家庭教師ヒットマンREBORN!~守護する者~(仮題)   作:寺桜

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第23話 覚悟

骸がクフりと嗤う。

 

「そう、14年前赤ん坊だった弟を庇い、誘拐され、切り刻まれ!薬を投与され!目の前で仲間を殺され!命の危険を常に感じながら!

実験施設で大空のように温かかった、少女の名前は沢田優奈。

 

そして庇われた弟の名前は沢田綱吉、あなたですよ。姉の不幸の上に成り立つ平和な日常はさぞや気分の良いものでしたでしょうね。」

 

骸の一言に、綱吉はへたり込んでしまう。体は震え、頭の中は真っ白で何も考えられない。リボーンから言われるまでは、ずっと自分より自由で幸せに生きているのだと決めつけていた。リボーンに言われてからは漠然と幸せだと良いと思っていた。声がでない、出そうとしてもヒューヒューと息が出るだけだ。

 

「しっかりしろ、ツナ。」

 

バチン。

 

今にもパニックを起こしそうだった綱吉にリボーンはビンタをした。痛みで意識がはっきりし、パニックは防げた様だが骸の話しにショックを受けている。

骸が話をしている中でリボーンは雲雀の応急手当てをすます事は出来た。だが所詮救急箱の物を使った一時的なものだ。骨折していた腕には落ちていた木材を良い長さに折って固定してある。

 

雲雀はこれ以上の出血は抑えられたが、顔が青いことには変わりなく起き上がる事は難しい様だ。骸の話は雲雀も聞いていた。雲雀がまだ並盛の秩序となる前の事件だ。並盛を愛してやまない雲雀は過去の事件といえど、独自に調査し沢田優奈を探したが結局解決できず苦い思いをしていた。

そして今、骸の話でだいたいの事態は解明されたが肝心の事を骸は話していない!

 

「さ…わだ、優奈はどこに、いるのか答えなよ。」

 

とぎれとぎれだが、雲雀は骸を睨んで優奈の現在を訪ねた。リボーンは雲雀と同じ事が気になっていたらしく黙って骸に返答を求める。綱吉は混乱と罪悪感にさいなまれながらも、確かに現在優奈がどうなっているのか聞いていなかったことに気がついた。

 

雲雀からの質問を受けたとたん、骸の表情は一変した。顔から笑みが消え影が差す。

 

「…彼女は、優奈はいなくなりました。」

 

「!?」

 

「だがランチアのやつは、お前が迎えに行く事がねらいだと言っていたぞ。それは優奈が生きてるってことじゃないのか。」

 

骸の答えに青ざめる綱吉。リバーンはランチアが言っていた事を覚えており、直ぐに聞き返した。

 

「本当にめでたい思考回路をした連中ですね。だいたいの事は話したにも関わらず、優奈があのまま生きていたと思いますか?」

 

「そんな、それじゃあ姉ちゃんはっ。」

 

「僕が迎えに行くのは沢田優奈だったものですよ。」

 

骸の言葉は真実であって真実ではない。純粋無垢なまま生きていたかと言えばNOだ。しかしただ生きているかといえばYESである。骸にすれば沢田優奈とは誘拐された時の甘い考えの子供であり、骸たちの姉となったのはただの優奈であるので別人とすら思っている。

 

骸の言葉を真に受けているのは綱吉だけだが、雲雀とリボーンはまだ何か話していない事があるのではないかと感じていた。綱吉の心が折れるまであと一歩。細い木の枝を力一杯曲げて、樹皮は既に裂けている。ほんの少しの切っ掛けで芯は折れるだろう。

 

 

ゆったりとした動作で骸はソファーから立ち上がると、ゆっくりと綱吉に向って歩き出した。今の綱吉ならばたいした抵抗も無く、かすり傷一つで簡単にものにできるだろう。そして優奈を迎えに行くのだ。

 

骸はもっと早く優奈と合流できると思っていた。それこそ、犬と千種を逃がした時の傷が癒えれば、優奈の方から合流しにくると思っていたのだ。傷が深くても1年から2年あれば簡単だろう。だから骸はいつも通りに行動した。麻薬や人身売買を行っているマフィアを狩り、潜伏して内部から破滅させたりもした。

 

その間犬と千種には優奈の情報を集めさせたり、ゴロツキや下っ端構成員を相手に経験を積ませた。

 

1年が経つ時には、考えていたよりも傷が深かったのかもしれないと思った。

2年が経つ時には身動きができない状態なのではないかと考えた。

3年たつ頃には自分達から探し始めた。

4年経つ頃には良い悪い関係無しにマフィアを狩り、骸に怒って出て来てくれることを望んだ。

5年経つ頃には雌獅子と呼ばれる有名なマフィアの噂を聞き、施設での呼び名と同じ事でもしやと気付いた。

6年経つ頃にはどうやって接触をするかを考え、贔屓の情報屋からのボンゴレの後継者の話しで今回の事を思いついた。

 

