家庭教師ヒットマンREBORN!~守護する者~(仮題)   作:寺桜

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あと、タグ1つと小説の説明文増やしました。要チェック!






第12話 ヴァリアーの反逆

優奈はAランク任務を終えて、ルッスーリアを訪ねる途中だった。

任務中に仮面が2㎝程だが破れてしまったのだ。たった2㎝ではあるがそこから割けてしまわないかと心臓に悪い。それにボイスチェンジャーの調子がいまいち良く無い。今の仮面は5代目で、優奈の成長や仮面の痛みにあわせて新調してきた。声が一般の人間に比べ、美声な優奈は声が原因で注目される事を嫌がり、4代目の仮面から小型のボイスチェンジャーを付けている。高性能で普段使っている一般的な女性の声の以外に6種類別の声が出せる。いつかはボイスチェンジャーに頼らず、一般的な声で話ができるようにと声音を変える練習をしている。

 

ちなみに教師はリボーンだ。まだボイスチェンジャーが仮面についていない頃、食堂で声のせいで注目され苛立ち紛れにいっそ声帯切ってやろうかと冗談で呟いたのだ。するとたまたま近くで食事をしていたリボーンが、そんな綺麗な声を無くしちまうなんてもったいない、声を変える方法教えてやるからそれまではボイスチェンジャーか何かで我慢していろと言われたのだ。

初めは仮面を取るための罠かとも思ったが、いつまでも仕掛けてくる様子は無く、むしろ取る気は無いとアピールしてくるくらいだ。本人曰く、仮面の事で嫌な思いをさせちまった詫びと言う事らしい。そして将来良い女になりそうだから粉をかけておきたいのだと。顔すらまともに見せた事の無い優奈に対し良い女とはどういう事かとも思ったが、顔なんか見なくても良い女だと分かると言ってきた。その上堂々と、愛人にならないかと誘ってきたほどだ。

そんな話を聞いては警戒していた自分がバカらしくなり、優奈は笑った。年齢不詳の赤ん坊が8歳の女の子を口説くのだ。笑わずにはいられなかった。愛人の誘いは丁重にお断りをしたが、それ以来友人として接している。

 

 

優奈がリボーンと仲良くなった時の事を思い出しながら歩いていると、前方から誰かやって来る。普段あまり感じない気配から客人かとも思ったが、足取りに迷いは無く明確に何処かを目指しているようだ。すれ違うだろうとは思いながらも、道を変えようとは思わなかった。

変えれば良かったのに…。

 

前方から歩いてきた人物を見た時、優奈は心臓が止まるかと思った。いや、むしろ止まって死にたかった。死んでしまえばこの人の前から消えれるのに。死ねないのなら透明人間にでもなってしまいたいが無理な話である。立ち去る事も出来ずただ立っていた優奈を相手は認識してしまった。

 

「お、最近有名な雌獅子じゃないか。噂通り本当にメスのライオンの仮面してるんだな。しかもフルフェイス。

おっと、そんな構えんなって。見ない顔だから警戒されるのは当たり前かもしれねぇけど、オレもボンゴレの一員だ。門外顧問だからめったに本部にはいないけどな。沢田家光という、よろしく頼むな!」

 

前方から来た人物、それは優奈の父親である家光だった。

 

怖い嬉しい私を見て私を見ないで気付いて気付いて気付いてよお父さん気付かないでお父さん抱きしめてよ触らないでもっとお話ししてこれ以上構わないで私は目の前に居るよこんなの私なんかじゃない今も探し続けてくれて嬉しい何で探し続けるの諦めてよ嫌だこれ以上こっちに来ないでもっとこっちに来てそこで止まってお願いもっとだよもっと私の近くにダメ嫌怖い怖い怖い怖い怖いコワイこわいコワイ怖いこワぃ…

 

相反する気持ちが優奈の中で渦巻く。今すぐに走り去りたいのに、足はその場に縫い付けられたように動かない。優奈は動けないのに家光は近寄ってくる。体が震えそうになるのを意志の力で押さえつける。今、優奈は優奈ではなく、ヴァリアー所属の幹部候補生の雌獅子なのだ。家光の存在など書類の中でしか知らず、会ったことすらなかった人間を見ていきなり逃げ出すのはおかしい。

怪しまれて調べられてしまう。顔は見えないし、家光の記憶より随分と成長している。声だって今はボイスチェンジャーを付けているから問題ない、問題なんてあるはず無い。

なのに普段通りに動けない。9代目に会わせられた時だって心はともかく体は動いていた。それなのに今、何故か動かない。声の出し方や体の動かし方なんて忘れてしまった。今までどうやって動かしていたのかさえ思い出せない。

 

 

それでも、なんとか、意志の力を総動員して体を動かし、浅く会釈をした。

 

「なんだ、噂じゃ朗らかな奴だと聞いてたのに随分と無口だな。何か喋ろうぜ。」

 

優奈を真っ直ぐ見ながらそんな事を言う家光。だが優奈はそれどころじゃ無かった。心臓は今にも破裂しそうで、立っているのが不思議なほどに体に力が入らない。それでも話さなければ不審に思われる。

 

「体…調が悪く、こ…、これか、ら医務室へ、行くとこ…ろ。」

 

「本当に体調が悪そうだな、大丈夫か?なんなら運んで行ってやるぞ。ヴァリアーとはいえ子供なんだ。おぶってやるぜ。」

 

自分をおぶろうとするその姿が、昔の平和だった頃の姿と重なる。

吐きそうだった。もう立っていることすらできない。

崩れ落ちていく優奈。だが優奈が床に倒れる前に支えてくれた人物がいた。

 

