『ワープアウト、
各部署チェック進行中』
「ふぅ、久し振りに連続ワープしたから
気持ち悪さが際立つな。」
『全くです、
幾ら日数を減らす為とは言え
機関にも負担が大きいですからね』
「『で?』」
む~り~
「白夜、白夜。」
ぁ~
「だめだこりゃ、
『エディ』白夜に
体質改善抗体は打てるのか?」
『残念ながら《旧人類》ですので、
遺伝に影響がない抗体を
新たに作る必要性があります』
「作るとしたら?」
『白夜の遺伝子は採取済みですが、
生成に必要な成分、抽出、
工程を最短でやれたとしても
《1年》は掛かります』
「当面は酔い止め薬で対処するしかないか。」
まじか~
『ペルセウス港湾区より入電、
無理に経由せずとも構わないそうです』
「追加依頼もあるんだから寄るさ。」
「ぅ~・・・まだぎもぢわるい、
エイジ、ペルセウスでなに積むの~?」
「手紙だ。」
「てがみ?」
『えぇ、今でも《紙媒体》での
やり取りは行われておりますが』
「ペルセウスとポラリス港湾区の間にな、
《次元断層》と《反転無空間》があるんだ。」
「次元断層は聞いた事あるからわかるけど、
《反転無空間》って?」
「あぁ、波動エンジンにはどちらも
天敵な空間なんだけど、
《反転無空間》は、
《元素炉心》も航行不能になる
滅茶苦茶厄介な空間なんだ。」
「ん?」
『次元断層内では、
タキオン粒子が放出エネルギーに変換され、
収集できず、エネルギーを得られなくなります、
勿論、核融合炉機関、反物質機関も同様に
《空間物質を収集し変換する機関》は
軒並み動けなくなります、
今でこそ、専用シールドを装備し、
脱出用の波動ラムか、波動爆雷を搭載、
核融合炉は既に廃止されてから
500年は経ちますので
除外となります、
そうでなければ脱出は不可能でした』
「え~っと。」
『元素炉心では、《一個の物質》から
エネルギーを生成するのでシールドが無くても
航行不能にはなりませんが
脱出の際は《波動爆雷》で次元断層に
穴を開けて脱出します』
「え?まって?
さっきの空間物質を収集ってなると、
核融合炉は大丈夫なんじゃないの?」
「そうでも無かったんだ。」
「なんで?」
『実験として、
シールド装備の元素炉心艦と
『シールド無し』の核融合炉艦
『シールド有り』の核融合炉艦を
次元断層に墜とした所』
「ぅ、うん。」
「核融合艦は航行不能になった。」
「どっちも?」
「なんでかな。」
『現在、各星団、連合、星間国家で
研究を進めていますが
打開策は見つかっていません、
それに、核融合炉には、
水素が必要ですので
恐らく『変換』の際、
性質が変化するのでは?と
仮設が構築されています』
「ほぇ~、じゃぁ、
《反転無空間》は?」
『それは』
「無から有が作られ。」
『有から無が作られるからです』
「んん?どゆこと?」
「これはまだ仮設なんだけど、
『ダークマターしかない空間』と
仮定している。」
『はい、現在、
その《反転無空間》こそ観測されていますが、
そこに墜ちた艦艇は軒並み
《消滅しているのです》』
「ん~?」
「ぁ~、
ご飯一回分食べると
その分エネルギーになるだろ?」
「うん。」
「その逆。」
「ぎゃく?」
「エネルギー自体が《無》の物質で
質量を持ちたいが為に
《有》を喰らい変質する。」
「つまり、私のエネルギーが
元のご飯に戻るって感じ?」
「そんな感じらしい。」
『そのおかげで
全ての《物質》と定義出来る物は
エネルギーとなり、
エネルギーが、物質となるのです』
「じゃぁ、元素炉心は?」
「ダークマターに
《内包されているエネルギー》を
こちらのエネルギーに変換している、
その逆が起こると?」
「ダークマターに食べられちゃう?」
『おぉ!』
「なるほど、そう言う解釈もあるのか。」
その解釈を太陽系連合に送った所
学会発表物になったとかならなかったとか
▽
「手紙は?」
〈今、ドローンに運ばせている〉
「そうだ。」
〈ん?〉
「アンドロメダ、廃艦だってさ。」
〈・・・そうか、
ありがとう、二人には直接連絡するよ〉
「“またな”」
〈あぁ、“またな”〉
▽
あ、またそう言う顔する
「ねー。」
「んだよ?」
「また同期の人?」
「・・・あぁ。」
「ほら。」
有無を言わさず抱きしめられる
「辛いなら泣く。」
▽
『各部署チェック完了、
目視点検も完了、
超々距離ワープ準備完了』
「これより
《次元断層》並びに《反転無空間》を
一気に飛び越える、白夜。」
「わ、わかった。」
補助席から手を掴んで来る
「・・・離すなよ。」
「へ?」
「なんでもない。」
『ワープ、カウントダウン始めます』
▽
『ワープアウト』
「ふぅ。」
『波動防壁緊急展開します』
「なっ?!」
僅かに展開が間に合わず
《岩石の破片が船体に当たる》
「ひぃっ?!なんの音っ!?」
「被害報告!!」
『第一装甲板に《数ミリの凹みと傷を検知》』
「近隣恒星系の確認。」
『ポラリス港湾区の《反応》がありません』
「は?」
「え?」
『岩石成分の抽出中』
「拡大、投影!」
『ポラリス港湾区を拡大します』
メインパネルは
その《事実》を映し出した
『岩石成分抽出完了、
ポラリスの物と断定、
破片から想定されるのは
《爆発し消滅》した物と思われます』
「ステーションの破片だ・・・。」
「そんな。」
「っ?!白夜!!目を閉じろ!!」
「・・・ひと。」
▽
エディに出した指示は
可能な限りの生存者捜索、原因究明
俺は《宇宙空間に浮かぶ死体》を見て
体調を崩した白夜に付いていた
▽
「白夜。」
息はまだ荒く眠っている筈なのに
苦痛の表情を崩していない
「どうすれば。」
データベースへアクセスし、
兎に角情報を集めるがわからない
「・・・ひと一人すら、俺は。」
白夜の左手が何かを探している
「白夜、こうすればいいのか?」
その左手をしっかり握り返す
「白夜?」
すると、どうだろう
呼吸は落ち着き、
表情も幾分か良くなったように見える
「・・・こんなんで良いなら、
幾らでも手を繋いでやる、白夜。」
▽
あれ?ここはステーションの中だ
あ!お父さん!お母さん!
