家庭教師ヒットマンREBORN!~守護する者~(仮題)   作:寺桜

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第17話 犬の叫び

黒曜ヘルシーランド

 

「あぁ、千種ですか。」

 

千種はフラフラと倒れそうになりながらも、どうにか黒曜中にまで帰ってきた。しかし骸の前までたどり着いた所で力尽きる。

 

「おや、当たりが出ました。」

 

「柿ピー来ました?」

 

犬が千種の帰還を感じ骸の元へやってくると、そこにはダイナマイトで焼かれた千種が倒れていた。それを見た犬は千種を心配する事無く、美味しそうだと言って噛もうとするも骸に止められる。

 

 

犬は退屈していた。せっかく優奈がいた国に来て、優奈の姉弟のボス候補である綱吉に喧嘩を売っているのにマフィア関連の人間が気付く気配が無い。素人にしては強い奴もいたが所詮素人でつまらなかった。

もしや気付いていないのかと相手の頭を心配していたほどだ。犬だって頭の良い方ではないけれど、ランキングでしているカウントダウンも、もう3つしかない。初めはいつ気付くだろうとワクワクしていたが、ここまで来ると相手の鈍さに呆れ始めている。けれど集めた情報では綱吉には優秀な家庭教師がついていると聞いた。つまり綱吉が気付かなくても家庭教師の方が気付くだろう。もし、両方とも気がつかなければそこまでの奴だ。

 

優奈は施設に居た家族に、ぽつりと誘拐される前の事を話した事がある。自分には弟が居るのだと。誘拐される時、本当は弟の綱吉が誘拐されるはずだったが優奈が身代わりに誘拐されて誘拐犯はエストラーネオの職員に殺され優奈は施設に連れてこられたと言っていた。話しの途中で何度も弟の事を心配だとこぼしていた。

 

話を聞いた時、犬は嫉妬した。今の家族は自分たちで、もちろん優奈はみんなに優しい。でも、一度たりとそんな顔をした事なんて無かった。そんな、慈しみと愛情と優しさに溢れ、自慢するような顔なんて。

 

思い出しただけで、心が嫉妬と言う名のドブで埋まっていく。綱吉とはいったいどういう奴なのか、優奈の家族に相応しいのか見極めてやるつもりで犬は日本に来た。千種がやられたと言う事は、ようやく関係者に行きついたと言う事。そのうち仕掛けてくるはずだ、来ないのならばこちらから行くまで。早くここまでこい、沢田綱吉。

 

 

 

綱吉達はちょうどその頃黒曜ヘルシーランドに到着した。ビアンキのポイズン・クッキングで正面突破をし、リボーンがヘルシーランドについて説明を行うと綱吉は懐かしい思い出を思い出した。

 

「オレ、ここ来た事ある。」

 

 

それは綱吉が幼い時の記憶だ。優奈が誘拐されてから奈々は心配性な過保護になり、少しでも綱吉がはぐれそうな遊園地やテーマパークなどは連れて行ってもらえなかった。友達はみんな親にできたばかりのヘルシーランドに連れて行ってもらえたのに、自分だけ連れて行ってもらえない事に拗ねていた。

 

そんなある日珍しく家光が家に帰って来たのだ。家光は帰ってきて早々に綱吉を構いたおしたが、綱吉の機嫌は悪いままで原因を聞いた所、遊びに連れて行ってもらえない事が嫌なのだと伝えた。すると家光は奈々を説得し、家族3人で初めて遊びに行ったのがこのヘルシーランドだったのだ。普段は優奈の話ばかりなのにその日は一回も話題に上がらず、家光と奈々それぞれに手をつないでもらって、遊びにこれた事が嬉しくて、あんなに幼い時のことだったのに鮮明に覚えていた。

 

 

「じゃあ、ツナの案内で進むぞ。」

 

「リボーン、確かにオレ来た時の事覚えてるけど、けっこう曖昧な部分も多いんだぞ!」

 

「文句言うな。」

 

ドゴッ!

