家庭教師ヒットマンREBORN!~守護する者~(仮題)   作:寺桜

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第42話

眠れない夜、優奈は自分の部屋から抜け出し廊下に出た。足元はふらつき、いつ倒れてもおかしくは無い。それでも1人でただ無駄にベットで横になってなどいたく無かった。

 

ホテルの部屋は一般的には、居心地のいい部屋だ。高級ホテルの最高階で、清潔で美しく贅を尽くしている。生活するにも充分な設備だって整って、1人で使うには広すぎるくらいだ。

 

1人が怖いわけではない、暗い部屋が怖いわけでもない。

ただ、広くて暗い部屋に独りでいるのが何よりも嫌なだけだ。

 

 

 

人の気配がしない広い部屋は、かつての実験室の一つを思い出させる。いつもとは違う実験を行うために骸達とは離され、たった独りで痛みに耐える。無人の機械が襲いかかり、銃弾の雨が降る。手術痕は引き攣り血をにじませて、手にはヒビのはいったナイフ一本で敵を殲滅する。実験室に響くのは研究者たちの不快な嗤い声。

 

護る者がいないと、こんなにも脆い自分に気づかされる。こんな無機質で冷たい機材なんて欲しくない。人のぬくもりを感じさせて欲しかった、自分が独りではないと教えて欲しかった。

 

数日にわたる実験が終わると、ようやく家族たちの所へ帰る事が許される。

部屋の扉を開けて、喜びと絶望を一緒に味わうのだ。扉を開けてもまだ家族がいる喜びと、扉を開けても帰ってこない家族がいる絶望を。

誰かが言うのだ「○○は最後までユーナを待ってたよ」「□□は姉ちゃんに『ありがとう』って伝えてって言ってた」家族たちの最後を、生き残った他の家族が優奈に伝える。

 

あの実験室に行くと、いつもそうだった。実験も嫌だったけれど、それ以上に帰った時の方が辛かった。

 

 

 

ここのホテルはあの実験室とは何もかも違う。下の階に行けば、ヴァリアーの一般隊員や自分の部下たちが居るし、この階にも他の幹部たちが居る。消毒臭い冷たい床などどこにも存在せず、絨毯の敷かれた組み木の床があるだけだ。

 

本当はもっと人の気配のする場所に向かうはずだった。けれど優奈が向かった先は逆に人の気配の少ない場所。あそこにはたった1人しかいない。

 

けれどそれで良かった。幹部たちにも部下たちにも、こんなに弱った自分を見せる訳にはいかない。リング戦という特殊な状況下で雌獅子が弱っていて良いはずがないのだ。うぬぼれでは無く、多大な影響を及ぼしてしまう。

 

ノックもせずに部屋に勝手に入った。彼は一度こちらを一瞥しただけだった。居る事を拒否されなかったので、彼の近くのイスに座った。

 

途端に眠気が襲い、眠った。

仮面を外して眠った。

 

 

 

寒さに眼を覚ませば、彼は自分だけベットで眠っていた。ここで優奈にブランケット一枚もかけない所が彼らしい。もし自分が風邪をひいたらどうするのだろうか、…きっとどうもしないだろう。

 

数時間だけでも眠れ、やはり彼の傍が落ち着く。眠れたおかげか精神が少し安定したのが分かった。本当なら感謝を口に出したい。しかし声を出すことは今この瞬間も封じられている。

 

それも、もうすぐ終わる。   もうすぐ全てが終わるのだ。

 

 

 

 

 

イタリア ボンゴレ本部 地下研究室

 

家光が突入後、行方不明になっていた。ラルとオレガノたちは家光を探しつつ、本部を捜索していた所一つの部屋を見つけた。そこには旧イタリア軍の兵器研究室だったのだ。ターメリックは、何故開発された物がヴァリアーに運ばれたのだと考えながらオレガノと共に部屋を後にした。

 

メシ… メシ…  ガッ!!

 

そこへ突然レンガの壁を破壊し、現れたのは奴。 プロトタイプ、モスカだ。ラルがすぐさま応戦するものの、弾ははじかれ万事休すかと思われたその時モスカが動かなくなった。

オレガノたちの危機を救ったのは『殺され屋』モレッティー。彼は仮死状態になり、背後から停止スイッチを押す事でモスカを停止させたのだ。

 

モレッティーに案内されて着いた場所には探していた家光、そしてなんと9代目がいた!

 

「親方様!ご無事だったのですね、良かった。」

 

「9代目も救出できたのならば、一刻も早くこの場から離れましょう。」

 

「心配をかけたな、お前たち。 9代目は救出する事は出来たが、脱出し次第医者に見せる必要がある。」

 

「どういう事だ家光!?」

 

……

………

 

本部に突入した家光は今回のリング戦の真意を9代目に確かめるべく、反対勢力と交戦しながら進んでいた。何度か危ない時もあったが、大した怪我をする事無く9代目の執務室にたどり着く事が出来たのだ。

 

9代目は椅子に腰かけて窓の外を眺めていた。

 

「9代目…、お久しぶりです。」

 

「………。」

 

「あなたにお聞きしたい事があり、ここまでやって来ました。」

 

話しかける家光に、9代目からの返答は何もない。椅子に腰かけて窓の外を眺めているだけだ。家光に背を向けるように座っているため、9代目がどのような表情で居るかさえ分からない。

 

それでも家光は話しかけ続けた。ファミリーを愛する9代目が何故、リング争奪戦をさせボンゴレの内部分裂を許しているのか。このままではファミリーどうしで無駄に血を流すばかりだ、止めて欲しいと。

 

それでも9代目からの返答はない。

 

そこでようやく不審に思った家光は、一声かけて9代目に近付いた。9代目は眼を閉じていた。眠っているようにも見えた家光は9代目の肩を揺する。

 

揺すられた9代目は椅子から崩れ落ちた。驚きながら急いで状態を確認すれば、顔色は悪く脈も弱かった。いったい何があったのかと焦りながら、9代目を抱えて脱出しようとする。

 

そこへザンザスを擁護する派閥がやって来て、彼らの追跡を撒きつつどうにか落ち着ける場所にと逃走した。

 

………

……

 

「で、モレッティーと途中で合流し今ここに居る訳だ。」

 

「病なのか毒なのかは分かりませんが、直ぐに撤退し医者に見せるべきでしょう。」

 

9代目の真意も何が起こったのかも分からぬまま、家光たちはボンゴレ本部から去る事となった。

家光は直感する、9代目こそが全ての鍵を握っているのだと。

 

彼らはまだ知らない。

自分達が救出したと思っている者は影武者であると。しかし家光の直感の通り、同時に鍵を握る者でもある。

 

 

 

 

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