家庭教師ヒットマンREBORN!~守護する者~(仮題) 作:寺桜
雷のリング戦は開始して5分もせずに終わりを告げた。
綱吉は当初は開始と共に10年バズーカで大人ランボになってもらい、参戦させるつもりだった。
いくら相手が弱者には優しいと聞く雌獅子でも、戦闘となればランボが傷つく可能性がある。ランボはまだ子供なのにそんな事させたくないと、先日の夜に現れた大人ランボに言っておいたし、ランボ自身にも言い聞かせた。
それがまさか、10年バズーカを使う暇さえ無いとは思わなかったのだ…。
雷雨の中、雷のリング戦は屋上で行われる事となった。綱吉たちが屋上に着いた時には既にチェルベッロとヴァリアーも到着していた。ヴァリアー側は雌獅子たった1人だけ。リボーンはそれを勝利する事が決まっているから見る価値が無いと判断されたのだろうと言う。
開始時間になるまでの僅かな時間に、家光やリボーンそれにDr.シャマルはずっと雌獅子に話しかけていた。綱吉も彼女を見る度に何かを言わなくては、何かをしなくてはと訴える直感と感情に動かされて話しかけてみたが返事は返ってこなかった。
獄寺は綱吉が話しかけたにもかかわらず無視をする雌獅子にキレて、山本はただ恥ずかしがってるだけじゃないのかと天然な発言をした。雌獅子の対戦相手であるランボは遅い時間帯という事で眠気眼で必死に起きている。それでも綱吉に言われたように直ぐに10年バズーカを使えるように手に持っていた。
「時間になりました。雷のリング所持者はこの特設ステージに来て下さい。」
「ランボさん、行ってくるー。」
「あ、おいアホ牛!この汚いツノ忘れてるぞ。」
「獄寺君、それ貸して。ランボのアフロに入れてくるよ。」
慌てて年季のはいったツノをランボのアフロに突っ込む綱吉。雌獅子はただステージで静かに待っていた。ツノを渡した綱吉はランボの側を離れ、緊張しながら見守る。
「雷のリング戦、開始!」
「お前面白そうなお面つけてるな。ガハハ、でもランボさんも面白いもの持ってるもんね。これなーんだ?これは10年バズーカって言うんだよ。」
ランボは綱吉に開始直後に使えと散々言われたにもかからわず、見知らぬ相手に10年バズーカを自慢しようと説明し始めた。そんなランボの説明を聞いているのかいないのか、雌獅子はゆっくりと歩いて近づいてきた。
「近くでみたいのー?いいよ、ランボさんは心が大きいから見せてやる!」
「もうちょっと警戒しろよランボ。」
「けど小僧が言うには酷い事はされないんだろ?」
「心は広いであって、大きいのは器だボケ。そんな事よりさっさとバズーカ使いやがれ、アホ牛!」
警戒しろなどとランボに呼びかける綱吉たちだが、酷い事はされないと分かっているため声に真剣さはあまりない。
雌獅子はランボの眼の前まで来ると、ランボの視線に合うようにしゃがんだ。事は一瞬だった。
ズボッ
…カチ!
「……!? 雷のリングは雌獅子の物となりました。この勝負ヴァリアー側の勝利とさせていただきます。 明日は嵐のリング戦です。またお会いしましょう。」
何が起こったのかなど良く分からなかった。その動作があまりにも自然体過ぎて、早すぎて終わってからしか気がつかなかった。
雌獅子がした事は至極簡単だった。しゃがんだ瞬間にランボのリングが通されているチェーンを引き抜き、自分のリングと合わせただけだ。ランボは未だにリングが取られた事にすら気付かない様子で10年バズーカの自慢をしている。
「え?え?もう終わっちゃったの!?」
「さすがだな、雌獅子。オレもチェーンに手をかけてる所でようやく気がついたほどだ。」
「リボーンさん、敵を褒めないで下さい!あれはランボのやつがまぬけだっただけの話です!」
「ヤバイな。オレ勝負着いてからリングが取られたことに気がついたぜ。あの人そうとうできるな、ハハハ。」
「笑いごとじゃねーだろ野球バカ!」
「オレも極限に気がつかなかったー!」
「親方様、先ほどの動き拙者は眼で追うことすらできませんでした。」
「また腕をあげたな、雌獅子。」
ギャーギャーと騒ぐ綱吉たち。
雌獅子はその様子をじっと見た後、立ち去ろうと歩き出した。ところが突然ハッとしたように空を見上げたと思ったら、ランボに向かって走り出した。それを見てリボーンを含めほぼ全員が雌獅子がランボに危害を加えるものだと思い、リボーンは死ぬ気弾を綱吉に撃った。
ゴロゴロゴロ…、ガシャーーーン!!!
雷は突如落ちてきた。ランボがいたステージは煙に覆われ何も見えない。避雷針作られたこのステージにいて無事なわけがない。綱吉も雌獅子がランボを襲おうとするのを止めに入ったが、大丈夫だろうか。不安になりながらも煙がはれるのを待った。
煙は徐々に薄れていき、次第にシルエットが見えてくる。一つは何かを守る様に抱え、もう一つは手に死ぬ気の炎を灯していた。きっと守っている方が綱吉だろう。雌獅子が死ぬ気の炎を使えたのは驚きだ。
「大丈夫ですか10代目!?」
「怪我はないかツナ!」
完全に煙がはれると、そこには信じがたい光景が映っていた。何せ、自分達が思ってた事とは真逆なのだから。
ランボを守る様にして抱えていたのは、敵であるはずの雌獅子だった。
そして炎を灯し、避雷針を周囲から取り払っていたのは凛とした顔立ちの少年だ。
状況がよく理解できなかった。何故、雌獅子がランボを守っているのか。あの見慣れない少年はいったい誰なのか。初めに少年の正体に気がついたのは、自称でも右腕を名乗っているだけはある獄寺だった。
「10代目…。」
そのポツリとこぼした一言で山本や了平も気付く。けれど気付いた所で今現在の状況を理解するヒントにはならない。
ランボが襲われると思いリボーンに死ぬ気弾を撃たれた時、綱吉は雷が落ちてくる事と雌獅子がランボを守ろうとしている事を直感した。そして被害を出さないためにも炎圧で避雷針の線を歪ませ、千切って雌獅子とランボの周囲にあるもの全てを取り払ったのだ。
雷はその直後に落ちたが、綱吉の活躍により綱吉自身はもちろんランボや雌獅子にも被害は無かった。綱吉は雌獅子に礼を言う。
「雌獅子、ランボを守ってくれて感謝する。」
雌獅子は何も言わ無い。
その動作には喜びも悲しみも表されない。
雌獅子が抱えていたランボは、雷の音に驚いて気絶している。マヌケ面のランボを優しく撫でると、綱吉にランボは帰された。
「なっ…!?」
「どうしたのです親方様?」
雌獅子の動作に懐かしさを覚える。家光はこの懐かしさが何処から来るのか分からなかった。それだけ昔の事なのだろう、けれど思い出すことは無い。思い出さなくてはとは思いながらも思い出せない自分に歯がゆさを感じた。
雌獅子は今度こそ雷のリングを持って立ち去る。後ろ姿はあっという間に見えなくなってしまった。
綱吉はハイパーモードが解けて、いつもの綱吉に戻った。一斉に駆けよって来る仲間達に取り囲まれ無事を確認される。無事を確認された後にはやはり雌獅子がランボを庇った事に皆疑問に思った。結局はヴァリアーの中でまともな奴だからという事になったが、消化しきれないものを綱吉は抱えたままだった。