家庭教師ヒットマンREBORN!~守護する者~(仮題)   作:寺桜

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第11話

時は流れ、優奈がヴァリアーに入隊して2年の月日が経った。

 

初めの1年は見習いとしてスクアーロについて回り、2年目はベルが入隊してきて面倒をみたり、一緒に勉強をしたり、新しい仕事を覚えたり、修行したり、ザンザスの様子を観察したりしているとあっと言う間に過ぎて行った。

 

今ではスクアーロより優奈がザンザスの面倒を見ている事の方が多い。それは優奈がザンザスの気分を正確に読み取ることができたからだ。スクアーロの場合、ザンザスが魚の気分なのに肉を用意し、料理を投げつけられ、白ワインの気分なのに赤ワインを用意され、ボトルで頭を無言で殴りつける。

 

しかし優奈は違った。ある日スクアーロの代わりに一日ザンザスの世話を行う事を命じられた日があった。その日、ザンザスが苛立ちで銃をぶっ放す事はなかったのだ。フィレ肉の気分にフィレ肉が用意され、前日飲み過ぎで胃がだるいと胃薬がさり気なく用意されており、眠る前に腹が空けばサンドイッチが部屋に持ってこられた。

 

次の日スクアーロが世話に戻ると前日の大人しさが嘘のように銃を乱射した。

 

 

 

優奈にとって2年前の入隊は強制だった。怪我が治り、骸達と合流をしようと考えていたがザンザスにボンゴレに所属しないのならば上層部に存在を明かすと脅されたのだ。だが、優奈がボンゴレに所属し、貢献し続ける限り、9代目や家光といった上層部に優奈の事を黙っていてくれると約束をした。優奈としては家光に会う勇気は無く、血のせいで後継者争いに巻き込まれるのもごめんだったため、しばらくの間はザンザスの下で大人しくしている事にした。

 

入隊にあたり、本名はザンザスのみ把握しており、偽名で雌獅子と登録した。しかし、イタリア人には発音しにくいらしく最終的にはメーシィと呼ばれる事が多い。

 

入隊した当初は大勢の人間に注目された。何故なら『あのザンザス』が拾ってきた子供なのだから。ヴァリアーの隊員はもちろんのこと、一般の構成員達も好奇心から押し掛けて来た。優奈は顔を見られないようにフードを深く被っていた。フードの中を覗き込もうとする大人からはスクアーロの背中に顔を押し付けて面倒な人間達をやり過ごしていた。

 

もちろん、スクアーロがいつも一緒というわけにはいかず、絡まれる事もあった。だいたいの人間は少し話せば満足してくれたが、中には力づくで顔を見ようとしてくる人間もいた。筆頭はレヴィだった。初めはフードを取ろうとしてくるだけだが、攻撃がかすりもしないと意地になって数人がかりで襲ってくる事もある。もちろん、筆頭がレヴィと言うだけであって他にもしてくる者は掃いて捨てるほどに居たが。

 

その場合には第三者のいる場所まで誘導し正当防衛として返り打ちにした。

ちょっとした事である程度は実力を示し、相手に理解を示しつつ優しく諭す。そうやって味方を増やしながら、確固たる居場所を優奈は確保した。

 

 

 

優奈はいつもフードを被っていた。しかしある日、マーモンがキャラがかぶると言ってフードを禁止されてしまった。そこで優奈は仮面をつける事を思いつく。ヴァリアーには個性的な面々が多いので、一人くらい仮面の人間がいても大丈夫だろうと思ったのだ。

 

仮面の依頼はルッスーリアに任せた。実はスクアーロから紹介された時、あまり好きにはなれそうにもないと思っていた。ルッスーリアは常人には理解しがたい趣味があった。それは気に入った男の肉体を集めて保管すると言うものだ。初めて彼の部屋に行った時には驚いたし、僅かながらも嫌悪した。だがそれはルッスーリアにとっては譲りがたく、今の彼を形成するものでもあった。

 

そんな彼を優奈は受け入れた。どんな彼であっても、ルッスーリアは優奈に優しく、世話を焼きたがり、ちょっとだけ過保護。それが優奈の知るルッスーリアなのだ。ただの一部だけで嫌いにはならなかった、なれなかった。ちなみにルッスーリアは『メーシィ』の方が可愛いからと雌獅子と発音できるにもかかわらずメーシィと呼んでいる。

 

 

仮面の事をルッスーリアに頼もうと思ったのは、ゴロツキみたいな集団の中では珍しくファッションセンスはある彼ならばおかしな物は寄越さないだろうと思ったのだ。

依頼するとリクエストを聞かれた。

 

「メーシィちゃん、マスクを作るのは良いけど何かリクエストある?お花の模様が欲しいとか、カラフルが良いとか。せっかく作るのだもの、気に入って欲しいわ!」

 

「じゃあ、私の名前の通りに雌獅子と分かる仮面にしてほしいわ。ゴテゴテの装飾なんていらないから、軽くてつけやすくお願い。」

 

「わかったわ、期待して待っててちょうだい!」

 