どうしたの?
え?あぁ、ごめんなさい
端末を起動する
〔どうしたの?〕
〔あぁ、今、外壁に衝突した岩石を
取り除きに向かう所だよ〕
私の両親はステーションの外壁を
修繕するチームに所属して
今日も修繕に向かうそうだ
〔きよつけてね!〕
〔大丈夫、直ぐに終わるよ〕
そう、その筈だ
▽
私は部屋に戻り端末で、勉強を進めていた
あれ?メール?
何時もなら《端末》で通話するのに
【ハードスーツを着て置きなさい】
お母さんからだった
どうやら外壁だけじゃなくて
内壁の《エアロック内部》にまで
食い込んでいるらしい
年に数回あるけど、まさか今日起こるとは
想定していなかった
内壁まで到達していると、
区画毎にエアロックを区切って
通り抜けが出来ない用にして
それから空気を別区画のタンクに移す
無酸素になって初めて修理が出来るようになる
つまり、今回は『居住エアロック』に
もろに食い込んでいるようで
全体にハードスーツの着用が
通達されているそうだ
よいしょ、ん~、重い
居住空間には元素炉心から作られる重力によって
0.8~1.2Gの重力が確保されてるけど
こう言う時は切って欲しい物だ
なんか外が騒がしい
ハードスーツのエアー残量が満タンを確認する
よいしょ
扉を開けたら《いろんな人が跳ね飛ばされていた》
物凄い勢いで酸素が居住区から抜けて行く
それに引っ張られ
《生身》の人達が吸い出されていった
アラートの光は【赤】
緊急事態発生、大至急避難区画へ向かう色だった
ハードスーツの機能が自動で立ち上がる
そして、〈無酸素状態〉とパネルには表示された
つまり、この一帯の酸素は
全て宇宙空間に吸い出されて
無くなった事を示していた
ど、どうしよう
兎に角ハードスーツの磁力ワイヤーを伸ばし、
残っている壁沿いに打ち付ける
ぐっ、と力を込めて引っ張ると
いとも簡単に壁に向かって身体が浮遊する
ワイヤーを解除し、壁を蹴りながら
避難区画をめざした
ついさっきまで談話していた人達は
1人もいなかった
吸い出されてしまったのだろう
そして一番近い避難区画の
エアロックを見て見ると
〈破損〉と表示されて
《閉まっている筈の扉が開いていた》
そう言う時
《人は、つい覗き込んでしまうだろう》
そう、私は見てしまった
壁全体が真っ赤に染まり
《噴き出た血液が球体を作り出していた》
どうすることもできない
別の避難区画も同じようになっていた
おかしい
いくら何でもこんな事はあり得ない
避難区画はそれこそ
第1から第5層にもなる装甲板で
強固に守られているし
エアロックの扉も
3重の補助システムが組まれている
それら全てが動かないのはありえなかった
もぅステーションの避難区画はこの一つ
お父さん、お母さんの端末も返信が無い
〈エアロック正常〉
端末で中の映像を見る
ナニカの生き物が
《お父さんとお母さん》をたべていた
無我夢中で作業艇を探した
そして
《両親が使っていた作業艇》に乗り込んだけど
そのまま《何かが作業艇に直撃》
私は固定ワイヤーを着けていなかったので
その勢いのまま放り出された
そこからの記憶はない
▽
「ぅぁ・・・えい、じ?」
「白夜!」
「ここ、は?」
「救護室だ。」
左手が熱い
「ん?ぁ、あぁ、すまな。」
「いい、そのまま。」
「・・・そうか。」
「思い出しちゃった。」
「そうか。」
「お父さん、お母さん、
なんかへんなのにたべられちゃってた。」
「・・・生体兵器だ。」
「え。」
「ステーション、
生体兵器に襲撃されていたんだ。」
「じゃぁ。」
「はくちょう座のステーションは
全て《生体兵器》によって
破壊、消滅している、
白夜は、《はくちょう座ステーション》の
《たった一人の生き残りだ》」
「ぇ・・・ひとり?」
「生体兵器の襲撃は
《船齢の古い艦艇》を使った
カーゴベイから進入、
素体の収集、掌握だった。」
「私は、生体兵器なの?」
「それは違う、こうして生きているのが証拠だ。」
「私、どうやって。」
「『エディ』の推測だけど、
脱出の時、偶然にも
『輸送船』の開いていた
カーゴベイに引っ掛かり
貨物の影に隠れてセンサーに
引っ掛からなかったらしい、
そして白夜は気絶したまま、
『輸送船』はワープアウトし、
俺達とかち合った、その後はここでの生活だ。」
「・・・おねがい、していい?」
「出来る事なら。」
て、離さないで
「わかった。」
彼女は泣いた 泣き続けた あぁ、
悲しくて泣くのは良いんだな
白夜には教えられてばかりだな
なにが彼女に良いお返しが出来るだろうか?