ボンゴレの雌獅子の素顔は誰も知らず、骸も物的証拠など何もない。だが分かるのだ。雌獅子の情報を集めれば集めるほどに優奈の核心が生まれる。敵には容赦をしないが慈悲深く、人たらしで誰もが共に過ごしたくなる。昔も敵であるはずの施設の研究員を無自覚にたらしこんだことがあった、研究員は見せしめに殺されたが。

 

施設から逃げ出した後も、骸がふざけて幻覚で惑わそうとしたり、憑依弾を使ったついでに優奈を驚かせようと千種で近付いた事があった。どちらも一瞬で看破され、頭に頭蓋骨に穴が開くかと思うほどのデコピンを喰らった。その後千種に体を帰すと千種がのた打ち回り、優奈は慌てて謝っていた。それからは骸本体にあの攻撃が炸裂したのは今では楽しい思い出の一つだ。長く共に居ればそれだけ優奈の虜となる。

 

 

優奈だけだった。どんな骸でも見つけ出し、恐れることなく、忌避することなく、ありのままを受け入れてくれたのは。千種と犬は、部下であり駒であり骸自身なので自己愛くらいしか湧かず、彼らも納得している。

 

一時、憑依弾の使い過ぎで自己を見失いそうになった事があった。そのときですらあの悪魔のデコピンをされ皮膚が腫れ赤くなったまま説教を3時間もされた後、家族としていつも通りに接してくれた。

 

早く優奈を迎えに行かなければならない。でないと骸は今では無いにしろ未来のどこかで唾棄すべき外道のマフィアと同類になってしまうだろう。骸が骸であるために優奈が必要なのだ。

 

 

さあ、沢田綱吉その体を寄越しなさい。

 

骸が綱吉の前に到着する。リボーンが綱吉にしっかりしろと言うが、綱吉には聞こえていない。この肉体さえあれば正面から迎えに行くことができる。沢田綱吉を使った事に怒られて悪魔のデコピンをされるかもしれないが、最後はきっと笑って許してくれるはずだと骸は想像し口元が緩む。

 

三叉の槍を振り上げる。

さあ、今こそ…

 

「骸さん、しとめて来たびょん!」

 

振りおろそうとした瞬間に、犬の声がした。そして犬に引きずられて連れてこられた獄寺。雲雀程ではないにしても獄寺も重傷だ。体のいたる所からにじむ血、顔は痣だらけ。意識は無いのか言葉を発することすらない。

 

「犬、よくやりました。今ちょうどこの体を手に入れようとした所です。沢田綱吉に最後に仲間を見せてやりなさい。ところで千種はどうしました?」

 

「柿ピーは、こいつの罠にはまって窓から外にぶっ飛びました。外覗いてみたら下で伸びてたびょん。」

 

骸の質問に答えながら犬は獄寺を綱吉の下に投げ飛ばす。獄寺はちょうど綱吉の前まで転がってきた。

 

転がってきた獄寺が視界に入り、綱吉は茫然と獄寺の顔を見つめた。そういえばどのくらい前から、ダイナマイトの音はしなくなっていたのだろう。骸が話し始めた時はまだ小さい音がたくさんしていたし、振動も伝わってきていた。だが綱吉は骸の話に聞くうちにダイナマイトの音なんて聞こえなくなっていたし、聞こえない事に気がついていなかった。

 

「1人で大丈夫なんて嘘じゃないか。」

 

ぽつり、とそんな言葉がでる。

 

「クフフ、風前の灯が2人。苦しいでしょう、僕が止めを刺しましょう。」

 

骸が獄寺に向かって槍を下ろす。ゆっくりに見えるその動作で獄寺の命が消えるのだろう。

 

 

「…止めろ、止めろ!六道骸ぉおお!!」

 

 

仲間のピンチを目の前に綱吉の瞳に光が戻る。

 

 

マユのレオンが目を覚まし震える。

 

 

振り下ろされるその瞬間、綱吉は骸にタックルをかます事で獄寺を助けた。綱吉の脳裏には今回の事件で被害にあった者達の顔が次々と浮かぶ。風紀委員の人達、了平、雲雀、山本、獄寺、フゥ太。みんな六道骸が原因で傷ついた。

骸は綱吉のタックルでバランスを崩すも直ぐに立て直し、おやっと表情を変える。

 

「お前の言うとおり、オレは姉ちゃんを犠牲を知らずに今までのうのうと生きて来たのかもしれない。

でも!並盛のみんなや、ランチアさんやフゥ太、それにオレの友達を散々酷い目にあわせて来たお前だけは許さない!

 

絶対に、勝つんだ。オレがお前を倒すんだ!!」

 

羽化の時は今!

 

 

 

 




書いていて思ったけど、骸すでに外道。
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