……

………

1ヶ月後には仮面が届いた。優奈の注文した通りの雌獅子のフルフェイスの仮面だった。色は象牙を思わせる白乳色で美しく、芸術品のようにすら見える。持ち上げてみると外見とは裏腹に驚くほどに軟らかく軽かった。製作にあたり顔を一切見せないと言う無茶振りだったにも関わらず、不思議なほど着け心地は良かった。

その日からは毎日仮面を着け続けた。

 

顔を隠す物が仮面になっても顔を見ようとしてくる者は後を絶たず、ある噂を流した。それは、住んでいた家が火事となり家族は死亡、雌獅子自身も顔が火傷で酷い事になっている、と言うものである。これはスクアーロによって流された噂であって、優奈が明言したわけではない。だが噂が流れ始めると顔を見ようとする人間はだんだんといなくなった。

 

代わりに噂の真相を聞こうとしてくる者が現れたが、顔を俯き体を震わせ、無理やりに声を紡ぎだそうとすると相手が謝って、いろいろ親切にしてくれるようになった。読心術を会得しているリボーンにも探りを入れられた事がある。その時には施設で行われた実験の数々を思い出しながら、偽の情報を話そうとしたところで周囲が見ていられないと止めた。

 

リボーンの読心術は、相手の表情や体の動きで心と言うよりは感情を読むものだった。会話の途中、どこで眼が動いたか、何を見ているのか、髪をどのタイミングで触ったか、足や手はおかしな動きをしていないか。そう言ったものを知識や経験に基づき頭の中で嘘か本当か、どれほど本当の事を喋り何処が嘘だったか、言葉では悲しいと言いながら行動で喜んでいないかを調べていた。

 

今回の場合は、嘘をつく前に周りが止めたので行動で分かった事は『顔のせいで悲しい事があった』それだけだ。優奈が顔を気にしているのは事実だし、悲しい事を思い出してもいたがそれとこれとは別々であったのはさすがのリボーンでも分からなかった。

 

 

 

ベルとは仮面になってから会ったのだ。

 

ベルは自分は天才だから直ぐにボンゴレの幹部になると信じて疑っていなかった。ヴァリアーで模擬戦をし、自慢のナイフで大人をボコボコにした。王族の教育の賜物で7カ国語は軽く話せるし、実力も充分で入隊は直ぐに認められた。しかしそれだけだった。自分に付けられた教育係は同じ歳頃の女の子で、雌獅子の仮面を着けていた。

 

最初こそベルも優奈の仮面を取ろうとしていたが、残念ながら実力では優奈の方が上で、簡単に取り押さえられてしまうのだ。自他共に認める天才は同じ歳の女の子に負けることが悔しかった。最終手段として自分の血を流し、血に酔って自我を飛ばして攻撃したこともある。善戦はしたようだが、結局仮面をはがす事はできなかった。

 

反発して色々なイタズラをしかけた。ワイヤートラップに掛かると、ナイフが四方八方からとんでくる物や、食事に下剤を混ぜたり、夜中に部屋へ侵入して暗殺を試みたりもした。そんなイタズラと言っていいのか定かではないものを優奈は全て避けきり、アドバイスをしてくる余裕がさらにベルを苛立たせた。

 

そんな反発しまくりだったベルが優奈を認めたのは、優奈が教育係について3カ月ほどした時だった。いつもの如くトラップを仕掛け、優奈を呼び出した。優奈はトラップを見抜いた様だが律義に掛かってくれた。

ナイフが降り注ぎ、それに気を取らせマシンガンを自動操縦で乱射し、銃弾を避けるため移動した先には地雷原で、さらにもう一度ナイフの罠がある。

 

優奈が例え地雷を踏まずともナイフにより爆発する。今度こそ殺ったと思った。周囲は土煙で覆われ、目の前すら見えない。とりあえず、土煙がおさまるまで待っていようと座ったその時だった。

 

「危ない!!」

 

突然どこかから出て来た優奈に抱きしめられて、訳が分からなかった。そして、何かが裂ける音がした。ベル自身は無事だったが、優奈の肩や腕、腹や足など色々な所から血が出ていた。地面に落ちている自分のナイフを見てようやく、自分が庇われた事に気がついた。

 

「え、なんでこんな時間が経ってからナイフ飛んでくるわけ…。」

 

「1度下に落ちたナイフだけど、地雷の爆風で上に押し上げられて無造作に降り注いだんだよ。そこもベルのトラップの一部だと思ってたけど、違ったみたいね。さすがの私も危なかったなぁ。でも、今はとりあえずベルが無事でよかった。」

 

「悪い、サンキュー雌獅子。」

 

「!っ大丈夫だよ、私はベルの上司だもの。」

 

自分が怪我をしてもベルを優しく包む視線に、自然と謝罪と感謝の言葉が出た。

何事も無かったかのように戻ろうとする優奈はフラフラで、仮面はナイフで傷だらけになり、今ならあっさり取れると確信した。だが実行はしなかった。

この時、ベルは優奈を認め初めてきちんと名を呼び、自分の上司として素直についていく事にしたのだから。

 

 

 




ハリー、めっちゃ楽しかったよ!
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