、アイツ等には。」

「あぁ、安住の地があるといいな。」

「ねぇ。」

「ん~?」

「なんか、アンタ変よ?」

「どこが?」

「あの人達に会ってから。」

「そか。」

「そか、じゃないわよ!!」

「なんだよ?」

「え。」

「いや、なんか言うんだろ?

 なんだよ?」

「ちが。」

「はぁ?」

「あ~っ!!もう!!」

 

抱きしめられた

「なんで泣かないのよ、アンタは。」

泣く?

あぁ、この妙な損失感はそう言うたぐいなのか

「なぁ。」

「ん。」

「あの二人な。」

「うん。」

《同期》なんだ

「え?」

「あぁ、俺はこうして

 あちこち飛び回ってるからな、

 艦内時間しか経過してない。」

「だって、お二方は。」

「その場で時間を過ごせば、

 その流れにそう経過が刻まれる。」

 

「ほんとは、会うつもりは無かった、

 配属先のアンドロメダの時点で、

 《別れを済ませたんだ》」

 

「だけど、真空生物のせいで

 ワープアウトがズレた、

 そして、颯さん、大智さんに

 会っちまったんだ。」

 

「なぁ?この損失感はなんなんだ?」

「たぶん、つらいって事だと思う。」

「つらい?」

「うん、お別れしなきゃいけない時って、

 胸が締め付けられるように苦しくなるの。」

「そっ、か、これが、辛いか。」

 

「落ち着くまで一緒にいるよ。」

「あぁ、あぁ。」

あぁああっ!!

この時、俺は《別れの辛さを知った》

 

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