家庭教師ヒットマンREBORN!~守護する者~(仮題)   作:寺桜

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第28話 守護者の入れ替え

ヴァリアーの訓練場、今そこでは1人の男の悲鳴で満たされていた。男の悲鳴以外には耳が痛くなるほどの無音。

 

優奈はザンザスの守護者の席をかけてある男と戦っていた。いや、戦いというよりは一方的な暴力過ぎる。観客であり見届け人のヴァリアー隊員達は声を発する事も出来ず、勝負が終わるのを待つ事しかできない。

 

本来ならば行きすぎた暴力に止めに入る人間が居てもいいのだが、今男に向けられている暴力が自分に向かうかと思うと恐ろしくて何もできないのだ。

 

ヴァリアー隊員にとっての雌獅子は最近は変わってしまったとは言え、ヴァリアーの癒しだった。優しく明るく、強く公平。誰も彼女が本気を出す所など見たことも無かった。見る前に全て終わっていたのだから。ときどき他の幹部達と鍛錬をしている姿を見かけたこともあるが、どんな時でも雌獅子が有利だった。

 

だから知らなかったのだ、実力を発揮した彼女の強さを!

 

男からの攻撃を容易く避け、カウンターをいれる。肉体による格闘戦も武器による特殊攻撃も、柳が風を受け流すがごとくはいらない。攻撃そのものが当たらなければ意味をなさないのだ。男とてヴァリアー幹部としてこれまで築いてきた力がある、経験がある、プライドがある。その全てがこの戦いで粉々に叩きつぶされる。

 

避けられるばかりの攻撃、逆にあてられるばかりの反撃。同じだけの時間を動いているに雌獅子は行動の端々から余裕が見える。対して男はふらふらで今にも倒れそうだ。それでも倒れないのはもはや意地だ。こうなれば本当に倒れるまで粘ってやろうと考えていた。

 

ところが突然、雌獅子が懐から1枚の任務指令書をだした。正確には指令書のコピーだ。

 

そしておどけた動作で男の眼の前で指令書をピラピラと見せつける。男は何がしたいのかと思いながらも指令書を読み、ある考えにいたって激怒した。

 

「キサマァァアアアア!!!」

 

男の攻撃をヒラリと避けながら器用に指令書を他の幹部の所へと投げる。指令書は紙であるのが嘘のように綺麗に飛んだ。それをキャッチしたのはルッスーリアだった。ルッスーリアもまた指令書の内容を読み、雌獅子が何を言いたかったのか分かってしまった。そして意味のわからない他の隊員達に、会場に設置されているマイクから任務内容はぼかして雌獅子の意図を伝える。

 

「まあ!? 

…今、ワタシの所に来た指令書のコピーは、メーシィちゃんの物よ。任務でロシアに行かなければならないわ。

 

今日、これから1時間半後には飛行機に乗っていなきゃいけないの。つまり、もうこれ以上長引かせるつもりは無い、という事が言いたいのね。」

 

ルッスーリアが確認するように雌獅子を見れば、客席でも分かるほど大きな動作で頷いた。観客は茫然とするしかない。今だって余裕は残しているものの本気だと思っていたのに、彼女にすれば任務前に行う暇つぶし程度に過ぎなかったのだ。

 

 

観客達とは違い、満足そうに嗤うのはザンザスだ。普段の不機嫌さが嘘のように口元には笑みを浮かべていた。ザンザスにはもう優奈と戦っている男に視界に居れるほどの価値などない。もともと不愉快な存在で勝手に付いてきただけの男なのだ。ここで潰れても優奈が見事に代わりをしてくれるだろう。

 

それどころか代わってからの方が任務も雑務も上手くやるのが眼に見えている。あいつは優秀なのだから。口から笑い声が零れる。優奈の実力はこんな程度ではないのを知っているのは、優奈が一時師事を仰いでいた赤ん坊と自分ぐらいなものだ。他の幹部達との鍛錬など体が鈍らないようにするための適度な運動にしかならない。

 

 

優奈はいつも相手を気遣って自分も疲れた様にしていたが、余裕があり過ぎていた。契約する前の優奈とザンザスも、たまには相手をした。しかしザンザスが相手でも優奈の余裕は崩れる事がなかった。他のカスとは違うと分かってはいるが、消し飛べばいいと常々思う。

 

契約してからは本来の強さを発揮できないにも関わらずこの強さだ。だからこそ言いはしないが認めているし、最強のボンゴレのために縛り付けている。

 

「もう見る価値も無いな。」

 

初めから分かり切っていた事だが、結果が変わることはもうない。ザンザスはこれ以上は時間の無駄だと席を立ちあがり自室へと戻っていく。

 

ザンザスが立ち去るのを、もはや立っていただけの男が見て絶望し雌獅子に負けを認めた。そして優奈は当初の予定通り、守護者の一角になったのである。この勝負を見届けたヴァリアーの者たちは雌獅子の敬愛が畏怖へと塗り替えられた。

 

 

 

「雌っ獅子♪」

 

バタン!