 

リボーンの決定で綱吉が案内しながら進む事になり、廃墟の雰囲気に怯えている綱吉は進みたがらなかったが、これ以上殴られるのはごめんだとしぶしぶ案内するのだった。

 

 

 

「犬、そろそろ出番の様ですよ。動物がストレスを溜めるのは良く無いらしいです。彼らで遊んできなさい。」

 

「待ってたびょん。言ってきます骸さん。」

 

骸が窓から外を眺めると、ボンゴレ一行が黒曜ランドに侵入してくる姿が良く見えた。これならば犬と戦う姿も見れるかもしれない。相手の戦力を冷静に分析して、憑依した時に良い手駒になれば良い。千種や犬も手駒としてなら優秀と言えるが、彼らは骸からすればもはや自分の一部だった。脱獄してきた時についでに一緒に連れて来た奴ら、特にランチアは使えるが、駒は多いにこした事は無い。

 

見える場所で戦えば良いのに、あのバカ犬は土砂に埋まったドームを利用して一対一のバトルに持ち込んだようだ。戦いが見れない事に不満はあるが、犬が一対一に持ち込んだと言う事は複数相手では勝てない戦力という事。つまり雑魚のマフィアよりかよほど強いのだろう。脱獄連中を連れてきておいて良かった、もうすぐ彼らもここへ着く。犬や千種には言っていないが自分の命令だと言えば問題ないだろう。

 

「…どうやら、犬は負けてしまったみたいですね。たしか、山本武と言いましたか、情報では一般人のはずですがどうやらただの弱者では無かったっと言う事なのでしょう。

 

沢田綱吉、顔だけ彼女に似ている情けない人間。見ているだけで不愉快になりますが、その体はもう直ぐ僕の者になる。とても楽しみだクフフフフフ。」

 

 

 

犬を倒した山本とリボーンが突き落した綱吉と一緒に獄寺とビアンキはロープで引っ張り出した。

 

「山本、ごめん。オレが巻き込んだせいで野球やるための腕が…。」

 

「こんな傷、大したこと無いって。それに野球と友達を天秤にかけるなんてツナと屋上からダイブするまでの話だぜ。こんな怪我でも問題なく野球するから応援に来いよ!」

 

「ありがとう山本。」

 

「っ沢田綱吉!!」

 

思っても見ぬ所から声が上がる。それは先ほど倒したとばかり思っていた犬の声だった。驚いた綱吉達は穴からドームの中を見る。そこにはロープで縛られているものの倒したと思っていた犬がしっかりと眼を開け、こちらを睨みつけていた。どうやら一時的に意識が飛んでいただけの様だ。

 

「ひー!何なのあいつ。オレがリボーンに突き落された時もすっごい睨んできたけど、今も眼力半端ないよ、怖ぇ。」

 

犬は頭上から見下ろす綱吉達、いいや綱吉を睨みながら叫ぶ。

 

「沢田綱吉!お前の子供の頃は幸せだったか。」

 

「そ、それなりに幸せだったと思うけど。それがどうかしたのかな。」

 

「お前の幸せは誰を犠牲になり立ってるのか忘れてるなんて、おめでたい奴だびょん!

お前のせいであの人は苦しみ、お前のせいであの人は悲しみ、お前のせいであの人はそこに居ない!!」

 

「何だよそれ、いったいどういう事だよ。」

 

「テメェ、10代目が聞いてるんだ答えやがれ!」

 

「死ね!死ね死ね死ね沢田綱吉!!」

 

「うるさいわね、黙りなさい。」

 

聞くに堪えない罵倒にビアンキは岩を落とした。

 

「キャウン。」

 

犬はそれきり何も言わなくなった。だが綱吉の耳には今も犬の言葉が繰り返される。「お前の幸せは誰を犠牲になり立ってるのか忘れてるなんて、おめでたい奴だびょん!お前のせいであの人は苦しみ、お前のせいであの人は悲しみ、お前のせいであの人はそこに居ない!!」それはいったいどういう事なのだろう。自分の幸せは誰かの犠牲の上で成り立っていた?その誰かは自分せいで苦しんでいた?

 

「しっかりしろツナ。敵の言葉に惑わされるんじゃねぇ。」

 

「そうだぜツナ。なんか分かんないけどツナの幸せはツナの物なんだから、知らない誰かなんて知ってから悩めばいいのな。」

 

「敵の嘘に決まってんだろ野球バカ。」

 

「あの獣はもう何も喋れないみたいだし、先に進めばきっと別の奴が教えてくれるわ。」

 

犬の言葉の真偽は分からないが、綱吉にはとてもじゃないが嘘を言っているようには見えなかった。だとしたらいったい誰が犠牲になったのだろう。分からないが言葉の意味を知るためにも綱吉は進み続ける。

 

 

 

 

 

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