家庭教師ヒットマンREBORN!~守護する者~(仮題) 作:寺桜
門外顧問 ダミー会社
「それじゃあ頼んだぞ、バジル。」
「お任せ下さい、親方様。この命に代えてもご子息の元へ届けて見せます。」
バジルは受け取った小箱を大切に懐へ仕舞う。そのにはもう一つの大切な預かりものがあった。これも失くすわけにはいかない。バジルの懐にはボンゴレリングの入った小箱とフィリップから預かった手紙があった。その2つを確認ししっかりと己の役割を全うしようと意気込んだ。
そんなバジルの様子を見て家光の良心は痛んだが、これも本物のボンゴレリングをより安全に綱吉に届けるためには已む無しと自身に言い聞かせる。バジルに持たせたボンゴレリングは偽物だが、とても巧妙にできているので初見で見破るのは不可能だ。万が一奪われても時間稼ぎにはなる。
家光は既に自宅へと、全く関係ない絵ハガキを送ってある。帰ればきっと奈々の御馳走が待っているだろうが、無事に帰ることができるかは分からない。何故なら雌獅子が動いているのだから。幸いな事に彼女は今日から3日間任務でロシアに行くはずだ。
情けない話だが彼女に対抗できる戦力はいない。家光ならば簡単にはやられないがそれでも不安が残る。それに雌獅子が居ないからと言って何もしかけてこない様には到底思えなかった。
雌獅子、どうして変わってしまったのだろう。彼女の事はまだ幼い時から知っている。知り合った時には既に仮面をかぶり、大人顔負けの働きをしていた。それでも何処か儚げで、眼を離したら消えてしまいそうな彼女の事を家光はいつも気にかけていた。
いなくなった優奈の代わりにしているといわれれば反論ができない。何処となく似ている気がするのだ。いつまで経っても家光には懐いてもらえなかったが、それでも構わなかった。何も出来なくともずっと見守っていた。
本当ならば彼女が変わった原因を解明したかったが、そんな暇は残念な事にない。彼女の事も気になるがとにかくツナの事が終わるまではいったん中止だ。娘の様に思っていながらも、結局は実の息子を優先する。
「ごめんな、都合のいいオッサンで。」
今頃ロシア行きの飛行機に乗っているだろう雌獅子に、たとえ聞こえることは無くとも家光は謝罪した。
バジルは自身がつけられている事に気が付き、国際空港へ行くルートを何度も遠回りしながら向かっていた。つけて来たのはヴァリアーに違いない。幸運な事に一般隊員ばかりの様で、幹部はいないようだ。
「万が一戦闘になっても勝つ見込みはある。」
尾行して来ている正確な人数は把握することができず、焦りと共に心音が不規則になる。しかしそんな自分に言い聞かせるように何度も勝てると言い続けた。尾行しながら見張っている者たちはバジルにひたすらついて来るが攻撃などはしかけてこない。
その事も利用し何度も見通しの悪い路地や煙玉で撒こうとしたのだが、バジルに張り付く目線ははがせない。煙玉は家光に渡された忍者コレクション2の付録だ。所詮付録なので範囲は5mほどしかなく、その上煙い。
そんなこんなで空港が見えているが未だに尾行されており、ヴァリアーの有能さを褒めればいいのか、撒くことすらできないバジルの力不足を嘆けばいいのか分からない。日本行きだと知られない様にできれば空港内で撒きたい。
バジルがわざと混雑している人ごみの中に混ざって、今後の事を考えていたせいだろう。前方からきた婦人と追突してしまった。
「きゃっ!」
「!?、すまぬ!」
婦人が倒れる前に腕を引っ張り転倒を阻止する。お互いに謝った後、バジルは婦人から飴をもらった。溶けやすいらしく早く食べたほうが良いらしい。ちょうど考え事をして頭を使っていたので、いただいた飴をさっそく舐めながら飛行機に搭乗した。
「さっすが雌獅子の部下!オレの所のヤツより使えるな♪」
