家庭教師ヒットマンREBORN!~守護する者~(仮題) 作:寺桜
優奈は今、9代目の守護者に監視されながら、眠るザンザスに会いに来ていた。
退院してからずっと9代目に願い出ていた事だ。初めは取りつく島さえなく断られていたが、優奈が何度も何度も諦めずに頼んでいたので根気勝負のようになっていた。
先日、9代目に差し向けられた刺客を優奈が撃退した事で褒美がもらえる事になった。そこで優奈が願ったのはもちろんザンザスとの面会である。それ以外にしろと言われたが、それ以外ならいらないとはっきり断ると、とうとう9代目が折れる形で了承してもらえたのだ。もちろん、条件がついた。守護者が監視に付き、時間はたったの10分、見たものは何も話してはいけない。
それでも嬉しかった。謹慎中のヴァリアーのみんなも心配しているし、優奈自身もどういった状態なのか確認したかった。ザンザスのいる部屋までは目隠しをされ守護者に手を引かれた。ルートを割り出されないためにたぶん遠回りしているだろう。そして部屋について目隠しが外された。
「ぁ、ザンザス…?」
そこにあったのは巨大な氷のオブジェだった。ザンザスはそのオブジェの中に居た。いつも怒ってばかりだが、そんなの比ではないほどの怒りの表情。見ているだけのこちらにまでその感情の大きさと激しさが伝わってくる。
言葉など何も出てこない。監禁されているとは思っていたが、このような形だと誰が想像できただろう。生きているのか死んでいるのかさえ分からないが、9代目は眠りについたと言っていた。つまり、この氷の中でザンザスは生きているのだ。
デジャブを感じる。ザンザスがこうなっていた事なんて今さっきまで確かに知らなかった。それなのにこの光景をどこかで見たことがある。
あれは、そう、施設を脱出する直前。頭に大量の電撃を浴びて気を失った時だ。その時に見たたくさんの光景の中の一つだ。何故忘れていたのだろう、氷に閉じ込められていた男は間違いなくザンザスだ。それなのにこの瞬間まで忘れているなんて。
守護者が優奈にハンカチを差し出した。優奈は何故ハンカチを差し出されたのかを理解できない。
「気付いていないのか、雌獅子。君は泣いているんだ。」
そう言われて頬を触ると濡れていた。気付かぬうちに涙が出ていたようだ。ありがたくハンカチを借りて涙を拭った。
「子供にみせるものじゃない。君はずっと会いたがっていたが、これを見せたく無くて9代目は断り続けていたんだ。まだ5分ほどだが、もう帰るかい?」
「いいえ、私は大丈夫です。こんな姿になっちゃったんだね、ザンザス。この氷はいったい何ですかと聞いても?」
「これは9代目の御技だ。それ以上は答えられない。」
それ以降、残り時間いっぱいまで優奈はザンザスを見つめ続けた。
部屋に戻った優奈は考える。今回のクーデターは完全に9代目が悪い。クーデターになってしまったが、これは簡単に言えば親子喧嘩だ。親の組織を継ぐことが当たり前として育ち、周囲もそうだと信じて来た。
なのに蓋を開ければ親子は血のつながりなどありませんでした。普通の会社か何かだったのならそれでも良いかもしれない。しかし、血統にうるさいマフィア、その中でも血統狂いと言っていいボンゴレでは悪い冗談では済まない。
ボンゴレがこれまで続いてきたのは、代々のボスのブラッド・オブ・ボンゴレの超直感の賜物だ。そこにマフィアとして優秀だといっても超直感などない赤の他人などボスになれるはずもない。
9代目のザンザスへの愛情と優しさは実子と変わらぬものだった。だが今回はそれが裏目に出ていた。初めから養子として育てていたのならまた別の未来があったはずだ。
これがわざとなら、9代目は相当の腹黒だがマフィアとしては最高だ。立派なあて馬として育てた我が子と本命をデキレースで戦わせ、結果どのようにしてでも本命が勝つ。優秀だと注目されていたザンザスを見事に倒すのだ、力を示すには良いショーになるに違いない。本命の方も…。
そこで優奈の超直感が引っ掛かりを覚えた。本命、それはいったい誰なのかと。ボンゴレの血を引く後継者候補は優奈が把握している限りあと3人いる。だがその3人誰1人として9代目は少しの贔屓をしていない。すでに派閥争いすら起きていて内部分裂しそうなほどにも関わらず、だ。
本命を隠し育てているのかもしれない。だが、いったい何処で。内部の人間はもちろん、外部の他のマフィアにも知られていない血縁者を育てる事のできる、危険の少ない安全な場所。もしかすると海外の別の国で平和な日本か…も……。
「私!?違う、私は見つかって無い。死亡扱いされてても可笑しくない。