「カス、何死にそうな面してやがる。沢田家光、余計な事をするな。俺の部下だ、連れて帰る。」

 

ザンザスだった。ザンザスは優奈を肩に担ぐとその場を後にした。

……

………

「手間掛けさせやがって。」

 

ザンザスに担がれ、優奈はザンザスの部屋に連れてこられた。部屋に着いた途端優奈は床に放り出された。その後ザンザスは優奈に何を言うわけでもなく、ただ椅子に座って目を閉じた。

部屋にはザンザスと優奈しかいない。その事がどれほどの安心を優奈に与えた事か。不規則な呼吸はやがて規則性を取り戻し、動かし方を忘れていた体に力が戻る。優奈はゆっくりと仮面を取ると、下唇を噛みながら自分の仮面を睨みつけた。そのままどれほどの時間が過ぎただろう。突然ザンザスが一言喋った。

 

「泣きたきゃ泣け。」

 

ザンザスのその一言に涙があふれた。

 

「あああぁぁぁぁぁああああ、うあああああぁぁん!!!」

 

気付いて欲しくなんかなくて、気付いて欲しかった。気付かれたら困るくせに、家光に名前を呼んで欲しかった。お父さんだからもしかしたら気付くかもと思い、結局気付いてもらえなかった。勝手に期待して勝手に失望する自分がとても醜く感じる。

それでも自分独りで乗り越えるつもりだった。自分だけのためになんて泣くつもりなどなかった。それなのにザンザスが泣きたきゃ泣けなどと言うものだから、堰止めていたものが溢れだしてしまったのだ。

 

自分だけのために泣いてしまったのも、今自分がひどく見っとも無いのも全てザンザスが悪い。ザンザスが悪くない事など分かっている、だがこの瞬間だけは全てザンザスを理由に優奈は泣き続けた。

その間、ザンザスは声をかける訳でも慰める訳でもなく、ただその場に居ただけだった。

 

 

 

 

 

 

優奈がヴァリアーに入隊して3年目、ボンゴレの雌獅子は今やマフィア界では知らぬ者がいないほどに有名だ。

 

特に彼女のすごい所は敵の構成員を頻繁に寝返らせたり、敵対マフィアの意見を180度変えさせている事だ。優奈自身は特に何かをした覚えは無い。ただ任務や休日に色んなところへ行き、その地の人と楽しく話をするだけだ。

 

どういうわけかそれが敵対中のマフィアのボスであったり、拗れかかっている組織の幹部だったり、上に反発して追い出された人間だったりすることが多いだけだ。その後何故か優奈に都合の良いように事が進み、気がつけば話をした事のある人たちの多くがいつの間にか優奈の部下になっている。

 

また、ヴァリアーに所属しながらも処分されそうな部下を助けたり、給料の一部を孤児院に寄付したりしている事から『ヴァリアー最後の良心』とも呼ばれている。

 

ヴァリアーの人間に公の場以外敬語も敬称も付けるのは止めた。それだけ親しくなったとも言える。ザンザスを呼び捨てにした時には周りの人間は優奈が殺されると思ったが、ザンザスは黙認した。調子に乗ったレヴィが名前で敬称を付けて呼んだ次の瞬間には壁にめり込んでいた。その日から優奈のみザンザスを敬称無しに呼ぶ事を許可された。

 

 

 

今日はSランクの任務をこなして帰宅したところでとりあえずザンザスの顔を見に行こうとしていた。正直シャワーを浴びてからにしたかったが、ここ5日ほどスクアーロも自分も不在だったため、機嫌は最悪に違いない。そうなると八つ当たりされるのは何も悪くない部下達だ。

 

ザンザスの部屋まで歩きながら今後の予定を考えていると、優奈に気がついた部下の一人が走ってきた。

 

「雌獅子様、今お帰りでしたか!どうか早くボスの部屋へ行って下さい。何故かは不明ですが、現在ボスは怒り狂っており、他の幹部の方々もお手上げ状態で…。」

 

途中まで報告を聞き、急いでザンザスの部屋まで行く。

 

「あのクソジジィがぁぁあああ!!!この俺をバカにしやがって!ぶっ殺してやるっ!!」

 

ガッシャン! バンッ! ドゴッ!

 

部屋の中で暴れているザンザスの声や物音が、扉が意味をなさないくらいはっきりと聞こえてくる。

どうやら9代目との間に何かあったらしい。そしてそれはザンザスにとって許しがたく、屈辱的でプライドを酷く傷つけたようだ。一応ノックをしてみたが反応は無い。仕方なく許可を貰わずに入った。

 

「ザンザス、入るよ。」

 

部屋に入れば全てが無茶苦茶になっていた。壁は銃痕で穴だらけ、家具は投げたりしたのか部屋の隅の方でひっくり返り、唯一無事と言っていいかは微妙な机もナイフを刺したのか切り傷だらけ。

 

当のザンザスは怒り狂ってもはや獣の様だった。ところどころ自傷行為をした痕も見受けられる。これは危険だと判断し、一度意識を刈り取る事にした。

 

「ザンザス、落ち着いて。」

 

そう言って優奈はザンザスの眼の前に立った。ザンザスと優奈の眼が合うと、突然ザンザスは持っていたナイフで優奈を切りつけて来た。それを間一髪で優奈は避ける。

 

「そうだ、雌獅子。いや沢田優奈、その血を俺によこせ。そのボンゴレの血をぉおお!!」

 

優奈は直感してしまった。

9代目とザンザスに血のつながりが無い事を。

 

 

ザンザスがまたナイフを振りかぶって優奈に襲いかかる。

しかし優奈は避けずにそのナイフを受け入れた。

 

 

 

優奈から、赤い紅い命の水が流れ落ちた。

 

 

 

 

 

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