3時間ほどマーモンとの訓練をしたベルは部下から門外顧問が動いたとの報告を受けた。バジルは気がついて無い様だったが、初めは4人程度の見張りだったが何度も撒こうとする動きがあるとの事から、完全に見失う前にと急いで増員した。
門外顧問の所にも使える人材というのはいるらしく、増員した部下達は空港であっさりと撒かれてしまった。このままではヤバいと事前に保険として預けられていた彼女の部下を使ったのだ。
バジルがぶつかってしまった婦人こそ、雌獅子の部下である。どうやらベルの部下が撒かれてしまう事も想定済みだったようで、連絡を入れた時には既に変装を済ませバジルの周囲にいると言う。どうにか行き先を突き止めたいと言うと二つ返事で了承された。
いかにも旅行しに来た少し裕福な女性の恰好でバジルと接触し、体のゴミを掃ってやる動作で発信機を取り付けた。その上で発信機や見張りに注意が及ばないようにと注意力や状況判断力が散漫になりやすい薬が入った飴を渡し、溶けやすいから直ぐに食べるようにと自然に促した。
一般人の女性からの好意と信じているバジルは疑いもせずに、飴を口の中に入れてくれたのでこれからつけやすい。飴のおかげかその後は真っ直ぐに目的の搭乗口に向かってくれている。
なんで自分には使える部下がいないのかと一瞬悩んだが、使えない奴が悪いと決め今回尾行に使った無能共に何の罰を与えてやろうかと思考がずれる。だが雌獅子の顔が頭をかすめる事で本来の目的を思い出し、ベルはバジルを追って旅立つ。
バジルの向かった先は日本。確か10代目候補がいる場所だが、ボスに比べればカスだと確信している。そんな事よりもバジルが何を持って日本に向かったのかの方がよほど重要だ。
「ま、ある程度予想はついてるけどね。 だって王子だもん。」
この場に予想がつく事と王子は関係ないとつっこむ人間が誰一人としていないが、もともと返事を期待して言った事ではない。そしてつっこむ事で否定していたら斬殺していたので誰もいなかったことは幸いだろう。
バジルは何の襲撃も無く日本に到着した事を不気味に思いながら、並盛を目指し移動中だった。飴の効果は飛行機での移動中に既に解けており、それまでの注意不足は極度の緊張によるものだと思っている。
飛行機の中では尾行は感じられなかったので、どうにか空港でまけたのだと思った。それでも一応遠回りをしながらも少しづつ並盛に近付いていた。尾行されている時には意識して確認をしなかった『届け物』を衣服の乱れを直すふりをして確認する。そして両方ある事に安堵した。
「ん?」
確認ついでにと身なりを整えていると、ジャケットの襟裏に何かを発見する。
「これは……? !?、しまった!!」
バジルはようやく発信機の存在に気がついた。いつ取り付けられたのかは分からないが、これのせいで自分の所在は丸わかりだ。尾行がいなくなったのも不要になったからに違いない。バジルは発信機を地面に落とし踏みつけた。完全に壊れた事を確認し、急いでその場から離れる。
目的地はもうすぐそこで、ヴァリアー幹部の者ならばバジルの目的に気づいてもおかしくは無い。自分の失態に情けなく思いながらも走る。
バジルに付けていた発信機の反応が消えた。ベルは今になって気付くとはバカだろうと思う。目的地の検討もつき、荷物が自身の予想通りだと確信した。
「さーてと、そろそろ用無し君を殺っちゃいますか!」
持っている物は殺してからいただけばいい。勘づかれないためにある程度離れた所から後を着いてきたがもう距離を空ける必要は無い。この程度の距離など空けているうちに入らないのがヴァリアークオリティー。
後ろからザックリやってしまっても構わないが、それでは面白くない。
ベルはわざとバジルの眼の前に降り立つ。何と言ってやろう、何か面白い事を言ってやりたい。そうだ、テレビで見た三流のセリフを言ってやろう。
「よう、身ぐるみ全部置いてけよ。そうしたら命だけは助けてやるぜ、シシシッ。」
「断る!拙者の命に代えてもこれらは渡すわけにはいかぬ!!」