と言う事は…、っ綱吉!」
どうしよう、どうすればいいのだろう。自分の嫌な予感が外れたためしは無い。つまりそういう事だ。綱吉が10代目候補!赤ん坊だった綱吉しか覚えていない優奈にとってそんな事は論外だ。だが、優奈が現在10歳と言う事は綱吉はもう7歳である。
7歳と言えば言葉を話し、走り回り、感情をセーブできるようになっているはずだ。育ち方次第ではマフィアのボスにだってなれる。今発表しないのは、まだ子供で力がない綱吉を守るためのもの。
綱吉を教育するのは誰になるだろう。そう言えばリボーンがキャバッローネの次期ボスを教育していたはずだ。となるとこの件が成功すれば必然的に綱吉もとなるはずだ。リボーンが教育係につけば、内部派閥だって容易には消しに行けない。同じボンゴレだからこそリボーンの実力を知ってる。
優奈は考え続ける。守るべき弟をこの大きな波から守るために。
これほどの事をどれだけの人間が知っている、もしくは気付いているのだろう。ザンザスが血を受け継いでいないと言う事だけでトップシークレットだ。ボンゴレの守護者たちは、幹部たちは、ヴァリアーたちは何処まで知っている?下手に動けば優奈の身も危ない。何もかも足りない。力も情報も味方も。
優奈は誰に言う事も無く、自分に誓う。
例え優奈自身がどのような事になろうとも大切な弟である綱吉を守ろう。そして命のと心の恩人であり、ボンゴレの被害者であるザンザスを、自分の全てで支えよう。
優奈の手に炎が灯る。
鮮やかで美しい橙色の炎が。
覚悟は力へと変わる、それが死ぬ気の炎。
自分へ誓った優奈は、部屋を出て歩きだした。まずはスクアーロの元へ。ヴァリアーの誰が真実に気付いているのか分からない。気付いている可能性が一番高いのはスクアーロのはずだと推測したからだ。
スクアーロは部屋で謹慎していた。部屋の前には見張りがついている。しかし優奈が話しにくい事をスクアーロと相談すると言うと見張りは部屋から距離をとってくれた。完全には離れてくれないまでも、距離をとってくれる所は優奈の人望だろう。
「スクアーロ、会いに来たよ。」
「う゛お゛ぉい、雌獅子何しに来やがった。今テメェはヴァリアーの仕事を一気に引き受けて忙しいはずだ。オレに面会何かできないほどにな。」
「スクアーロ。」
ただ名前を呼んだだけだ。だがスクアーロは優奈の声音から嫌味な態度を改め、話を聞く体制にはいる。
「…どうしやがった。」
「スクアーロ、あなたはクーデターの事を何処まで知ってるの?」
「どういう事だ。」
「あなたが相手だから私は誤魔化さないわ。私はザンザスからは何も聞いていない。でもね、全部気付いちゃったの。全部…。」
一瞬にして部屋の中が殺気で充満する。
「雌獅子、それを誰かに言ったか。」
「誰にも言ってない。聞きに来たのもスクアーロが一番よ。」
「…、オレもボスからは何も聞いて無い。だがたまたま聞いちまった、9代目との事を。他の奴らは何もしらねぇぞ。」
スクアーロは答えながらため息を吐く。具体的に何をと言わないのは、万が一の盗聴を警戒してだろう。
「他には、他に何か気付いたことがある?」
「他だぁ?他に何かあるのかよぉお。」
「知らないなら良いわ。」
「う゛お゛ぉい、気になる言い方してくれるじゃねぇか雌獅子。」
「ごめん、スクアーロ。あなたが気付いて無いのなら私から言うわけにはいかないの。」
先ほどにも増して殺気を向けられるが、優奈とてヴァリアーの一員。その程度で口を割ったりなどしない。しばらくしてスクアーロも悟ったのか舌打ちをして諦めた。
「チッ、いつか話してもらうぞぉぉお!」
「うん、いつか話すね。」
スクアーロと話し終えた優奈は監視にお礼を言ってスクアーロの部屋を去る。そして次に別の人物の元へ行った。既に夜と言っていい時間だが、彼ならきっと起きている。今日は帰ってきていると報告を受けているし、自分を適当に追い出したりはしないだろう。そう思い次の目的地へと向かう。
「夜なのにごめん、居るかな?」
「ちゃおっす、入っても良いぞ。」
「……ねぇ、リボーン。お願いが、あってきたんだ。」
「なんだ、俺は女に甘いからだいたいの事は聞いてやるぞ。」
「あのね、あのね私を、弟子にして欲しいの。二度と何も失わないために、力が欲しい。」
優奈はリボーンの部屋を訪ねた。
力を得るため。
今回は止められなかった波を、次は止めることができるように。
色々な所を誤字修正しました。
まだあったら教えて下さい。6話にたった一文ですけど重要部分を付けたしました。
これからに関わるので読みなおしといて下さい。