 

守護者争奪戦がおわり今優奈は自室にいた。守護者の席を獲得した優奈は任務でロシアに発つべく荷物の最終確認を行っていた。そこにベルがやってきてのでロシアに言ってしまう前に雌獅子に聞いておかなければならない事でもあったのかと思った。

 

コテンと首を傾げて意図を問いながら、書類なら出せと手をだす。ベルはこの動作だけで言いたい事が伝わった様だ。

 

「違う違う、シシッ。おめでとうって祝っとこうと思ってさ。」

 

なんだ、そんな事かと分かり荷物確認を再開する。

 

「素気ないな、でもいいや。オレずっと雌獅子の方があんな奴より守護者に相応しいって考えてたし。初めはボスが決めた事ならとは思ってたけど、こっそり再起不能に何度してやろうかとした事やら。」

 

ベルは片手でナイフを遊びながら雌獅子に語りかける。雌獅子は荷物の最終確認を終えてトランクをバタンと閉じた。

 

そして机の鍵が掛かった引き出しからある書類の束を取り出した。その束をベルへ渡す。

 

「え?何これ。仕事の追加?」

 

ベルは急に渡された書類に仕事の追加かと苦笑いしたが、書類をめくるとそこには優奈が倒した男の評価と詳細が書かれていた。膨大なデータを取りまとめあるらしく、参考資料タイトルをまとめたページが11枚もあった。そのためか書類は正確無比。それに加え書類は、感情論が一切ない事実なだけに読んでいる者の精神をガリガリと削る。自分の物ではないと分かっているのに思い当たる個所があると自分の評価がものすごく心配になる。

 

そして最後のページにこう書かれている。

 

『 強さ ★★★★☆

  連携 ★★☆☆☆

  書類 ★☆☆☆☆

  忠誠 ★★★★★

  総合 ★★★☆☆

 

ヴァリアー幹部としては全て3以上が好ましく、1は問題外である。

総合では一般隊員が3、幹部は4が基本とする。

以上の事により調査対象はヴァリアー幹部不適格だと断定する。

 

後日ザンザスに意見するものとする。                 』

 

書類というよりは成績表に近いそれを読み終えたベルは、意見した結果が今日に繋がったのだと理解した。

 

「ま、良いんじゃね。一応聞いとくけど、他の人の中にオレも有ったりして?」

 

未だに苦笑いしているベルにコクリと頷き、引き出しからベルの評価表を出そうとしたが何故だか慌てて止められた。どうしてかと首をかしげると、評価に凹んで今の任務に支障をきたしたくないと言う。今ベルには重要な任務が任されているので、支障などきたされては困る。それならば仕方がないとベルから男の評価表を受け取り、引き出しへ仕舞い鍵をかけた。

 

雌獅子はトランクを持つと、行ってきますと言うように手を振って部屋を出た。

 

「さっさと終わらせて来いよ。」

 

ベルは雌獅子の後ろ姿を見ながら、変わったなぁと思う。以前の雌獅子ならば相手を傷つける様な事は一切控え、嘘にならない程度に誤魔化していた。

 

それなのに今の彼女は、事実を事実のまま言われる側の事など考えず思ったまま行動していた。プライバシーをガン無視した評価表製作されていたなんて、物を見せられて初めて知った。

 

だがそれならそれで良い。雌獅子はマフィアにしては甘い所がいつまで経っても直らなかった。今回の変化は、守護者になる彼女なりのけじめの様なものだろう。ベルは勝手に結論付けるとクルリと後ろを向いた。

 

今のままの自分で満足していては彼女に切り捨てられてもおかしくはない。それは彼女が変わってからいつも思っていた事だが、今日の戦いと先ほどの評価表で確信をもった。

 

「マーモン誘って鍛えなおしとくか。確かあいつも雌獅子に課題出されてたよな?

えーと、幻術だけでどうやって雌獅子倒すのかって。毎回いいサンドバックになってたから悔しそうにしてたし、付き合わせてやろうっと。

 

王子てっば、切り捨てられる前に手を差し出すって優しい。シシッ。」

 

そう言いながらも、頭の隅では自分に与えられた任務について考えを巡らせていた。ベルに与えられた任務、それは門外顧問機関を見張る事。もし動きがあれば直ぐに対処し、ザンザスが10代目となるまで障害物を排除しておかなければならない。

 

さて、あいつらは餌に引っかかってくれるだろうか。

 

 

 

 

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